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社会問題

「意外とブスと思われたら…」マスクを外すのが怖いという新たな問題

https://news.yahoo.co.jp/articles/7a2468f84a9495b898b14f452fb3ae41a26802e9

2021/7/30 NEWSポストセブン

 昨年、日本中で品薄となり、争奪戦が繰り広げられた「マスク」。息苦しいし、暑いし、肌荒れの原因になるからと、当時はつけることに抵抗を感じる人が多かった。しかし、約1年半が経過したいまでは、“感染症対策”という視点に限らず、マスクを外したがらない人が増えていた──。 【グラフ】マスクを「着けていない時のほうが違和感があるくらい慣れた」35.8%…調査結果

 熱中症のリスクも指摘されているマスクだが、ワクチンの接種が進めば、着用が緩和される見通しだ。すでにイギリスやアメリカなどの大規模スポーツイベントでは、大勢の観客が詰め掛け「ノーマスク」「ノーディスタンス」を楽しんでいる姿が報道され、「早く日本もこうなってほしい」と願っている人もいるだろう。  しかし一方で、「ノーマスク」を恐れる人たちが増えているという。コロナ禍に転職した大川美奈さん(仮名・33才)も、「憂うつ」と話す。 「入社して10日近く経つのですが、みんなマスクで顔がわからず、名前と顔が一致しなくて本当に苦労しています。  先日は、親睦会の意味も込めて直属の男性の上司とランチに行ったのですが、入社して初めてマスクを外した上司の顔を見て、『こんなにおじさんだったの!?』と衝撃を受け、戸惑ってしまいました。  相手も私の顔を見て同じことを感じているんだろうなと思うと、食事中も目が合わせられず、リラックスして会話することができませんでした。これからワクチンの接種が進んでマスクを外す風潮になったら、私も社内の人たちから『意外とブス』とか『意外と老けてる』などと思われるのかもしれませんね……」  このケースを受け、精神科医の片田珠美さんが話す。 「昔から、“マスクをつけていると美人度が3割増しになる”といわれてきたほど、マスクは顔の印象を変えます。相手の顔がはっきりとわからないコロナ禍の約1年半、私たちは『仮面舞踏会』をやっているようなものなのです」 “仮面”をつけることが、安心感につながる人もいる。精神科医の和田秀樹さんが言う。 「マスクは、“自分が何者であるか”を隠すことができる。コミュニケーションが苦手な人にとっては、とても便利な道具です」  感染症対策以上の効果をマスクに求める人たちが、コロナ禍によって増加しているが、いずれ多くの人がマスクを手放す日はやって来る。「マスクを取るのが怖い」という“コロナ被害”が、すぐそこまで迫っているのだ。

※女性セブン2021年8月12日号

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ワクチン 社会問題

ワクチン接種で100ドル支給を、バイデン米大統領が州政府に要請 感染拡大受け

https://news.yahoo.co.jp/articles/99527473085f4658ece0d955ccc0a2d524f52235

2021/7/30 BBC NEWS japan

アメリカのジョー・バイデン大統領は29日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、新たにワクチンを接種する人に100ドル(約1万1000円)を支給するよう州政府に呼びかけた。 また連邦政府職員に対し、ワクチン接種の要件を厳格化した。連邦政府はアメリカ最大の雇用主で、約200万人の職員を抱える。 この要請では、職員にワクチン接種証明を提示するよう求めており、それができない場合は、検査とマスク着用が義務付けられる。 米疾病対策センター(CDC)によると、アメリカでは29日までに全人口の49.4%、18歳以上の60.3%がワクチン接種を終えている。 ホワイトハウスでの記者会見でバイデン大統領は、一連の施策は感染力の高いデルタ株の流行を受けたものだと説明。「ワクチン未接種者のパンデミック」によって状況が悪化していると述べた。 「大勢が死にそうになっているし、死ななくていいはずの人たちが死んでしまう」と、大統領は警告した。 また、100ドルの給付はすでにワクチンを打った人たちにとって不公平に見えるかもしれないと認めた上で、「ワクチンを受ける人が増えれば、それは全員の利益になる」話した。 ワクチン給付の予算は、1兆9000億ドル(約200兆円)規模の新型コロナウイルス経済対策「アメリカン・レスキュー・プラン(アメリカ救済計画)」が使われる予定。 さらに、アメリカ政府はワクチン接種時に従業員に有給休暇を与える中小企業に「満額を補償する」予定だと大統領は述べた。 ワクチン接種を拒否する連邦職員は解雇されないものの、ホワイトハウスの今回の発表は、アメリカ全土の雇用主に規範を示す目的もあった。 会見の中で民主党のバイデン大統領は、主に共和党支持者の保守派層の間で広がる、ワクチンを危険視する風潮にも言及した。 大統領は、ワクチンに「政治的な要素は何もない」と強調。新型ウイルスのワクチンは共和党政権下で開発・承認されたもので、バイデン政権はその流通を推し進めているのだと説明した。 6月に発表された研究によると、新型ウイルスによる死者の99%が、ワクチンを打っていない人だったという。 CDCの最新データによると、アメリカでは18歳以上の約7割が少なくとも1回、ワクチンを受けている。しかし、接種率は地域によってばらつきがある。感染が拡大している南部や西部の州ほど、感染率が低い傾向にある。 こうした状況の中、アメリカではCOVDID-19関連死が1週間に2000人近くに上っている。新規感染者は1日当たり約6万人と、過去3カ月で最多となっている。 CDCは27日、新型ウイルスの感染が拡大している地域について、ワクチン接種済みであっても屋内ではマスクを着けるべきとする助言を発表した。 ニューヨークやカリフォルニアなど数週では、公共の屋内施設でのマスク着用を義務付けるなど、さらに対策を徹底している。 (英語記事 President Biden calls for $100 vaccine incentive)

(c) BBC News

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ワクチン ワクチン 対策 社会問題

米国、ワクチン接種完了後もマスクの着用を推奨 2ヶ月で方針転換した背景

https://news.yahoo.co.jp/articles/1d2555a521bf720c0b028b432fe6a51938483607

2021/7/29 Newsweek

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2021年7月27日、米国内の感染拡大地域を対象に、新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人にも屋内でのマスクの着用を推奨する指針を発表した。学校の教職員や学童・生徒、来訪者も同様に、ワクチン接種の有無にかかわらず、マスクの着用が推奨される。 ●動画:2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開 ■ 「デルタ株」の感染拡大で、2ヶ月で方針転換 CDCでは、5月中旬、「新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人は新型コロナウイルスを他者に感染させづらい」との科学的データを根拠に、ワクチン接種の完了を条件としてマスクの着用は原則不要としていた。 しかし、インドで最初に確認された「デルタ株」の感染拡大を受け、わずか2ヶ月で従来の方針を転換することとなった。 米国ではデルタ株の感染拡大が急速に広がっていることがその理由だ。6月19日には1日の新規感染者数が1万1480人にまで減少したが、7日間平均が7月27日時点で6万人を超えている。7月23日時点で新規感染者のうちの83.2%がデルタ株に感染したと推定されている。 ■ ワクチン接種しても、無症状で他者にウイルスを感染させる CDCのロシェル・ワレンスキー所長は「米国で主流となっているデルタ株はこれまでのウイルスとは異なる」とし、「まれにワクチン接種を完了した人への感染も確認されている」と警鐘を鳴らす。 CDCの調査によれば、ワクチン接種の完了後にデルタ株に感染した人のウイルス量は、ワクチン未接種でデルタ株に感染した人と同等であった。つまり、ワクチン接種を完了した人は、無症状であっても、他者にウイルスを感染させる可能性がある。 一方で、入院患者や重症者、死亡者の大多数はワクチン未接種者だ。CDCの推定によると、新型コロナウイルス感染症の入院患者の約97%はワクチン未接種者で占めている。 ワレンスキー所長は「新型コロナウイルスワクチンはデルタ株の発症リスクを7分の1に低下させ、ワクチン接種を完了すれば、デルタ株による入院リスクや死亡リスクを20分の1に下げられる」とワクチン接種の有効性を示し、ワクチンを接種するよう国民に呼びかけている。 ■ ワクチンのデルタ株への有効性はやや低い 新型コロナウイルスワクチンのデルタ株への有効性は他のウイルス株に比べてやや低いとみられる。イングランド公衆衛生局(PHE)ら、英国の研究チームが7月21日に医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」で発表した研究論文によると、ファイザーの新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」の2回接種後の有効性は、英国で最初に確認された「アルファ株」で93.7%であったのに対し、デルタ株では88.0%にとどまった。 また、アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチン「ChAdOx1 nCoV-19」の2回接種の有効性は、アルファ株で74.5%、デルタ株で67.0%であった。なお、いずれも1回接種後の有効性は極めて低く、デルタ株で30.7%、アルファ株でも48.7%にとどまっている。

