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五輪選手村で連日“野外パーティ”の乱痴気騒ぎ動画 組織委も警察も制御不能の呆れた実態

https://news.yahoo.co.jp/articles/c8d345b0b70097999820569cd8bf5fd8a6ed72ad

2021/8/3 デイリー新潮

「夜の選手村はもはや無法地帯です。連日、深夜まで外国人選手たちは野外パーティーで大騒ぎ。いつクラスターが発生してもおかしくない状況なのに、組織委は彼らをまったく制御できていません」。こう告発するのは、ある大会関係者である。「デイリー新潮」が独自入手した動画には、警察が出動する飲酒トラブルが発生した現場で、マスクもせず、”密”に踊る外国人選手たちの姿が映っていた。 【写真】大音量のラテンミュージックが流れるなか、酒を煽りパーティーを楽しむ選手たち。密着する男女も……  ***

深夜1時に聞こえてきた「ハッピーバースデー」

パラレルワールド」。こんな表現で例えられる東京・晴海の選手村。出島のような形をした区域は厳重なセキュリティに守られ、関係者以外は一切立ち入れない。  8月2日深夜0時。選手村の様子を伺おうと、運河を挟んでおよそ100メートルの距離にある「豊海埠頭」に行ってみた。右手にはレインボーブリッジが浮かぶ東京湾の夜景が広がる。埠頭一帯は静まり返っているが、耳をすましていると、潮風に乗って対岸から人声が聞こえてきた。 「オーオッ! オーオッ!」「イエーイ!」「キャハハハ」  時々、闇夜に響く口笛。明らかに複数の男たちが屋外で騒いでいる。30分くらい様子を窺っていると、「ハッピーバースデートゥーユー」の大合唱が聞こえてきた。どこから聞こえてくるのか場所を特定したいが、建物に隠れてよく見えない。逆側の豊洲市場のある対岸にも回ってみたが、やはり確認できなかった。 「対岸からは消防署などの施設が邪魔して見えません。ドローンを飛ばすか、レインボーブリッジから超望遠カメラを使うしかありませんよ」  こう語るのは、選手村の事情に詳しい大会関係者である。 「彼らが騒いでいる場所は、選手村の中の海に面した晴海埠頭公園のあたりです。マスコミが取材できないのをいいことに、一部の選手たちが、毎晩、ここでどんちゃん騒ぎを繰り広げているのです。野外パーティーは開会式から4、5日経った27日頃から始まりました。毎晩、深夜まで公園内の至るところで行われています。おそらく競技が終わった選手たちが中心になってやっているのでしょう。今大会は、競技が終わった選手は順次、48時間以内に選手村を出ていかなければなりません。外に出歩くこともできない彼らは、こうして東京の”ラストナイト”を楽しんでいるのです」

デリバリーで酒を入手

 確かに5年の月日を捧げた試合を終え、息抜きしたくなる選手たちの気持ちもわからなくはない。バブル方式が採られた今大会では、一部に違反者が出ているが、観光も禁止だ。せっかく異国にやってきたのに、競技会場と宿舎の移動だけで即帰国というのもかわいそうではある。  とはいえ、コロナ禍で行われた異例の大会なのだから仕方あるまい。組織委も、選手村の中での飲酒自体を禁じているわけではない。選手村内でもデリバリーなどで酒を購入することは可能。そのかわり「部屋の中で一人で」(前出の関係者)というのがルールだ。  だが、関係者が提供してくれた数十秒間の動画には、お目こぼしなどでは到底済まされない乱痴気騒ぎが映っていた。

大音量のラテン音楽に乗って密着する男女

 レインボーブリッジの夜景が広がる野外で、両手を振り上げながら楽しそうに踊る30人くらいの男女。大音量のラテンミュージックが流れ、みなノリノリだ。傍らにはビール缶や酒瓶。はっきり顔までは確認できないが、白人や黒人が入り交じってパーティーを楽しんでいる。密着しながら腰を振るカップルも。全員がノーマスクだ。 「これは7月31日深夜に撮影されたものです。この後ここで、最寄りの所轄である月島署が出動する飲酒トラブルが発生しました。騒ぎは新聞、テレビでも報じられましたが、真相とはかなりかけ離れている。組織委や警察が事態を矮小化して発表し、メディアもそれを鵜呑みにして、小さく扱っているような気がしてなりません」(同)  例えば、「FNNプライムオンライン」は「選手村・飲酒トラブル」についてこう報じている。 〈東京オリンピックの選手村で、外国人選手が関わる酒をめぐるトラブルがあった。7月31日午前2時ごろ、選手村の路上で、複数の外国人選手が酒を飲んで騒いでいて、大会関係者とトラブルになり、警察に通報があった。選手村での酒をめぐるトラブルで警察に通報があったのは初めてで、警察官が駆けつけると、選手たちはいなくなっていたという〉(8月1日)  だが、大会関係者は「こんな報じ方では、選手村で起きている実態がまったく伝わらない」と憤る。 「動画に映っていたパーティーは、厳密には公園の脇で行われていました。この日、この集団とは別に、公園の中でも100人くらい、各国の選手たちがいろいろなグループに分かれて、どんちゃん騒ぎをしていました。月島署が出動したのは午前2時ですが、午後10時くらいからずっと。組織委の警備関係者も、選手村の警備担当である大阪府警の警官たちも、周囲を守っているだけで注意すらしなかった末に起きたトラブルだったのです」(同)

選手が組織委スタッフの足首を捻挫させた? 

