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「開業医に治療を拒否できないように」 日本一コロナ患者を診た「町医者」が語る日本医師会の問題

https://news.yahoo.co.jp/articles/7ed58cd377da861da7a766585e93554e2b4f231e

2021/6/17(木) 5:56配信 デイリー新潮

 コロナ対応で孤軍奮闘する町医者は、コロナは人災だと断じる。専門家の代表は開会まで40日を切った五輪について、「普通はない」と発言する。たしかに、いまはのっぴきならぬ状況も、ワクチン接種がこのペースで進めば、開会式当日には景色は大きく違っていそうで――。 【写真15枚】“噂の女性”と中川会長の密会デート現場写真  ***

〈新型コロナの日本の感染状況を「さざ波」と表現した内閣官房参与(当時)は、「医療従事者の前で言えるのか」などと猛批判されたが、おそらく日本で一番多くコロナ患者を診てきた、兵庫県尼崎市の長尾クリニックの長尾和宏院長も、実は同様の表現を用いる。〉  コロナは人災です。日本は諸外国とくらべて感染者数も死者数も少なく、あえて言いますが、日本のコロナは「さざ波」でした。だから死亡者を限りなくゼロに近く抑えられたのに、政府と日本医師会は、その有利な条件を活かすどころか、悪い方向に持って行ってしまいました。 〈長尾院長がそう語ることができるのは、昨春から「町医者」として発熱外来に対応し、コロナ患者を治療し、ワクチンを接種しながら、コロナによる死亡者をゼロに留め、約100人のスタッフから感染者を一人も出していないからである。〉

 私のコロナ対策の基本はがん対策と同様で、早期診断と早期治療。町医者に使える酸素、ステロイド、イベルメクチンなどで対応し、重症化しそうな人を感染症指定病院で受け入れてもらうために、保健所に入院の必要性を訴えてきました。 〈日本では日本医師会の会員たる「町医者」の大半がコロナ患者を診ない。それなのに医療機関の8割超が町医者を中心とした民間病院だから、感染者数が少なくても、医療はすぐに逼迫する。だが、町医者の多くが長尾院長のようなら、コロナは本当に「さざ波」ですんだのではないか。長尾院長は「日本医師会には開業医に、コロナ治療を拒否しないように言ってほしい」と訴えるが、事実、長尾クリニックの1年余りの取り組みを振り返れば、日本のコロナが「人災」である理由も浮かび上がるはずである。〉  うちで患者さんが初めて陽性と判定されたのは、昨年4月3日。その日のうちに外にテントを張って「発熱外来」を開設し、それから430日近く、ほとんど毎日、コロナ患者さんを診てきました。

 第1波から、ほとんどの人が入院できず自宅療養となったので、診断した患者さん全員に私の携帯電話番号を教え、24時間体制でフォローアップしました。尼崎が感染多発地帯になった第2波でも、同様の取り組みを続けました。当初から「コロナは自宅療養が基本になる」という考えがあったからです。8割が軽症なので、喫煙や肥満など重症化因子をもつ2割の人を重点的に診て、血中酸素飽和度が下がりそうなら速やかに保健所を通じ、感染症指定病院につなげる。もっとも、新型コロナは指定感染症なので、現実は簡単ではありません。重症化の兆しが見えても病院に直接連絡できず、保健所を通さないといけないからです。  一番大変だったのは年末年始の第3波で、ほとんどの開業医や一般病院が発熱患者を診ないなか、保健所が「年中無休の長尾クリニックに行け」と指示し、患者さんが集まってきました。ピーク時は1日40人が発熱外来を訪れ、陽性率も40%以上に。その多くが入院できず自宅療養となったので、24時間体制でフォローしました。対面診療を希望する患者さんには、ドライブスルー診療を実施。一時は裏の駐車場がコロナ病棟のようになりました。また患者宅に往診し、在宅酸素を導入し、薬を配りました。

保健所の介入で重症化

 このGWの第4波でも大量の自宅療養者が発生。往診して酸素飽和度を測っては、保健所に入院が必要だと伝えました。しかし、すぐには入院できないから、酸素飽和度が93%を切っていれば在宅酸素を手配し、ステロイド薬「デカドロン」を処方し、その場でイベルメクチンを飲んでもらう。GW中もそうやって、患者さんの家を駆けずり回りました。  発熱外来やドライブスルー診療は僕以外の医師も担当しますが、自宅療養者のフォローは感染リスクが高く24時間体制なので、私一人で対応し、気づけば日本一コロナを診た医師かも知れず、おかげで多くのノウハウが蓄積されました。コロナ対応は、発熱外来での抗原検査やPCR検査を用いた診断に始まり、採血やCTによる重症度の評価、治療、自宅療養者の管理と続きます。9割以上の開業医が、最初の発熱対応すら拒否するなか、僕は1年3カ月、フルコースでやってきました。  こうして話すとコロナだけ診ているように思われがちですが、私たちは多様な生活習慣病やがん、認知症などの患者さんを毎日150人ほど、通常外来で診ています。また、約600人の在宅患者さんに24時間対応し、年間約160人のお看取りがあります。 〈膨大な業務は、感染の恐怖と戦いながら現場で働く看護師に支えられている。また、長尾院長はコロナの後遺症外来も開設したが、受診中の60代の女性が言う。 「5月に感染しましたが症状がなく、下旬から仕事を再開。ところが倦怠感で起き上がれなくなり、近所の発熱外来を訪れても後遺症は診られないと断られ、保健所も、10日間の隔離は終わっているのでなにもできないと言う。藁にもすがる思いで長尾先生に頼みました」  長尾院長は、狭いホテルに閉じ込められたストレスで、線維筋痛症になりかけたと診る。運動もできないままテレビから不安を煽る情報を一方的に受け、交感神経が常に優位になるなどした結果、免疫機能が崩れたのだという。しかし、それが無視される現実――。〉

 みな日本のコロナ医療に怒っています。発熱は診てもらえず、入院できず、後遺症も診てくれない。本来なら日本医師会が町医者に、困っている患者さんを診るように指示すべきではないでしょうか。 〈そう訴える根拠を、さらに掘り下げてもらう。〉  重症化を防ぐために重要なのは、すでに述べたように早期の診断と治療。ところがそれを開業医が拒否したため、放置された患者さんが難民化しました。診断でも、多くの患者さんが自宅療養を余儀なくされ、その数は大阪府で1万人以上、兵庫県でも3千人以上におよびました。  それなら大半が軽症か無症状というこの病気の特性から、自宅療養を基本としたほうが合理的です。その場合、各患者に主治医をつけ、毎日テレビ電話で診断する。重症化の兆しが見えたらすぐ入院できるようにする。現状のように不透明な入院配分ではなく、医師同士がホットラインで直接情報交換したうえで、トリアージを行うべきです。

 現状、感染者はみな保健所が管理しているため、入院できたころには治っているというバカげたことが起きる。隔離することが仕事である保健所が、医療機関のように振る舞うので、早期対応できれば軽症ですんだ人が重症化してからの入院になり、人工呼吸器やECMOが必要になる。医療逼迫、医療崩壊が起こるのも同じ理由であって、保健所から医療機能を分離させる必要があります。  障壁となる保健所の介入をなくすためにも、政府は現在の指定感染症2類相当を、インフルエンザと同じ5類にしてほしい。こうした問題は第1波のときから明らかなのに、だれも声を上げないのは本当におかしいと思います。 〈さる患者は自宅療養中、保健所から、薬なしで平熱に戻ったのかを確認したいからと、長尾院長処方の薬の服用をやめるように求められ、従ったところ体調が悪化したという。「保健所が医療行為に口をはさむ現実がある」(長尾院長)のである。〉

