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新型コロナウイルス「ヤバ過ぎ派」と「騒ぎ過ぎ派」分断の現在

https://www.news-postseven.com/archives/20210125_1630175.html?DETAIL

2021/01/25 週刊ポスト

 新型コロナウイルスが世界的に感染拡大してから、もう1年が経とうとしている。いまだに正体がよくつかめない未知のウイルスを相手に人々の試行錯誤が続いているが、その対応をめぐって「慎重に行動したい」人たちと、「今の状態は騒ぎ過ぎだ」と主張する人たちが、相容れぬ論争を続けている。「騒ぎ過ぎ派」を自認するネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、議論の趨勢について解説する。

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 ニュースサイト「現代ビジネス」に「コロナ『ヤバ過ぎ派』と『騒ぎ過ぎ派』の対立が永久に折り合わない理由」という原稿を寄稿した。内容は、この1年以上日本中に分断と混乱をもたらした新型コロナに対し、「もうこんなもん、思想の問題で、両派交わることはできないんじゃない?」と問題提起したものだ。

 私は「騒ぎ過ぎ派」に属する。つまり、「コロナはヤバいです!」と主張する『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)や『サンデーモーニング』(TBS系)に対し、「あなた方、ちょっと危機感煽り過ぎ。別に日本ではそこまで死んでないでしょ? 死者にしても、高齢者か基礎疾患持ちの方々でしょ?」という立場だ。テレビというメディアはオワコン(終わったコンテンツ)扱いされているものの、いまだに高齢者を中心に絶大なる影響力を持っており「テレビが言ってるから正しい!」「テレビに出てくる先生様が言うから正しい!」という風潮がまかり通り、結局はテレビの論調が世間の「空気感」を作る。

 テレビのメイン視聴者である年金生活者はどれだけ自粛をしようが収入は減らないものの、そうではない若年層が高齢世代の不安に付け込むテレビ報道により自粛や月収激減、解雇といった事態に追い込まれたと私は思っている。

 1月16日現在、約4400人が死亡しているコロナだが、昨年10月の報道では、前年比で1万4000人日本の死者は減ったという。コロナ、ヤバくないんじゃないの? とこのデータを見ても思ってしまう。

 この両派がネットで言い争いをしている状況にある現状を「現代ビジネス」の記事では書いたのだが、思いのほか、私に賛同する声が多かった。同記事のフェイスブックのシェアは約2900で、この記事を配信したヤフーニュースでも約1400のコメントが付き、この記事をめぐっては「もうコロナに騒ぎ過ぎるのいい加減やめたい」という人々が優勢になる状況だ。

 正直、漫画家の小林よしのり氏をはじめとする「騒ぎ過ぎ派」は常に劣勢だった。テレビでは『モーニングショー』の玉川徹氏や岡田晴恵氏、さらには日本医師会や東京都医師会の会長も「騒ぎ過ぎ派」に苦言を呈していた。

 それが冒頭で紹介した「現代ビジネス」の記事では明らかに潮目が変わったように感じた。これまで散々「邪教の教祖様とその信者」的扱いをされてきた小林氏と私をはじめとした「コロナに騒ぎ過ぎ派」へのネット上でのコメントが好意的になってきたのだ。

 私は民放テレビ番組や自身の既得権益(医師増加反対、後期高齢者の2割負担反対、さらにはコロナ患者受け入れを嫌がる)を守ることを重視する医師会に対しては批判的なスタンスでいた。

 だが、世間様の「コロナはヤバ過ぎ!」という声に小林氏や私は常に「人の命は地球よりも重いのになぜ貴様らは命を軽視するのだ!」的批判を浴びてきた。この批判が若干弱まった。これからネット世論がどうなるかは分からないが、この1年間で初めて私は「味方ができた」と感じている。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。近刊に『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

※週刊ポスト2021年2月5日号

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「医師会会長の会見は上から目線で不快」批判の背景を現役医師らが告発

https://news.yahoo.co.jp/articles/3fdef0e0ad1821d243a98fc0ade2c994e3443883

2021/2/2(火) 16:05配信 NEWSポストセブン

 緊急事態宣言が出て、新規感染者数は若干減少に転じているが、重症者や入院者は減らず、死者はむしろ増えている地域もある。それだけ医療現場のリソースが逼迫し、本来は受けられるはずの医療が受けられない「医療崩壊」が起きつつあることを表している。 【写真】木村医師、工藤医師はともに政府の及び腰に原因があると厳しく指摘した

『週刊ポスト』(2月1日発売号)では、医療崩壊に対処できない原因はどこにあるかというテーマで、特に医師会の責任と国立大学病院の責任を、様々な立場からの証言、提言を交えて詳しく報じている。そこでも論じられているように、日本医師会に構造的な問題や医療崩壊への責任の一端があることは間違いないが、根本的には対策を講じるべき政府の無策、不作為こそが問題だ(同誌では別特集で政府の責任も論じている)。医師、医師会の立場から見た医療崩壊の根本原因と政府の責任について2人の識者に話を聞いた。  医師で作家の木村もりよ氏は、すでに医療崩壊は起きているとして、医療の総動員が必要だと主張する。 「残念ながら、すでに医療崩壊は現実になっています。日本医師会と国、厚労省がやるべきことをやってこなかったツケを国民が払わされています。日本の病院は、民間病院が8割、公立・公的病院が2割ですから、国家的なコロナ危機に対処するには、民間を含めた医療を総動員しなければなりません。  しかし、民間病院がコロナ患者を受け入れるためには、一般の患者と接触させないための導線やベッド・病棟の確保、通常医療の4倍かかるといわれるマンパワー、さらには風評被害のリスク回避など、様々な対策が必要になります。それを自己資金でやれば赤字になる。開業医がコロナ患者の受け入れに積極的でないのは当然なのです。  だから政府も医師会も、まずはお金の問題で動くべきでした。政府予算には5兆円の予備費があり、第三次補正予算でも約19兆円が上乗せになりました、そこからコロナ患者を受け入れた民間病院の損失補填ができるような規制緩和や、財務省にお金を使えるよう申請するなどすればよい。しかし、国や財務省は特定の業界の損失補填を認めることを嫌がった。ここまできたら、そんなことを言っている余裕はありません。医師会も政府も腹をくくって医療崩壊を防ぐ政策に力を注ぐべきです」  同じく政府が民間病院の支援に二の足を踏んできたことを告発するのが、「くどうちあき脳神経外科クリニック」院長の工藤千秋・医師だ。 「医師会はずいぶん前から、政府にコロナ治療をするための費用を負担してほしいと要望していました。医療機関の病床を維持するには年間1000万円くらいのコストがかかります。100床の病院なら年間10億円。それに見合う収入がなければ赤字です。  その半分をコロナ患者用に振り分けたとしても、治療で十分な収入が確保できなければ赤字になります。仮に5億円の赤字が出たとすれば、その分は政府が補償してほしいという要望を何度も出しているのです。しかし、国は反応しない。  政策的な後押しがあれば、民間病院もできることはやりたい気持ちなのです。政府が何も支援せず、むしろ患者を受け入れない医療機関を公表するなどという法改正は全く間違っていると思います」