 なぜ大阪府警が現場にいながら、月島署の署員が駆けつける騒ぎになったのか。複数の報道によれば、騒ぎを注意しようとした組織委の警備関係者と選手との間で、小競り合いがあったようだ。その際、職員が足首を捻挫したとの一部報道もあるが、 日刊スポーツによれば、騒動が収まった後の移動中に負った怪我で、飲酒した選手との関係はないという。 「いずれにしても、事件化するような大ごとにはならなかったのでしょう。でも、それをいいことにこの乱痴気騒ぎは表沙汰にならず、不問にされてしまったのです。その結果、夜の選手村は無法地帯のまま。騒ぎが起きているのが夜間、警備担当の語学能力、そして何よりも縦割りの組織運営に原因があると思われますが、こんな体たらくでは感染拡大を防ぐために作った『プレーブック』など意味をなしません」(同)  確かに冒頭で紹介した、記者が対岸から耳にした様子は、警察沙汰が起きた二日後のことだ。警察の目など外国人選手たちは意にも介してないのだろう。「これでは、閉会式までにいつ大規模クラスターが起きてもおかしくない」と大会関係者は訴えるのである。

組織委は取材に回答せず

 組織委に、警察沙汰になったトラブルの詳細、野外パーティーに対する見解などを聞いたが、期限までに回答はなかった。  開会式のごたごたに続き、炎暑対策の不備など次々と問題が噴出してくる東京五輪。もはや組織委は機能不全に陥っているのかもしれない。

デイリー新潮取材班 2021年8月3日 掲載

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感染症ニュース 社会問題

入国後の待機期間に健康確認など応じず、日本人3人の氏名を厚労省が公表

https://news.yahoo.co.jp/articles/ca01f1c637497da9fd918537d49c1c712b3ffe15

2021/8/2 読売新聞オンライン

 新型コロナウイルスの水際対策として、海外からの入国後の待機期間中に求めている健康確認などに一度も応じず、誓約書に違反したとして、厚生労働省は2日、20~30歳代の日本人3人の氏名を同省ホームページで初めて公表した。 【図表】ファイザー製ワクチンの副反応、予想以上に年代間で差

 発表によると、3人はいずれも先月21日に韓国や米国から入国し、空港検疫では陰性だった。3人は熊本、埼玉、東京の3都県を待機場所として申請している。

 政府は今年1月、感染力の強い変異ウイルス対策で、全入国者に対し、検疫法に基づいて14日間、自宅や宿泊施設で待機するよう要請。待機期間中はスマートフォンのアプリで健康状態や位置情報の確認、ビデオ通話での連絡に応じるという誓約書の提出を求めている。この誓約書に違反すれば、氏名公表に踏み切ることや、外国人であれば強制送還される場合もあるとしてきた。

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感染症ニュース

自宅療養が3万人に急増 6都府県、10日余りで3倍に

https://news.yahoo.co.jp/articles/4e2f2e4de171dde47a1e9540203a954f6cb94da2

2021/8/2 KYODO

 緊急事態宣言が発令された6都府県で、新型コロナウイルスに感染して自宅療養している人が約3万人に上ることが2日、分かった。先月21日時点では約9千人で、わずか10日余りで3倍に急増した。感染力の強いインド由来のデルタ株による「第5波」で感染拡大に歯止めがかからないことが背景。自宅療養者がさらに増える可能性があるほか、医療提供体制の逼迫も懸念される。 政府、肺炎など中等症も自宅療養 原則入院を転換、重症者に限定

 緊急宣言下の埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、沖縄の6都府県が公表した、今月1日時点(神奈川は7月31日時点)の自宅療養者数をまとめた。6都府県の合計は3万275人。

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感染症ニュース 社会問題

入院患者以外は原則自宅 政府、宿泊療養を限定 感染増加地域

https://news.yahoo.co.jp/articles/edd30c6822606bf8869572c6ddb5906922e957c1

2021/8/2 毎日新聞

 新型コロナウイルス感染症への対応で厚生労働省は2日、感染者の多い地域では原則、入院対象者を重症患者や特に重症化リスクの高い人に絞り込み、入院しない人を原則自宅療養とすることを可能とする方針を公表した。東京都を中心に感染者数が急増し、医療現場が逼迫(ひっぱく)しているためで、宿泊療養も事情がある場合などに限定する。 【世界の5つの変異株】感染力、ワクチンの有効性は  これまで「原則」だった入院や宿泊療養が自宅療養に変更され、事実上の方針転換になる。重症化リスクの高い高齢の感染者の減少や、デルタ株の広がりに伴う感染者増を背景に、病床逼迫を避ける狙いがある。ホテルなどでの宿泊療養も「家庭内感染の恐れや事情がある場合に活用」と対象者を絞り込むことになる。  ただ、入院となる「重症化リスク」の基準などは明示されず、自治体など現場の裁量に委ねられ、線引きでの混乱も予想される。政府関係者は「このままではベッド、宿泊療養施設の数が足りなくなる」と語った。  今後、中等症患者をはじめ、自宅療養者の状態の把握や容体の急変への対応が課題となる。自宅療養者の把握についてはパルスオキシメーターの配布や自宅療養者への往診、オンライン診療などを通じ強化する。そのため、自宅・宿泊療養者への往診について、医療機関の収入となる「診療報酬」を加算。同時に、症状が悪化した場合は速やかに入院できる体制を確保するとしている。重症化を防ぐ治療薬「抗体カクテル療法」についても50代以上や基礎疾患がある人、在宅患者に活用を進める構えだ。  菅義偉首相は2日夕、西村康稔経済再生担当相らと関係閣僚会合を開き、「感染者数が急増する中で医療提供体制を機能させることが最大の課題」と述べた。  確保病床の利用率は1日現在、東京都で49%のほか、埼玉57%▽千葉53%▽神奈川52%▽大阪36%――と首都圏を中心に高まっている。