町医者がコロナの防波堤に

 未知の感染症のため、最初は多くの医療機関が発熱患者の診療を拒みましたが、1年たってもそれが続いています。火を怖がって火事の現場に行かない消防士と同じでありえない。それでも日医は国民に「家にいてください」と命令するだけ。かかりつけ医に対する、発熱患者をどう診て自宅療養者をどうフォローすべきかというメッセージは、これまでゼロです。

 尼崎ほか全国に、市町村医師会と保健所の連携モデルがあるのに、「自宅療養者と発熱患者を診よう」と会員に呼びかけないのは日医の怠慢。中川俊男会長の責任は重大で、患者を助けようというメッセージを発しないのは、自分が医師であることを放棄しているに等しいと思います。  たくさんの医療機関があり、大勢の医師がいるのに、今日もうちの発熱外来に県をまたいで多くの発熱難民が押し寄せる。日医はこの現実を直視すべきです。 〈ところで、長尾クリニックはワクチン接種も行っている。だが、長尾院長は「集団接種をメインにして、日本医師会の中川会長が進める個別接種は、集団接種会場に行けない人などに留めるべきだ」と強く訴える。〉

 うちは3千人、延べ6千回分の予約をとり、5月下旬から打ち始めましたが、すでに2人にアナフィラキシー反応が出ています。通常診療と両立できる1日200人を目標に打っていますが、9時から打つ分を8時から1時間かけて、看護師4人でダブルチェックしながら希釈、吸引等の準備をします。ファイザー社製ワクチンは6時間しかもたないので、この作業を1日4回行います。  こうしてワクチン接種には、調整、受付、問診、接種、誘導、状態観察などに常時20人近く必要で、それを通常診療と両立させなければいけません。打つだけでいいインフルエンザのワクチンとは、ハードルの高さが段違いで、診療所には難しすぎます。中川会長は個別接種ばかり勧めますが、あちこちでミスが起きている。発熱対応をしなかった後ろめたさをワクチン接種で挽回したいなら、より安全で効率的な集団接種への協力を呼びかけるべきなのに、間違いに間違いを重ねています。 〈一方、早期の診断と治療は町医者の役割だというのが、長尾院長の主張である。〉  先述したように、この1年、私はコロナでの死亡を一人も経験しておらず、かかりつけ医がきちんと対応すれば死亡者を限りなくゼロにできる、という思いがあります。コロナで亡くなる方が全国にいるのは、初期対応に課題があるからではないか。最初に対応するかかりつけ医の機能を強化すれば、死亡者をゼロに近づけられるのです。

 感染症指定病院は最後の砦で、そこにできるだけ行かずにすむように防波堤になるのが町医者の役割です。ところが、第4波まで4回も同じことが繰り返されながら、その役割を少しも果たせていません。病床数が足りないと言われていますが、かかりつけ医が早期の診断と治療をしっかり行えば、いまの病床数で十分に足りるはず。町医者が防波堤にならないから、手遅れになった患者が津波のように搬送されてくる。そういう意味でコロナは町医者の問題なのに、町医者の代表たる日医のトップが、間違ったメッセージを出し続けているように思えます。 〈長尾院長は中川会長に、ある医学誌上での対談を2回持ちかけたが、2回とも「緊急事態宣言下だから」という理由で断られたという。長尾院長が言うように「Zoomでも可能なのにおかしな話」だが、中川会長にとってコロナは、政治資金パーティや寿司デートの大切さにくらべれば、取るに足らないのだろう。〉

長尾和宏(ながおかずひろ) 医師。医学博士。医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニック院長。公益財団法人日本尊厳死協会副理事長。兵庫県尼崎市にて医師20人、看護師25人をはじめとする計100人体制の医療を年中無休で提供している。単著に『コロナ禍の9割は情報災害』(山と渓谷社)など。 「週刊新潮」2021年6月17日号 掲載

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大学・職域、接種券なくてもOK 作業負荷の心配も

大学・職域、接種券なくてもOK 作業負荷の心配も (msn.com)

2021/06/17 朝日新聞社

 政府や都道府県が運営する大規模接種に市区町村が担う集団接種や個別接種、職場や大学での接種……。新型コロナウイルスワクチンの接種方法が多様化してきた。ただ、接種券の配布状況は自治体によってまちまち。その中で接種券の有無にかかわらず、接種を受けられる仕組みも本格化する。

 16日、神奈川県藤沢市の湘南工科大学。21日から始まる接種を前に、会場となる学内のコミュニティーホールで手順を確認する「リハーサル」をした。医師の糸山祐理事長や看護師、受付や誘導などを担当する職員らが参加。学生役の職員が約2メートルの間隔をあけて一列で座り、打ち手が接種する手順を確認していた。

 2年生の信沢椋平さん(19)は、「こんなに早く打てるなんてびっくりした。接種が終われば、感染に対する心の負担が軽くなると思う。副反応への怖さはあるけれどメリットが上回るので打ちます」。1年生の金子さやさん(18)は「高校3年生の青春をコロナに奪われたから、打った後はあのときの友達と遊びに行きたい。大学の授業でグループワークが増えることも楽しみ」と話した。

 接種ペースを加速させるため、21日から本格的にスタートする大学や企業での接種。従来の自治体が担う接種と異なるのは、自治体が発行する接種券がなくても受けられる点だ。

 接種券は住民の接種履歴の管理に用いる。自治体は接種後に18桁の数字を国の接種記録システム(VRS)に入力している。接種を担う大学では、接種券が配布されていない学生の予診表を学内で保管。接種後に届く接種券を学生らに提出させ、後からVRSに入力するとしている。

 ただ、大学側からは作業の負荷を心配する声も。接種券は住民票の住所に届くので実家などから取り寄せる必要がある学生も一定数おり、提出漏れも起きかねない。届いた接種券のシールを予診票に一つひとつ貼る作業や、数字を読み取って入力する手間もある。

 湘南工科大の担当者は「事務作業が増えそう。ミスがないように、予診表の欄外に学籍番号を書かせてチェックしたい」と語る。

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重症から回復も続く症状…コロナ“後遺症”の実態

重症から回復も続く症状…コロナ“後遺症”の実態 (msn.com)

2021/06/16 23:58 テレ朝NEWS

新型コロナウイルスの後遺症について、16日、新たな発表がありました。日本呼吸器学会と厚生労働省による初めての後遺症調査の中間報告です。それによりますと、症状の重かった中等症以上の患者で、半分以上の人の肺に何らかの異常が残っていたことがわかりました。なぜ、後遺症が残るのか。10カ月にわたる調査に密着しました。

去年3月に救急搬送され、重症と診断された東京都内在住の60代男性は、退院後、後遺症調査に協力しました。

都内在住の60代男性:「コロナ肺炎ということで入院して、3カ月ぐらい意識が全くない。目が覚めたときに、私は天国にいると」

男性は、人工呼吸器とECMOを2カ月以上にわたり装着し、半年近くの入院生活を余儀なくされました。呼吸が安定し、ようやく去年9月に退院。退院後も経過観察を続けてきましたが、3カ月以上経っても、手足のしびれは取れず、酸素ボンベがなければ、日常生活もままなりません。

都内在住の60代男性:「まだ酸素ボンベを背負っているが、表に出るときは、酸素がないと難しい」

日本呼吸器学会と厚労省の調査は、この男性のように症状の重かった中等症以上で、退院から3カ月以上が経過した人を対象に行われました。その結果、353人のうち半数以上の患者の肺に何らかの異常が残っていることがわかりました。

