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コロナ 社会問題

「とうとう、ここまで…」やまぬ感染拡大に追い込まれる医療現場 医師2人が「実態報告」と「切実提言」

https://news.yahoo.co.jp/articles/dcfa645b94f9fc25565b1d20a5ff58aeff3427c9

2021/8/19(木) 21:16 YTV

新型コロナ感染 過去最多をまた更新

8月19日、全国の新規感染者は初めて2万5000人を超え、2万5156人(NNNまとめ)と2日連続で過去最多を更新しました。病床のひっ迫が深刻となる中、どんな対策が有効なのでしょうか?  【18日】近畿で新たに4238人感染 2日連続で過去最多更新 大阪、兵庫、奈良、滋賀で最多を更新 神奈川県のコロナ対策リーダーで、医療危機対策統括官を務める阿南英明(あなん・ひであき)医師と、日本ワクチン学会理事で小児科医の長崎大学大学院・森内浩幸(もりうち・ひろゆき)教授が、現在流行しているウイルスとどう対峙すればいいのか、提言しました。

想定を超え、増え続ける患者 通常医療との両立は限界

神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明医師

Q.神奈川の病床使用率は全体で85%、重傷者100%でかなり厳しい状況ですね? (神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明医師) 「年末年始の第3波で非常に苦しい思いをして、この時にいろんな仕組みをさらに強化して作ってきました。その時に、あの倍ぐらいの患者さんが発生してもなんとか耐え得る、そういう強化策をいろんな仕組みの中に入れてきたんですが、今の患者さんの増加は、「倍」をはるかに超えてしまった、我々が用意していた上限をはるかに超えてしまった。そういう中での戦いになっています。」神奈川県の感染ステージと療養状況

(神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明医師) 「今はもう本当に、低酸素の方々が自宅・宿泊療養で発生してしまっている。そういう方々が入院できない…こういう現実を踏まえるならば、現場は、『酸素の低い方』を優先するというふうに変更しました。そうせざるをえない現状を追認というか…」 「『これまで普通にやってきた医療を極力維持しながら、コロナをやろう』ずっと、これをコンセプトにして来たが、限界にきてしまった。そうであるならば、延期できるものを延期してください。その分、空いたベッド、あるいは医療スタッフ、こういったものを回してコロナ対応をしましょう。そこまで追い込まれている状況です」

使いたくなかった「酸素ステーション」

通常医療 すでに限界も…

Q.どういう想定で酸素ステーションを立ち上げたのですか? (神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明医師) 「年末年始の第3波が非常にきつかった。あれがずっと続いて、もう本当にひどくなるんだったら、これは病院で収容しきれない事態になる。そこを想定して酸素ステーションを1月に考案し、態勢を整えました。この考え方は『災害医療』の考え方です。災害時には本当に病院がいっぱい、あるいは救急車も運べないような、まさに今のコロナと似たような状況になるので、その時に、『応急救護所』を立ち上げるんですね。この応急救護所で一時、命をつなぐ治療をして、病院に何とか運び込む…という発想です。ですので、実際には『酸素ステーション』は使いたくないという思いがすごく強かったです。第3波、第4波では使いませんでしたが、とうとう使わなければいけないところまで来たということなんです」

(長崎大学大学院・森内浩幸教授) 「阿南先生たちが1月の段階で、既に酸素ステーションの設置に着手されていたというのは本当に素晴らしいことだと思います。それが国のレベルで、今になって動いているというのは、あまりにも先を読んでないのかなっというところは大変辛いなと思います。そもそも在宅酸素療法というのは、慢性的な呼吸不全に用いるものであって、酸素が必要になっている人を自宅で行うというのは、本来の医療が全く行われていない、そういう状況だっていうことをやっぱり頭に置いておかなきゃいけない。あくまでもこれは繋ぎだっていうことは、皆さん十分に理解しておく必要があると思います」

日本医師会が提案した臨時の医療施設「野戦病院」 効果は?