【神足俊輔、川口峻】

◇  本記事では、当初「重症者については入院のための病床を確保するが、中等症や軽症者に関しては自宅療養を基本とする内容」としていたのを「入院対象者を重症患者や特に重症化リスクの高い人に絞り込み、入院しない人を原則自宅療養とすることを可能とする方針」と修正しています。取材の過程で、中等症の人を一律自宅療養とするわけではないことが判明したためです。

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感染症ニュース

接種70%でも集団免疫は困難との見通し 尾身氏が発言

https://news.yahoo.co.jp/articles/fe895139e37ef977f61ac06cf52beadf869ba58b

2021/7/29 朝日新聞DIGITAL

 免疫をもっていない人にも予防効果が及ぶ「集団免疫」について、政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長は29日、衆院内閣委員会の閉会中審査で、「仮に国民の70%に(ワクチン接種を)したとしても、残りの30%の人がプロテクトされることでは残念ながらないと思う」との見解を示した。 【データで見るコロナワクチン】日本の接種状況は? 都道府県の状況も一目でわかる  理由として、尾身氏は「直面しているデルタ株(インドで確認された変異株)の感染力が強いので、30%の人々の中で伝播(でんぱ)が継続する」と話した。  さらに、ワクチン接種後の免疫の持続期間については「数カ月後ぐらいになると、だんだん減少してきて、また感染するということがある」とも述べた。  新型コロナの場合、初期の分析から試算すると、少なくとも人口の6~7割の接種率が必要と考えられている。菅義偉政権はワクチン接種を「切り札」と位置づけるが、尾身氏の発言は、感染力の強い変異株が広がるなかでは不十分だとの認識を示したものだ。  実際、国民への接種が進む英国でも、感染者数が再び増えている。

朝日新聞社

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ワクチン 感染症ニュース

コロナワクチンの「接種後感染」、重症化は極めてまれ、米CDC

https://news.yahoo.co.jp/articles/8150b80b1c0978d4aa55958b7bae37d276bb5a68

2021/7/28 NATIONAL GEOGRAPHIC

米疾病対策センターがデータを発表、ワクチンはデルタ株にも依然有効

米カリフォルニア州サンタモニカのAppleストア内で、新型コロナ感染予防のためにマスクを着けて順番を待つ人々。専門家は、ワクチンの接種を完了してもマスクを着けてウイルスを防ぐよう推奨している。(PHOTOGRAPH BY GENARO MOLINA)

 米国ワシントンD.C.の国会議事堂から東京のオリンピック選手村まで、ワクチン接種を済ませた人々の間で新型コロナ検査の陽性例が出ていることから、いわゆる「接種後感染(ブレイクスルー感染)」への懸念が高まっている。それにともない、新たな変異株へのワクチンの効果や、効果の持続期間などが取り沙汰されるようになった。 ギャラリー:腸チフスのメアリーから不遇の天才医師まで「感染症、歴史の教訓」 画像20点  米国内でブレイクスルー感染がどれほど起こっているかは、正確には判断できない。なぜならデータは不完全で、一貫した追跡調査も行われていないからだ。しかし、米疾病対策センター(CDC)がこのたび発表した7月19日時点のデータによると、重いブレイクスルー感染が起こる割合は極めて低い。  1億6100万人を超える米国内のワクチン接種完了者のうち、新型コロナ検査で陽性だった入院および死亡例の報告は5914件であり、これはワクチン接種を完了した人の0.004%未満だ(編注:ほかの疾患で入院または死亡し、検査の結果陽性が判明した例も含む)。  一般に「ブレイクスルー感染」とは、ワクチンを適切に接種した人々が新型コロナに感染した例(無症状例含む)を意味し、「ブレイクスルー疾患」は、そのうち体調が悪くなった例を指す。疾患にまで至るのは、ワクチンで強い免疫が得られない場合、免疫が時間とともに低下した場合、もしくはワクチン接種によって得られた抗体を避けるように進化したと思われる株にさらされた場合だと、ニューヨーク、ロックフェラー大学の臨床医科学者ロバート・ダーネル氏は述べている。  100%有効なワクチンというものは存在しない。ブレイクスルー感染や疾患はどんな病気でも起こり得る。なぜならウイルスは常に進化しており、インドで最初に報告され、現在は米国の新規感染例の83%を占めるデルタ株のような、ワクチンを回避する能力が高い新たな株が登場するからだ。  それでも、米国で認可されているワクチンはどれも、新型コロナ感染症による入院や死亡のリスクを大幅に軽減してくれる。現在新型コロナで入院している患者の97%以上はワクチンを接種していない人たちだと、CDC所長のロシェル・ワレンスキー氏は言う。 「感染者の割合は、ワクチンを接種していない人の方が圧倒的に高く、接種済みの人は低いという状態が続いています。接種した人も感染するというのは、単にゼロではないという意味です」と、テキサス、ベイラー医科大学の感染症内科医ステイシー・ローズ氏は述べている。 「わたしが懸念するのは、ブレイクスルー感染があるならワクチンを受けてもしょうがないという印象を人々が持ってしまうことです。ワクチンを接種すれば、たとえそれがデルタ株であっても、新型コロナに感染するリスクを下げてくれるのは事実です」