 そのうえで、政府が動かず、民間病院がコロナ患者受け入れを進められないならば、医師会にできることは限られると指摘する。日本医師会中川俊男・会長が、記者会見で国民に感染予防の徹底を繰り返していることに対しては、「国民任せだ」「上から目線で偉そうだ」などの批判がある。工藤氏は中川会長を擁護する。 「私は、医師会の役割は2つあると思っています。ひとつは医者同士の情報交換、もうひとつは一般市民・国民に健康維持のための啓発を行うことです。政府が支援しないことで民間病院がコロナ病床を用意できないとなれば、危機を防ぐためには国民が感染防止のルールを守り、予防を徹底するしかありません。医師会の中川会長が記者会見で予防徹底を訴えていることに批判もあるようですが、政府に出している要望が無視されている現状では、それしかできることがないのです。それなのに、総理大臣や政権幹部たちが自ら多人数で会食しているようでは話になりません」  危機の根底には、政府と国民、政府と病院、国民と医師会の間に広がる不信感がある。まずはその溝を埋めて安心できる体制を作ることこそ政府の役目だろう。

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ワクチンで脱マスクいつ?免疫学の第一人者に聞く

https://news.yahoo.co.jp/articles/817532a1dfa981ec31f63c8a8c73e711886a1189

2021/2/2(火) 12:29配信 西日本新聞

 新型コロナウイルスのワクチン接種について、政府は今月下旬から始めたい考えを示す。医療従事者や高齢者を優先させ、一般の人が続く計画。接種が順調にいけば、免疫を持つ人の増加で流行を抑える「集団免疫」を社会が獲得、常時マスクが欠かせない現在の暮らしは変わると期待される。免疫学の第一人者、大阪大免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授はその時期について「うまくいけば2、3年後」と唱える。 【写真】将来は「マスクを着けなくても大丈夫な生活になる」と話す宮坂昌之氏  厚生労働省は1月20日、米製薬大手ファイザーから、年内に計7200万人分のワクチン供給を受けることで正式に契約したと発表。同社製は約4万3千人参加の臨床試験で95%の有効性を示した。  インフルエンザワクチンの有効性が「約30%から、高くても60%」とされるのに比べて高く、宮坂氏は発症や重症化を抑えるだけではなく「感染自体も防ぐ効果がある」とみる。英国や南アフリカで確認された変異ウイルスに対して効果を懸念する向きもあるが、3万文字の遺伝情報で変異するのは1カ月に2文字だとし「若干効きにくくなったとしても、全く効かなくなることは考えにくい」との見解を示す。

 国内の新型コロナ累計感染者数は38万9901人(1月31日現在)。国内の人口から見れば少ない。感染者が他人にうつす人数に基づく計算で、世界人口の6~7割のワクチン接種で集団免疫は獲得可能との見方もある。宮坂氏はこれまでの経験から、日本では3~4割が接種すれば「集団免疫にかなり近い状態になる」と期待する。  気掛かりなのは副反応だ。中でもワクチン接種で抗体を獲得後に感染した場合、抗体がかえって悪く作用し、症状がひどくなる「ADE」(抗体依存性感染増強)を懸念する。  ファイザー社の臨床試験では、実際にワクチンを接種した2万人余のうち、感染したのは「10人以下」。ADEが確認されていないのは、試験の母数が少なかった可能性もゼロではない。これまで実用化されたワクチンと同様に「命に関わる副反応が100万回の接種で数回以内だと、接種は(スムーズに)進められる」と見込む。

 学界内では、新型コロナはインフルエンザのように今後も存在し続けるとの見方が少なくない。2000年以降、世界で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)のように致死率が高いウイルスは、感染者を死に至らしめることが多いためウイルス自体も消えやすい一方、感染力が強く、病原性が弱い新型コロナは生き残りやすい。  いったん獲得した免疫は半年から1年でかなり下がる可能性があり、集団免疫の維持には「毎年、接種を受けなければならない」と宮坂氏は指摘する。仲間と集い、自由に語らう暮らしを取り戻すには、各国の協力による継続的なワクチン確保も必要。「マスクを完全に外してもいいぐらいの生活になるのではないか。夜は必ず明ける」とメッセージを送る。 (吉田真紀

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街でよく見かけるマスクを重ねる「二重マスク」…した方がいいの?感染予防効果は?

https://news.yahoo.co.jp/articles/eaca30262138f19816a47791ee42d00fc342aee6

2021/2/2(火) 21:31配信 FNNプライムオンライン

街でよくマスクを重ねる「二重マスク」を見かけないだろうか?こうした「二重マスク」は日本だけではなく、アメリカでも増えていてバイデン大統領もその1人だ。果たして効果はあるのか?これについて、ある見解が示された。 【画像】N95マスクと不織布マスクを重ねて外出する病院の院長 岡山ではマスクを顎につけた男が注意してきた医師の胸ぐらをつかみ、けがをさせた疑いで逮捕された。 依然として続くマスクトラブル。 2月2日、麻生副総理も記者会見で鼻が出ていたことについて指摘を受けた。

二重マスクをする人たちが増加

今、マスクを2枚重ねでつける「二重マスク」が注目されている。 二重マスクをしている40代女性: 下が不織布で上がウレタン。前に友達が電車の中でウレタンマスクだけを着けていたら怒られたって。そしたら二重にした方がいいかなっていう話になって二重につけてます。 別の女性はウレタンの上から不織布マスクをつけている。 二重マスクをしている30代女性: 自分自身の予防と相手に飛沫を飛ばさないということで。不織布は鼻に直接つくとかゆいので、不織布を上にしてウレタンを下にしています。 ――ちょっと苦しいなとは思う時はありますか? 二重マスクをしている30代女性: 全然ないです。 どれぐらいの人が「二重マスク」だったのか調査してみると、東京・新宿駅前では3時間の取材でマスクを二重にしている人が26人いた。 年配の人が多く歩いている東京・赤羽の商店街でも調べてみたところ、1時間で7人が二重マスクをしていた。 二重マスクの人たちが期待しているのが感染予防効果のアップ。 二重マスクをしている70代男性: 自分で考えて1枚で効くなら2枚の方がもっと効くだろうと。 発熱外来のある病院の院長もN95マスクと不織布マスクを重ねていた。 発熱外来のある病院の院長・50代男性: 2枚重ねはやっぱりウイルスとか細菌の飛沫感染を起こさないように。呼吸器系の中にウイルスが入るのを防ぐということでしています。 この「二重マスク」は、橋本五輪相や上川法務相も首相官邸に入る際に行っていた。 さらに、もともとは布マスク1枚だった河野規制改革相も1月25日から不織布マスクの上に布マスクを重ねていた。 周囲から「布マスクだけでは飛散防止にならない」と勧められたからだという。

