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感染症ニュース 関連知識

高齢者の巣ごもりにご注意! 「生活不活発」はコロナ感染の重症化リスクにも

https://news.yahoo.co.jp/articles/5198d82baa31a0f76b2b6538df4998ca708d3b68

7/23(木) 20:11配信 ヨミドクター

街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー

 ヨミドクターをご覧のみなさま、サービス介助士インストラクターの冨樫正義です。「街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー」として、約2年間、連載を続けてまいりました。そして今、新型コロナウイルス感染症の拡大により、「新しい生活様式」が求められていることから、今後は「新しい生活様式でのダイバーシティー(多様性理解)」を主眼とした内容を随時掲載していこうと考えています。引き続きお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

感染を恐れて動かなくなると…

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 さて、今回は「高齢者と感染症」をテーマにお話しします。  新型コロナウイルス感染症では、比較的、軽症者や無症状者が多い一方で、高齢者や基礎疾患のある人が重症化しやすい傾向にあります。これには、「加齢による免疫力の低下や生活習慣病が関係しているのでは」と言われています。高齢者は特に、自身の命を守るためにも、マスクの着用と手洗いの徹底、人が多く集まる場所を避けることなどの感染予防策が必要です。  しかし、感染を恐れて外出を避け、いわゆる「巣ごもりの状況」が長く続くと、高齢者には「生活不活発」による健康への影響が懸念されます。生活不活発とは、動かない状態が続くことにより心身の機能が低下し、ついには「動けなくなる」ことをいいます。身体機能のみならず、認知機能の低下も表れやすくなるのです。  この悪循環の状態は「フレイル(虚弱化)」とも呼ばれます。これは、英語で老衰や虚弱を意味する「Frailty(フレイルティー)」をもとに日本老年医学会が考案した言葉です。詳しく言えば、「加齢とともに心身の活力(たとえば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態」となります。  高齢者にとってフレイルは、身体の回復力や免疫力の低下にもつながります。そのため、感染症にかかった際に重症化しやすくなると言われています。つまり、感染を恐れるあまり、生活不活発の状態になると、反対に感染に弱くなってしまう心配があるのです。

「3密」を避けた生活も重要だが

 フレイルの診断基準には、<1>体重減少、<2>疲労感、<3>筋力の低下、<4>歩行スピードの低下、<5>身体活動量の低下……という五つの項目があり、このうち三つ以上の項目に当てはまる場合にフレイルと診断されます。また、1項目か2項目に当てはまる場合は、フレイルの前段階である「プレフレイル」と見なされることがあります。  多くの高齢者が、健康な状態から中間的な段階(フレイル)を経て、徐々に要介護状態になっていきます。つまり、「生活不活発」により、フレイルが進み、心身や脳の機能が低下するのです。新型コロナウイルスに感染しないためには「3密(密閉、密集、密接)」を避けた生活も重要ですが、その一方で、動かない時間を減らし、自宅でもできるちょっとした運動を心がけ、フレイルを予防することも、高齢者にとっては大切なのです。

冨樫正義(とがし・まさよし)

冨樫正義

 1973年、埼玉県生まれ。桜美林大学大学院卒(老年学研究科修士号)。日本サッカー協会 施設委員。法律事務所、不動産関係会社、人事コンサルタント、専門学校講師を経て、現在、サービス介助士、防災介助士、認知症介助士などを認定・運営する団体「公益財団法人日本ケアフィット共育機構」(0120‐0610‐64)のインストラクターとして、年間50社以上の企業対象研修を担当するほか、企業のバリアフリー・ユニバーサルデザインのコンサルティングも行う。