ブレイクスルー感染例の把握が難しい理由

 CDCは当初、軽症や無症状のブレイクスルー感染の報告も集めていたが、その方針を5月に変更し、ブレイクスルー感染による入院または死亡例のみを対象とするようになった。  ブレイクスルー感染に統一された基準がなければ、感染者数の確認は、州、病院、個々の施設などそれぞれのやり方に委ねられる。そのせいで、各ワクチン間での比較が難しくなったと、カリフォルニア大学サンディエゴ校の感染症内科医・病院疫学者のフランチェスカ・トリアーニ氏は言う。  施設によっては、無症状例の検査を行っている。その一方で、症状がある場合のみ検査をする施設もあるが、その基準でさえ施設によって異なる。  また、ワクチン接種率が低く、感染率が高い地域ではブレイクスルー感染が起こりやすい。各自の行動や免疫が原因で、そもそもより感染しやすい人々もいる。こうした条件の違いがあると、ワクチンの効果の比較は難しくなる。  そして、ワクチン未接種で感染の可能性が高い人たちが一定数いるという状態は、コロナウイルスに対し、今後もワクチンを回避できるよう進化するチャンスを与え続けてしまう。 「全員がワクチンを接種すれば進化は起こらず、ウイルスは去っていくでしょう」とダーネル氏は言う。「ワクチン接種は、麻疹(はしか)を基本的に根絶させ、ポリオ(小児まひ)をほぼ根絶に追いやった手段です。それはコロナでも可能です。この状態に終止符を打てるのです」  7月22日付けの医学誌「New England Journal of Medicine(NEJM)」に、医療従事者、救急隊員、現場作業員ら、定期的に検査を受けている約4000人のうち、204件の感染例があったという論文が発表された。感染者のうちワクチンの接種を終えていたのはわずか5人(2.4%)だった。

ワクチンによる差はあるのか

 一部のデータや記事では、特定のワクチンが、特に新たな変異株に対して効果が低いことが示唆されている。しかし、情報は急速に変化しており、変動する要素が多く、データも不完全なことが多いと、ダーネル氏は言う。  多くの州が州内におけるブレイクスルー感染例をカウントしているものの、地域レベルであっても、データはワクチンの種類別に記録されているわけではないと、ワシントン州保健局の広報担当者テリーザ・マッカリオン氏は言う。また、接種スケジュールのばらつきや、各ワクチンを接種した人の数や集団の違いといったさまざまな要因が、統計の処理を難しくする。 「ワクチンの種類別のデータを示すことはしません。なぜなら、ブレイクスルー感染は現在承認されている3つのワクチンすべてに関連が見られるからです」とマッカリオン氏は言う。「それが、ブレイクスルー感染の数をワクチン間で直接比較することを難しくしています」  ワクチンの種類別のブレイクスルー感染に関する一貫したデータがないことから、一部の研究者は、別の方法でワクチンの有効性を調査している。  まだ査読前であるものの、7月21日付けで論文投稿サーバー「bioRxiv」に、ある研究結果が発表されて注目を集めた。ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンを1回接種した10人と、ファイザー社のワクチンを2回接種した17人の血液サンプルを分析したところ、前者の方が、デルタ株を含む新規変異株に対する抗体の反応が弱かった。  この研究はニューヨーク・タイムズ紙をはじめメディアで大きな話題となったが、サンプルが少ないこともあり、結論を出すには早すぎるとダーネル氏は言う。ほかの研究ではこれと相反する結果が出ているとも、氏は付け加えている。  2021年3月に行われた、カリフォルニア大学サンディエゴ校およびロサンゼルス校で定期的に検査を受けていた1万5000人近くの医療従事者の分析では、ワクチン接種から15日以上経過した後、検査で陽性を示したのはわずか7人であり、陽性率は0.005%だったと、トリアーニ氏らは5月6日付けで「NEJM」に発表している。  サンディエゴ校では現在、デルタ株が主流となっているが、ブレイクスルー感染はワクチンを接種していない人たちが感染した場合に比べるとはるかに症状が軽く、回復も早いという。ワクチンを接種した人の入院は極めてまれであり、死亡した例もない。  デルタ株には警戒が必要だ。デルタ株はどうやらあらゆるワクチンを回避する能力にすぐれており、また、米国内でブレイクスルー感染者の周りで感染者が増加しているという事実は、ワクチンを接種した人たちもウイルスを感染させる可能性があることを示していると、ダーネル氏は言う。そして、デルタ株はとりわけ感染力が強い。  それぞれのワクチンに違いはあっても、正確な比較にはさらなる研究が必要だ。ダーネル氏は言う。「産業界の企業と学術界の臨床医科学者とが協力できれば非常に有益でしょう。われわれにはもっと科学が必要なのです」  データが蓄積されるのを待つ間、子どもや免疫系が弱い人たちを含むあらゆる人を守るうえで、ワクチン接種が最善の方法であることに変わりはないと、ローズ氏は言う。  ワクチンを接種することの方が特定のワクチンを選ぶことよりも重要であり、「どのワクチンも優秀です」とトリアーニ氏は指摘する。

文=EMILY SOHN/訳=北村京子

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感染症ニュース

都内の感染最多「高齢者の割合低い」 局長が異例の説明

https://news.yahoo.co.jp/articles/a28e04e5b6b46f85897805f436d6adbdf0115d78

2021/7/28 朝日新聞DIGITAL

 東京都で27日、新型コロナウイルスの感染者が過去最多となる2848人確認されたことを受け、都の吉村憲彦福祉保健局長が同日夜、記者団に説明する場を設けた。吉村局長は、重症化しやすい高齢者の感染が減っていることなどを挙げ、「第3波のピークとは感染状況の質が違う。医療に与える圧迫は違うと考えている」と述べた。 【写真】東京都の新規感染者数の推移  1日あたりの新規感染者数をめぐって、担当局長が取材に応じるのは異例。  吉村局長は、第3波で感染者数がピークとなった1月7日(2520人)では全体の14%を占めた60代以上の感染者が、7月27日には5%まで減ったと強調。「医療提供体制がにっちもさっちもいかなくなって、死者がばたばた出ることは現状ないと思っている。いたずらに不安をあおるようなことはしていただきたくない」と訴えた。 ■「五輪、大きな影響あるとは考えず」  病床が逼迫(ひっぱく)した第3波では、高齢の感染者の入院先が見つからず、自宅待機中に亡くなるケースも相次いだ。

