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コロナ 社会問題

日本のコロナ対策はまるで鎖国状態 いつまで非科学的なことを強いるのか?

https://news.yahoo.co.jp/articles/c8ae9cf3482fbe2688bf40127af180c427020f15

2021/8/25(水) 7:00 AERAdot.

日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「日本のワクチン接種後の規制緩和の遅れ」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。 【データ】発熱、頭痛だけじゃない!ワクチン接種後に確認された副反応と割合はこちら

*  *  * 「もう2年以上、中国にいる両親に会えていなくて辛い。ずっと在宅勤務で、誰にも会わない毎日が続いている。仕事を辞めて、中国に戻ることも考え始めた……」つい先日、大学生の時から日本にやってきて、そのまま日本で働いていた同世代の友人からこんな相談を受けました。  コロナが流行して以降、彼女と会えていなかったのですが、「気分が落ち込んで朝起きることも辛く、食事もほとんど食べていない」と連絡があり、お互いにワクチン接種が済んで2週間以上経過しており、風邪症状はなく、感染のリスクは低いと判断し、急遽、自宅での夕食に彼女を誘いました。  中国では、現時点で入国の際に3週間の隔離が必須とされており、日本に帰国する際も、2週間の自主隔離が必要になります。かなり長期間の休みがないと、帰国は現実的ではありません。オフィスに来るなと言われ、在宅勤務がいつまで続くか分からない中で、仕事をする気すらなかなかおきなくなってきた彼女が、仕事を辞めて帰国するという選択をしようとしているのも、無理はないと感じました。  私も、コロナの流行が始まってから実家のある大阪には一度も帰っていません。落ち着いたら帰ろうと思い、2年以上経過してしまっています。私は、いざとなれば新幹線でも飛行機でも使用して実家に帰ることができます。けれども、彼女は現時点では容易に帰国することができません。クリニックには、渡航のためにPCR検査を希望して受診される方がたくさんいらっしゃいますが、きっと彼女のような決断をして検査を受けにきた方がいらっしゃったに違いないと思うと、胸が痛くなりました。同時に、国民には自粛や我慢を強いる一方で、東京五輪だけは特別扱いというダブルスタンダードな対応に疑問を感じざるをえませんでした。

 ワクチン接種の進む欧米では、ワクチン接種完了者の行動制限の解除が進んでいます。フランスでは、バーやレストラン、交通機関、スタジアムやスポーツ施設、映画館や劇場、図書館などを利用する際にワクチン接種証明の提示が義務化されました。ヨーロッパ連合(EU)では、7月1日よりワクチン接種や感染からの回復状況、検査結果などが確認できる「EUデジタルコロナ証明書」の運用が正式に開始され、証明書があれば国境をまたぐ移動の際、原則として隔離や検査を課されることはありません。  アメリカでは、国防総省や陸軍や一部の企業がワクチン接種を義務化した他、カリフォルニア州では医療従事者や教員、市の職員にワクチン接種を義務化する動きが進んでいます。また、ニューヨークでは屋内の飲食店やジムなど屋内の活動をする際のワクチン接種証明の提示が義務化されています。さらに、外国人の米国への入国条件の変更を検討しているといいます。  一方、日本はというと、新型コロナワクチンの接種は「努力義務」です。自治体に申請すればワクチンパスポートを発行してもらえますが、8月19日時点で21の国や地域のみしか使用することができません。それらの国や地域に入国する際の隔離措置は免れることができますが、日本に帰国する際の入国時の14日間の自主隔離は免除されません。自粛や我慢など非科学的な対策を強いる一方で、科学的に高い効果が示されている新型コロナワクチンの接種は「努力義務」であると位置付ける日本の今のコロナ対策では、いつまでたっても鎖国状態を抜け出せず、コロナに振り回され続けられることになるのではないでしょうか。  デルタ株の感染拡大に加え、ワクチン未接種の子どもたちへの感染が広がる中で、アメリカでは12歳未満の子供たちへのワクチン接種の検討がすでに始まっています。早ければ9月末までに、5~11歳の子どもに対するワクチンの有効性に関するデータが得られそうだとも報じられています。さらに、9月20日からはファイザー製とモデルナ製を2回打ってから8カ月経過した18歳以上の人を対象として、3回目の接種が始まります。まずは、医療関係者や高齢者の人たちから接種が開始される予定です。  日本も、幸いワクチン接種が進んでいます。8月19日時点で人口の51.6%が少なくとも1回のワクチン接種を終え、人口の40.0%が2回接種を終えていますが、まだ1回目すら接種したくてもできていない人がいるのが現状です。河野規制改革担当大臣は8月19日の委員会で、「3回目の接種を行うことについて厚生労働省が必要だと判断すれば、医療従事者を対象に速やかに対応できるよう準備している」と明らかにし、3回目の接種分も確保しているとテレビ番組で発言されていましたが、果たして本当なのでしょうか。肝心の厚生労働省は、方針を明らかにしていません。いずれにせよ、3回目の接種のスタートも日本が出遅れてしまうことは間違いなさそうです。  3回目の接種のこと、12歳未満の子どもへの接種の検討、ワクチン接種を済ませた人からの規制緩和の検討など、他国の対応に追随するのではなく、協議していただきたいと思います。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員