二重マスクに感染予防効果はあるのか アメリカで気になる見解

この二重マスクの効果について、アメリカで注目の発言があった。 新型コロナ対策の専門家のトップが米・国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が「2枚重ねはフィルター機能と密着性が高まり、より効果がある」との見解を示した。 できるだけ「二重マスク」をした方がいいのか… 昭和大学・二木芳人客員教授: 普通の不織布のマスク一枚で十分。私たちが必要とする機能はあると思うのですよ。受験生の方とか病気を持っておられる方で、どうしても外へ出なきゃいけない方々が念のためにするというのはわかります。

「二重マスク」にはおしゃれの側面も

「二重マスク」をしている人からは意外な理由も聞こえてきた。 二重マスクをしている40代女性: 不織布だけだと白だけなので。おしゃれもしたいじゃないですか?なので何か洋服に合わせて不織布プラスマスクの色変えたりします。 二重マスクをしている20代男性: 気分的に黒いマスクをつけたいなと。2枚にすると選択の幅が広がるかなと。 (「イット!」2月2日放送分より)

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化粧品大手各社、軒並み減収 インバウンド消失と外出自粛・マスク生活が直撃

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6384184

2021/2/4(木) 16:23配信 東京商工リサーチ

 長引く「新型コロナウイルス」感染拡大で化粧品業界が苦境にあえいでいる。外出自粛、インバウンド需要の消失で化粧品ニーズが変わったためだ。  (株)コーセー(TSR企業コード:290050723、東証1部)と(株)ノエビアホールディングス(TSR企業コード:662279069、東証1部)が発表した直近の四半期決算では、いずれも前年同期比10%以上の減収だった。外出自粛やテレワークの浸透の余波はアパレル業界だけでなく化粧品業界にも広がっている。

マスクで「スキンケア意識の高まり」も

コロナ禍でも美容液などは堅調(2月上旬、都内)

 1月29日にコーセーが発表した2021年3月期第3四半期決算は、売上高が2041億3500万円(前年同期比18.0%減)、営業利益が111億4100万円(同70.6%減)だった。インバウンド需要の消失と外出自粛が化粧品販売を直撃した。コーセーの担当者は東京商工リサーチの取材に対して「外出自粛が落ち着いた中国市場の需要は復調している」と話す。だが、国内は長引くマスク生活で、口紅などマスクの下に隠れる部分に使用する商品の不調が深刻だという。  一方、シワ改善美容液やマスクで覆われない目元向けのアイメイク商品は「比較的堅調に推移」(同担当者)と期待を寄せている。また、「マスクが当たる部分はどうしても肌の調子が不安定な状態になる。そのためスキンケアへの意識が高まっている」(同)とトレンドの変化を説明する。  (株)カネボウ化粧品(TSR企業コード: 291520677)を傘下に持つ花王(株)(TSR企業:290030129、東証1部)は2月3日、2020年12月期決算(通期)を発表した。売上高は、ハンドソープや消毒液などの衛生用品が伸長したが、1兆3819億9700万円(前年比8.0%減)だった。営業利益が1755億6300万円(同17.1%減)だったものの、化粧品事業に限っては売上高が2341億円(同22.4%減)、営業利益26億円(同93.7%減)と新型コロナの影響をダイレクトに受ける結果となった。2021年12月期も新型コロナの影響が継続するとの見通しから、化粧品事業は売上高を2490億円と予想。2020年12月期比で6.7%増と見込むが、コロナ前の2019年12月期(3015億円)までの水準には戻らないとみる。

大手が軒並み減収

 ノエビアHDは1月29日、2021年9月期第1四半期決算を発表した。売上高は138億7200万円(前年同期比10.3%減)、営業利益は30億2500万円(同10.5%減)だった。そのうち、化粧品事業の売上高は109億2900万円(同10.0%減)で、売上高の約8割を占める化粧品分野の落ち込みが響いた。  (株)ポーラ・オルビスホールディングス(TSR企業コード:296846023、東証1部)は2020年12月期第3四半期の売上高が前年同期比24.0%減、(株)資生堂(TSR企業コード:290076870、東証1部)は同22.8%減だった。化粧品とサプリメントが主力の(株)ファンケル(TSR企業コード:350606404、東証1部)の2021年3月期第3四半期の化粧品事業の売上高は前年同期比17.9%減と、大手は軒並み10-20%前後の減収となっている。  業界大手の資生堂は、主力の化粧品だけでなく、ヘアサロンの休業などでヘアケア類の需要も落ち込み、2020年12月期は300億円の最終赤字を見込む(2月9日通期決算を発表予定)。大手各社は外国人観光客が多く訪れた百貨店の化粧品コーナーにブランドテナントを出店している。  インバウンド需要が消失し、来期も業績の落ち込みが避けられない状況だが、しばらく我慢の経営が続きそうだ。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年2月5日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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”寅さんの故郷“柴又の料亭「川甚」230年の歴史に幕