朝日新聞社

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【解説】デルタ株“水ぼうそうに匹敵”の強い感染力か 1人の感染者から『5人~9.5人』

https://news.yahoo.co.jp/articles/1855812a9506e6ae78c160e32734b60ce0d7b29b

2021/8/2 0テレNEWS24

2日から緊急事態宣言の対象地域が拡大されました。これまでにない新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、デルタ株の感染力の強さを示すデータが明らかになりました。 【動画でみる】デルタ株感染力 1人から9人に?     ◇

都内の自宅療養者急増 過去最多に

日テレNEWS

まずは最新の感染状況です。東京では1日、新たに3058人の感染が確認されました。3000人を超えるのは5日連続。先月31日には、初めて4000人を超えました。 そして、都内の重症者は101人となりました。100人を超えるのは2月14日以来で、この1か月でみると2倍にまで増えています。一方で自宅療養者も急増していて、1万1018人と過去最多となりました。 医療現場の負担、自宅療養者をフォローする保健所の負担が増加する中で、都の担当者は「こういった状況がいつ収まるのか予測できない」と危機感を募らせています。

都内の人出 繁華街は減少も行楽地は増加

そして、夏休みシーズンで街の人出がどうなっているか。都内の1日午後3時台の人出です。 1週間前と比べて、渋谷センター街でマイナス21.7%など、データが公開されている22地点のうち、16地点で減少していました。一方、お台場でプラス17.8%、神奈川・江の島でプラス65.8%と行楽地で増加している状況です。 専門家からは「危機感が伝わりにくい状況だ」という指摘がありますが、感染状況はどんどん深刻化しているのが現実です。 1日は全国で新たに1万176人の感染が確認され、4日連続で1万人を上回っています。そして、5人の方が亡くなりました。 2日から緊急事態宣言の対象となった地域をみていくと、神奈川は1258人、埼玉は899人と日曜日としては過去最多の人数となりました。千葉は3日連続で700人台、大阪は890人でした。

全国知事会 都道府県境をまたぐ移動、原則『中止か延期』を

日テレNEWS

深刻な状況が続く中、1日開かれた全国知事会で知事らは危機感をあらわにしました。 大阪・吉村知事「デルタ株の感染拡大力は非常に強い、非常に危機的な状況」 神奈川・黒岩知事「医療崩壊が直前に迫っている」 全国知事会では、国に対する緊急提言が取りまとめられました。 提言では、お盆の帰省を含め、夏休み中の都道府県境をまたぐ移動は原則中止か延期にするよう、国民に対し強く呼びかけるよう求めています。 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出されている地域に限った話ではなく、すべての都道府県に対してです。 ただ、特に感染が拡大している地域からそうでない地域に感染を広げることは避けなければなりません。

『デルタ株』 水ぼうそうに匹敵の強い感染力か

日テレNEWS

東京都の小池知事は1日、都民に対して改めて感染対策の徹底を求めたうえで、「いつかかってもおかしくない。若くても重症化するぐらいの威力を持った『デルタ株』を相手に我々は今、闘っている」「デルタ株は非常に強敵なんだという認識を共有したい」と話していました。 このデルタ株が、いかに脅威かを示すデータが明らかになりました。アメリカのCDC(=疾病対策センター)の報告書です。 1人の感染者から何人に感染を広げるか。 通常の風邪は『2人』。季節性インフルエンザは『1人強』。そして、新型コロナウイルスの従来株は『1.5人~3.5人』とされています。しかし、デルタ株では『5人~9.5人』という結果でした。 身近なところでいうと、極めて感染力が強い水ぼうそうが『8人強』なので、水ぼうそうに匹敵するということです。 さらに、デルタ株の場合「ワクチン接種を終えた人でも、接種をしていない人と同じように感染を広げる可能性がある」という報告もありました。 ワクチン接種により、重症化するリスクは10分の1に減るということですが、ただ、感染するリスクは3分の1程度にとどまるという結果だったんです。 つまり、ワクチン接種は感染自体の予防としてはそこまで効果がない可能性があるというんです。とはいえ、3分の1にまでは抑えられる、ということもおさえておきたいです。

ワクチン接種も“感染広げるリスク”高い

日テレNEWS

さらに、感染を広げるリスクについて。 ワクチン接種した後に感染した場合と、接種していない状態で感染した場合を比べた時に、体内に保有するウイルス量は『同じ程度』ということも明らかになりました。つまり、ワクチンを接種しても感染を広げるリスクが高いということです。 CDCは「ウイルスとの戦いが変化したと認識すべき」としています。 ワクチンの効果はありますが、接種したあともマスクなどの感染対策を続けることが重要だということです。 都の担当者は「いままで以上に、どこで感染するかわからないぐらい市中に感染が広まっていることを認識してほしい」と話していました。 ひとりひとりが、この危機的状況を自分事だととらえて、この夏を過ごすことが収束へのカギとなります。