松岡由希子

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感染症ニュース 社会問題

第5波で増える40代、 50代の重症者…「現場としては結構しんどい」コロナ治療最前線の医師が抱く不安と希望

https://news.yahoo.co.jp/articles/fc126726ce30396ef23b715a308bce3f38832e71

2021/7/15(木) 16:45 BUZZFeeD

新型コロナウイルス感染症の第5波が広がり始めた。政府分科会は7月、8月が「最大の山場」であると発信するが、医療の現場では何が起きているのか。そして、この夏、危惧することとは何か。埼玉医科大学総合医療センターで総合診療内科教授を務め、新型コロナ治療の最前線で治療を続ける岡秀昭さんに聞いた。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】

第5波到達、最前線の今

ーー現在の埼玉医大総合医療センターにおける状況を教えてください。 第5波はすでにこの総合医療センターにも到達しています。現在は中等症以上の方を中心に5名の患者を治療していますが、そのうち4名が40代および50代です。 残り1名は80代で1回目のワクチンを接種済みの方ですが、デルタ株に感染しており、重症化しています。 感染者数全体は10代、20代、30代といった若年層が多い。若い人々が引き続き重症化しにくい一方で、ワクチンの接種が進むことで高齢者の重症者が減り、40代や50代の基礎疾患をお持ちの人の重症者が増えています。 うちの確保病床は重症者用は6床、そしてそれ以外の中等症などのための病床が20床以上あります。 ですから、病床自体にはまだ空きはある。まだまだ空いているので、仮に今日搬送の依頼が複数来たとしても問題なく受け入れることができます。 ですが、入院を必要とする人々が以前よりも若いために変化が見えてきました。 これまでは入院を必要とする患者の多くは高齢者でした。そのため、回復したとしても退院までにはリハビリや転院調整などが必要となることが多く、長い時間を要しました。 しかし、40代、50代の方の場合には入院したとしても、重症でなければ適切な治療を受けて回復することで比較的スムーズに退院していきます。ですから、現時点ではベッドの回転率がこれまでよりも良い状態です。 でも、現場ではすでに負荷が高まりつつあり、しんどい状況です。このままのペースで感染者が増えれば、病床は埋まり、医療逼迫が訪れることは確実です。 数字だけを見ていれば、回転率が上がっているため病床にはまだ余裕があると思うかもしれませんが、3人退院したと思ったら、すぐに2人入院してくるような状況が続いています。 もしかすると、このような要因から第5波ではなかなか病床全体の使用率は上がりにくい可能性があります。ですが、入退院が激しい中で病床使用率では見えない現場のスタッフへの負荷は高まりつつあります。 ーー高齢者ではなく、40~50代が重症化することで、現場では他にもどのような変化が起きるのでしょうか? 重症化した際、人工呼吸器を着けるかどうかを判断する上ではご本人、ご家族と相談します。 たとえば80代、90代の患者さんであれば、希望しないというケースも少なくありませんでした。 しかし、40代、50代の患者さんとなると、ほぼ全ての人が救命を前提とすることが予想されます。 おそらく高齢者よりも40代~50代の人の重症化率は低くなると思います。しかし、重症化した場合に人工呼吸器を着ける人の割合は高齢者よりも高いでしょう。 ほとんどの重症患者が人工呼吸器を必要とするということは、重症者の受け入れを中心に医療逼迫も起きやすい。このペースで感染者が増えれば、2週間程度で当院の新型コロナ病床は逼迫する可能性があります。 ーー変異ウイルスへの置き換わりは進んでいますか? 2週間前に当院でも初めてのデルタ株の患者を受け入れました。そして、現在では2割から3割の患者さんがデルタ株です。 前回の従来型からアルファ株への置き換わりも、最初の1例から1ヶ月ほどかけて進みました。今回もおそらく同じようなペースで置き換わりは進んでいくと考えています。 デルタ株への置き換わりが進むことで、危惧されるのはワクチンを1回しか接種していない高齢者の発症や重症化です。これまでの従来型のウイルスであれば、1回接種でもそれなりに発症や重症化を予防できました。 しかし、デルタ株が広がることで、このような前提が崩れる可能性があります。まだ1回しか接種していない高齢者の場合、2回目の接種を急ぐ必要があります。 この第5波では、おそらく一部のワクチンを1回だけ接種した高齢者と40-50代の重症者が混ざり合い、そうした人々でベットが埋まる状況になるのではないかと予想しています。 今はまだ、入院を必要とする人々が40~50代中心でベッドの回転率も早く、適切な治療を早期に受けられているため多くは重症化の一歩手前で持ち堪えています。 でも、重症化すれば、40~50代であっても人工呼吸器が必要です。そして、1度人工呼吸器をつければ、平均的にはおよそ3週間程度は外せません。 ですから、このまま感染者数が増え続ければ、重症者を中心に受け入れが難しくなり、再びの医療逼迫は避けられません。 私たちはできる限り頑張りますが、限界はある。現在の感染状況が続くと、私たちの限界を超えてしまいます。

崖を落ちるように悪化、「見えない災害」の現場で起きていること

Takashi Aoyama / Getty Images

ーー世界各国に比べれば少ないものの、日本における新型コロナによる死者は1万4000人を超えました。単純比較はできませんが、阪神淡路大震災の死者6434人を大きく上回ります。しかし、感染者や重症者が身近にいないと、その影響の大きさを感じにくいのも事実です。 たしかに、この新型コロナのパンデミックはなかなか見えにくいですよね。 まさに、「見えない災害」なのだと思います。 私は新型コロナ治療の最前線に立っています。しかし、ここから見えている景色が、なかなか多くの人に伝わっていないもどかしさを感じるのも事実です。 津波や土石流であれば、どれだけの被害があったのかが一目でわかります。「これは大変だ」と多くの人が直感的に理解できる。 しかし、コロナの現場は隔離されており、外からは見えません。 今だって病棟から一歩外に出れば、みんな通勤や通学をして、制限はあるものの、日常生活を送っている。風景の中で普段と違うのは、みんなマスクをつけているということぐらいでしょう。 そんな中では、新型コロナについての情報は、毎日報じられる感染者の数だけかもしれません。 実は私は、この新型コロナに対応する現場で何が起きているのかを伝えるために、TwitterやFacebookで発信を続けています。 現場で何が起き、どのように私たちが対応しているのかを知ってもらい、日々の感染対策に協力していただかなければ、この「災害」は乗り越えられないと思うからです。 情報を発信すれば誹謗中傷や批判の声も届きます。最近は少しずつ慣れましたが、当初は大きなストレスを感じました。 それでも、私は治療の最前線で見ている世界を伝える必要がある。そう考えています。 ーー私たちは「重症化」と一言で片付けてしまいがちですが、現場では何が起きているのですか? 新型コロナに感染すると、ほとんどの人は後遺症の問題はあるものの、1週間程度で軽快します。しかし、一部の人は1週間が経過した後も発熱が続き、肺炎が明らかになり悪化していきます。 意外に思うかもしれませんが、入院が必要なタイミングではまだ多くの患者さんは重篤には見えない状態です。大体の人は病院へ搬送された時点では意識も良いし、歩くこともできる。 喘息や間質性肺炎など、他の病気ではこれほど見た目が元気であることは考えにくい。喘息であれば、入院が必要なタイミングでは「ヒューヒュー」という呼吸音が聞こえ、「先生、苦しい、苦しい」と、肩で息をしているような状態です。 ところが、新型コロナの患者は喘息や間質性肺炎などと同じ酸素飽和度であっても、平静を保っていることが多いのです。咳をしたり、熱はあるけど肩で息をしているような人は少ない。 酸素飽和度はかなり低いので、「どうですか?苦しいですか?」と医師は聞きます。すると、大抵は「いや、そうでもないですね」と答えます。でも、実際には重篤な酸欠状態にすでになっている。 入院してからも、他の呼吸不全の患者さんのように音を立てることも少ない。ベッドサイドが静か、というのが私の新型コロナの患者さんのイメージです。 そんなに元気ならば大したことないじゃないか、と言う人がいるかもしれません。ですが、さっきまで歩いていた、苦しくないと言っていた人の様子が数時間で一変します。 突然、崖を転げ落ちるように状態が悪化する。 ご家族からすると目の前で起きていることを理解するのは、なかなか難しいかもしれません。「さっきまであんなに元気だったのに、なぜ亡くなってしまったのか‥」と感じる人も少なくないでしょう。 「コロナは風邪」でないことは明らかです。 この1年半、現場で治療に当たる中で「私が感染させたんじゃないか」と後悔するご家族の方にも出会いました。そして、隔離病棟に入院しているため、現在でも他の疾患に比べれば面会が難しい状況です。 これらの事情から、亡くなったときのインパクトが大きい病気だと感じます。