https://news.yahoo.co.jp/articles/63bd551ebc9a96ad76af12955ca4e252ec5ffdee

2021/1/31(日) 15:13配信 スポーツ報知

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は”寅さんの故郷“東京・葛飾区柴又にも及んでいた。江戸時代後期の創業以来約230年にわたり柴又で愛され、映画「男はつらいよ」シリーズの第1作目で主人公・車寅次郎の妹・さくらの結婚式披露宴の舞台ともなった料亭「川甚」は31日をもって閉店することとなった。 【写真】閉店を知らせる張り紙  最終日を迎えた31日、川甚には午前11時の開店を前に写真を撮りにくる人の姿が多く見られた。この日は別れを惜しむため予約したお客さんで満席の状態となった。  夫婦で来店した大田区に住む30代の男性は、「小さい頃はこの近くに住んでいて、川甚には家族で何回か来ていました。近くの河川敷で野球をよくやっていて、ここに川甚があるのが当たり前だと思っていた。まさかなくなるとはと、まだ不思議な気持ちです」と率直な思いを話した。  新型コロナウイルスの影響は柴又全体に広がっている。映画「男はつらいよ」で実際に使用したセットを見ることができる「葛飾柴又 寅さん記念館」の担当者によれば、昨年の来場者数は例年の2割程度にしか達しなかったという。普段であればバスツアーに組み込まれることが多い場所だけに、団体客の消滅が痛手となった。  入場口前には同映画で監督を務めた山田洋次氏の色紙が展示。「今頃寅さんは旅先で帰るに帰れずオロオロしながら故郷柴又の皆さんの無事を祈っています。もう少しの辛抱です。頑張れ、葛飾」と応援メッセージが記されている。担当者は「新しい生活様式と言われ、変化を求められる時代に、ここは昔のままの姿でずっとある。変わらないよさというものもあると思う。それを感じられる場所です」と人情に触れられる寅さんの実家をアピールした。  また、同映画で寅さんの実家であるだんご屋のモデルにもなった「高木屋老舗」の店主・石川宏太さん(68)は「名物の草だんごは例年の半分くらいしか売れていない」と話す。柴又帝釈天門前参道商店街の会長も務める石川さんによると、「商店街の人通りも例年の半分以下」だという。「昔からの店が多いので家賃を払わずに済んでいることは救いだが、商店街みんなで助け合いながら感染防止対策を徹底し、なんとか歯を食いしばって頑張っている現状だ」と商店街全体で奮闘中だ。  長きにわたりともに柴又で歴史を刻んできた川甚については「すごい残念ですよね。ご当人してみればとんでもない覚悟の上での決断だったと思いますので、選択に関しては尊重したいと思っております。ただもしまた機会があれば、どんな形でもいいから再開してほしいなあと個人的にはおもっております」とその閉店を惜しんだ。  それでも、「柴又はいつも寅さんはやく帰ってこないかなあと待っているところです。寅さんが帰ってきても『変わってないね、よかったね』と言ってもらえるように、なんとか踏ん張って下町の情緒を守るのが使命だと思っております」と柴又は、寅さんの帰る場所をこれからも守り続ける。

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「くちばしマスク」や「蘇る死者」、パンデミックの奇妙な産物【感染症、歴史の教訓】

https://news.yahoo.co.jp/articles/0a50b1224f3a8bec7f6453f729530ad4d213e6cf

2021/1/31(日) 18:07配信 NATIONAL GEOGRAPHIC

恐ろしい疫病はいつの時代も迷信や誤情報を広げてしまうものなのか

1656年に描かれたローマのペスト医師。不吉で象徴的なその姿は、今日でもよく知られている。(PHOTOGRAPH BY ARTEFACT, ALAMY)

 新型コロナ感染症のパンデミックでは、フェイクニュースや誤った情報の氾濫も問題となっている。一方、ペストのパンデミックが起きたかつてのヨーロッパでは、風変わりな産物や迷信が登場した。原因不明の疫病に対する人々の反応は往々にして奇妙であり、そこには新型コロナ感染症の誤情報がはびこる今も教訓にできる一面があるかもしれない。 関連ギャラリー:ペストからコロナまで【感染症、歴史の教訓】画像20点  たとえば、17世紀のヨーロッパではペストの治療にあたる医師たちが、独特な防護服を身にまとい、鳥のクチバシのようなものが付いたマスクを着用していた。以来、この格好は不吉なイメージを帯びるようになるのだが、それにしてもなぜこんな形のマスクを使ったのだろうか。  それは、恐ろしい病気の本質を理解できていなかったからだ。  何世紀にもわたり、ヨーロッパでペストが大流行を繰り返すなかで、富める者にも貧しい者にも公平に治療がほどこされるよう、ペストに襲われた町は専門家の「ペスト医師」を雇うようになる。彼らは予防薬やペストの解毒薬と信じられていたものを処方し、遺言に立ち会い、検死を行なった。その際に、クチバシ付きのマスクを着用する専門医が現れた。  このマスクは、17世紀のフランスの医師シャルル・ド・ロルムが考案したとされている。フランス国王ルイ13世をはじめ、多くのヨーロッパの王族を治療した医師だ。  彼は、香料入りのワックスを塗ったコート、ブーツとつながる丈が短めのズボン、シャツのすそをズボンの中に入れること、ヤギ革製の帽子や手袋を身に着けることなど、治療にあたる際の服装について書き記している。ペスト医師は、患者を触る(直接の接触を避ける)ための杖も持っていた。  なかでも、マスクはとりわけ異様だった。ペスト医師はゴーグルとマスクを着用していた、とド・ロルムは続けている。マスクの鼻は、「長さ15センチのクチバシのような形で、中に香料を入れていた。穴は鼻孔近くの左右に1箇所ずつの2つしかなかったが、呼吸をするのには十分だった。クチバシに仕込んだハーブの香りを、吸い込む空気にまとわせることができた」という。  ヨーロッパ中のペスト医師が同じ格好をしていたが、この見た目は特にイタリアで象徴的なものとなった。ペスト医師は仮面を使用するイタリアの演劇やカーニバルの定番になり、今日でも人気が高い。  しかし、この近寄りがたい服装は、ただの不気味なファッションなどではない。先に書いたように、医師を瘴気(災いを起こす気)から守ろうとする防護服だった。  病気の細菌説が広まる以前、ペストは毒された空気を介して伝染し、人の体液のバランスを乱すと信じられていた。甘い香りや刺激臭は、ペストに汚染されたエリアを浄化し、伝染を予防できると考えられていた。当時よく用いられたのは、花やお香、その他の香料だった。  ペスト医師は、毒蛇の肉の粉末、シナモン、没薬(植物の樹脂)、蜂蜜など、55種類を超えるハーブや他の材料を混ぜ合わせた解毒薬をマスクに詰めていた。ド・ロルムは、このマスクのクチバシの形状が、医師が吸う空気に解毒薬を十分に行き渡らせると考えていた。  実際には、ペストはペスト菌(Yersinia pestis)により引き起こされる。動物から人に感染し、ノミに噛まれたり、ペスト菌に汚染された体液や組織と接触したり、肺ペスト患者のくしゃみや咳によって放たれた飛沫を吸い込んだりして感染する。  今見れば奇妙なマスクも防護服も、当時はありがたがられていただろう。ペスト医師を一目で見分けるのにも役立ったかもしれない。だが結局のところ、ペスト医師の防護服や治療法は、ほとんど効果がなかった。 「残念ながら、近世のペスト医師の治療戦略は、延命や苦痛の緩和、治癒には、ほぼ効果がなかった」と歴史学者フランク・M・スノーデン氏は書いている。本当に効果のある科学的な予防法が確立されるのは、病気の細菌説と抗生物質が登場してからだ。

中欧の奇妙なうつぶせ埋葬、「蘇る死者」を恐怖か

ドイツ、ベルリンの教会墓地で発掘された中世の墓。男性がうつぶせに埋葬されている。うつぶせ埋葬は中世後半に増加した。(PHOTOGRAPH BY LANDESDENKMALAMT BERLIN, CLAUDIA MARIA MELISCH)