2021年8月2日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より

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感染症ニュース

RSウイルス感染急増 昨年の400倍超

https://news.yahoo.co.jp/articles/a67285cf910f9737f7434e122cbbd02e51fc0ef9

2021/7/13(火) 21:19 産経新聞

乳幼児に肺炎を起こす恐れがある「RSウイルス感染症」の患者が異例の早さで増加している。マスク着用や手洗いなどの新型コロナウイルス対策が進んだことで昨年、RSウイルスの流行が抑えられた反動とみられ、専門家は「免疫のない子供たちが今年、一気に感染する可能性がある」と警戒を呼びかけている。 「この時期にこれだけ感染者が増えるのは近年まれだ」。小児科専門の遠隔相談サービス「小児科オンライン」を運営し、東京都内の保育園で園医を務める橋本直也医師はこう話す。 RSウイルスは主に鼻水や発熱、せきの症状が出る呼吸器感染症。飛沫(ひまつ)や接触による感染で、2歳までにほぼ全ての乳幼児がかかり、何度も感染する子もいる。大人や2、3歳以上の子供は軽い風邪のような症状で済むことが多いが、生後6カ月未満や生まれつき心臓に病気のある子供などの場合、重症化しやすく、呼吸困難や肺炎に至ることがある。 国立感染症研究所の集計によると、定点医療機関当たりの6月28~7月4日の感染者数は4・13人で、昨年同時期(0・01人)の約413倍に上る。地域別では三重県(16人)、福井県(12・3人)、和歌山県(10・37人)などが多かった。 平成30年と令和元年は夏ごろから感染が拡大。昨年は年間を通して低調だったが、今年は春ごろから感染者が増え始めている。 新潟大の菖蒲川由郷(しょうぶがわ・ゆうごう)特任教授(公衆衛生学)は「昨年は新型コロナ対策でRSウイルスも流行が抑えられ、結果的に0~1歳児が感染して免疫を獲得する機会が少なかった」と指摘。社会活動が戻りつつある今年、その反動が起きているとの見方を示す。 夏のRSウイルスは高温多湿で流行しやすいとの研究結果があり、今年は西日本や東海地方が平年より早く梅雨入りしたことが影響している可能性もある。 「予防の基本は手洗い。他のウイルスより感染力が強いので、自宅や保育園でも子供がよく触る場所やおもちゃをアルコール消毒することも有効だ」と橋本氏。「ゼーゼー」と呼吸をするなどの重症化のサインがあれば、「夜間でもすぐに医療機関を受診してほしい」と強調した。

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感染症ニュース 社会問題

第5波で増える40代、 50代の重症者…「現場としては結構しんどい」コロナ治療最前線の医師が抱く不安と希望

https://news.yahoo.co.jp/articles/fc126726ce30396ef23b715a308bce3f38832e71

2021/7/15(木) 16:45 BUZZFeeD

新型コロナウイルス感染症の第5波が広がり始めた。政府分科会は7月、8月が「最大の山場」であると発信するが、医療の現場では何が起きているのか。そして、この夏、危惧することとは何か。埼玉医科大学総合医療センターで総合診療内科教授を務め、新型コロナ治療の最前線で治療を続ける岡秀昭さんに聞いた。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】

第5波到達、最前線の今

ーー現在の埼玉医大総合医療センターにおける状況を教えてください。 第5波はすでにこの総合医療センターにも到達しています。現在は中等症以上の方を中心に5名の患者を治療していますが、そのうち4名が40代および50代です。 残り1名は80代で1回目のワクチンを接種済みの方ですが、デルタ株に感染しており、重症化しています。 感染者数全体は10代、20代、30代といった若年層が多い。若い人々が引き続き重症化しにくい一方で、ワクチンの接種が進むことで高齢者の重症者が減り、40代や50代の基礎疾患をお持ちの人の重症者が増えています。 うちの確保病床は重症者用は6床、そしてそれ以外の中等症などのための病床が20床以上あります。 ですから、病床自体にはまだ空きはある。まだまだ空いているので、仮に今日搬送の依頼が複数来たとしても問題なく受け入れることができます。 ですが、入院を必要とする人々が以前よりも若いために変化が見えてきました。 これまでは入院を必要とする患者の多くは高齢者でした。そのため、回復したとしても退院までにはリハビリや転院調整などが必要となることが多く、長い時間を要しました。 しかし、40代、50代の方の場合には入院したとしても、重症でなければ適切な治療を受けて回復することで比較的スムーズに退院していきます。ですから、現時点ではベッドの回転率がこれまでよりも良い状態です。 でも、現場ではすでに負荷が高まりつつあり、しんどい状況です。このままのペースで感染者が増えれば、病床は埋まり、医療逼迫が訪れることは確実です。 数字だけを見ていれば、回転率が上がっているため病床にはまだ余裕があると思うかもしれませんが、3人退院したと思ったら、すぐに2人入院してくるような状況が続いています。 もしかすると、このような要因から第5波ではなかなか病床全体の使用率は上がりにくい可能性があります。ですが、入退院が激しい中で病床使用率では見えない現場のスタッフへの負荷は高まりつつあります。 ーー高齢者ではなく、40~50代が重症化することで、現場では他にもどのような変化が起きるのでしょうか? 重症化した際、人工呼吸器を着けるかどうかを判断する上ではご本人、ご家族と相談します。 たとえば80代、90代の患者さんであれば、希望しないというケースも少なくありませんでした。 しかし、40代、50代の患者さんとなると、ほぼ全ての人が救命を前提とすることが予想されます。 おそらく高齢者よりも40代~50代の人の重症化率は低くなると思います。しかし、重症化した場合に人工呼吸器を着ける人の割合は高齢者よりも高いでしょう。 ほとんどの重症患者が人工呼吸器を必要とするということは、重症者の受け入れを中心に医療逼迫も起きやすい。このペースで感染者が増えれば、2週間程度で当院の新型コロナ病床は逼迫する可能性があります。 ーー変異ウイルスへの置き換わりは進んでいますか? 2週間前に当院でも初めてのデルタ株の患者を受け入れました。そして、現在では2割から3割の患者さんがデルタ株です。 前回の従来型からアルファ株への置き換わりも、最初の1例から1ヶ月ほどかけて進みました。今回もおそらく同じようなペースで置き換わりは進んでいくと考えています。 デルタ株への置き換わりが進むことで、危惧されるのはワクチンを1回しか接種していない高齢者の発症や重症化です。これまでの従来型のウイルスであれば、1回接種でもそれなりに発症や重症化を予防できました。 しかし、デルタ株が広がることで、このような前提が崩れる可能性があります。まだ1回しか接種していない高齢者の場合、2回目の接種を急ぐ必要があります。 この第5波では、おそらく一部のワクチンを1回だけ接種した高齢者と40-50代の重症者が混ざり合い、そうした人々でベットが埋まる状況になるのではないかと予想しています。 今はまだ、入院を必要とする人々が40~50代中心でベッドの回転率も早く、適切な治療を早期に受けられているため多くは重症化の一歩手前で持ち堪えています。 でも、重症化すれば、40~50代であっても人工呼吸器が必要です。そして、1度人工呼吸器をつければ、平均的にはおよそ3週間程度は外せません。 ですから、このまま感染者数が増え続ければ、重症者を中心に受け入れが難しくなり、再びの医療逼迫は避けられません。 私たちはできる限り頑張りますが、限界はある。現在の感染状況が続くと、私たちの限界を超えてしまいます。