男性を含む感染者の診察・経過観察を統括してきたのは昭和大学病院・相良博典病院長です。

昭和大学病院・相良博典病院長:「やはり肺が結構、壊れていたので、それはコロナウイルスによって起こってきた結果だと思う。今後、重要なのは、なぜ、そのような状況になってしまうのかを見つけないといけない」

さらに、今回の後遺症調査でわかったことがあります。それは、症状が多岐にわたり、しかも長期間続いているということです。全国の病院の入院患者522人のうち、3割以上に疲労感や倦怠感、さらに、睡眠障害、思考力・集中力の低下などの症状が、診断から半年経っても残っていることがわかりました。

なぜ、呼吸器と関係がなさそうな後遺症の症状も出るのか。注目したのは脳です。脳神経内科の二村明徳医師は、こう話します。

昭和大学病院脳神経内科・二村明徳医師:「新型コロナへの感染で、体の炎症とともに脳の中に炎症が起きる。脳の炎症が後遺症として、脳の機能低下をもたらすのではと考えられている」

二村医師の仮説によりますと、体内に侵入したウイルスは、鼻や喉・肺などで炎症を起こします。その炎症が神経や血液を通じて広がり、脳に到達することで、脳の周囲でも炎症を起こしたり、免疫を過剰に活性化させてしまうことがあるといいます。それが後遺症に関係している可能性があるというのです。

昭和大学病院脳神経内科・二村明徳医師:「認知機能・集中力の低下、体の疲れやすさなどがいわれている。脳が疲れやすくなっている状態といえる。コロナにかかる前にできていたことが、できなくなってしまう。記憶力や注意力が低下していることが、逆に社会に戻ったときに、不安やうつを発症させることは両方あると思う。その両方をしっかり調査していく必要がある」

今回の報告にはない重い“後遺症”に苦しむ人もいました。去年4月に感染した東海地方に住む40代男性は、退院から1カ月ほど経ったころ、体に異常が表れました。激しい倦怠感に襲われ、座って話すことさえできない状態になりました。

東海地方在住の40代男性:「急に体調が悪くなって、つらいときは1週間くらい起きることができなくて。重いというか動かない」

男性は地元の病院で、何度も検査を受けましたが、原因はわかりませんでした。後遺症かどうかも不明なまま、いまも日常生活は取り戻せていません。

東海地方在住の40代男性:「つらい症状が襲うと、これが一生続くと思ってしまう。この状態がずっと続くと思うなら死にたいと思って。それとすごく闘った」

いまだに謎が多い後遺症。治療法の確立が、全容解明のカギを握ると相良病院長はいいます。

昭和大学病院・相良博典病院長:「多くの方たちが、後遺症が出ていることを、我々は真摯に受け止めないといけない。例えば、こういう治療法したときに、こういう後遺症が出てきてしまった。それだったら、こういう治療法をした方がよかったのではということがわかってくる。実際に我々の治療法としては、何がいい治療法なのかを見つけていく。そういうところにつながるのではと思う」

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「必死の対応だった」 大阪府幹部が第4波を総括

「必死の対応だった」 大阪府幹部が第4波を総括 (msn.com)

2021/06/16 産経新聞

新型コロナウイルス感染の「第4波」で変異株の猛威に直面した大阪府にとって、3月以降は誤算の連続だった。感染対策を担う藤井睦子健康医療部長は産経新聞のインタビューで、重症者が1カ月以上、確保病床数を上回った危機的状況を念頭に「備えが十分ではなかった」と総括。連日の病床上積みは「必死の対応だった」とし、最大計3500床の病床確保に向けて「医療機関との合意が不可欠だ」と強調した。

3月1日、2度目の緊急事態宣言の解除に合わせ、府は大阪市外の飲食店に対する営業時間短縮要請を終了した。1日当たりの新規感染者は56人だったが、同31日には600人に急増。藤井部長は「要請解除と変異株への置き換わり、年度替わりにおける人流拡大が重なった」と分析する。

3月1日は運用中の重症病床の一部を一般医療に切り替えることを府が容認した日でもある。これに対し、「感染者の急増に対応できなかった」との批判が根強いが、藤井部長は運用病床を減らすかどうかは各病院が決めるとして、「府で定めた基準と病院からの要望を踏まえた通知であり、今でも誤っていないと思う」と明言する。

府は3月31日、蔓延(まんえん)防止等重点措置を政府に要請。措置適用の4月5日から、大阪市内の飲食店に午後8時までの時短を求めた。しかし新規感染者は同13日に千人を突破、その後約3週間にわたり連日千人を超えた。

「重点措置で感染者の急増は止まったが、減少にまで持ち込めなかった影響は大きい」。藤井部長がこう語るのは、医療体制に極限の負荷がかかったためだ。

重症者は4月13日に233人に上り、確保計画の最大病床数224床を超過。5月4日の449人をピークに、重症者が確保病床数を上回る状況は同21日まで続いた。計画外の病床上積みを病院側に要請した当時は「明日の10床、明後日の10床をどうするか考え、必死の対応をしていた」。

同時に「歯がゆさも感じていた」と明かす。医療体制が刻一刻と厳しさを増す一方、重点措置の効果を見極めるために、2週間以上は同措置を継続せざるを得なかったのだ。

結局、府は3度目の緊急事態宣言を要請し、政府は4月25日に発令。3月末の重点措置要請からすでに約1カ月が経過し、対応が後手に回ったのは否めない。藤井部長はこう指摘する。

「経験と想定を上回る事態が起き、医療体制の危機を招いた。第4波の反省と教訓は、400人超の重症者が出たときに受け入れ病床が不足していた、この一点に尽きる」

府は第5波に備え、最大で重症500床、軽症・中等症3千床を目標とする新たな病床確保計画を公表した。担当者が4月下旬から病院側と水面下で意見交換を重ねてまとめたものだ。「病床確保は各病院の事情を踏まえ、議論を積み上げて計画にする作業。トップダウンでやってもうまくいかない。医療機関との合意が欠かせない」と強調した。(吉国在)

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全国的にも珍しい岡山の「仕組み」…ワクチン1回目接種、高齢者50%超に1か月で急伸

全国的にも珍しい岡山の「仕組み」…ワクチン1回目接種、高齢者50%超に1か月で急伸 (msn.com)

2021/06/17 読売新聞

 新型コロナウイルスのワクチン接種で、岡山県の65歳以上の高齢者に対する1回目の接種率が50%を超えた。全国では他に佐賀、鳥取の2県が50%超だが、岡山県は5月以降に急伸しているのが特徴だ。市町村の枠組みを超えて接種できる全国的にも珍しい仕組みが奏功しているという。

 高齢者接種は全国一律で4月12日にスタート。岡山県では、まず施設入所者らに限定して接種を進めたため、5月16日時点の接種率は1・38%と、同時期の全国平均(3・66%)の半分程度で、佐賀県(6・38%)や鳥取県(7・68%)より大幅に低かった。しかし5月17日から一般の高齢者への接種が始まると、同月19日には全国平均を超え、今月15日時点では全国2位だ。

 急伸を支えるのが、県内であれば居住地にかかわらず、どの市町村でも接種が受けられる枠組み。医療機関数が異なる都市部と山間部の格差を埋める目的だったが、例えば倉敷市から岡山市に通勤している人は、地元で受けるか、勤務先近くで受けるかを選べるなど利便性も向上した。