新型コロナ最前線に広がる、“普通はあり得ない”光景

Carl Court / Getty Images

ーー医療現場は必死に対応している中で、「なぜ、病床を増やすことができないのか」といった声も聞こえてきます。 病院を利用するのは新型コロナの患者さんだけではありません。心筋梗塞や脳卒中、がんや交通事故など様々な理由で受診する人がいます。 そして大学病院は高度専門化されており、それぞれの科が様々な高い専門性を持っているものの、必ずしも感染症や集中治療には精通していないのです。 3次救命の受け入れをしている当院には、他の病院では治療できない患者さんが多く運ばれてきます。 人的ゆとりがない中で、専門医を配置換えすれば、本来の守備位置に綻びができ、受け入れができなくなる。 さらに異動した守備位置には慣れていないため、効率的ではない。つまり、ほとんどの専門医は簡単に守備範囲を変えることは困難なのです。 埼玉医科大学総合医療センター全体の病床は約1000床です。 かつて私たちが受け入れてきた新型コロナ患者の合計は第3波の時点で200名であることを伝えると、「もっと受け入れないのか?」「なんで医療のキャパシティを増やせないのか?」と言う人もいますが、そんなに簡単な話ではない。 重症6床でも、いっぱいいっぱいです。 そもそも呼吸器内科の医師であっても、人工呼吸器をつける患者さんを同時にこれほど多く受け持つことはありません。 呼吸器内科の専門医でもある私の経験からは、一般的な病院の呼吸器内科であれば、研修医を含む医師3名で10人程度の患者を担当します。その中で、人工呼吸器を必要とする人は多くても1人いるかどうかです。 1人いるだけでも、「重症患者を抱えて大変だね」と言われています。 ところが、新型コロナの感染拡大時には一番重症者が多い時で7人から8人が同時に人工呼吸器をつけてそれを少ない医師で受け持っている状態です。 ICU(集中治療室)で勤務していない医師にとって、こんな状況はあり得ません。 ーー人工呼吸器を着ける人が1人いると、現場ではどのような対応が必要となるのでしょうか? 看護師は基本的にマンツーマンの体制です。 血圧の変化に対応したり、人工呼吸器が外れるような命に関わることがないように、つきっきりで対応する。 寝返りをうつこともできないため、定期的に姿勢を変えなければいけません。痰が出れば、それを吸引します。排泄物の処理も必要です。 食事も取れない状態なので、点滴を外すことはできません。血圧を維持する薬を使い、モニターでずっと心電図を見ている。 看護師以外にも、質の高い治療を提供するために医師は1人の患者につきっきりで対応します。さらに人工呼吸器を扱う技師やリハビリをする技師など、医療従事者はのべ10人ほど必要です。 そして、それを3交代で24時間代わる代わる担当する。10人×3交代で30人。 単純計算ではありますが、1人の重症患者を診るということは、のべ20~30人の医療従事者の力が必要となります。 1人だけでも大変ですが、それが多いときには7人から8人並ぶ。現場への負荷は非常に大きいです。 そんな中でも、第4波では人工呼吸器をつけた患者さんが10人ほどいましたが、最新のエビデンスを踏まえ私たちの経験を加味した治療を提供し、幸い全員の命を救うことができました。 人工呼吸器をつけた最重症患者の死亡率は報告にもよりますが2-3割であるため、現場を指揮する医師として、頑張った患者さん、懸命に治療や看護に当たったスタッフを私は非常に誇らしいと感じています。 この10人は何もしなければ、みんな亡くなっていたと予想される方々ばかりでした。 この成績をこの夏も維持するためには、医療の需要と供給の適正なバランスを守ることが重要です。 感染者が増えた結果、しっかりと治療を提供できれば救える命が救えなくなる。第5波でも、そんな「医療崩壊」の事態だけは何としても避けたいと思っています。

現在は「8回裏」。ゴールは見えてきた

Carl Court / Getty Images

ーー40代~50代の重症者が増えつつある今、五輪が開幕しようとしています。何を思いますか? 個人的にはもう2、3ヶ月延期していれば、本当の意味で「コロナに打ち勝った証」として開催することも不可能ではなかったと思います。 現在のペースでワクチン接種が進めば、有観客での開催もできたかもしれません。 五輪の開催が、感染対策にプラスに作用することはありません。感染拡大への影響をできる限り小さくするための工夫が必要とされています。 緊急事態宣言が7月12日から発出され、その効果がようやく見え始める2週間後には五輪が開幕しています。試合が終了する前に祝勝会が開かれるようなもので、これはタイミングとしては最悪です。 実は私も野球の準決勝のチケットが当選し、購入していました。自分が住む国で五輪を経験することができる機会はなかなかありませんから、とても楽しみにしていました。 でも、現在は安全な大会運営の根拠が見えず、医療現場で新型コロナに対応する医師として不安を覚えています。 「安心安全の大会を実現する」と政府や組織委員会は繰り返し発信していますが、安全な大会運営を可能にする根拠を示すことで初めて国民は真の安心ができる。 「安心安全」という言葉を繰り返すだけでは意味がありません。 「このような対策を実施する」「このような場合にはこんな対応をします」と対策の全体像を公開し、専門家や外部のチェックを経た上で大会を開催すべきでしょう。 開幕後にはニュースは五輪一色になるかもしれません。 結局、「世論と空気だけ変えればどうにでもなる」となってしまえば、医療現場と患者だけが取り残されます。 五輪で日本選手が活躍し、世間の注目はそちらに集まる中、医療現場は大変な状況に陥る… 私はそれを一番恐れています。Yuto Chiba / BuzzFeed

ーー7月、8月が「最大の山場」であると言われていますが、現場の医師としてどう感じますか? この第5波を乗り越えられれば、医療逼迫を心配しなければいけない状況からは脱却できる可能性があると感じています。 最前線で治療にあたる中で、ワクチン接種による効果を実感しています。このままワクチン接種が順調に進めば、第6波が起きたとしても医療逼迫は起きないかもしれません。 今回が最後の我慢になる可能性は高い。 コロナはなくなることはないかもしれませんが、ワクチンによって病原性が落ちて、日常生活が戻ってくるというシナリオは十分に考えられると思います。 この1年半、みんなが様々なことを我慢してきました。現在、様々なところで限界を迎えていると言われています。たしかに終わりが見えなければ、我慢を続けることは難しい。 しかし、今回の緊急事態宣言が最後になる可能性があることをしっかりと伝え、この夏だけは引き続き協力をお願いできないでしょうか。そんなメッセージを政府に出していただきたい。 ゴールは見えてきています。野球で例えれば、今は8回裏。1点差の緊迫した状態です。 油断すると逆転されてしまう。しかし、勝利は目前です。

千葉雄登

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ワクチン 社会問題

ワクチン接種翌日に71才男性が心筋梗塞で死亡「関連性なし」に遺族疑問

https://news.yahoo.co.jp/articles/9c54c735bfed8ae1844bafe5a7ad5cb15708b698

2021/7/3(土) 16:05配 NEWSポストセブン

「とにかくワクチン接種を」と国は大号令をかけている。だが、その裏では「350人超」という少なくない数の人が、副反応の疑いで亡くなっている現実を、新聞もテレビもほとんど報じない。 【写真】病名:心肺停止状態、症状:意識障害 などが、点や跳ねが繋がった大きさバラバラの文字で書かれた寛二さんの入院診療計画書。他、絵画の前に立つ寛二さん(生前)も