崖を落ちるように悪化、「見えない災害」の現場で起きていること

Takashi Aoyama / Getty Images

ーー世界各国に比べれば少ないものの、日本における新型コロナによる死者は1万4000人を超えました。単純比較はできませんが、阪神淡路大震災の死者6434人を大きく上回ります。しかし、感染者や重症者が身近にいないと、その影響の大きさを感じにくいのも事実です。 たしかに、この新型コロナのパンデミックはなかなか見えにくいですよね。 まさに、「見えない災害」なのだと思います。 私は新型コロナ治療の最前線に立っています。しかし、ここから見えている景色が、なかなか多くの人に伝わっていないもどかしさを感じるのも事実です。 津波や土石流であれば、どれだけの被害があったのかが一目でわかります。「これは大変だ」と多くの人が直感的に理解できる。 しかし、コロナの現場は隔離されており、外からは見えません。 今だって病棟から一歩外に出れば、みんな通勤や通学をして、制限はあるものの、日常生活を送っている。風景の中で普段と違うのは、みんなマスクをつけているということぐらいでしょう。 そんな中では、新型コロナについての情報は、毎日報じられる感染者の数だけかもしれません。 実は私は、この新型コロナに対応する現場で何が起きているのかを伝えるために、TwitterやFacebookで発信を続けています。 現場で何が起き、どのように私たちが対応しているのかを知ってもらい、日々の感染対策に協力していただかなければ、この「災害」は乗り越えられないと思うからです。 情報を発信すれば誹謗中傷や批判の声も届きます。最近は少しずつ慣れましたが、当初は大きなストレスを感じました。 それでも、私は治療の最前線で見ている世界を伝える必要がある。そう考えています。 ーー私たちは「重症化」と一言で片付けてしまいがちですが、現場では何が起きているのですか? 新型コロナに感染すると、ほとんどの人は後遺症の問題はあるものの、1週間程度で軽快します。しかし、一部の人は1週間が経過した後も発熱が続き、肺炎が明らかになり悪化していきます。 意外に思うかもしれませんが、入院が必要なタイミングではまだ多くの患者さんは重篤には見えない状態です。大体の人は病院へ搬送された時点では意識も良いし、歩くこともできる。 喘息や間質性肺炎など、他の病気ではこれほど見た目が元気であることは考えにくい。喘息であれば、入院が必要なタイミングでは「ヒューヒュー」という呼吸音が聞こえ、「先生、苦しい、苦しい」と、肩で息をしているような状態です。 ところが、新型コロナの患者は喘息や間質性肺炎などと同じ酸素飽和度であっても、平静を保っていることが多いのです。咳をしたり、熱はあるけど肩で息をしているような人は少ない。 酸素飽和度はかなり低いので、「どうですか?苦しいですか?」と医師は聞きます。すると、大抵は「いや、そうでもないですね」と答えます。でも、実際には重篤な酸欠状態にすでになっている。 入院してからも、他の呼吸不全の患者さんのように音を立てることも少ない。ベッドサイドが静か、というのが私の新型コロナの患者さんのイメージです。 そんなに元気ならば大したことないじゃないか、と言う人がいるかもしれません。ですが、さっきまで歩いていた、苦しくないと言っていた人の様子が数時間で一変します。 突然、崖を転げ落ちるように状態が悪化する。 ご家族からすると目の前で起きていることを理解するのは、なかなか難しいかもしれません。「さっきまであんなに元気だったのに、なぜ亡くなってしまったのか‥」と感じる人も少なくないでしょう。 「コロナは風邪」でないことは明らかです。 この1年半、現場で治療に当たる中で「私が感染させたんじゃないか」と後悔するご家族の方にも出会いました。そして、隔離病棟に入院しているため、現在でも他の疾患に比べれば面会が難しい状況です。 これらの事情から、亡くなったときのインパクトが大きい病気だと感じます。