 県はこの方式を実施するため、全27市町村に協定を締結してもらい、県内全住民の接種券番号のデータベースを構築、これを基に予約サイトを作成した。

 一般の高齢者への接種開始を5月17日としたのも「作戦」の一つ。4月当初のワクチン供給量が乏しい状況で、ある自治体の住民が別の自治体で接種を受けると、不公平感が生じる懸念があり、供給量が安定する5月まで開始を待ったという。

 JR岡山駅の近くのクリニックでは5月に行った接種のうち、約5%が岡山市外からの来院で、諸国真太郎院長(66)は「会社員ら若い世代が接種対象になれば、この方式が更に有効になるのでは」と話している。

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1回目ワクチン全員接種済み施設でクラスター マスク外す入居者も

https://news.yahoo.co.jp/articles/252c0f1753c91b9ed39d60cac354d373788ece43

2021/6/16(水) 18:55配信 毎日新聞

 入居者と職員の全員が1回目の新型コロナウイルスワクチンの接種を終えた静岡市の高齢者施設で起きたクラスター(感染者集団)を巡り、15日の記者会見で「接種後は免疫力が下がる」という趣旨で原因を推定した市は16日に改めて記者会見し、「誤った説明をして申し訳ない」と見解を撤回した。一部で見方を疑問視する声が上がっていた。 【図解でおさらい】ワクチン、なぜ必要?  市によると、高齢者施設は2日に入居者と職員の計33人が1回目のワクチンを接種したという。だが、6日に職員の1人が体調不良を訴えて自宅待機。9日に新型コロナの感染が判明した。接種から約2週間後の15日までの検査で、3人の入居者と2人の職員の感染を確認。クラスターと認定された。マスクを外して過ごす入居者もいたという。  市は16日の記者会見で「一部のリポートで、ワクチンの接種後に感染率が一旦、増加するとの報告があり、誤解した。感染率の高まりは接種後の安心感で対策が甘くなることが背景にあると推定される」と釈明。市保健所は記者会見前の毎日新聞の取材に対し、「ワクチンの接種から日が浅く、抗体ができる前に感染した可能性がある」と答えていた。  ワクチンの1回目の接種後は「これで安心できる」と油断しがち。だが、2回目の接種を終えるまで予防策を続ける重要性を示すデータもある。和歌山県が5月に公表した1回目の接種後と2回目の接種後の「感染しにくさ」に関する調査によると、1回目の接種だけで、ウイルスの働きを抑える中和抗体が目安値に達した割合は2割にとどまっていた。  和歌山県は2回目の接種を終えた474人の医療従事者を調査。1回目の接種の14日後までに中和抗体が目安値に達したのは抽出した20人のうち4人だった。一方、2回目の接種後は全員が目安値に達していた。静岡県感染症対策専門家会議の倉井華子座長は「ワクチンを接種すれば絶対に感染しないということはない。あくまで、リスクを減らすためと理解してほしい」と語った。【渡辺薫、金子昇太】

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たった4分でワクチン接種完了…トヨタが作った「豊田市モデル」のすごいやり方

https://news.yahoo.co.jp/articles/0a6f768f9b4e9b07482ddeee44470af64d3250e9

2021/6/16(水) 11:16 PRESIDENT ONLINE

ワクチン接種のスピードアップが日本全国で課題となっている。このうち愛知県豊田市は、トヨタ自動車などと協力して高速接種システムを作った。現地を取材したノンフィクション作家の野地秩嘉さんは「東京の大規模接種センターは30分かかったが、豊田市モデルは4分で終わる。やり方が根本的に違う」という――。 【図版】堤トレックのアリーナ・集団接種会場内のレイアウト ■続々と進むワクチン接種  日本の人口は約1億2500万人。6月14日までの新型コロナ感染者数は累計で77万6139人。亡くなった方の数1万4137人、退院者73万446人(NHK調べ)。国民のほとんどというか、圧倒的多数は感染していない。  新型コロナが世界を覆うようになってから1年以上、日本国民はステイホーム、マスク、手洗い、黙食などで冷静に対処し、効果を上げている。マスコミ報道を見ていると、みんながみんな路上飲みをしているように思えてしまうが、そんなことはない。日本国民は真面目だ。その真面目さが新型コロナに対しての最大の武器だ。  そこに効果の高いワクチンが加わった。感染と重症化を防ぐ有効性はファイザー製で95%、モデルナ製は94.1%である。マスクと手洗いを続けている人がワクチンを打てば安心感は増す。さらに日々平穏に暮らしていくことができる。  ワクチン接種は打った人だけがメリットを得るわけではない。なんといっても医療従事者の負担を減らすことができる。  接種が加速すればするほど、彼らは安心する。彼らのためにもワクチン接種はした方がいい。自分たちのためだけではない。 ■大手町の大規模接種会場に行ってみた  5月25日。大規模接種が始まって2日目。64歳のわたしは高齢者のひとりとして自衛隊が運営する東京・大手町の大規模接種会場へ向かっていた。  「64歳なのにワクチンを打つ?  けしからんな」などと叱られる筋合いはない。学齢では65歳だから、接種することができたのである。  予約した時間、午後4時よりも早く、東京メトロの竹橋駅に着いた。改札口を出ると、「自衛隊東京大規模接種センター」と書いた看板を持った案内係が立っていて、「あちらです」と促す。建物に着くまで、路上に立つ案内係が5人はいた。大規模接種には大勢の人が動員されている。  会場の入り口には列ができていた。定員は1万人だが、すべり出しのころは5000人だった。それでも列はできる。ただし、せいぜい数メートルで、入り口に入るまでに待つ時間は5分ほどだった。  周りを見わたすと、来場者は女性の方が多かった。女性は半袖もしくはノースリーブ。それに薄地の上着を羽織っていた。一方、男性は半袖ポロシャツにゴルフ用のパンツでコーディネートである。女性がグレースフルな装いで登場しているのに比べ、男性は画一的だった。

■入場から会場を出るまで40分  来場者は入り口で4色のクリアファイルを渡され、緑色の人は4階の接種会場へ、赤の人は3階へといったように割り振られる。階上へ行く場合、引率者がグループ分けした数人を引きつれて、エレベーターで上がっていく。高齢の人たちのなかには杖をついたり、車椅子の人もいたりするから階段は使わせないようにしているのだろう。  階上の接種会場に着いたら、受付を兼ねた予診票の確認がある。次に医師が予診をして、その後に看護師、医師がワクチン接種を担当する。接種が済んだら、15分もしくは30分の経過観察をして帰宅する。  わたしの場合、入場してから会場を出るまでにかかった時間は40分だった。うち15分は経過観察の時間。待ち時間があったのは予診票の確認、予診、接種の前、いずれも5分くらいのものだった。  だからといって「遅いじゃないか。自衛隊は何をやってるんだ」と机をたたいて怒ることはしなかった。5分くらいの待ち時間はスマホでゴルフのレッスン動画や町中華のチャーハン調理動画を眺めていればすぐに過ぎてしまう。  自衛隊の大規模接種会場はしっかりと運営されている。 ■免疫は少しずつ形成されていく  同会場で使っているワクチンはモデルナ製だ。各地で21日から始まる職域接種で使うものと同じである。  ファイザー製との大きな違いは1度目と2度目の接種間隔だ。モデルナは4週間、空ける。一方、ファイザーは3週間。いずれも十分な免疫が確認されるのは2回目を接種してから14日、経った後だ。  免疫の形成に関して、接種担当の看護師に尋ねてみた。  「免疫は2週間後に突然、できるのですか?  それとも毎日、少しずつ増えていくのですか? 」  答え。  「少しずつです」  それを聞いて、少し安心した。接種した翌日あるいは翌々日であっても、少しは免疫は形成されるのだから。  また、1回、接種しただけでも効果は高い。5月29日のロイター電にはこうある。  「米疾病対策センター(CDC)は米ファイザー・独ビオンテック製と米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンについて、1回目の接種から2週間後に感染リスクが80%低減したという調査結果を発表した。さらに、2回目の接種を受けてから2週間後の有効性が90%だったことも示された」

