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小林よしのり氏「わしを『モーニングショー』に呼んで」TVが言わないコロナ論

https://news.yahoo.co.jp/articles/6816f2f0982596caedbb21f5697d66e269e4e4a0?page=1

2020/12/25(金) 8:54 SPA!

 12月17日、東京都は医療提供体制を4段階の警戒レベルのうちでもっとも深刻な「逼迫」に引き上げた。前日の16日には新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数が過去最多の822人を記録。23日も748人と高い水準で推移している。日本国内の死者は累計3050名(12月24日、厚生労働省)となるなど、全国レベルで見ても「コロナ第3波」の猛威はさらに勢いを増していると言っていいだろう。 ⇒【漫画】指定感染症二類に分類される新型コロナ、インフルエンザと脅威を比較

「経済を最優先すべき」と持論を唱える小林よしのり氏

 メディアでも連日、「医療崩壊」の危機が報じられ、15日には菅義偉首相が「Go Toトラベルキャンペーン」を全国一斉に一時停止することを決めたが、この政府による突然の方針転換について「批判の声に屈せずGo Toを続けるべきだった。専門家とメディアが言うような『医療崩壊』は起きない」と持論を唱えているのが、漫画家の小林よしのり氏だ。 「コロナ感染抑止」と「経済を回す」、両方やらねばならないのは誰しもわかっているが、比重のかけ方は専門家の間でも分かれる。その中で、もっとも「経済」側に軸足を置いているのが小林よしのり氏なのだ。  直近4か月の間に、『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』『コロナ論2』(扶桑社、現在累計10万部)や『新型コロナ――専門家を問い質す』(光文社)を立て続けに出版。このほか、自身が主催し全国に門下生を持つ「ゴー宣道場」やブログ、YouTubeチャンネルなどで日々コロナを巡る情報発信を行っている。「経済を最優先すべき」と主張する理由は何なのか、小林氏に話を聞いた。

「日本の医療は崩壊しない」と主張する根拠とは?

――医療崩壊の危機が、連日報じられている。 小林:ここにきてGo Toトラベルの一時停止など、医療崩壊を防ぐという名目で経済活動が次々に止められている。だが、重症者の数が全国で600人程度に増えようとも、日本の医療が崩壊するわけがない。  現在、医療が逼迫している最大の要因は、コロナを今もなお指定感染症の「二類」(一部は一類)扱いにしているからに尽きる。季節性インフルエンザより遥かに弱毒性で感染力も低いのに、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)などの「二類感染症」相当に指定したことで、軽症者や無症状者にまで入院勧告や強制入院など過剰な措置がとられているのを見れば明らかでしょう。  確かに、(12月16日時点で)新型コロナの対応ベッド数は全国で2万7235床しかなく、入院者数の割合は37%まで上昇(※)しているが、「二類相当」から新型コロナを除外すれば、もともと世界一の病床数を擁する日本は160万床でコロナに対応できるようになる。インフルと同等の「五類」扱いにすれば、病床の逼迫など瞬く間に解消しますよ。 ※NHK特設サイト新型コロナウイルス「入院者数 重症者数 対応ベッド数全都道府県データ」(厚生労働省の統計をもとにNHKが集計)