「夜ご飯のときに『おいしい』と言ってくれたのが、私に向けた最後の言葉になってしまいました……」  神奈川県川崎市在住の小倉寛二さん(仮名)が、モデルナ社製のワクチンを接種した翌日の夜に急死した。71才だった。  6月10日に亡くなり、まだ悲しみの淵から抜け出せない中、寛二さんの妻(66才)が亡くなった日のことを語る。 「20時半頃のことでした。いつもは寝る前に焼酎のウーロン茶割を1杯飲むんですけど、あの日は3口ほど飲んだだけで、あとは残していました。それから布団を敷いて、『トイレに行ってくるわ』と言ったきり、ちっとも戻ってこない。どうしたのかなと思って様子を見に行ったんです」  妻がトイレに向かうと、そこには仰向けで倒れている寛二さんがいた。 「苦しそうな様子などはなく、最初は寝てるのかと思って“こんなところで寝たら風邪ひくよ”って声をかけたけど反応がなくて。よく見てみたら口から泡を吹いていたんです。  慌てて救急車を呼び、“寛二さん! 寛二さん!”って必死に叫び続けました。起きると信じて“こんなところで寝たらだめだよ!”と呼びかけたけど、反応はなく、このまま寛二さんがいなくなるんじゃないかと思うと怖くて……」  ほどなくして救急車が到着したが、寛二さんはすでに心肺停止の状態。心臓マッサージやAEDによる救命処置が施され、搬送先の病院でも手を尽くされたが、息を吹き返すことはなかった。  突然の夫の死に対し、悲しみ以外にも、別の感情が湧いているという。 「それまで生活習慣病の薬はのんでいたけど、死ぬような状況じゃ全然なかった。それが、ワクチンを打った翌日に突然こうなった。ワクチンしかないと思うんですよ」  妻の証言をもとに、接種した日から死の直前までを振り返る。寛二さんと妻が夫婦揃って川崎市内の大規模接種会場「NEC玉川ルネッサンスシティホール」を訪れたのは、亡くなった日の前日、6月9日午後2時頃のことだった。 「広い会場にいくつも接種ブースができていて、密になることもなくスムーズにワクチンを打ってもらえました。ただ、夫はすぐに腕が痛くなったようで、15分間の待機時間の間、ずっと『腕が痛いわ』と言っていました。私もちょっと痛みを感じたので、ふたりして『痛いなぁ』と言いながら家に帰ってきたんです」  モデルナ社製ワクチンを接種した後に腕に痛みが出ることは「モデルナ・アーム」と呼ばれ、よく起こる副反応として世界中で報告されている。

 翌朝、妻の腕の痛みは治まっていたが、寛二さんは腕が上がらないほど痛みが増していた。とはいうものの、腕の痛み以外は体調に大きな変化はなく、ふたりは夕食の時間を迎える。 「夫は、食欲もありました。『里芋の煮っころがしが食べたい』と言うので、アジの開きと一緒に食卓に並べました。仕事を引退してから食事量は少なくなっていましたが、あの夕飯では『おいしい、おいしい』と言ってアジを2匹も食べていました」  寛二さんは、3年前に仕事を引退するまで、大工として朝早くから夜遅くまで働きづめの毎日だった。川崎市内の2DKのアパートで過ごす、夫婦ふたりのゆっくりとしたリタイア生活は、3年間で突然幕を閉じる。 「夫は本当に優しい人で、周りから羨ましがられるほどでした。スーパーに買い物に行くのも、どこに行くのも一緒。本当に幸せな毎日でした。藤井聡太くんのブームに乗っかって、将棋を久しぶりに指し始め、『ゲームで200連勝した』と言って大喜びしていました。やっと趣味に時間を使うことができ、楽しんでいるなと思っていたんです」  ワクチン接種に関しての抵抗はなかったと妻は振り返る。 「家族や周りに迷惑をかけないように、昨年から外出を控えていましたし、『早くワクチンを接種したいね』と、接種券が届くのを心待ちにしていました。だから接種券が届くと、すぐにふたりで同じ日に予約したんです。まさかこんなことになるなら打たなければよかった……」

厚労省の報告書に載っていない

 病院で死亡が確認された後、寛二さんの遺体は近くの警察署へとすぐに送られた。 「事件性はないけれども、コロナワクチンとの関連を調べたいということで、寛二さんの遺体は警察の検案に回されました」  検案の結果、死因は心筋梗塞による突然死で、コロナワクチンの副反応とは無関係だと断定された。だが、それは遺族にとって受け入れがたいものだった。寛二さんの息子が話を継ぐ。 「父は高血圧や尿酸値を下げる薬はのんでいましたが、突然死するような状態ではありませんでした。むしろ、2か月ごとに律儀に通院して、薬を処方してもらい続け、健康を保っていたという認識です。毎年きちんと健康診断を受け、大病やけがもありませんでした。だから、どうしても父の死がワクチンと無関係だとは思えないんです」

 ワクチン接種後に副反応の疑いで亡くなった人がいる場合、発生を知った医療機関は、厚労省に報告するルールになっている。  6月23日に開かれた厚労省の専門部会によれば、ワクチンの副反応の疑いがある死亡例は計355人(うち、ファイザー社製が354人、モデルナ社製が1人)。その報告書には、年齢、性別、接種日、接種回数、基礎疾患、そして接種から死亡までの詳細が記されている。モデルナ接種後に副反応の疑いで死亡した男性の報告もされているが、今回の寛二さんの死は、その報告書に書かれていない。つまり、本当はワクチン接種と関連性がないとは言い切れない翌日の急死にもかかわらず、報告書から漏れている死があるということである。  寛二さんが搬送されて死亡が確認された病院に問い合わせると、以下の回答があった。 「そうした事実があるかないかも含めて、個人情報の観点からお答えできません」  一方、接種可能の判断をした、かかりつけ医に遺族が経緯を問い合わせたところ、こう明かした。 「6月10日に亡くなられたと聞いて驚いております。約1年間担当しましたが、高血圧と尿酸値がやや高いけれども、5月に採血したときは、何も問題ありませんでした。心臓についても、過去に不調を訴えたり、私の方からカテーテルをすすめるようなこともなく、直近の心電図にも問題なかったですね」  高血圧などの基礎疾患が、心筋梗塞またはワクチン接種の副反応に、影響を及ぼした可能性はあるのだろうか。クリニック徳院長の高橋徳さんはこう分析する。 「高血圧や糖尿病の人は心筋梗塞が出やすいです。また、ワクチンが血栓症を引き起こすリスクがあるといわれていますが、その場合、高血圧だと、より血栓ができやすい。そしてその血栓が心筋梗塞を誘発するのです」

「わかるところのご案内もできかねます」

 納得できない寛二さんの遺族は、厚労省にも説明を求めたが、その対応は曖昧なものだったという。 「厚労省のコールセンターには何度も連絡しました。国はワクチン接種で副反応が出たり、亡くなったりしたときのために、『予防接種健康被害救済制度』を定めています。でも、父の件について何度問い合わせても、明確な返答はまったくいただけません」(息子)

 予防接種健康被害救済制度とは、予防接種によって後遺症が残ったり死亡したりした場合、既定の額の給付を行う制度で、新型コロナワクチンに関しても適用される。死亡の場合、4420万円が各自治体から支払われることになっている。  だが、寛二さんは検案で「副反応とは無関係」と断定されたため、このままでは救済を受けることができない可能性が高い。 「市の健康福祉局のかたとも話しました。『死亡診断書が出たら申請できます』と言われたのですが、『ワクチンとの因果関係の判断基準は市区町村ではわからない』とのことでした」(息子)  そこで、遺族は再び厚労省のコールセンターに連絡を取って判断基準について聞いたが、「こちらではわかりかねます」との答え。そこで、「では、わかる部署を教えてもらえますか」と聞くと、「わかるところのご案内もできかねます」との対応しかされず、その後も何を聞いても、機械のように同じ答えしか返ってこなかったという。  寛二さんの家族には不信感がいまも残る。 「2週間たって警察から戻ってきた夫の遺体は、もう一度しっかりと警察とは別の機関に調査してもらおうと思っています。そのため火葬はせず、いま葬儀業者に預かってもらっています。先日、夫の遺体に会いに行ったのですが、とても顔が白くなっていました。その顔を見て、“えらい男前やね”って声をかけてあげたんですが、それ以外は胸がいっぱいであまり覚えていません」  調査が終わって、火葬した後は、生前に寛二さんが話していた願いを叶えようと考えている。 「お墓は生まれ育った奈良にあって、夫は『そこに入りたい』と言っていたから、そうしてあげたいですね。早く連れて行ってあげたいとも思うのですが、遺族として死の真相を明らかにしたいという思いもあるので複雑です」  ワクチン接種後の突然の死。遺族は悲しみとともに、ひとつのことを決めた。 「2回目の接種が私には残っていますが、打ちません。打てないでしょう。寛二さんの兄弟も打つ予定だったのにやめたようです」  ワクチン接種が推奨され続ける一方で、接種後の突然死がないがしろにされている。 ※女性セブン2021年7月15日号