 恐ろしいペストのパンデミックは、人々の死生観や宗教観に影を落とし、迷信をはびこらせ、埋葬の習慣にまで影響を与えたという研究結果も発表されている。  2014年、スイスの人類学者アメリー・アルタラウゲ氏は、数世紀前の共同墓地で見つかった奇妙な墓を調査するよう指示された。340ある墓の中で、その1つだけが際立っていた。中年の男性がうつぶせに埋葬されていたのだ。  曲がった肘の内側には、硬貨がいっぱいに詰まった財布と鉄製のナイフがあった。服の下に隠していたのだろう。硬貨から推定された埋葬時期は1630~1650年。スイスのこの一帯でペストが流行していた時期だ。 「家族も葬儀屋も遺体を調べたくなかったように見えます」とアルタラウゲ氏は話す。「埋葬するとき、すでに遺体の腐食が進んでいたか、あるいは感染症にかかっていたため、誰も近づきたくなかったのではないでしょうか」  うつぶせの埋葬は極めてまれだが、東欧のスラブ語圏などには記録が存在する。遺体を切断したり、石の重りを付けたりといった風習と同じく、遺体が墓から逃げ出さないようにすることで、吸血鬼や死者のよみがえりを阻止できると信じられていた。  アルタラウゲ氏はこの発見をきっかけに、うつぶせで埋葬された遺体をスイス、ドイツ、オーストリアのドイツ語圏で探すことにした。その研究結果は2020年に学術誌「PLOS ONE」に発表されている。  中央ヨーロッパのドイツ語圏における900年分のうつぶせの埋葬の記録を100件近く分析したところ、データからは埋葬習慣の大きな変化が示唆された。アルタラウゲ氏らはこの変化を、ペストによる死や、よみがえった犠牲者が生きている人に取りつくという迷信と関連づけている。

東欧の「不死者(アンデッド)」の影響か

ドイツの傭兵が死神と話をしている16世紀の線画。ペストの流行にともない「不死者」の物語がドイツ語圏の埋葬習慣に反映された可能性がある。(ILLUSTRATION BY DEA PICTURE LIBRARY, DE AGOSTINI/GETTY)

 ヨーロッパでは14世紀前半あたりから、うつぶせの埋葬が増加し始める。この変化は壊滅的なペスト流行の時期と一致する。1347年から流行が始まったペストはヨーロッパ全域で猛威を振るい、数千万人もの命を奪った。  埋葬が追いつかないほどのペースで死者が増えると、遺体が腐敗する光景や音が日常になり、人々を不安にさせた。遺体は膨らんで変形し、腸に充満したガスが予期せぬタイミングで耳障りな音を放つ。朽ちて干からびた遺体は表現のしようがなく、肉体がしぼむと体毛や爪が伸びたように見える。  腐敗中の「遺体は動き、音を出します。自身の肉体や、遺体を覆う布を食べているように見えるかもしれません」とアルタラウゲ氏は話す。  中世のヨーロッパの人々は、こうした目の前の音と光景を説明しようと試み、東欧のスラブ語圏に広まっていた「不死者(アンデッド)」の概念に注目した可能性がある。「ドイツには、吸血鬼(の概念)はありません」とアルタラウゲ氏。「ですが、遺体が動き回るという考え方はあります」。これも、14世紀半ばに最初のペストの感染拡大が発生してから間もなく、東欧のスラブ語圏から西欧に伝わった概念だった。

複数の人が急に亡くなる出来事と、超自然的な力

 それ以前のドイツ語圏には、良い幽霊があの世から戻ってきて愛する人に警告したり、助けたりする物語があった。しかしペストが流行すると、幽霊は別の形を取るようになった。よみがえる死者、あるいは歩くしかばねだ。 「悪霊に関するこうした変化は1300~1400年頃に起きました」とドイツ、テュービンゲン大学の考古学者マティアス・トプラク氏は説明する。氏は今回の研究に参加していない。  アルタラウゲ氏らは中世の民間伝承に手掛かりを求め、「ナハツェーラー」の物語に着目した。ナハツェーラーは「遺体をむさぼる者」というような意味で、飢えた遺体が自身の体と体を覆う布を食べ、その過程で遺族の生命力を奪うとされている。 「歴史文献には、異常な死や不慮の死を遂げた者がナハツェーラーになると記されています」とアルタラウゲ氏は説明する。「ペストの流行中には、コミュニティーで最初に死んだ人がナハツェーラーになると考えられていました」  パンデミック下のヨーロッパでは、この言い伝えには説得力があった。死者の近親者が葬式を終えてから数日以内に発症し、病に倒れるという出来事が相次いでいたため、死者の呪いのように思えたに違いない。  当時はまた、「再び歩く者」を意味する「ヴィーダーゲンガー」も恐れられていた。墓から現れ、コミュニティーにつきまとう遺体のことだ。「悪事を働いた人や、予期せぬ死でやり残したことがある人、誰かに償ったり復讐したりする必要がある人は、ヴィーダーゲンガーになる可能性があると考えられていました」とアルタラウゲ氏は説明する。 「こうした迷信の背景にはどれも、1つの社会で複数の人が急に亡くなるという出来事があったに違いありません」とトプラク氏は話す。「人々が超自然的な存在に責任を負わせ、死者の復活を阻止しようと手を打ったと考えれば筋が通ります」  だがしかし、うつぶせ寝で埋葬した死者が再び歩き始めることはなかったし、パンデミックが止まりもしなかった。それでも迷信を信じ続けてしまうのが人間の本性なのだろう。インフォデミックに揺さぶられる現代でも、それはあまり変わっていないのかもしれない。 この記事はナショナル ジオグラフィック日本版とYahoo!ニュースによる連携企画記事です。世界のニュースを独自の視点でお伝えします。

文=ERIN BLAKEMORE 、ANDREW CURRY/訳=牧野建志、米井香織

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社会問題

辛坊治郎氏 高齢者のワクチン一斉接種に「正直相当恐ろしいことになる」

https://news.yahoo.co.jp/articles/091d837a6136c5ed8a49679c68067a37497e5a9e

2021/1/28(木) 20:41配信 東スポWEB

 フリーキャスターの辛坊治郎氏(64)が28日、パーソナリティーを務めるニッポン放送「ズーム そこまで言うか!」に出演し、新型コロナ高齢者向けワクチン接種に懸念点を挙げた。 【写真】ヨット遭難から救助され、謝罪する辛坊氏  国内で4月にも始まるワクチン接種に向け、厚生労働省と川崎市は27日に、集団接種を想定した初の訓練を実施した。成果や課題などは全国の自治体で共有することになっているが、辛坊氏は「正直相当恐ろしいことになるだろうなと思ってます」と独自の視点を持つ。  政府は約3600万人いる65歳以上の高齢者に対して、3か月以内に接種を終える目標を掲げる。辛坊氏はそもそも1年で137万人が〝自然死〟しており「その大半が高齢者」と指摘。  そのため「3千数百万人に一斉にワクチンを打ったときに、直後に体調を崩された方はワクチンで崩されたのか、高齢によるもともとの病気で崩されたのか、見極めがものすごく難しい」と語った。  辛坊氏は「私は基本的にワクチン否定論者じゃありません。ご高齢でリスクのある方は打つべきだと思います」と前置きし「ただ打った後、副作用じゃなくてどんどん人が亡くなっていくという現実に、日本のマスコミが妙な騒ぎ方したとき、社会全体が耐えられるのか」と訴えた。  その上で「果たして社会全体がこのワクチンに対して冷静な受け止め方ができるだろうか。4月以降、そういう意味でこの国で恐ろしいことが起きるんじゃないかとすごい危惧してるんです」と話した。