医師の約67%が「二類相当の扱いは、見直すべき」

<自治体のなかには、指定感染症「二類相当」の弊害を改める動きも出てきている。12月7日、神奈川県は医療崩壊を防ぐために、新型コロナウイルスの入院者数を抑えて、年齢や病状などを点数化して医師が入院の是非を判断する新基準を導入。従来は、65歳以上の高齢者や特定の疾患を抱える人などは、たとえ無症状でも原則全員が入院となっていたが、これも新型コロナが「二類相当」とされていたからだ。県は「この基準により、新たに入院する人を半分程度に抑えられるのではないか」と説明している。> ――だが、日本医師会の中川俊男会長や東京都医師会の尾﨑治夫会長は「医療崩壊」の危険が高まっていることから、Go Toトラベルの即時中止を訴えていた。今回の新規陽性者の増加を受け、中川氏は「新型コロナウイルスに年末年始はない。クリスマスも『サイレント・ナイト』でお願いしたい」とも念押ししている。 小林:わしの読者には医療関係者もいるが、コロナ患者を受け入れていないかかりつけのクリニックなどで働く者はみな、コロナ前に比べて80~65%まで現場の稼働率が下がり、むしろ「仕事が暇になっている」と嘆いている。これは、コロナが二類感染症相当とされたことの弊害で「発熱患者の受け入れ拒否」が常態化しているからでしょう。彼らは「コロナはインフルより弱いのだから、私たちが受け入れたい」とまで言って、協力を申し出ていますよ。 <日本最大級の医療従事者専用サイト「m3.com」が医師ら884人を対象にした調査(8月28日~9月2日調査)によれば、医師の66.7%は、新型コロナへの感染防護はあまりに過剰で「見直すべき」と回答(「見直す必要はない」は15.8%)。自由回答のなかには、「現在実施している対策は、二類というよりエボラ相当です(リネンの扱い、ご遺体の扱い、使用する防護用具など)。高齢者や基礎疾患のある方が重症化するリスクは、インフルエンザでも同じです。個人的には、いずれ五類季節性インフルエンザ相当が適当と考えています」(看護師)といった声まであった。>

医師会から「二類相当」を見直す動きは出てこない

――ただ、コロナを季節性インフルエンザと同等の「五類」に見直そうという議論は止まったままとも言える。 小林:中川や尾﨑ら医師会の連中がまったく逆のことを言っているのはなぜなのか? それは、医師会はあくまで開業医主体の利益団体であって、コロナの最前線で日々戦っている市民病院や大学病院で働く勤務医や看護師たちの声を代弁しているわけではないからだ。  医師会は新型コロナの二類相当を維持する理由として「ワクチンも治療薬も開発されていないから」と説明しているが、2009年にパンデミックが懸念された新型インフルエンザのときは、ワクチン開発前に感染症法の指定を事実上解除している。医師会の主張は詭弁にすぎない。「医療崩壊」を防ぎたいなら、医師会が「新コロを指定感染症から外せ」と政府に要望すればいいだけの話だ。

2009年の新型インフル騒動時も厚労省は方針を一転

<2009年の新型インフル騒動時、5月に国内初の感染例が報告されると、感染症法に則って「新型インフルエンザ等感染症」と診断された者は強制入院を余儀なくされた。だがその後、死亡率が低い実態がわかると、6月19日に厚労省は方針を一転。感染症法の指定は事実上解除され、「五類」の季節性インフルエンザと同等の扱いとなった。新型インフルエンザのワクチンが開発され接種が始まったのは、解除から1年以上後の2010~2011年冬シーズンになってからだったことを覚えている人も多いのではないか。>

再び「緊急事態宣言」が出されることになるのか?

――感染者数の高止まりを受けて東京都は時短営業の再要請を行い、「年末年始コロナ特別警報」を発出するなど、行政は再び「抑圧政策」にカジを切った。一方で、自粛が経済活動に暗い影を落としているのも事実だ。11月の自殺者数は1798人で、5か月連続で前年比増。特に女性の増加が目立っている。 小林:わしがもっとも懸念しているのは、緊急事態宣言が再び出されることだ。Go Toトラベルを是が非でも継続する構えだった菅首相が、不支持率が支持率を上回った途端、全国一斉停止に方針転換したように、世論はマスコミにミスリードされ、政治はマスコミと世論からの批判に容易に屈する……。菅首相には「どうせ何をやっても批判されるのだから、政治家なら初志貫徹で経済を回せ!」と言いたいよ。

「経済を回さなければ人の暮らしは成り立たない」

小林:今後も「経済より命が大事」などと妄言を唱えるマスコミの政権批判が強まるだろう。だが、経済を回さなければ人の暮らしは成り立たない。経済とは人の営みであり、命そのものなんだよ。そんなことも理解できないから、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の玉川徹(報道局員)は、女性の自殺増加の原因を何としても経済苦ではないことにしたいらしい(苦笑)。  番組で厚労省の自殺統計をわざわざ引っ張り出して、原因・動機の1位が「健康問題」で、「経済・生活問題」の10倍もあるから、「Go Toを止めると経済がダメになる、だから自殺が増える、という因果関係は語れないことがわかった!」と大見えを切ったが、彼は「健康問題」を単なる病苦だと思っているのか? 厚労省によれば「健康問題」でもっとも多いのはうつ病で、自殺の理由で多いのもうつ病なのは常識だよ。そして、うつ病の原因にはコロナ禍による失業や減収など経済苦も含まれる。  多くの女性を自殺に追い込んでいるのは、年収何千万ともらっているテレビ局のエリート社員という安全な立場から、無責任に「自粛しろ!」とまくし立てているコメンテーターだよ!