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「国民の命より開業医が大事」まともな医者ほど距離を置く日本医師会はもう要らない

https://news.yahoo.co.jp/articles/ee8b67a9f6f9364ec2bd1e5c11beb12bd405be51

2021/7/1(木) 11:16 PRESIDENT Online

■「国民の健康と命を守る」と口癖のようにいうが…  中川俊男(70)が会長を務めている日本医師会は「医療崩壊」「病床逼迫」の元凶ではないのか。 【写真】6月27日放送のNHKスペシャルで神奈川県医療危機対策統括官の阿南英明氏は「「大半(の病院)はコロナとは無関係でいきたい」と憤った。  中川会長を含め、これまでの幹部たちは口癖のように、「国民の健康と命を守れ」「国民の側に立った医療政策」を唱えてきた。  だが、「その裏で、『医師の権益』『開業医の利益誘導』という国民の利益とは反するような本音が垣間見えるのもまた、事実」(辰濃哲郎『歪んだ権威 日本医師会 積怨と権力闘争の舞台裏』2010年9月初版・医薬経済社)なのだ。  コロナ感染が蔓延する中、コロナ患者のための病床は、感染症への対応可能な病床のうちの、わずか4%しかないという。  なぜ、新型コロナウイルスが蔓延してから1年半近くになるのに、なぜ、患者のために病床を確保できないのか、コロナに対応できる医師や看護師などの医療従事者を増やすことができないのか。  その大きな理由の一つに日本医師会の存在があるのではないか。 ■「大半の病院は協力なんかしたくない」  医師会には約17万人の医師が加入している。勤務医もいるが主に開業医の病院経営のために活動する団体だといわれている。  その疑問に斬り込んだのが6月27日にNHKで放送された「検証“医療先進国”(後編)なぜ危機は繰り返されるのか」だった。  大越健介がインタビューした神奈川県医療危機対策本部の阿南英明は怒りを露わにしてこう話した。  「大半(の病院=筆者注)は協力なんかしたくない、コロナとは無関係でいきたい。病院は決して一枚岩ではない。こういう世界の中で1床、2床をどうやって捻出するかということは大変な闘いなんですよ。 医療者が全員即理解をして、その必要性に応じて対応する、そんな甘い世界じゃない」  神奈川県内の病院の8割がコロナ患者を受け入れていないという。  大越は、市内の中堅病院の院長からも話を聞いているが、うちは耳鼻咽喉科など多くの疾患を扱っているため、コロナ患者を受け入れることはできないのだといわれる。  中には、コロナ患者を3人受け入れはしたが、一般患者がいる病室の奥にビニールカーテンで仕切っただけのスペースしかなかった。  なぜこのような未曽有の疫病が蔓延しているのに、国も厚生労働省も日本医師会にコロナ患者受け入れを“要請”できないのか。  中村秀一元厚労省局長は、日本は民間病院が多く国や行政の力が弱いから、要請することはあったが、法律の権限に基づいて強制することはなかったという。  病院自体小規模のものが多いので、「コロナ対応の病床としては(日本は=筆者注)大国ではもともとなかった」と指摘している。

■カネ儲けのできないことに首を突っ込むことはない  私は、素人考えだが、中国やアメリカのように短い期間で大規模な病院を建てることがなぜできないのか、例えば、東京ドームに何千人分というコロナ患者のための病床をなぜ造れないのか、疑問に思っていた。  だが、発想した役人はいたかもしれないが、ネックになった大きな要因の一つは長年、政治と癒着してきた医師会の存在だったのではないのか。  この“不可侵領域”に斬り込むのかと思って見ていたが、大越というよりNHKの限界だろう、中川会長にインタビューをしながら、相手の意見を聞き置くだけで、医師会のやり方に強い疑問と批判を加えることはしなかった。否、最初からする気はなかったというべきであろう。  中川会長は大越にこういってのけた。  「税金を莫大に投入されて経営しているところ(公立病院)と自立して経営努力だけでやっているところ(民間病院)とはちがうということは分かってほしい。  世界で最も評価が高い医療の日本において、守らなければならないことがあります。それはどんな新興感染症が襲来しても、その医療とそれ以外の通常の医療が絶対に両立していなければならない」  医師会会員はカネ儲けのできないことに首を突っ込むことはない、私はそう理解したのだが。 ■政治家と長年癒着してきた医師会の体質  ここで日本医師会の歴史を振り返る余裕はないが、日本医師会は一貫して自民党の大口献金先であり、集票マシンでもあった。  政治家たちへのロビーイングは当たり前で、自分たちに不都合な“改悪”は力で潰してきた。  先の本で辰濃がこういっている。  「かつて日医は、カルテの開示の法制化を阻止してきた。インフォームド・コンセントの法制化もつぶした。植松(治雄16代会長=筆者注)執行部がつぶした医師免許更新制度だって、そうだ。  全部、国民にとっては必要な制度だった。  国民の利益と日医の利益が相反するときに、政治家を使って日医の利益を優先すれば、私たち国民は日医を自分たちの利益代弁者だとは思わない」  いい古された言葉だが「医は算術」なのである。それを最優先する医師会の本心が、コロナによってはっきりしたということであろう。  このところ、週刊誌による中川会長のスキャンダル暴露が続いているが、その背景には、世界的なコロナ感染症蔓延の中で、一番頼りたい医者たちの多くが、自分たちの利益や都合を優先させていることに、国民の間に批判や反発が広がっていることがあると、私は考えている。

■医師会に所属していないとワクチンがもらえない  それが分かりやすい形で報じられたのが、週刊文春(6/3日号)の「医師会に入らないとワクチンが来ない! 」だった。  週刊文春によれば、今回のワクチン配布についても、医師会に所属していないと十分な数をもらえない、ワクチンの囲い込みが起きていると、ヘルス・マネジメント・クリニック(東京都中央区)の行松伸成院長が話している。  週刊文春が中央区に確認してみると、区内で高齢者へのワクチン個別接種を実施している28の医療施設はすべて日本医師会会員だと認めたのである。千代田区も同じ。日本医師会会員が6割程度の台東区でも、ワクチン提供を受けている医療機関の97%が会員だった。  さらに杜撰なことが起きていると週刊新潮(6/3日号)が報じている。  医療従事者は優先接種の対象だが、その定義が曖昧なため、横浜の歯科医院は、医師3人、アルバイトが2人しかいないのに、35人分と申請したらその通り送られてきたという。  この歯科医院が所属する医療法人クリニック全体では、勤務する700人の倍ぐらいのワクチンを申請したら、問題なく通ったというのである。  このような実態があるから、当初、370万人だった医療従事者が480万人に膨れ上がったが、その背景にはこうした不正があるのではないかと、個人病院の関係者が話している。 ■接種を多くこなせば手当てが140万円にも  さらに週刊文春(6/24日号)は、「日給6万円も……医師会がワクチンで荒稼ぎ」と報じた。  日頃の政治献金が功を奏したのであろう、「かかりつけ医などの個別接種に多額の協力金が出ている」(厚労省関係者)というのである。  「現在、国や都道府県から医療機関に支払われる金額は、接種一回あたり二千七十円という基準があります。これに休日手当(二千百三十円)や時間外手当(七百三十円)、さらに各都道府県独自の手当も上乗せされる。例えば、東京都では一日五十~五十九回の接種を行った場合は十万円、六十回以上の接種を行った場合は十七万五千円の協力金が支給されます」(同)  週刊文春が、接種回数が少ないケースでシミュレーションしてみた。平日は週3日、診療後に10回、日曜日に50回の接種を行ったとすると「それでも、“手当て”は一週間で三十九万四千円」になる。  多くこなす医師では約140万円にもなるというのだ。これが事実だとしたら「コロナ太り」といわれても仕方あるまい。  しかも、大規模接種会場で接種している自衛隊医官は、「一日約三百四十人を問診しています。一日十時間以上の勤務ですが、週に一日しか休めません」といっている。  「朝八時から夜八時まで働き詰めで、一日の手当ては三千円です。土日だからといって、手当てが増えることもありません」(同)。あまりにもひどい“格差”ではないか。

