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コロナ禍で「消費に変化」鮮明…バーガー20%増、飲酒は83%減

https://news.yahoo.co.jp/articles/05321cf5930d766218729517eb333609497cb7d8

2021/9/12(日) 14:02 読売新聞オンライン

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「新しい生活様式」は、消費に新たな潮流を生み出した。外出自粛による持ち帰り需要でハンバーガーが大幅に増えたほか、テレワークの浸透はワイシャツの消費を抑えた。コロナ禍で昨年から続く動きは、今年に入ってさらに加速している。

テイクアウト

1/2(写真:読売新聞)

 「外出の自粛で店内客は減っているが、それを上回るテイクアウトやデリバリーの利用がある」

 日本マクドナルドホールディングス(HD)の広報担当者は、近況についてこう説明する。

 既存店売上高は8月、前年同月比で5・3%増となり、度重なる緊急事態宣言でも14か月連続で前年実績を上回った。コロナ禍前から、ドライブスルーや宅配の利用が消費者に定着していたことが大きい。

 総務省の家計調査を基にした読売新聞の今年1~7月の集計では、ハンバーガーの1世帯(2人以上)あたりの消費支出は、コロナ禍前の一昨年1~7月に比べて20%増えた。緊急事態宣言の影響を強く受けた飲酒代の83%減をはじめ、和食が25%減、中華そばが24%減となる中、ハンバーガーの好調さが際立つ。

 商機が生まれており、居酒屋大手の鳥貴族HDや、ファミリーレストランなどを運営するロイヤルHDは、バーガー店を開業した。

 外出自粛を中心とする消費者の自主的な感染予防策は、他の消費にも影響を及ぼした。医薬品では風邪薬など「感冒薬」が18%減だったのに対し、手洗いの徹底や自宅での料理で手荒れが増えたためか、「外傷・皮膚病薬」は26%増えた。

 自動車については、ガソリン代が16%減、レンタカーやカーシェアリング料金が23%減と落ち込む一方で、「自動車等関連用品」は12%増だった。自動車の衛生を保つため、シートカバーや洗車用具が売れたとみられる。

テレワーク

 コロナ禍に伴う働き方の変化は、家庭のデジタル化とテレワークの定着を一気にもたらした。1~7月の消費支出では、パソコンが一昨年同期比で50%増、照明器具が63%増と大きく伸びた。

 これまでビジネスで必須だった商品は苦戦し、背広服は47%減、ワイシャツは31%減となっている。紳士服チェーンはオンライン会議に出席する際の服装に着目。ストレッチ素材のスーツ風商品を投入し、テレワーク需要の取り込みを強化している。

 これらの消費潮流は感染が拡大し始めた昨年、新しい生活様式が提唱されたことで生まれた。総務省が8月に発表した昨年の家計調査年報によると、ハンバーガーはコロナ禍前だった一昨年比11%増で、外食で唯一、前年を上回った。外傷・皮膚病薬が16%増、自動車等関連用品が6%増、パソコンが35%増となった。

 支出が減少した分野では、飲酒代が53%減、感冒薬が18%減、ガソリン代が21%減、背広服が39%減などだった。増加した項目を中心に、昨年からの消費潮流が今年に入って一段とはっきりとしたことになる。

 コロナ禍の収束で社会経済活動が正常化すれば、苦戦している分野の需要は戻ると考えられる。ただ、消費者が感染防止のために実践してきた新しい生活様式も定着するとみられる。ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員は「出店戦略や業態転換など『ポストコロナ』の消費を見据えた対応が必要だ」と指摘している。