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対策 社会問題

効果は? 安全性は? 新型コロナワクチンについて知っておきたいこと Q&Aで医師が解説

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210120-00217893/

2021/1/20(水) 18:00 忽那賢志 | 感染症専門医

新型コロナの世界的な流行の打開策として期待されているワクチン接種が海外では開始されました。

新型コロナワクチンについて、これまでに分かっていること、海外の接種開始後の状況などについてまとめました。

新型コロナのワクチンってどんなワクチン?

mRNAワクチンが効果を発揮する機序(DOI: 10.1056/NEJMoa2034577)
mRNAワクチンが効果を発揮する機序(DOI: 10.1056/NEJMoa2034577)

海外ではファイザー/ビオンテック社が開発したワクチン(BNT162b2)とモデルナ社のワクチン(mRNA-1273)が承認され接種が開始された国が増えてきています。いずれもm(メッセンジャー)RNAワクチンという新しい技術を用いたワクチンです。

これらのワクチンでは、mRNAというタンパク質を生成するために使用する情報細胞を運ぶ設計図が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白、つまりウイルス表面のトゲトゲした突起の部分を作る指示を伝える役割を果たしています。

ワクチンが接種されると、mRNAは注射部位近くのマクロファージに取り込まれ、スパイク蛋白を作るように指示します。

その後、スパイク蛋白はマクロファージの表面に現れると、このスパイク蛋白に対する抗体が作られたりT細胞を介した免疫が誘導されることで、新型コロナウイルスに対する免疫を持つことができます。

生きたウイルスはワクチンの中には入っておらず、また遺伝情報を体内に接種すると言っても、それによって人間の遺伝子の情報に変化が加わることもありません。

新型コロナワクチンの効果は?

ファイザー/ビオンテック社、モデルナ社のmRNAワクチンの比較(DOI: 10.1056/NEJMoa2035389、N Engl J Med 2020; 383:2603-2615を参考に筆者作成)
ファイザー/ビオンテック社、モデルナ社のmRNAワクチンの比較(DOI: 10.1056/NEJMoa2035389、N Engl J Med 2020; 383:2603-2615を参考に筆者作成)

どちらのワクチンも「ぱねえ効果」を示しています。

2つのmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験という信頼に足る臨床研究によって、どちらもプラセボ群と比較して90%以上という非常に高い効果が示されています。プラセボというのは偽薬のことで、2つの臨床研究では生理食塩水が注射されています。

ちなみにワクチンの予防効果90%とは、「90%の人には有効で、10%の人には効かない」 または「接種した人の 90%は罹らないが、10%の人は罹る」という意味ではありません。

「ワクチンを接種しなかった人の発症率よりも接種した人の発 率のほうが90%少なかった」という意味であり、言い換えると「発症リスクが、10分の1になる」とも言えます。

では「ワクチンで90%以上の予防効果」というのは、他のワクチンと比べてどうなのでしょうか。

例えば、最も効果が高いワクチンの一つとしては麻疹ワクチンが挙げられ、予防効果は95%と言われています。

一方、インフルエンザのワクチンは、シーズンによっても異なりますが、一般的には50%程度の予防効果です。

新型コロナウイルス感染症はウイルス性呼吸器感染症であることから、一部では新型コロナワクチンもインフルエンザワクチンの予防効果に近いのではないかという予想もされており、ワクチンの承認をする機関である米国食品医薬品局(FDA)は予防効果50%以上を承認の基準にしていましたが、これを大きく上回る予防効果が示されたことになります。

すでに人口の2割がワクチンを1回接種したというイスラエルでは、接種から7日以内に感染が確認されたのが4484人、8日から14日以内が3186人だったのに対し、15日から22日経過した人では、感染者数は353人だったとのことですので、1回の接種でもある程度の効果は見込めるようです。

ワクチンの効果には、感染を防ぐ効果とは別に「重症化を防ぐ効果」も期待されます。

感染を防ぐことはできなくても、ワクチンを接種することで重症化を防げるようになれば、それだけで非常に大きな価値があります。

例えば、インフルエンザワクチンは、接種してもインフルエンザに罹ることはありますが、重症化を防ぐ効果があるとされています。

今回の2つのワクチンでは、

・ファイザー/ビオンテック:重症化した10名のうち1例がワクチン接種群、9例がプラセボ群

・モデルナ:重症化した30名のうち0例がワクチン接種群、30例がプラセボ群

となっており、重症化を防ぐ効果もぱねえと言えます。

「ワクチンを最も必要とする人に、ワクチンが十分効果を発揮するのか」というのも重要なポイントです。

ワクチンを最も必要とする人とは、新型コロナに感染した際に重症化するリスクが高い、高齢者や基礎疾患を持つ方です。

今回のワクチンでは、新型コロナで重症化リスクが高いとされている、高齢者、基礎疾患のある人で効果があるかどうかは非常に重要なポイントですが、ファイザー/ビオンテック社のワクチンは「65歳以上のワクチン有効率94.7%」、モデルナ社のワクチンは「重症化リスク群のワクチン有効率90.9%、65歳以上のワクチン有効率86.4%」と発表されており、重症化リスクの高い人でもぱねえ効果が期待できそうです。

新型コロナワクチンの安全性は?