■政治資金パーティーにすし屋で密会…  中川会長が4月21日の定例記者会見で、「3度目の緊急事態宣言が不可避の状況」「新型コロナの感染拡大を抑える基本は各人の意識と行動だ」と自粛を呼び掛けていたのに、その前日、自分が後援会長を務めている医師会お抱えの自見英子参院議員の政治資金パーティーの発起人になり、出席して祝辞を述べていたことを最初に報じたのは文春オンラインだった。  次に週刊新潮が、昨年の医師会選挙の後、会長に就任した中川が、親しくしている医師会傘下の総合政策研究機構の研究員の女性と高級すし屋で“密会”し、シャンパンを飲んでいたことを報じた。  パーティーに出席していた時には、「感染症対策のガイドラインに基づき開催した」と言い訳をしていたが、“密会”については「記憶にない」と沈黙した。  週刊新潮は続けて、この女性が中川の推しにより現在は主席研究員の要職にあり、年収は1800万円にもなると報じた。  日医総研は1997年4月に医師会のシンクタンクとしてつくられ、毎年多額の予算が投じられてきている。  だが、2004年に植松会長(当時)が福岡市にある会社との取引におかしな点があると気づき、調べるよう指示した。  すると会社の代表は日医総研の女性主席研究員で、取締役にも1人日医の人間が名を連ねていたことが判明した。  「報酬の二重取りではないか」と、すぐに契約を中止させた“事件”が起きていたことを、中川会長はまさか知らなかったわけではないと思うのだが。 ■経営する病院でクラスターを起こす大失策  その後も中川会長は、感染対策が不十分だ、国民の命を守れといい続けていたが、会長にふさわしいのかどうかを疑わせる決定的ともいえるスキャンダルが報じられたのである。  週刊文春(7/1日号)の「『中川医師会長はコロナ患者を見殺しに』職員5人が告発」がそれである。  中川会長は、1988年、36歳の若さで北海道札幌市に新さっぽろ脳神経外科病院を開業し、日本で最初に脳ドックを導入したといわれる。  現在は急性期病院として病床135床を擁し、来夏にはJR新札幌駅近くに30億円を投じて新ビルを造り、移転する予定だというから、彼の権勢が分かろうというものである。  だが、その病院の職員5人が週刊文春に対して、「中川はコロナ患者を見殺しにした」と告発したというのだ。事実だとすれば、中川会長の進退問題にまで発展しかねない大スキャンダルである。

 職員Aがいうには、5月15日に4階フロアから入院患者2人の感染が発覚したことが始まりだったという。  急ぎ5人部屋の416号室に隔離したが、その3日後、そこから最も離れた407号室で1人、408号室で2人の陽性者が出た。  Aは、416号室へ陽性者たちを移動させると思ったが、病院側は同じ部屋に留めおいたというのだ。ともに5人部屋だが、陽性者と陰性者のベッドは1メートルほどしか離れておらず、パーティションもない。 ■不十分な対策でついに死者も  食事も歯磨きもトイレも同じところを使い、ゾーニングも不十分だったという。現場の責任者に訴えたが、保健所の指示でやっている(札幌市保健所医療対策室は一般論だとしながら、「そのような指導や助言をすることはない」といっている)、陰性の濃厚接触者はすぐ陽性に変わるとみなして対応するといわれたそうだ。  医師会のトップが自ら経営している病院が、このようなコロナ対応しかしてないとは、背筋が寒くなる話ではないか。  当然だが、感染対策が不十分なため、5月18日には患者6人、職員3人が感染し、北海道庁からクラスターと認定された。6月1日には職員1人、患者16人になった。  職員Dは、患者やその家族に真実を伝えられなかったことが何よりつらかったという。  患者の中には「隔離されていたのになぜコロナが移ったのか」と看護師に聞いてくるものもいたが、「陽性者と同じ病室でしかも隣のベッドが陽性者ですよ」とは口が裂けてもいえるはずはなかった。  ついに6月5日、初めてコロナ感染による死者が出た。脳出血で肺が悪化していた患者で、2日後に脳梗塞の患者も亡くなり、パーキンソン病の患者も亡くなった。  その上、中川会長が「医療従事者の待遇改善」を訴えてきたため、1日3000~4000円の手当が出るようになったが、この病院では6月21日現在、一切支給されていないとDはいっている。 ■病院幹部の忖度で検査もうやむやに  こんなこともあった。中川が医師会長になった昨年6月ごろ、看護師が39度台の熱を出して、「心配だからPCR検査を受けさせてほしい」と申し出たが、病院幹部から、「極力、検査は受けないでほしい」といわれたというのである。  会長の病院から感染者を出すわけにはいかないという、病院幹部たちの中川への“忖度”からだったようだが、呆れ果てる。  使命感を持った医療従事者たちが、この病院の不十分な感染対策や患者への不誠実な説明に不信感が募り、辞める職員も多いようだ。  灯台下暗し。病院側は文春の取材に対して、そのようなことはないといっているが、中川会長は即刻、会長職を辞して病院へ戻り、事実関係を調べて公表すべきだと考えるのは、私ばかりではないはずだ。

■このままでは誰も医者を信じられなくなる  菅政権は、国民の命を脅かしても東京五輪を強行しようと突っ走り、「ワクチン敗戦国」といわれたワクチン接種はようやく始まったが、接種希望者にワクチン供給が間にあわない事態に陥っている。  患者の命を第一に守るべき医療機関が一枚岩ではなく、中にはコロナ禍を金儲けの機会ととらえている心得違いの医者や病院まであるようだ。  中川会長の言に倣っていわせてもらえば、こういうことではないか。  「どこの国の医療従事者も“守らなければならないことがあります”。それは、救えるはずの命はどんなことをしても救うということです。  どんな時代でも、自分たちの権益や利益を守るために救命を放棄してはいけないということです」  中川会長が今すぐにやるべきことは、医師会傘下のすべての病院にコロナ患者を受け入れるよう命じ、それを徹底させることである。  患者が信頼し、医者がその信頼にこたえるという当たり前のことができないならば、コロナ禍で医者離れが進んでいるといわれるが、今後コロナが終息したとしても、その傾向はさらに強まるはずだ。  国民皆保険制度を壊したのは日本医師会だった。そんな皮肉なことにならないために、今こそ医師会には国民の命を守る“覚悟”を見せてもらいたいものである。(文中敬称略)

———- 元木 昌彦(もとき・まさひこ) ジャーナリスト 1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。 ———-

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無料で受けられる「知らない」が6割…在日外国人の新型コロナワクチン接種に言葉の壁

https://news.yahoo.co.jp/articles/fec6fa62e6a854e2106268b0bd086e4e35ff1cfb

2021/7/1(木) 15:11 yomiDr.

田村専門委員の「まるごと医療」

 日本に住むベトナム人の9割以上が新型コロナワクチンの接種を希望している一方、人も6割にのぼるという調査結果が、京都の病院に勤めるベトナム人医師が駐日ベトナム大使館などを通じて実施した全国アンケートで分かった。  ワクチン接種をめぐる状況が日々変化しているなかで、外国人にとって言葉の壁が情報不足の大きな要因となっている。調査を公表した京都府保険医協会は、ベトナム人に限った問題ではなく、約300万人の在日外国人に共通する課題であるとして、接種を希望する外国人が言葉の壁などが理由で接種を受けられないことがないよう、国や自治体に対し対策を求めている。

日本語での接種案内「読めない」、予約も「できない」

イメージ

 調査は、京都民医連中央病院に勤務するファム・グェン・クィー医師らが、在日ベトナム大使館や20以上の在日ベトナム人コミュニティーやネットワークを通じ、今年3月にインターネットでアンケートした。東京、大阪、埼玉、愛知、神奈川をはじめ全国から2062人の回答があった。  回答者の内訳は、技能実習生、人文知識・技術等や高度人材の労働者、留学生・研究生などで、20歳代が7割近くを占めた。日本語能力試験では5段階で上から2、3番目のN2~N3レベルが約半分だったが、資格がない・ほぼ分からないと答えた人も約4分の1いた。また、日本語能力試験はよくできても、医学用語は分からないことがあるという。  「予防接種を受けたいかどうか」の設問では、93.5%が「受けたい」と答えた。一方、「無料で接種できることを知っているか」との設問には、59.9%が「知らない」と回答した。「外国人向けの予防接種の情報不足について心配か」の設問では、「とても心配」「心配」が合わせて66.0%で、「少し心配」「全く心配しない」を上回った。  具体的な心配やバリアについて訪ねたところ、日本語がわからないために、「自宅へ郵送される案内が読めない」ことや「接種の返事や予約ができない」のではないかなどの答えが多くみられた。  さらに、「予防接種の副反応に対する心配」「副反応が出た場合の対策」や「仕事が中断される」こと、「入院治療が必要になった時の経済的負担」などを心配する声も強かった。

接種券配布時の外国語による説明書、各言語と日本語併記の予診票を

(在日ベトナム人へのアンケート結果から。京都府保険医協会の発表資料より)