■2回目の予約をしようとしたら…  さて、では、何の問題もなかったのか。  ひとつだけ、あると言えばある。それはワクチン接種の間隔だ。前述のように、わたしは大規模接種が始まって2日目に受けた。接種後、証明書を受け取り、次回の予約なのだけれど、「予約が満杯なので、あなたは5週間後」……だった。  「おいおい、ちょっと待って。だって、接種間隔は4週間後と書いてあるのに」  口には出さなかったが、これは「聞いてないよ」である。5週間後に2回目を接種したとすると、免疫ができるのはさらにその2週間後だ。  ファイザー製ならば1度目の後、3週間後に2回目が打てるようになっている。しかし、自衛隊の大規模接種の東京会場に限って言えば2回目は5週間後から。  また、東京会場は6月10日現在、「予約がガラガラ」という報道がある。それはワクチン接種が2回必要だからだ。大規模に人を集めれば2回目の接種が始まるまでに、どうしても空いている時期が出てしまう。6月28日を過ぎれば今度は2回目を打つ人たちがやってくるから、ずっとガラガラになるわけではない。  端境期というか、予約の空きがあるならば、会場にいる人たちがどんどん打って、大手町、竹橋で働く人たちも年齢に関係なく接種すればいいだけの話だ。  あらためて言うけれど、ワクチンを接種すれば医療従事者の体と心の負担は減る。 ■豊田市の「4分」で終わる接種会場  現在、大規模接種センターが各地にできつつある。ホームページを見ると、どこの会場でも接種にかかわる時間は入り口から出口まで経過観察も入れて「45分から1時間」が通例だ。  しかし、愛知県豊田市のトヨタ自動車とヤマト運輸がかかわる接種会場では「経過観察時間をのぞけば接種時間は4分」だという。  接種にかかわる時間がたった4分?  それでは、見に行かなくては……。  5月30日から豊田市は医師会、トヨタ、ヤマト両社と連携して大規模接種センターを運営している。ヤマトはワクチンの輸送を担当し、トヨタは工場内施設などを会場として提供、社内の医師、看護師も派遣している。  そして、接種システムの効率化のためにトヨタ生産方式を活用している。接種にかかわる時間が4分で済むのはトヨタ生産方式を下敷きにした接種のシステムを作ったからだ。  接種は午前10時から午後5時までで、うち1時間は昼休み。今のところは土曜と日曜が接種日になっている。初回は600人、2回目以降は900人以上と順次、増やしている。

■トヨタ生産方式を活用  豊田市の人口は42万人。うち、高齢者を含めた対象者は約25万人だ。接種会場は複数ある(現在7カ所)が、わたしが見に行ったのはトヨタの堤工場の敷地内にある厚生施設「堤TREC(トレック)」の会場である。  さて、運営に活用しているトヨタ生産方式とは同社独自の生産管理システムをいう。簡単に言えば「客が注文したクルマをより早く届けるためにもっとも短い時間で良品のみを効率的に造る」こと。  ワクチン接種にたとえれば、「来場者(客)が負担なく、もっとも短い時間で接種ができ、会場から出ていける」ことだろう。  待ち時間が少なければ来場者はストレスを感じない。会場がスムーズに流れていれば密になる心配もない。短い期間に大勢に接種することができれば地域の集団免疫の獲得も促進される。医療従事者もひと息つくことができる。  トヨタが運営を担当した狙いはそこにあるのだろう。  結果として、一般の大規模会場では30分はかかる接種が4分(いずれも経過観察の15分を除く)に短縮できたのである。  では、他の会場のシステムとトヨタのそれはどこが違っているのか。 ■1.「ひと筆書き」の短いルート  堤トレックのアリーナは高校の体育館くらいの広さだ。大規模接種の会場ではあるけれど、大空間ではない。そのなかに接種ルートを設定している。トヨタの施設には堤トレックのアリーナよりも広いところがあるが、彼らは大空間ではなく、接種ルート自体を短くするために、適正な広さの会場を選んだ。  そして、会場内のレイアウトは「ひと筆書き」になっていた。入り口から入った来場者は後戻りしたり、同じルートをたどったりすることなく、一本のルートで出口まで行くことができる。ただし、ひと筆書きルートについていえば、おそらく日本中のどの大規模接種会場でも、同じようなレイアウトにしているだろう。常識的に考えて、後戻りさせるようなルートを設定する人間はいない。  トヨタのひと筆書きルートの特徴は短いことだ。全体をコンパクトにして、来場者が歩く距離を減らしている。だから、接種を短時間で終えることができる。 ■2.人の滞留を起こさないくふう  2番目の特徴は予診票確認、予診、接種などの各ブース前で滞留が起きないしくみを導入していること。  接種の前には袖をまくり上げて、注射する腕を露出させなければならない。自衛隊の会場では接種ブースの前に椅子を用意し、椅子に座ってから、「袖をまくってください」と指示していた。  一方、トヨタの会場ではブース前に椅子はあるものの、袖まくりは歩きながら行うように誘導される。思えば袖をまくるためにいちいち椅子に腰かけなくともいいのである。だが、そんな細かいところまで動作を研究して、カイゼンするのがトヨタ生産方式なのである。  そこでは袖まくりだけでなく、動作に対しての細かい誘導があった。

 医師との予診を終えたら、接種レーンに足を向ける。接種ブースに入るまでの9メートル間に次の4つの動作を行うよう誘導される。誘導は口頭ではない。イラスト入りの大きな表示だ。大きな紙の表示は至るところに設置されてあり、しかも、日本語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語の多言語表示だ。  豊田市内には外国人も暮らしている。高齢者の次には一般接種が始まるから、それに備えて、当初から多言語表示にしたのだという。目先だけではなく、将来を見据えた準備だ。 ■動作にかかる時間を何度も計測して…  さて、話は戻る。  接種ブースに向かう9メートル間には4つの動作を行う。標準的には55秒かかる。  ①左右どちらの腕にするかの確認を行う(15秒) ②上着を脱ぐ(30秒) ③腕まくり(10秒) ④待機(0秒)  トヨタのスタッフは用意動作を4つに分け、ストップウォッチで計測してから標準計画を作った。計測は一度ではない。自分で何度も腕まくりをして、最適な腕まくり時間を設定したのである。  たとえ、本業でなくとも、彼らは徹底的にやる。そこまでやらなければ接種を4分で終わらせることはできない。  なお、2回目の予約だが、ファイザー製を使っているため、接種後にはきっちり3週間後の予約が完了する。 ■「会場の改善は仕事の一部にすぎないのです」  接種の支援プロジェクトにかかわっているトヨタ生産調査部主査、高橋智和は「会場のレイアウト改善と接種にかかわる動作の標準化と寄り添い(気配り、目配り、心配り)は私たちの仕事の一部にすぎないし、これは学びの場なのです」と言った。  「ワクチン接種では豊田市、医師会、ヤマトと協力して豊田市モデルを作ることにしました。当社は3つのチームで応援しています」  3つのチームとは接種チーム、輸送チーム、増産チームだ。  接種チームは会場内のルート設定、案内板の掲示といったものを担当する。レイアウトをカイゼンし、滞留の起こらないくふうをする。  輸送チームはヤマト運輸が手掛けるワクチンの輸送カイゼン。増産チームは超低温冷凍庫の生産支援だ。  「ふむ」  会場カイゼンは分かる。しかし、輸送、増産とは何か?   高橋は言った。  「ワクチンは冷凍で輸送、保存しなくてはなりません。ワクチンの品質を保証することと余りが出ないようにすることも、会場設営とともに重要なポイントなんです。ヤマト運輸さんの志、大小を問わない配布先にしっかり寄り添ったきめ細かな物流と品質管理はわれわれトヨタと全く同じ考え方であり、それを豊田市、医師会の皆さんからは初めから受け入れていただきました」  ワクチンの品質保証もまたトヨタ生産方式の考え方からきたものだ。同方式は異常が発生したら機械がただちに停止して、不良品を造らないという「自働化」と、各工程が必要なものだけを、流れるように停滞なく生産する考え方「ジャスト・イン・タイム」が2本柱とされる。

