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社会問題

化粧品大手各社、軒並み減収 インバウンド消失と外出自粛・マスク生活が直撃

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6384184

2021/2/4(木) 16:23配信 東京商工リサーチ

 長引く「新型コロナウイルス」感染拡大で化粧品業界が苦境にあえいでいる。外出自粛、インバウンド需要の消失で化粧品ニーズが変わったためだ。  (株)コーセー(TSR企業コード:290050723、東証1部)と(株)ノエビアホールディングス(TSR企業コード:662279069、東証1部)が発表した直近の四半期決算では、いずれも前年同期比10%以上の減収だった。外出自粛やテレワークの浸透の余波はアパレル業界だけでなく化粧品業界にも広がっている。

マスクで「スキンケア意識の高まり」も

コロナ禍でも美容液などは堅調(2月上旬、都内)

 1月29日にコーセーが発表した2021年3月期第3四半期決算は、売上高が2041億3500万円(前年同期比18.0%減)、営業利益が111億4100万円(同70.6%減)だった。インバウンド需要の消失と外出自粛が化粧品販売を直撃した。コーセーの担当者は東京商工リサーチの取材に対して「外出自粛が落ち着いた中国市場の需要は復調している」と話す。だが、国内は長引くマスク生活で、口紅などマスクの下に隠れる部分に使用する商品の不調が深刻だという。  一方、シワ改善美容液やマスクで覆われない目元向けのアイメイク商品は「比較的堅調に推移」(同担当者)と期待を寄せている。また、「マスクが当たる部分はどうしても肌の調子が不安定な状態になる。そのためスキンケアへの意識が高まっている」(同)とトレンドの変化を説明する。  (株)カネボウ化粧品(TSR企業コード: 291520677)を傘下に持つ花王(株)(TSR企業:290030129、東証1部)は2月3日、2020年12月期決算(通期)を発表した。売上高は、ハンドソープや消毒液などの衛生用品が伸長したが、1兆3819億9700万円(前年比8.0%減)だった。営業利益が1755億6300万円(同17.1%減)だったものの、化粧品事業に限っては売上高が2341億円(同22.4%減)、営業利益26億円(同93.7%減)と新型コロナの影響をダイレクトに受ける結果となった。2021年12月期も新型コロナの影響が継続するとの見通しから、化粧品事業は売上高を2490億円と予想。2020年12月期比で6.7%増と見込むが、コロナ前の2019年12月期(3015億円)までの水準には戻らないとみる。

大手が軒並み減収

 ノエビアHDは1月29日、2021年9月期第1四半期決算を発表した。売上高は138億7200万円(前年同期比10.3%減)、営業利益は30億2500万円(同10.5%減)だった。そのうち、化粧品事業の売上高は109億2900万円(同10.0%減)で、売上高の約8割を占める化粧品分野の落ち込みが響いた。  (株)ポーラ・オルビスホールディングス(TSR企業コード:296846023、東証1部)は2020年12月期第3四半期の売上高が前年同期比24.0%減、(株)資生堂(TSR企業コード:290076870、東証1部)は同22.8%減だった。化粧品とサプリメントが主力の(株)ファンケル(TSR企業コード:350606404、東証1部)の2021年3月期第3四半期の化粧品事業の売上高は前年同期比17.9%減と、大手は軒並み10-20%前後の減収となっている。  業界大手の資生堂は、主力の化粧品だけでなく、ヘアサロンの休業などでヘアケア類の需要も落ち込み、2020年12月期は300億円の最終赤字を見込む(2月9日通期決算を発表予定)。大手各社は外国人観光客が多く訪れた百貨店の化粧品コーナーにブランドテナントを出店している。  インバウンド需要が消失し、来期も業績の落ち込みが避けられない状況だが、しばらく我慢の経営が続きそうだ。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年2月5日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)