 予防接種に関する希望について尋ねた設問では、「便利な接種場所」や「ベトナム語での有効性や副反応の資料」「ベトナム語で相談できるホットライン・窓口」などの答えが多く挙げられた。また、情報窓口の手段としては、フェイスブック・メッセンジャーを希望する声が多かった。  アンケート結果を受けて、京都府保険医協会は4月、国や自治体に対し、接種券配布時の外国語による説明書の一律添付、在日外国人のための集団接種会場の設置、各言語に日本語表記を併記した予診票の作成などを求める要請書を提出している。京都市のホームページでは、ワクチン情報の外国語対応として英語、中国語、韓国語の他にベトナム語も加えられている。

在留資格の有無にかかわらず

 7月には65歳未満の人への接種が本格化する見通しで、技能実習生らを含む在日外国人の接種についても早急な対応が求められる。  読売新聞(6月18日)によると、政府は在留資格の有無にかかわらず、ワクチンの接種を希望する人が確実に接種できるよう支援する考えだ。https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20210618-OYT1T50204/  「外国人在留支援センター(FRESC)」は、コロナの影響で困っている外国人のための電話相談窓口を設けている(フリーダイヤル 0120・76・2029(月~金曜日、午前9時~午後5時))。14言語(やさしい日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ネパール語、タイ語、インドネシア語、フィリピノ(タガログ)語、ミャンマー語、クメール(カンボジア)語、モンゴル語)で対応している。http://www.moj.go.jp/isa/support/fresc/fresc01.html

田村 良彦(たむら・よしひこ)

田村良彦

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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「家族4人 ロシアで感染しました」特派員一家の焦燥~夫人にのしかかる不安…異文化に振り回された日々

https://news.yahoo.co.jp/articles/ae81969b223bad03d20f846d11f6ce18c4ca5257

2021/6/29(火) 18:04 北海道ニュースUHB

 世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス--。ロシアの首都・モスクワに赴任しているUHB北海道文化放送の特派員の一家にも襲いかかった。  家族5人中4人が感染。去年の秋、日本に一時帰国した特派員本人(当時40)が発症していると診断され緊急入院。同行した中学3年生の長男(同15)は陰性だったが、モスクワに残った3人のうち、妻(同40)と小学3年生の長女(同9)が無症状ながら陽性に。冬には小学6年生の次男(同12)も感染した。  感染が拡大し、一部で医療も崩壊したロシアで陽性になると、どうなるのか。ロシアに引っ越してからわずか2週間で外出禁止となり、生活を制限されたばかりか、その7か月後に自身も感染した妻がその苦悩の日々を振り返る。

「熱38.4度で頭痛も」 夫の職場スタッフからメッセージ

モスクワ国際映画祭を取材する支局スタッフ。どんな取材でもマスクを身につける(4月)

 6月9日夜、わたしがソファに座ってタブレットで動画を見ていたとき、隣で寝そべる夫の表情が、スマートフォンのメッセージの着信音とともにこわばりました。  「熱が38.4度。頭痛以外の症状はありませんが、あすの朝、体調をもう一度報告しますだって。日中は元気だったんだけどね」  夫はモスクワに駐在するテレビ局の記者です。メッセージは会社に勤めるカメラマン兼通訳のロシア人男性スタッフ(24)からで、コロナの感染を疑わせるものでした。  翌10日、そのスタッフはPCR検査を受け、11日に陽性が確定。軽症のため自宅療養中です。ほかのスタッフ4人や夫は陰性だったことにほっとしましたが、去年ロシアで自分の身に降りかかったコロナ禍が脳裏によみがえってきました。

一時帰国の夫“発症“…不安止めどもなく

去年10月7日、夫から届いたメッセージ。矢継ぎ早に届いたことが重大さを物語っていた

 昼食の準備をしようとしていた去年10月7日午前11時ごろ、仕事で一時帰国した夫から無料通信アプリに届いた3通のメッセージ。矢継ぎ早に届いたことが重大さを物語っていました。  「コロナ陽性だった…」  「長男は陰性」  「そっちはどう?」  まさかの知らせでした。出発前、症状はありませんでしたが、日本の検疫所で37.3度だったため、発症していると判断され、羽田空港から東京都内の病院に直行。緊急入院しました。 日本の高校を受験するため、帯同した中学校3年生の長男は幸い陰性でしたが、埼玉県にある夫の実家に預けることに。2週間の自宅待機を指示されました。  受験させてもらえるのか、そして、ロシアに残されたわたしたちは生活できるのだろうか…。不安が止めどもなくわいてきました。

感染拡大の真っただ中…40歳で“初の外国渡航“

ロシアの国境封鎖前日、モスクワの空港に到着した4人(去年3月)

 去年3月、わたしは夫が単身赴任していたモスクワに、長男、次男、長女の3人と移り住みました。子どもたちの学校の都合で、夫より5か月遅れの引っ越し。結婚してから16年間専業主婦だったわたしが、40歳にして迎えた初の海外渡航でした。ロシアがコロナで国境を封鎖する前日のことでした。コロナ拡大でロックダウンしたモスクワ。世界遺産「赤の広場」も人影がまばら(去年3月)

 2週間後にはロックダウン(都市封鎖)で外出禁止となりました。生活物資の買い物は許されていましたが、新生活は家とスーパーを行き来するだけ。7か月たっても、ロシア語も英語もあいさつが精いっぱいでした。  「夫が陽性なら、わたしたちもPCR検査を受けなきゃ。でも1人では絶対できない…」  助けを求めたのは、夫の会社のロシア人男性スタッフ(当時27)です。日本語が流ちょうで、物腰も柔らかく、夫の仕事だけでなくわたしたち家族の生活もサポートしてくれていました。PCR検査の予約も彼頼みでしたが、彼自身が陽性に。熱が出ているにもかかわらず、助けてくれました。

「大丈夫かしら」 PCR検査のスタッフ“防護服なし“

残されたPCR検査キットの包装や説明書。検査機関の女性は「自分で捨てて」と置いていった(去年10月)

 翌日8日の昼過ぎ、検査機関のスタッフが家をたずねてきました。50~60歳ぐらいの女性で、マスクは着用していましたが、防護服姿ではありませんでした。「あまり感染対策してないけど、大丈夫かしら」。わたしの不安を無視するかのように、ためらいなく玄関に入り、ぶっきら棒に検査キットを手渡しました。  「自分で採れと言ってます」。スマホをハンズフリーにして通訳してくれているスタッフの声が無情に聞こえました。女性は口と鼻の両方から粘膜を綿棒でぬぐい取れとジェスチャーでまくし立てます。検体が容器に入ったのを確認すると、ひったくるように持ち去りました。  検査結果がメールで届いたのは翌日の9日。わたしと長女が陽性でしたが、2人とも無症状。「わたし、本当にコロナなの? 熱もないし、元気だよ」。長女は納得がいかない様子でした。

マスク嫌うロシア人 都市封鎖も解除で元のもくあみ

モスクワ中心部の商店街。行き交う人の大半がマスクなし(5月)

 ロシアの感染者(今年6月27日現在)は約540万人。今も毎日2万人前後、新規感染者が確認されています。  ロシア人の大半はマスクが嫌いです。屋外でマスクを着けていると「病気なのに出歩いている」とやゆされることも。日本の飲食店ではなじみ深くなった「アクリル板」もロシアの飲食店にはありません。  モスクワは今年3月末から2か月間、ロックダウン(都市封鎖)され、外出も規制されましたが、解除とともに、すぐに感染者は膨れ上がりました。

病床不足し“医療崩壊“ 遺体処理も間に合わず…

病院の廊下で寝るコロナ感染者。地方医療は崩壊(去年11月、TV2提供)

 去年4月、モスクワでは新規感染者が急増し、病院が受け入れ不能になっていると連日報じられていました。70台以上の救急車が列をなし、患者は何時間も待ちぼうけする様子がニュースで流れる日もありました。処理しきれず、病院の安置所に袋詰めで放置された遺体(去年10月、ncindentK提供)

 12月にはロシア第2の都市・サンクトペテルブルクなど4つの地域で、病床使用率が90%以上に達し、救急車を呼んでも3日間来ない地域も。ベッドが足りず、十数人もの患者が廊下のベンチで寝たり、遺体の処理が間に合わず袋詰めで放置されたりする病院もありました。  「悪夢でしかない」「これがロシアだ。死ぬためにも順番を守らなくてはならない」。SNSには体制への批判や皮肉が飛び交っていました。

ストレスの原因…不安あおる夫の自撮りと“ごみ袋“

緊急入院し酸素吸入器をつける夫の自撮り写真(去年10月)