■ミスが起きるなら、冷凍庫を使わなければいい  ワクチンの品質保証とはしっかりと冷凍保存をすることであり、廃棄しなくてはならないような余分を出さないことで、こちらは「自働化」の考えから派生したものだろう。  各地で接種が始まって以来、ワクチンを無駄にする事故が起こっている。冷凍庫のコンセントが抜けていた、あるいはドアを開けたままにしていたら庫内の温度が上がってしまった……。いずれもうっかりミスである。だが、うっかりミスはいくら注意しても起こることがある。  トヨタのチームは、うっかりミスが起こらない方策をとった。  高橋は言う。  「ヤマト運輸さんとトヨタは、冷凍庫でワクチンを保存するのではなく保冷剤にしました。クーラーボックスに保冷材を入れて、そのなかにワクチンのバイアル(注射剤の入った容器)を保管し、必要な数量だけをセットにして、必要な時間に確実に配送することにしたのです。  保冷剤と言ってもスーパーでもらってくるやつではありません。今回使用しているのはマイナス120度の保冷材。静岡県沼津市のADD(エイディーディー)という会社から入手しています」  ワクチンはアメリカのファイザー社からドライアイスの入った保冷ボックスでやってくる。日本に着いたら、冷凍倉庫に保管された後、ヤマトの中部ゲートウェイセンター(豊田市)までドライアイスの保冷ボックスでやってくる。  そのままトヨタの会場まで運べばいいのに、とわたしが言ったら、高橋は首を振った。  「いえ、ヤマト運輸さんと私たちはドライアイスから脱却したかった。なぜならドライアイスは二酸化炭素そのものだし、1回しか使えません。脱炭素の時代にそぐわない。今回、私たちが使用している保冷材は50回近く循環して使えますし中身は塩水です。廃棄するにしても環境にダメージを与えることはありません」 ■マイナス120度冷凍庫の増産支援へ  冷凍庫を各会場に設けることはできる。しかし、うっかりミスをなくすことはできない。その点、保冷ボックスなら電源はいらない。また、クーラーボックスなら蓋が閉まっているかいないかは一目で分かる。  「ただし、問題がありました。保冷剤をマイナス120度にするには冷凍機がいります。ADDの製造工場にはマイナス120度にする冷凍機があるのですが、それを大量に入手するには増産しなくてはなりませんでした。当初、『1日1台しか作れない』と言われたので、それで増産チームを派遣して、1日に10台、生産できるようカイゼンしたのです」

 なお、会場でクーラーボックスに入れたワクチンは30時間くらいまではマイナス60度以下で保つことができる。会場に持ってきたワクチンが余ったとしても、もう一度、ヤマトや豊田市の倉庫へ戻せばいい。倉庫には超低温冷凍庫があるからそこで保管できる。  だが……。  会場で支援に当たる豊田市やトヨタの人たちはまだワクチンを打っていなかった。  余りが出たら、打つことができたのに。高橋にそう伝えたら「いや、僕らは順番が来るのを待ちます」とのこと。  やはり、生真面目な人たちなのである。 ■「ベター、ベター、ベター」にしていく  豊田市の大規模接種会場における接種時間が他よりも短いのは会場レイアウトだけではなく、ワクチンの保冷管理までさかのぼって計画したからだ。  これもまたトヨタ生産方式にある「真因の追求」だ。ミスや滞留を防ぐにはその場の処理で済ませてはいけない。ミスや滞留が起きないように真因を追求し、それを解決すること。  それにしても、彼らはいったい、いつからワクチン接種を準備していたのか?   高橋はこう言った。  「新型コロナに対する危機管理、医療機関などへの支援は昨年の3月から始めていました。当初はフェイスシールド、車両や病院内で使う感染防止のアクリルボードの製作、医療用防護服の製造支援、そして、消毒液を足で踏んで出す「しょうどく大使」の生産でした。そういった支援の後、昨年の終わりから、次はワクチンだなと研究を始めたのです」  スタートが早かったから、会場だけの準備ではなく、真因まで追求し、それに対しての備えを構築することができたのである。  わたしが見学に行ったのは初回の大規模接種が終わった後だった。高橋たちは2度目以降に備えて、受付のデスクを増やしたり、掲示物を増やしたりしてカイゼンを続けていた。  トヨタ生産方式はベストを追求する仕組みではない。ベター、ベター、ベターで効果を上げていこうとする。  そのため、初回は5分だった接種時間が、今や最短4分に短縮されたという。彼らはカイゼンをやめないのである。

———- 野地 秩嘉(のじ・つねよしノンフィクション作家 1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュをはじめ、食や美術、海外文化などの分野で活躍中。著書は『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)、『高倉健インタヴューズ』『日本一のまかないレシピ』『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『一流たちの修業時代』『ヨーロッパ美食旅行』『ヤンキー社長』など多数。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。noteで「トヨタ物語―ウーブンシティへの道」を連載中(2020年の11月連載分まで無料)

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新型コロナが「ただの風邪」ではない理由 コロナ病棟医師の見解

https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210613-00242752/

2021/6/13 倉原優 | 呼吸器内科医

新型コロナワクチンの接種がすすんでいます。当初接種スピードが遅いのでは・・・と懸念していましたが、どこの自治体も頑張っておられ、子どもや職域の接種まで開始されることになりました。

第4波も落ち着きつつあるためか、「新型コロナはただの風邪」「基礎疾患がない人は軽症で済むのだから騒ぎすぎ」という意見を再びよく耳にするようになりました。

若年者や基礎疾患がない患者さんの大部分が軽症で終わることは間違いありません。その人たちにとっては、結果的に「新型コロナはただの風邪だった」と言えます。

同様の感染性を持つインフルエンザでは、国をあげてこれほど議論されることはありません。そのため、「騒ぎすぎ」という意見が出てくることも、よく理解できます。

しかし、新型コロナはただの風邪ではありません。改めて、以下にその理由を述べます。

理由1:重症化率が違う

医療従事者として実感される差は、「重症度」です。肺炎を起こす頻度が高いのです。私は長らく市中病院で呼吸器内科医をやっていますが、インフルエンザ肺炎で入院する人は、年に数えるくらいしかいません。コロナ病棟を有しているとはいえ、1施設で1年間に400例以上のウイルス性肺炎を診るというのは、異常事態です。

「周りに感染している人なんて誰もいない」という意見もあります。2021年6月12日時点での累積感染者数は約77万人なので、確かにインフルエンザほどは身近に新型コロナ感染者を目にしないはずです。しかし、もしインフルエンザと変わらないくらいの重症度なら、入院が必要な人はもっと少なくなるはずです。