スウェーデンの「緩和政策」は失敗したのか?

――『コロナ論1・2』や『新型コロナ――専門家を問い質す』のなかでは、日本も目指すべきという意味合いでスウェーデンの「緩和政策」を取り上げている。だが、人口1000万人のスウェーデンではこれまでに約35万人が陽性となり、約7800人が死亡。グスタフ国王はインタビューを受け「(自国の政策は)失敗だったと認めた」と報じられている。 小林:メディアは明らかな「誤報」を流している。報道を受けて、すでにスウェーデン王室は「国王の発言は非政治的なものであり、政治批判ととってはならない」とするコメントを出していますよ。  グスタフ国王はパンデミックの犠牲者に対する共感の言葉として言ったものだが、これを世界中の集団免疫反対派から意図的に捻じ曲げられた。国王は立憲君主だから、政府の政策を批判したら憲法違反になる。あり得ないことだ。ただ、ここで一つ断わっておきたい。わしはかねてからスウェーデンに成功して欲しいと願っているが、「緩和政策」は本来、「ファクターX」を持つ日本でこそやるべきだったと思っている。  欧州は多くの犠牲者を出していることからも、スウェーデンで緩和政策をとることは危険だったかもしれないが、よくやってくれたと感嘆するし、世界の感染症対策の未来に大きな貢献をしたと思っている。失敗は移民の看護師が多い介護施設だけだった。そこは、スウェーデンの感染症対策責任者で疫学者のテグネル氏もわかっている。

インフルエンザとコロナの脅威を比べると

――新作『コロナ論2』でも、前作に引き続き専門家やテレビメディアを痛烈に批判している。 小林:コロナ第一波が起きた当初、テレビのなかでも一番、視聴者の恐怖を煽りに煽った『モーニングショー』がもっとも視聴率を稼いだ。これに味をしめて恐怖を煽れば視聴率がとれると考えた製作者が増えたわけだが、視聴率1%=100万人が見ているので影響力は絶大だ。  季節性インフルエンザの死者は1年で3000人、「間接死」を含めると約1万人が死んでいる。これに対して、コロナの死者は12月24日で3000人強。現時点で、風呂場の浴槽で誤って「溺死」する約5000人よりも少ないんです。  インフルの感染者は毎年約1000万人にも上り、これを365日で割ると1日当たり3万人の感染者を出していることからも、たとえPCR検査の陽性者数が1日当たり5000人を超えたとしても、インフルに比べればコロナの脅威は格段に小さいと言っていい。

「発信場所を持っているわしが、誤った情報を正さなきゃいかんのよ」

小林:真実を知る専門家はテレビには呼ばれないし発信する手段がない。そう考えると、発信場所を持っているわしが、誤った情報を正さなきゃいかんのよ。  振り返れば、オウム真理教、薬害エイズ、慰安婦問題……わしが描いてきた多くのテーマでも、マスコミは昔から多くのウソを垂れ流してきた。『コロナ論2』は帯に「完結版」と打ったが、こうなったらメディアのウソを徹底的に糾弾する「天罰編」を出版するしかない。子ども漫画出身のわしが、メディアに対して「王様は裸だ!」と叱責しなければならないんですよ。  玉川徹でも、岡田晴恵(白鷗大学教授)でも、どちらでもいい。わしを番組に呼んでくれたら、いつでも議論する覚悟はある。  年末年始に多くの日本人が故郷に帰りたくても帰れない異常な状況が続いている……。もう一度緊急事態宣言が出される事態となれば、経済の再生がさらに遠のくのは必至だ。誰がこの馬鹿げた狂騒を終わらせるのか? 微力だが、今の自分には描き続けることしかできない。本の力を信じるしかないんです。■ <取材・文/週刊SPA!編集部> ―[ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論]―

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