モデルナ社のmRNAワクチンの副反応 プラセボ群との比較(DOI: 10.1056/NEJMoa2035389)
モデルナ社のmRNAワクチンの副反応 プラセボ群との比較(DOI: 10.1056/NEJMoa2035389)

どちらのmRNAワクチンも基本的には安全性に大きな問題はないと考えられます。

しかし、どんなワクチンであっても100%安全なものはありません。

というかむしろ、軽微はものも含めるとほとんどの人になんらかの副反応は起こるでしょう。

最も頻度が高い副反応は注射した部位の痛みで、どちらのワクチンも6-9割くらいの人で痛みを訴え、特に接種後12~24時間は痛みが顕著なようです。さらに、臨床研究に参加した人の約1%が「重度の」痛みであったとのことで、インフルエンザワクチンなどと比べてもかなり痛いワクチンだと思われます。私が打たれたら泣いちゃうかもしれません。

またワクチンを接種した部位はしばらく赤く腫れ、しこりができることがあります。

だるさや頭痛も比較的一般的な副反応のようですが、高熱が出ることは多くはないようです。

これらの副反応は一般的に数日以内に消失し、解熱薬にも反応します。

一般的に、副反応は高齢者よりも若年者の方が多く、2回目の接種では1回目よりも多くの副反応が起こるようです。

また、こうした副反応は具合の悪い高齢者の方にはときに危険となることもあるようです。

ノルウェイでは、衰弱した80歳以上の高齢者がワクチン接種後に発熱、嘔吐、下痢などの症状を訴えた後に亡くなられる事例が増えていると言われています。

衰弱した高齢者では接種するかどうか慎重に判断した方が良いかもしれません。

アナフィラキシー反応が起こる頻度(筆者といらすとや作成)
アナフィラキシー反応が起こる頻度(筆者といらすとや作成)

最も懸念される副反応はアナフィラキシー反応などのアレルギー反応です。

臨床研究ではワクチン接種群がプラセボ群と比べて特にアレルギーが多いというわけではありませんでしたが、アメリカやイギリスで接種が始まってからアナフィラキシーの事例が報告されています。

アナフィラキシーの原因と考えられているのは、両方のワクチンに含まれているポリエチレングリコール(PEG)と呼ばれる物質です。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)はPEGやポリソルベートなどのPEG誘導体にアレルギーのある人はmRNAワクチンの接種を控えるよう推奨しています。

実際にアナフィラキシー反応がどれくらいの頻度で起こるのかについてですが、アメリカで190万人に1回目の接種をしたところ21人にアナフィラキシー反応が起こった、とのことです。つまりおよそ10万人に1人にアナフィラキシー反応が起こる計算になります。

インフルエンザワクチンなど一般的なワクチンのアナフィラキシー反応の頻度は「100万人に1人」程度とされていますので、それと比べると頻度は高いと言えるでしょう。

しかし、例えばペニシリンという抗生物質では5000人に1人くらいの頻度で重度のアレルギー反応が起こるのと比べると、決して頻度が高いわけではありません。

ペニシリンのアレルギー反応はよく知られていることからニュースにはなりませんが、新型コロナワクチンは世界中で注目されているため、どうしても目立ってしまいますが、冷静にリスクを評価する必要があります。

なお、この21人のアナフィラキシー反応を起こした方のうち17人はサルファ剤や卵などなんらかのアレルギーがあり、うち7人が過去にアナフィラキシーを起こしたことがあったそうです。

71%の人が接種15分以内、86%の人が接種30分以内にアナフィラキシー反応が出現しており、ワクチン接種後30分程度は慎重に様子を見るようにしましょう。

なお、この21人のアナフィラキシー反応を起こした方々は皆さん退院されており、迅速に、適切に対応すれば命に関わることはありません。

アレルギーをお持ちの方は、接種するかどうか医師と相談して決めるようにしましょう。

現時点でワクチンの副反応の全てが分かっているわけではなく、特に長期間経過してから明らかになる副反応については今後明らかになる可能性もあります。

しかし、その他の予防接種では、重篤な副反応は通常投与後数日から数週間で起こるものであり、長期間経過してから現れる副反応は稀です。

新型コロナワクチンの効果の持続期間は?

新型コロナワクチンの臨床研究は2020年の夏以降に実施されているものですので、どれくらい効果が持続するのかについては情報がありません。

モデルナ社のワクチンの第1相試験のデータからは、中和抗体が4ヶ月間持続していますが、実際の予防効果については分かりません。

今後、追加接種が必要なのか、いつ打つべきかについても分かっていません。

これらについては、今後明らかになってくるでしょう。

新型コロナワクチンを接種すれば周りの人にうつさなくなる?

これまでに報告されているワクチン臨床試験の結果では、新型コロナの発症を防ぐ効果は示されていますが、無症候性感染(症状がないけど感染している状態)に関する情報については不足しています。

つまり、ワクチンを接種して防げるのは感染そのものではなく、症状が出ることを防げるだけで感染はしてしまうのではないかという懸念は残っています。

新型コロナウイルスに感染した人の最大40%程度は無症候性感染者とされており、この無症候性感染者からも周囲の人に感染が広がることがあります。

そういう意味では、ワクチンが無症候性感染をも防ぐことがはっきると分かるまではマスクの着用、3密の回避、こまめな手洗いは継続する必要があります。

子どもはワクチンを接種できるの?

現時点では小児に対するワクチン接種は推奨されません。

ファイザー/ビオンテック社のワクチンは16歳以上、モデルナ社のワクチンは18歳以上の患者を対象に臨床研究が行われており、国内での承認もまずはこの年齢層が対象になると考えられます。

日本国内でのワクチンの優先接種対象者は?

現時点での新型コロナワクチン優先接種対象者(筆者といらすとや作成)
現時点での新型コロナワクチン優先接種対象者(筆者といらすとや作成)

厚生労働省ではワクチンの優先接種対象者を協議しており、医療従事者、高齢者、基礎疾患を有する方を優先することを決定しており、また高齢者等が入所・居住する社会福祉施設などの職員も高齢者に次ぐ接種順位とすることが協議されています。

ワクチン接種が優先される基礎疾患とは、

・慢性呼吸器疾患

・慢性心疾患

・慢性腎疾患

・慢性肝疾患

・神経疾患・神経筋疾患

・血液疾患

・糖尿病

・疾患や治療に伴う免疫抑制状態(悪性腫瘍、関節リウマチ・膠原病、肥満を含む内分泌疾患、消化器疾患、HIV感染症など)

などが検討されています。

日本国内での今後のワクチン接種の予定は?

ファイザー社のmRNAワクチンは2020年12月18日に承認申請が出されました。

2月中旬には承認される見通しとのことであり、優先接種対象者については早ければ2月下旬からワクチン接種が開始されます。

モデルナ社のmRNAワクチンについては1月下旬から国内治験を開始するとのことであり、承認申請はもう少し先になりそうです。

結局、新型コロナワクチンは打った方がいいの?

国は「推奨」は出しますが「義務」ではなく、必ず接種をしなければならないわけではありません。

ワクチン接種をするかどうかは個人個人の判断に委ねられることになります。

ご自身の年齢、基礎疾患から接種によるメリットとデメリットを天秤にかけ、メリットが上回ると判断したときに接種するようにしましょう。

ちなみに私は、医療従事者ですし、重症化リスクの高い「男性・高血圧・肥満」の三冠王ですので、たとえ泣くほど痛くても打ちますよ。

【参考】

New England Journal of Medicine. Covid-19 Vaccine — Frequently Asked Questions

一般社団法人日本感染症学会 ワクチン委員会 COVID-19 ワクチンに関する提言(第1版)

CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States.

