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”寅さんの故郷“柴又の料亭「川甚」230年の歴史に幕

https://news.yahoo.co.jp/articles/63bd551ebc9a96ad76af12955ca4e252ec5ffdee

2021/1/31(日) 15:13配信 スポーツ報知

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は”寅さんの故郷“東京・葛飾区柴又にも及んでいた。江戸時代後期の創業以来約230年にわたり柴又で愛され、映画「男はつらいよ」シリーズの第1作目で主人公・車寅次郎の妹・さくらの結婚式披露宴の舞台ともなった料亭「川甚」は31日をもって閉店することとなった。 【写真】閉店を知らせる張り紙  最終日を迎えた31日、川甚には午前11時の開店を前に写真を撮りにくる人の姿が多く見られた。この日は別れを惜しむため予約したお客さんで満席の状態となった。  夫婦で来店した大田区に住む30代の男性は、「小さい頃はこの近くに住んでいて、川甚には家族で何回か来ていました。近くの河川敷で野球をよくやっていて、ここに川甚があるのが当たり前だと思っていた。まさかなくなるとはと、まだ不思議な気持ちです」と率直な思いを話した。  新型コロナウイルスの影響は柴又全体に広がっている。映画「男はつらいよ」で実際に使用したセットを見ることができる「葛飾柴又 寅さん記念館」の担当者によれば、昨年の来場者数は例年の2割程度にしか達しなかったという。普段であればバスツアーに組み込まれることが多い場所だけに、団体客の消滅が痛手となった。  入場口前には同映画で監督を務めた山田洋次氏の色紙が展示。「今頃寅さんは旅先で帰るに帰れずオロオロしながら故郷柴又の皆さんの無事を祈っています。もう少しの辛抱です。頑張れ、葛飾」と応援メッセージが記されている。担当者は「新しい生活様式と言われ、変化を求められる時代に、ここは昔のままの姿でずっとある。変わらないよさというものもあると思う。それを感じられる場所です」と人情に触れられる寅さんの実家をアピールした。  また、同映画で寅さんの実家であるだんご屋のモデルにもなった「高木屋老舗」の店主・石川宏太さん(68)は「名物の草だんごは例年の半分くらいしか売れていない」と話す。柴又帝釈天門前参道商店街の会長も務める石川さんによると、「商店街の人通りも例年の半分以下」だという。「昔からの店が多いので家賃を払わずに済んでいることは救いだが、商店街みんなで助け合いながら感染防止対策を徹底し、なんとか歯を食いしばって頑張っている現状だ」と商店街全体で奮闘中だ。  長きにわたりともに柴又で歴史を刻んできた川甚については「すごい残念ですよね。ご当人してみればとんでもない覚悟の上での決断だったと思いますので、選択に関しては尊重したいと思っております。ただもしまた機会があれば、どんな形でもいいから再開してほしいなあと個人的にはおもっております」とその閉店を惜しんだ。  それでも、「柴又はいつも寅さんはやく帰ってこないかなあと待っているところです。寅さんが帰ってきても『変わってないね、よかったね』と言ってもらえるように、なんとか踏ん張って下町の情緒を守るのが使命だと思っております」と柴又は、寅さんの帰る場所をこれからも守り続ける。