「新型コロナだから入院閾値を下げている」というのは正しくなく、パンデミック初期は確かにそのような対応をしていましたが、最近は必要なケースのみにしぼって入院を引き受けています。

そのため、肺炎を起こした新型コロナ患者さんが、これだけたくさん入院しているというのは、ウイルスそのものの毒性が強いからに他なりません。

入院を要した新型コロナ患者さん8万9,530人と、季節性インフルエンザ患者さん4万5,819人を比較したフランスの研究では、死亡率はそれぞれ16.9%、5.8%という結果でした(1)。同様に、入院を要した新型コロナ患者さん3,641人と、季節性インフルエンザ患者さん1万2,676人を比較したアメリカの研究では、死亡率はそれぞれ18.6%、5.3%でした()(2)。入院を要した患者さんだけをみているのでいずれも死亡率が高いですが、インフルエンザよりも新型コロナのほうが重症化しやすいことが分かります。

季節性インフルエンザと新型コロナの違い(文献2より引用)
季節性インフルエンザと新型コロナの違い(文献2より引用)

病院の医療従事者は、普段から入院が必要な患者さんばかりを診ているので、現場でインフルエンザとの違いを感じることができます。

しかし、それ以外はやはり軽症ですから、一般の人には「ただの風邪」としてうつってしまいます。たしかに「大部分は軽症」というのは決して間違いではないのですが、重症化リスクや死亡リスクが高いということがこれまでのウイルスとは違うところです。

理由2:集中治療用ベッドが逼迫する

「理由1:重症化率が違う」によって次に起こることは何でしょうか。そう、ケアを要する入院患者さんの数が増えるのです。入院しなくてもよい患者さんは、自宅やホテルで療養していただきますが、酸素飽和度が下がって酸素療法が必要になったり、食事が摂れなくなったりすると、入院が必要になります。

「日本にはたくさんベッドがあるんだから、それを新型コロナ用に転用すればよい」という意見もありますが、感染対策を講じながら診ていける急性期病床を無限に生み出せるほど、日本の診療体制は充足していません。

もし、「頑張って感染対策をしなくてもよい」とすると、諸外国のようにケタ違いの感染者を生み出すことになります。上述したようにインフルエンザよりも重症化率が高いため、これにより重症者の絶対数が増加します。

ここで、病床逼迫に陥った大阪府の第4波を見てみましょう。大阪府には、600床あまりの集中治療用ベッドがありますが、新型コロナに使えるのは多くても224床というのが当初の試算でした。待機手術などを遅らせて捻出しても、せいぜい350床くらいではないかと思います(その他は救急患者や手術患者に使用されるため)。

この状態で、2021年5月4日に449人の重症患者さんが発生していました。重症病床に転院できない人がたくさん発生し、の黄色の部分は軽症・中等症病床で診療せざるを得なかった重症患者さんをあらわしています。集中治療用ベッドの8割を一疾患が占めるというのは、通常の診療では考えられないことなのです。

大阪府の重症患者数(筆者作成)
大阪府の重症患者数(筆者作成)

通常診療で使用している集中治療用ベッドのほとんどをあっという間に埋めてしまう感染症は、どう考えても「ただの風邪」ではありません。

■参考記事:新型コロナの「重症化」とは? 人工呼吸器を装着したら、実際どうなるのか?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210504-00235518/

「稀な現象も起こってしまえば1分の1」

「どれだけ低い確率でも、副反応が起こってしまえば、その人にとっては1分の1になる」ことから、新型コロナワクチンに対して不安に思われる気持ちはよく分かります。

しかし、「新型コロナのほとんどが軽症で済む」という事実の裏に、「どれだけ低い確率でも、重症化してしまえばその人にとっては1分の1」という致死的な新型コロナ患者さんも存在します。

自分より年下の新型コロナの患者さんに人工呼吸器を装着しなければならなかったとき、これは他人事ではないなと痛感しました。

保険に加入している人が多いと思いますが、保険というのは、「事象が発生する確率は低いが、万が一発生してしまうと損失が大きいもの」に対してかけるという鉄則があります。ワクチンにもこういう保険的側面があって、「たぶん感染しても私は大丈夫だろうけど、万が一にそなえて打つ」という感覚を私は持っています。

そして、個人の加入する保険とは異なり、これが集団免疫という大きな盾になり、社会や国の利益につながります。

(参考)

(1) Piroth L, et al. Lancet Respir Med . 2021 Mar;9(3):251-259.

(2) Xie Y, et al. BMJ . 2020 Dec 15;371:m4677

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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蚊によってコロナは広がるのか?

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210605-00241501/

2021/6/5(土) 10:39 忽那賢志
感染症専門医

だんだんと暖かくなり、蚊が増えてくる季節になります。

蚊は日本脳炎やデング熱、マラリアなどを媒介することで感染症を広げる節足動物ですが、新型コロナウイルスを媒介することはあるのでしょうか?

蚊媒介感染症とは?

The World's Deadliest Animals(Gates Noteより)
The World’s Deadliest Animals(Gates Noteより)

こちらは各生物が1年間に人間を死に至らしめている数のランキングです。

日本で生活していると、蚊に刺されることで感染症を意識することはあまりないかもしれません。

しかし、世界では未だに蚊が媒介する感染症は脅威であり、人類を最も死に至らしめている生物は蚊であり、年間80万人が蚊が媒介する感染症で亡くなっているとされます。

日本で発生しうる主な蚊媒介感染症とその特徴(筆者作成)
日本で発生しうる主な蚊媒介感染症とその特徴(筆者作成)

日本国内で今も流行している唯一の蚊媒介感染症は日本脳炎です。

と言っても近年は報告者数は年間10例未満となっていますが、これはワクチン接種によるものであり、日本脳炎ウイルスを持った蚊は西日本を中心に今も分布しています。

デング熱は主に熱帯地域で流行している感染症であり、日本では輸入感染症として年間300例程度が診断されていますが、2019年は海外渡航者が激減したことから年間45例にとどまっています。

国内では流行していませんが、デングウイルスを媒介する蚊(ヒトスジシマカ)が国内に分布しているため、海外でデング熱に感染した人が日本に帰国し、国内で蚊に吸血をされると国内流行につながる可能性があります。

2014年には70年ぶりのデング熱の国内流行が代々木公園を中心に起こったことは記憶に新しいところですし、2019年にも沖縄と東京で国内感染例が報告されています。

デング熱のヒト→蚊→ヒトへの伝播(筆者作成)
デング熱のヒト→蚊→ヒトへの伝播(筆者作成)

マラリアも主に輸入感染症として国内では診断されています。

年間60例程度が報告されていますが、昨年は20例にとどまりました。

デング熱とは違って、マラリアを媒介する蚊が国内にはほとんど分布していないので、国内で流行することはないと考えられています(ただし三日熱マラリアを媒介するシナハマダラカは国内分布しています)。

新型コロナは蚊によって広がるのか?

このように、特定のウイルスや原虫などの微生物は蚊を介して広がっていきます。

では新型コロナウイルスも蚊で広がることがあるのでしょうか?