日本医師会の提案

Q.日本医師会が提案した「野戦病院」については? (神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明医師) 「我々は、昨年の5月の段階で、もう臨時医療施設を作っているんですね。180床の臨時医療施設を運営しています。全国で一番最初に作り、一番大きいものだと思いますが、難しいのは、いかに医療者を運用するかというところです。」 「わが国においては、建物を作って、そこにベッドを入れて、酸素を供給することは、すぐにできます。しかし、臨時医療施設は、病院を作るのと同じことですから、患者さんに看護師さんがどういうふうに当たるのか、お医者さんがどう当たるのか…という仕組みが大事なんです。この仕組みを突然ポッと作れますかというと、作れないんですね。我々は酸素ステーションの運営あるいは臨時医療施設をやっていますが、なかなかこの医療スタッフを連れてくること自体も難しい。酸素ステーションでは全国からの支援をお願いしていますが、なかなか来ないんですよ。だから我々こういったものを作るハードだけじゃなくて、ソフト面の重要性を、ちゃんと見極めて作っていく、こういった視点を必ず忘れないでやっていただきたい」

切実な提言「患者をこれ以上増やさない具体策を」

(神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明医師) 「今、災害の様だと例えらていますが、皆さん災害って地震とか津波とか我々があらがえない力でワーッと来るものに対して、どういうふうに対応するかという事で考えますよね。今、このコロナっていうのは、確かに災害の様なんですけれども、本当に我々がどうすることもできない力なのかということを、もう一度見直していただきたい。」 「感染症はヒトからヒトにうつるので接触なんですよ。この接触を絶つということに関して、単に緊急事態宣言だけではもう止まらないってことは、皆さんもうお分かりですよね。これよりも、もうちょっと踏み込んだ『何か』ということを、本当に法律上問題があるという事は分かっていますけれども、であるなら、そこの議論を早急に着手して、これ以上増えないようにするという具体策を打たないと。医療もさすがに限界があるので。是非、早急な議論をお願いしたいと思います」

「子ども間での感染は、間違いなく増える」

長崎大学大学院・森内浩幸教授

また、小児科が専門の長崎大学大学院・森内教授は… Q.東京で10代の感染者数が増えている要因は? (長崎大学大学院・森内浩幸教授) 「社会の中で、流行は、まず若い大人たちから、そして最終的に家庭に持ち込まれ、親から感染する。場合によって、保育施設や教育施設でも、教職員と保育士さんから感染する。流行が進めば子どもにも感染が及ぶ。前はそこで終わっていたんですけれども、感染力が強くなって、以前は非常に珍しかった『子ども同士の感染』も、結構起こるようになってしまった。今後、やっぱり子どもたちの間での感染は間違いなく増えると思います。子どもたちが重症化することは、極めてまれであることは間違いないんですけれども、新たな変異をしてきているということで、そこは注意して見ていく必要もあると思います」

学校閉鎖なら「大人もステイホーム」

(長崎大学大学院・森内浩幸教授) 「学校閉鎖っていうのは、子どもの心や体の健康、それから発達にものすごく大きな影響を与えてしまいます。小学校を学校閉鎖したとしても、親が普通に仕事に行っていたら、学童(保育)に預けることになるんですね。学校閉鎖という、子どもたちの『ロックダウン』をするのであれば、それは大人のロックダウン、つまり大人はリモートで家庭に居るということがあくまでも条件だと私は思います。その時期に私は今来ていると思いますので、親と一緒に子どもも家庭にステイホームの状態でいてほしいと思います」

子どもにワクチンは必要か?

(長崎大学大学院・森内浩幸教授) 「今は12歳以上にしかワクチンの適用はありませんが、もし順番を聞かれたならば、健康な子どものワクチン接種は、一番最後だと思います。今でも死亡につながる人たちというのは、やっぱり高齢であったり、基礎疾患を持っている大人たちであって、その人たちがワクチン接種が終わっていない中で、健康な子どもたちに先にする必要はないと思います。でもその順番が回ってきた場合には、ワクチンのメリットは十分にあると思いますし、デメリットも当然ありますので、十分理解した上で、考えていただくということになると思います」 Q.親が感染したら、子どもはどうすればいいですか? (長崎大学大学院・森内浩幸教授) 「これ多分、ケースバイケースで、ずいぶんパターンは変わってくると思います。親が感染し、子どもさんの感染も確認された場合に、親御さんと子どもさん併せて、家庭でみるという選択肢もあるし。いっしょに宿泊施設に行くということもあるでしょう。親が入院しなきゃいけなくなった場合に、子どもさんをどこでどういう形でみるかも、その地域で準備してある所の状況や家族の構成とか、いろんなものによってみんな違ってくると思います。総論的なことを決めるのは簡単ですが、1つ1つ、お一人お一人の事例に関しては、その都度、ベストの態勢を考えるような仕組みを作っておいて、決めていくしかないと私は思っています」

(情報ライブミヤネ屋 8月19日放送)