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コロナワクチン「3つの副反応」リスクに免疫学の第一人者が警鐘

https://news.yahoo.co.jp/articles/62f38bf3edf082801680a145d086ebbf76b37bc1

2021/1/11(月) 6:01 DIAMOND ONLINE

 新型コロナウイルス対策の切り札とされるワクチン。英米など海外では接種も始まった。特集『総予測2021』(全79回)の#61では、免疫学の第一人者である宮坂昌之氏が、新型コロナワクチンはどこまで期待していいのか、心すべきは何なのかを語る。(ダイヤモンド編集部 小栗正嗣【この記事の画像を見る】週刊ダイヤモンド」2020年12月26日・2021年1月2日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。 ● ワクチン接種がより広まって 初めて見えてくる副反応リスク  新型コロナウイルスのワクチンに注目が集まっています。  日本政府が供給を受けることで合意している、あるいは契約を結んでいるのは、米ファイザーと米モデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、それから英アストラゼネカのウイルスベクター(アデノウイルス)ワクチンの三つがあります。  ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンが95%の有効性とうたうのをはじめ、いずれも90%以上の有効率があるとします。  普通のワクチンの有効率は、例えばインフルエンザでは30%から良くても60%ぐらいですから、この数字はすこぶる高い。  ただし、分析データを見てみると、注意する必要があることが分かります。問題は安全性です。

 ワクチンの場合は副作用ではなくて副反応という言葉を使います。ワクチンによる健康被害の多くは、免疫反応そのものによって起きるものだからです。  その副反応には大きく分けると3種類ある。一つ目は即時に、接種して数日以内に出てくるもの、二つ目は2週間から4週間たってから出てくるもの、三つ目はワクチン接種者が感染した場合に出てくるものです。  一つ目の早い方の典型は「アナフィラキシー」という、全身に現れるひどいアレルギーです。海産物などの食べ物でも引き起こされるので、よくご存じでしょう。  当初、皮膚がかゆい、目まいがするといった症状から始まって、さらに血圧が低下して意識障害、失神に至り、命を落とすこともあります。  ただし、ワクチンによるアナフィラキシーの頻度は、これまで開発されたワクチンでは100万回に数回というレベルでした。  例えば、ファイザーは第3相臨床試験に4万3000人を超える人が参加したとしていますが、ワクチン接種群とプラセボ(偽薬)接種群がそれぞれ何人感染、発症したかを見ているので、実は半数の2万1000人超しかワクチンを接種していません。  100万回に数回しか現れないような副反応は、2万人超では見えない可能性があるのです。この点で少し心配なのは、英国で接種開始直後に、すでに2例のアナフィラキシーショック様の症状が見られていることです。このリスクについてはもっと時間がたたないと分からないと思いますが、慎重な判断が必要です。  二つ目の遅い方の副反応の典型は、脳炎などの神経障害、それから末梢神経がまひするギランバレー症候群などがあります。  例えば脳炎については、おたふくかぜのワクチンだと、100万回の接種に対して10回ぐらい起こる可能性があるといわれている。

 重篤な副反応の頻度は 100万回に数回程度  多いように感じられますが、おたふくかぜのウイルスに感染すると、その約10倍の頻度で脳炎が起こり得る。ワクチンによって脳炎にかかるリスクを下げるわけですから、リスクがあっても接種した方がいいということになります。今回のワクチンでは2回目接種の2カ月後ぐらいまでは調べていて、脳炎、神経障害などは見られていないようです。  三つ目の副反応はADE(抗体依存性感染増強)と呼ばれ、ワクチン接種後に抗体ができ、その抗体のために新型コロナ感染症が悪化するというものです。  せっかく獲得した抗体が、再び感染した際に悪く作用し、重篤化につながってしまう。  今回の臨床試験では、ワクチン接種群で10人以内の感染者しか出ていないので、ADEのリスクを判断するのは困難です。この現象は感染の拡大、ワクチン接種の増加によって初めて見えてくるものなのです。  ワクチンによる重篤な副反応の頻度は100万回に数回程度。現段階ではそのリスクについて早計に判断すべきではありません。  ワクチンについてまだ分かっていないことは結構あります。  そもそもウイルス疾患と免疫の関係は非常に複雑です。例えば、おたふくかぜやはしかは、2回ワクチンを接種するか、一度病気にかかれば20年、30年と免疫が続く。それに対して、インフルエンザなどは4カ月ぐらいしか免疫が持続しません。  なぜそのような違いが出てくるのか。本当のところはまだ分かっておらず、この謎を解いたらノーベル賞級です。

● ワクチンはおそらく 毎年接種せざるを得ない  新型コロナに関しては、免疫学者から見ると、さまざまなことがインフルエンザと似通っている。ワクチンができても、インフルエンザ程度の期間しか免疫が持続しない可能性もあります。少なくとも20年、30年続くタイプではありません。おそらく半年とか1年ではないかという気がしています。  インフルエンザのように毎年違う型が出現するわけではないにしても、おそらく毎年ワクチンを接種せざるを得ないでしょう。そうすると、やはり心配は副反応になります。  日本の感染状況では、東京や大阪などの新規感染者数は10万人当たり20人から50人くらいです。しかもその中で、他の人にうつすのは1割から2割といわれている。要は、私たちが他人にうつす感染者と出会う確率は、1万人に1回あるかないかです。  一方で、ワクチンを接種して重篤な副反応が現れる頻度は100万回に数回です。私たちは、ワクチンのメリットとリスクを天秤にかけて判断しないといけません。  ワクチンは治療薬と違い、健康な人が予防効果のために接種するものです。高い安全性が求められます。ワクチン接種が始まるのは2021年半ば以降と見込まれますが、拙速に動くべきではありません。  また、ワクチンは皆が接種を受けないといけないと迫るべきものではありません。個人の自由、個人の意思の下に受けるなら受け、受けたくない人は無理に受けなくていいとすべきものなのです。  Key Visual by Kanako Onda