結論としては、その可能性は極めて低いと考えられています。

新型コロナが蚊媒介感染症として成立するためにはいくつかの条件があります。

1. ヒトが感染した際に新型コロナウイルスが血液中に検出される

2. 新型コロナウイルスが蚊の体内で増殖される

3. 蚊からヒトの血液に注入された新型コロナウイルスがヒトの体内で増殖される

まず1についてですが、蚊が吸血した際に、血液中にウイルスが存在しなければ蚊の体内に入ることができません。

ヒトが感染した際に新型コロナウイルスが血液中に検出されるかどうかですが、205人の新型コロナ患者から採取された307の血液検体から新型コロナウイルスが検出されたのは3検体(1%)のみだった、という報告があります。

また、軽症・中等症では血液中に新型コロナウイルスが検出されることは稀です。

2については、「蚊の体内で新型コロナウイルスは増殖しない」ということが複数の研究で確認されていることが挙げられます(12)。

蚊媒介感染症の条件として、蚊の体内で微生物が増幅されなければいけませんが、それはどうやら起こらないようです。

3の「ヒトの血液に注入された新型コロナウイルスがヒトの体内で増殖される」ですが、これは証明が難しいものの、例えば実験室で新型コロナウイルスを扱っていた方や病院内で新型コロナの検体を扱っていた方が針刺しをしてしまって新型コロナに感染した、というような事例があれば血液を介しての感染が起こり得るということになります。

しかし、現時点では針刺しで新型コロナ感染したという事例は報告されていません。

以上から、新型コロナが蚊を介して広がるということはほぼほぼないだろうと考えられます。

新型コロナの感染予防のためには、蚊の対策よりは、マスク着用、3密を避ける、こまめな手洗いを行うという基本的な感染対策を行うことが重要です。

ただし、蚊に刺されても新型コロナになることはないと思いますが、日本脳炎、デング熱など他の蚊媒介感染症には罹患する可能性があります。

ご自身の予防接種手帳に日本脳炎ワクチンの接種歴(通常4回)が記載されているかをご確認し、もしなければ接種を検討しましょう。

また日頃から虫除けなどを使って蚊に吸血されないようにしましょう。長袖長ズボンなどで肌の露出を出来るだけ避けるようにし、露出した部分には虫よけを塗布するようにしましょう。

虫除けはディートまたはイカリジンという成分を含むものが望ましいとされます。

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大阪は「何を間違えた」のか…第4波で「かつてない医療危機」に陥った大阪府、見えてきたコロナ対策での「誤算」

https://news.yahoo.co.jp/articles/669b7373a41d27b90f9f9c05440c43faccd1b78e

2021/5/29(土) 14:21 8カンテレ

第4波で重症患者が「病床数を上回る事態」に

新型コロナウイルスの感染拡大第4波で、大阪府では、重症患者が確保した重症病床を超える初めての事態に陥りました。 【動画で見る】大阪の医療危機なぜ?キーパーソンが語る「実情」カンテレ「報道ランナー」

取材をすると大阪のコロナ対策のある誤算が見えてきました。

【大阪府・吉村洋文知事】 「今これだけ病床がひっ迫している中で感染が再拡大すれば対応できない状況になってきます。そうなってからでは遅い」 緊急事態宣言の再延長を国に要請した大阪府。 背景には、苦い経験があります。 新型コロナウイルス感染拡大の第3波のピークが過ぎた今年2月時点で、大阪府が確保していた重症病床は、224床。 しかし、その翌月から始まった第4波で初めて確保していた病床を重症患者が上回る事態になったのです。 かつてない医療危機は、なぜ起きたのか。 大阪府のコロナ対策のキーパーソンである健康医療部の藤井部長に話を聞きました。

想定以上に膨らんだ「重症患者」

カンテレ「報道ランナー」

【大阪府健康医療部・藤井睦子部長】 「400人を上回る重症患者が発生する想定をしていなかったのかと言われれば、それは想定していなかった」

大阪府では、コロナ患者の症状によって受け入れる病院を分ける方針を取りました。 重症の患者を治療するのは、高度な医療に対応する設備がある大学病院など。 中等症の患者は、呼吸器内科などがあるなど、地域の比較的大きな病院。 軽症や無症状で、基礎疾患がない人などは、ホテルや自宅で療養してもらうことにしました。 しかし、重症病床がいっぱいになったことで、影響は全体へと広がっていったのです。 この時に、重症患者を受け入れていた病院は、どうなっていたのか。

第4波は…重症化のスピードが速い

大阪医科薬科大学病院。 人工呼吸器や人工心肺装置・ECMOでの治療が必要な重症患者を受け入れています。 4月、大阪府からの緊急要請を受け、10床から14床に増やしましたが、ベッドは常に埋まり、空けばすぐに別の患者が入ってくる状態でした。 第4波では、これまでとは明らかに違う点がありました。 【大阪医科薬科大学病院・南敏明病院長】 「重症化のスピードが速い。いったん重症化したら1~3波に比べて非常に治るのに時間がかかる」

症状が回復するのに時間がかかり、病床をなかなか空けることができなかったと言います。 さらに、変異ウイルスは重症化するスピードが早く、自宅で入院を待っている間に症状が悪化した患者が、次々と運ばれてきました。

【南 病院長】 「今まである程度中等症の病院で輸液されて、それでも肺炎が良くならないという形で運ばれてきたというのでなくて、来た時からさらにワンランク進んだ重症な状態でくる患者も多い」 早めに入院し、適切な処置を受ければ、重症化を防げる可能性が高まりますが、一体なぜ、できなかったのか。 4月22日時点で、大阪府では軽症・中等症患者に確保している1798の病床に対して入院していた患者は1436人。カンテレ「報道ランナー」

なぜか2割にあたる300床以上が空いていました。

病床に余裕あっても…人員が不足

堺市の耳原総合病院。 軽症や中等症の患者のみ20人ほどを受け入れていました。 しかし、大阪府は、重症病床がいっぱいになったため、患者が重症化しても転院させずに、治療を継続するように要請します。 【看護師】 「酸素ボンベもらっていいですか?」 【看護師】 「サーチ(酸素飽和度)いくつですか?」 【看護師】 「90!」 重症化した患者は、病院の集中治療室ICUで治療を継続しましたが、中等症患者の4倍ほど看護師が必要でした。カンテレ「報道ランナー」

重症化した患者の治療を続けた結果、人手が不足し、中等症病院も患者を受け入れることができなくなったのです。

――Q:中等症の病床は実際に(大阪府が)発表していた病床数よりも、実数は少なくなっていた? 【大阪府健康医療部・藤井睦子部長】 「はい、そういう認識です。中等症患者を1人とってもらうのと、重症患者を1人治療継続してもらうのは、そこにかかるマンパワーが全く違うので、多くの中等症病床が運用できなくなることが起こっていた」 感染者のうち、入院できた人の割合は、4月27日時点で、全国最低の10.5%まで低下。 自宅で療養している人は、最大で1万8000人を超えました。

【藤井部長】 「結果として入院していただける患者の割合が非常に低くなってしまったということで、早期に治療していただくことで重症化を防ぐ循環を生むのが、本来は重要だった」

病床運用での「新たな構想」も

重症化を防ぐアプローチが足りなかったと説明した藤井部長。 今後どのような備えが必要かはこれから協議すると話しながらも、中等症から重症まで一体で治療する病院を増やす構想を明らかにしました。 【藤井部長】 「中等症までしか診れませんという病院になると、そこで挿管対応が必要かというのは重症病院での判断になる。重症病院に転院してもらったが結果として挿管せずに治療が可能だったという事例もある。そこが同じ院内だったら連携して一体的に運用していただけるということで今後重要な機能になると思っている」 ただ、大きな病院にさらなる負担がかかるため、どこまで協力を得ることができるのか、そして、どこまで病床を増やすことができるのか、まだ見えていません。 これまでの教訓を生かすためには、多くの課題をクリアする必要があります。