新型コロナ最前線に広がる、“普通はあり得ない”光景

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ーー医療現場は必死に対応している中で、「なぜ、病床を増やすことができないのか」といった声も聞こえてきます。 病院を利用するのは新型コロナの患者さんだけではありません。心筋梗塞や脳卒中、がんや交通事故など様々な理由で受診する人がいます。 そして大学病院は高度専門化されており、それぞれの科が様々な高い専門性を持っているものの、必ずしも感染症や集中治療には精通していないのです。 3次救命の受け入れをしている当院には、他の病院では治療できない患者さんが多く運ばれてきます。 人的ゆとりがない中で、専門医を配置換えすれば、本来の守備位置に綻びができ、受け入れができなくなる。 さらに異動した守備位置には慣れていないため、効率的ではない。つまり、ほとんどの専門医は簡単に守備範囲を変えることは困難なのです。 埼玉医科大学総合医療センター全体の病床は約1000床です。 かつて私たちが受け入れてきた新型コロナ患者の合計は第3波の時点で200名であることを伝えると、「もっと受け入れないのか?」「なんで医療のキャパシティを増やせないのか?」と言う人もいますが、そんなに簡単な話ではない。 重症6床でも、いっぱいいっぱいです。 そもそも呼吸器内科の医師であっても、人工呼吸器をつける患者さんを同時にこれほど多く受け持つことはありません。 呼吸器内科の専門医でもある私の経験からは、一般的な病院の呼吸器内科であれば、研修医を含む医師3名で10人程度の患者を担当します。その中で、人工呼吸器を必要とする人は多くても1人いるかどうかです。 1人いるだけでも、「重症患者を抱えて大変だね」と言われています。 ところが、新型コロナの感染拡大時には一番重症者が多い時で7人から8人が同時に人工呼吸器をつけてそれを少ない医師で受け持っている状態です。 ICU(集中治療室)で勤務していない医師にとって、こんな状況はあり得ません。 ーー人工呼吸器を着ける人が1人いると、現場ではどのような対応が必要となるのでしょうか? 看護師は基本的にマンツーマンの体制です。 血圧の変化に対応したり、人工呼吸器が外れるような命に関わることがないように、つきっきりで対応する。 寝返りをうつこともできないため、定期的に姿勢を変えなければいけません。痰が出れば、それを吸引します。排泄物の処理も必要です。 食事も取れない状態なので、点滴を外すことはできません。血圧を維持する薬を使い、モニターでずっと心電図を見ている。 看護師以外にも、質の高い治療を提供するために医師は1人の患者につきっきりで対応します。さらに人工呼吸器を扱う技師やリハビリをする技師など、医療従事者はのべ10人ほど必要です。 そして、それを3交代で24時間代わる代わる担当する。10人×3交代で30人。 単純計算ではありますが、1人の重症患者を診るということは、のべ20~30人の医療従事者の力が必要となります。 1人だけでも大変ですが、それが多いときには7人から8人並ぶ。現場への負荷は非常に大きいです。 そんな中でも、第4波では人工呼吸器をつけた患者さんが10人ほどいましたが、最新のエビデンスを踏まえ私たちの経験を加味した治療を提供し、幸い全員の命を救うことができました。 人工呼吸器をつけた最重症患者の死亡率は報告にもよりますが2-3割であるため、現場を指揮する医師として、頑張った患者さん、懸命に治療や看護に当たったスタッフを私は非常に誇らしいと感じています。 この10人は何もしなければ、みんな亡くなっていたと予想される方々ばかりでした。 この成績をこの夏も維持するためには、医療の需要と供給の適正なバランスを守ることが重要です。 感染者が増えた結果、しっかりと治療を提供できれば救える命が救えなくなる。第5波でも、そんな「医療崩壊」の事態だけは何としても避けたいと思っています。

現在は「8回裏」。ゴールは見えてきた

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ーー40代~50代の重症者が増えつつある今、五輪が開幕しようとしています。何を思いますか? 個人的にはもう2、3ヶ月延期していれば、本当の意味で「コロナに打ち勝った証」として開催することも不可能ではなかったと思います。 現在のペースでワクチン接種が進めば、有観客での開催もできたかもしれません。 五輪の開催が、感染対策にプラスに作用することはありません。感染拡大への影響をできる限り小さくするための工夫が必要とされています。 緊急事態宣言が7月12日から発出され、その効果がようやく見え始める2週間後には五輪が開幕しています。試合が終了する前に祝勝会が開かれるようなもので、これはタイミングとしては最悪です。 実は私も野球の準決勝のチケットが当選し、購入していました。自分が住む国で五輪を経験することができる機会はなかなかありませんから、とても楽しみにしていました。 でも、現在は安全な大会運営の根拠が見えず、医療現場で新型コロナに対応する医師として不安を覚えています。 「安心安全の大会を実現する」と政府や組織委員会は繰り返し発信していますが、安全な大会運営を可能にする根拠を示すことで初めて国民は真の安心ができる。 「安心安全」という言葉を繰り返すだけでは意味がありません。 「このような対策を実施する」「このような場合にはこんな対応をします」と対策の全体像を公開し、専門家や外部のチェックを経た上で大会を開催すべきでしょう。 開幕後にはニュースは五輪一色になるかもしれません。 結局、「世論と空気だけ変えればどうにでもなる」となってしまえば、医療現場と患者だけが取り残されます。 五輪で日本選手が活躍し、世間の注目はそちらに集まる中、医療現場は大変な状況に陥る… 私はそれを一番恐れています。Yuto Chiba / BuzzFeed

ーー7月、8月が「最大の山場」であると言われていますが、現場の医師としてどう感じますか? この第5波を乗り越えられれば、医療逼迫を心配しなければいけない状況からは脱却できる可能性があると感じています。 最前線で治療にあたる中で、ワクチン接種による効果を実感しています。このままワクチン接種が順調に進めば、第6波が起きたとしても医療逼迫は起きないかもしれません。 今回が最後の我慢になる可能性は高い。 コロナはなくなることはないかもしれませんが、ワクチンによって病原性が落ちて、日常生活が戻ってくるというシナリオは十分に考えられると思います。 この1年半、みんなが様々なことを我慢してきました。現在、様々なところで限界を迎えていると言われています。たしかに終わりが見えなければ、我慢を続けることは難しい。 しかし、今回の緊急事態宣言が最後になる可能性があることをしっかりと伝え、この夏だけは引き続き協力をお願いできないでしょうか。そんなメッセージを政府に出していただきたい。 ゴールは見えてきています。野球で例えれば、今は8回裏。1点差の緊迫した状態です。 油断すると逆転されてしまう。しかし、勝利は目前です。

千葉雄登