【この記事はYahoo!ニュースとの共同連携企画記事です。】

忽那賢志感染症専門医

感染症専門医。2004年に山口大学医学部を卒業し、2012年より国立国際医療研究センター 国際感染症センターに勤務。感染症全般を専門とするが、特に新興再興感染症、輸入感染症の診療に従事し、水際対策の最前線で診療にあたっている ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:skutsuna@hosp.ncgm.go.jp、研究プロフィール:https://researchmap.jp/kutsunasatoshi

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この冬のインフルエンザ ここまで極端にかかる人が少ないワケとは?〈dot.〉

https://news.yahoo.co.jp/articles/1082ec5315018536366ff14e13719c7fa3df6048?page=1

2021/1/13(水) 7:00 AERA dot.

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「この冬のインフルエンザ」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。 【グラフ】昨年47200件で今年は63件! こんなに違うインフルエンザ報告数

*  *  *  明けましておめでとうございます。2021年も、皆様に読んでいただけるよう、外来診療で感じたことや、タイムリーな記事をお役にたつ情報を盛り込みながら、コラムを書いて参りたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。  今年の年末年始は帰省せずに新年を迎えた、という方も多いのではないでしょうか。私も、昨年は一度も大阪の実家に帰ることができなかったので、せめて年末年始は日帰りでもいいから帰省したいなと思っていました。しかし、クリスマスを終えたあたりからでしょうか。外来診療を行っていると、38度を超える発熱を訴える患者さんが日に日に増えてきました。そして、新型コロナウイルスPCR検査で陽性を認める患者さんが多くなってきたのを目の当たりにし、帰省はやめたほうがいいと考えるにいたりました。  冬のクリニックといえばインフルエンザです。一昨年までは、年末年始やお正月などお構いなしに全国的に猛威をふるっていました。例年であれば、12~3月に流行のピークを迎えます。しかしながら、インフルエンザの流行が拡がり始めた2019年12月、中国武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が短期間で急速に世界中に拡がっていくのとは反対に、日本を含む北半球におけるインフルエンザの流行はみるみる減少。外来診療の現場では、インフルエンザの検査をしても陽性にならない、そもそも例年のように高熱や咳症状がひどくなって受診するという患者さんが受診することが少なかったのでした。  一方、南半球では、北半球とは季節がほぼ真逆です。そのため、例年であれば、4~9月にかけてインフルエンザの流行のピークを迎え、その後減少していき、感染は収束します。しかしながら、2020年のシーズンでは、例年のように流行の兆しは見られたものの、その後の流行は見られませんでした。

 どうしてなのでしょうか。流行の兆しが見られた時期は、ちょうど世界中で新型コロナウイルス感染症に対する対策が取られ始めた頃でした。南半球の温帯地方に属するオーストラリアや南アフリカ、アルゼンチンやチリでも、国全体ないしは大都市でロックダウンが実施されました。ロックダウンでは、学校も休校となったため、インフルエンザに罹る割合が多い子どもが通う学校の閉鎖はインフルエンザの流行拡大の機会を奪うことに繋がり、結果としてインフルエンザの流行の減少の要因の1つになったのではないかと、国立感染症研究所は報告しています。  昨年の秋頃には、アメリカ疾病予防センター(CDC)は、「今シーズンの冬はインフルエンザウイルスと新型コロナウイルスのどちらもが流行する可能性が高いと考えている。」と警告していましたが、今シーズンの北半球におけるインフルエンザの報告数は例年よりも極端に少ないのが現状です。  私自身、今シーズンはインフルエンザ陽性の患者さんにはお会いしていません。勤務するクリニックでも昨年の11月ごろに、1例陽性を認めただけです。(ちなみに、その1例は、インフルエンザ迅速検査も新型コロナウイルス抗原検査のどちらも陽性でした。中国武漢の同済病院から、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時感染が報告されていますが、まさに同時感染をしていた症例でした。)  マスクの着用、手洗い、アルコール消毒、密を避ける、ソーシャルディスタンスなど様々な感染予防対策は、インフルエンザウイルス感染予防にも功を奏したとは思うのですが、要因の大きな1つとして、世界をまたにかけた人々の往来がストップしたことが挙げられると私は考えています。  アメリカ国立衛生研究所のBloom-Feshbach氏らは、世界137か所の検査室で確認されたインフルエンザの季節的・地理的変動を確認したところ、温暖な地域では冬季に一貫してピークに達しましたが、東南アジアの熱帯地域では半年ごとに頻繁に発生していること、さらにいくつかの温帯地域では、冬と夏にインフルエンザのピークがあったことがわかったと2013年に報告しています。一昨年のシーズンは、日本でも、東南アジアと同様に亜熱帯に属している沖縄では、夏にインフルエンザが流行しました。

 オーストラリアなど南半球の温帯地域では、インフルエンザは4~9月にかけて流行がピークを迎えることなども考慮すると、今までは、日本ではインフルエンザの流行期でなかったとしても、流行期にあった渡航先で感染、または流行している地域からやってきた人に渡航先で感染し、ウイルスと共に日本に帰ってくる、など様々な感染経路から日本に持ち込まれていた可能性があります。しかし、日本を含め、世界中の各国で入国が禁止または制限されたことにより、人々の往来は激減。様々な感染経路が遮断された結果、2020年から2021年にかけての今シーズンは、そもそもインフルエンザウイルスの国内への流入が減少している可能性がありそうです。  それに加え、マスクの着用、手洗い、アルコール消毒、密を避ける、ソーシャルディスタンといった感染予防対策、さらにはインフルエンザの予防接種が例年以上に行われた中では、たとえウイルスが国内へ流入してきたとしても、流行まで引き起こすことはできないのでしょうか。  一方の新型コロナウイルス感染症ですが、日本では昨年12月から感染者は急増し、1月7日には東京・神奈川・千葉・埼玉で緊急事態宣言が発令されました。イギリスでも、1月8日には一日の新型コロナウイルス感染症の新規感染者が約6万8000人、死者は一日1300人となり、サディク・カーン ロンドン市長はこの日「ウイルスの拡散を制御できず、医療崩壊が起きている」として、事実上の「統制不能」を宣言しています。  未だ、世界的な流行の治まる兆しが見られない新型コロナウイルス感染症ですが、One World in Dateによると、1月11日時点での累計新型コロナウイルスワクチン接種量は、米国669万回、英国132万回、イタリア64万回、ドイツ53万回、フランス8万回と、昨年12月から世界では新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されています。  日本はどうかと言うと、国内の臨床試験や審査の手続きを経る必要があるため、接種開始は早くても3月ごろになる見通しだと言います。世界からかなりの遅れをとって接種がスタートすることは間違いありません。スタートするまでに歯止めが効かないほど感染が拡大しないことを願うばかりです。 山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員