 埼玉県にある夫の実家に居候していた長男は、すぐに受験できる見通しが立ちましたが、夫は入院後40度まで発熱し、重症の一歩手前の「中等症2」と診断されました。 「記録しないとね」と咳き込みながら送られてくる写真や動画は、防護服姿の医療スタッフや鼻にチューブを通している自撮り。不安が助長されるものばかりでした。  「陰性だった次男にうつしてしまうことだけは避けたい」。全員24時間マスクを着用し、次男はひとり別室で過ごさせました。食事も別々、なるべく会話もしない日々が続き、3人のストレスがたまっていきます。自宅待機中に頭を悩ませたのはごみの処理。玄関に置いてしのぐしかなかった(再現)

 食料は近所に住む、次男が同級生同士のママ友に買い出しをお願いし、家の前に置いていただきました。ただ、ごみの処理には頭を痛めました。どんなに密封しても自宅がある7階から1階のゴミ捨て場へ友人に運んでもらうのは気がひけました。  30リットルの袋は日がたつにつれて膨らみ、生ごみの臭いも気になります。鳩がつつくため、ベランダに出すわけにもいかず、玄関の隅にため、しのぐしかありませんでした。

アプリと防犯カメラで監視 自宅待機守らないと”拘束”

モスクワ当局の監視アプリ。2週間の自宅待機違反に目を光らせる(去年、mos.ru提供)

 さらにイライラに拍車をかけたのが、自宅待機期間です。  「陽性が確認された日から8日後と10日後のPCR検査で陰性になれば、自宅待機は終了です」  陽性となった日から3日たった10月12日昼ごろ、往診で来た医師は2週間での解放を明言してくれました。ところが4時間後、事態は一変します。  当時、無症状で自宅待機となった人は「監視アプリ」に顔写真付きで登録され、1日5回の在宅報告が求められました。  モスクワ市内に18万台あると言われる防犯カメラの一部は顔認証システムと連動していて、登録された顔写真をもとに、自宅待機を守らなかった約200人が拘束されたと報じられました。

監視アプリに登録されず…そもそもリスト漏れ

モスクワ当局の監視アプリでは任意の時間に在宅確認が届く(去年、mos.ru提供)

 写真登録のため、保健当局の男性が防護服姿で我が家にも。長女の顔写真を撮影しましたが、わたしには見向きもせず、去ろうとするのです。  身ぶり手ぶりで「顔写真を撮って」と1時間も訴えましたが「そんなことは知らない。それはわたしの担当じゃない」とつき放され、男性は部屋を後にしました。  わたしはそもそも保健当局の陽性者リストから漏れていたのです。監視対象ではなかったとはいえ、陽性なので外に出ることは避けたい。医師の指示に従い、長女とともに「陰性」の結果が2度出るのを待ちました。結局、陽性確認から3週間がたっていました。

学校でクラスター 結局次男も“感染“

世界初承認のロシア産ワクチン「スプートニクV」。安全性を疑われ接種率が低い(去年12月)

 夫は完治し、入院から1か月後の11月、モスクワに戻りました。後遺症もなく生活は落ち着きましたが、陰性だった次男も去年の年末、学校でクラスターが起き、日本で高校に通う長男をのぞくと、家族全員が感染することになりました。  夫の職場の感染者は計3人。ロシア政府は自国でワクチンを開発しましたが、安全性を疑う声が強く、接種率は11.4%(今年6月26日現在)と伸び悩んでいます。モスクワでは6月15日から5日間、企業を休業とする緊急措置がとられましたが、収束の兆しは見えません。

マスクなし多数…過度になった? 感染後の自衛対策

電車の中でもロシア人はマスクなし。大声で会話していて再感染への不安は尽きない(5月)

 日本では現政権のコロナ対策に批判もあるようですが、ロシア当局のコロナ対応は輪をかけて“場当たり的”です。わたしが監視対象から外れていたり、自宅待機の期間がぶれたり、先がまったく見えない生活に、うんざりしました。  最近は、新規感染者が増えるにつれて雪だるま式に規制を膨らませる当局の姿勢と、街中にいる人たちの危機感の低さに大きな温度差も感じています。  「マスクなしでおしゃべりするロシアの人を見ると、無意識に必要以上に距離をとってしまう…」  日本で感染しても不安だったと思いますが、感染症への意識や文化が異なると、再感染への不安がこんなに増すなんて思いませんでした。自分のコロナ対策が感染前よりも過度になっている気がします。  ※UHBモスクワ特派員の関根弘貴が妻から聞き取り、記事を構成しました。  この連載は北海道ニュースUHBとYahoo!ニュースの連携企画です。外国でコロナに感染したらどうなるのか。次回は、去年の年末に感染した次男の目線で日本人学校のクラスターを描きます。

北海道ニュースUHB

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水泳授業相次ぐ中止、“専用マスク”でも炎上→取り外しへ 頭抱える教員ら「水への対処法どう伝えたら」

https://news.yahoo.co.jp/articles/0f5edac85664a20065921c03e86c228025ce9d3a

2021/7/1(木) 13:30 まいどなニュース

 5月中旬に統計史上最も早く梅雨入りしたはずが、連日暑さが続く近畿地方。6月には気温が30度を超える「真夏日」の日もあり、大人でもプールが恋しくなります。そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は中止していた水泳の授業も、今年は多くの学校で感染対策を講じながら再開しているそうです。 【写真】コロナ対策として開発された「プール用マスク」。開発者の思いは ■水泳用マスクで授業→「行き過ぎたマスク信仰」と“炎上”  しかし、6月中旬、茨城県日立市の学校で2年ぶりに行われた水泳授業が新聞やテレビで報道されると、インターネット上で物議を呼びました。なんと、子どもたちがマスクを着用して授業を受けていたのです。  「マスクをつけてプールサイドから落ちたときどうするの?」「行き過ぎたマスク信仰」「恐ろしい事態やめさせて!」。ネットのコメント欄には非難が殺到しました。  日立市教育委員会によると、子どもたちが着用していたのは水泳専用のマスクで、同市が市立小中学校の全児童生徒に購入したものです。プールサイドで教諭らからの説明を聞く際には口に装着していますが、泳ぐ際にはあごの下にずらすことができるタイプで、「水泳授業が始まってから、学校現場から『危険だ』という報告は上がってきていない」(同市教委の担当者)といいます。  ところが、報道後に同市教委などには1日あたり50件ほどの苦情が寄せられ、水の中に入る際はマスクを外してタオルと保管するよう方針を変えたそうです。同市教委の担当者は「海に隣接している茨城県で2年続けて水泳の授業をしないということは、学びの保障にもつながらない。感染予防も取りながら何とか学びを続けたい」と話します。 ■水難事故コロナ禍で増、陸上でもできる「エアスイム」など対策を   水泳の授業については、生徒や児童同士が2m以上間隔を取るよう、文部科学省が各都道府県の教育委員会などに通知していますが、屋外であってもプールサイドは運動場より狭いのが現実。更衣室では密になりやすく、予防対策にどの学校も頭を悩ませています。そのため、神戸や西宮市など感染が拡大している地域を中心に、2年連続で水泳の授業を取りやめた自治体も少なくありません。  こうした状況に、教師や水泳指導者らの有志で作る「学校水泳研究会」で代表を務める鳴門教育大大学院(徳島県鳴門市)の松井敦典教授(61)=保健体育=は「成長過程でやるべきことをやらなければ、水中での安全な技能を身に付けずに大人になってしまう可能性がある」と危ぐしています。  警察庁によると、減少傾向にあった全国の水難事故が、昨年はコロナで多くの海水浴場が閉鎖されたにもかかわらず、前年より微増したそうです。松井教授は「授業だけでなく夏休み中の学校プールの開放もなくなり、公営プールも軒並み閉まった。水の中での動作を学ぶ機会がなく、水への理解がない中で、川や水辺で事故に繋がったのではないだろうか」と推測します。  学校水泳研究会のホームページでは、小学校教諭や大学の専門家らが考案したコロナ下での水泳指導法も掲載されています。  たとえば、小学生向けであれば、水の中と陸上ではどのような違いがあるのか、子どもたちに考えさせ、水の特性や溺れた際の対応などを学ばせる授業事例を紹介。教員を目指す大学生向けの研究報告ではありますが、陸で泳ぐ動作をまねする「エアスイム」の方法など、水中練習ができない子どもたちにも参考になる指導法が載っています。  気象庁によると、2021年の夏(7~9月)の平均気温は、西日本で「平年並み」または「高い」確率がともに40%。北・東日本、沖縄・奄美では「高い」確率が50%とされており、今年も猛暑となりそうです。  ウィズコロナの生活が当分続きそうな中、今年の夏休みも遠方への旅行を控え、川や水辺など身近な自然の中で涼を求める人が増えることでしょう。コロナ前よりも、水の危険性やいざという時の対処法を理解しておく必要があるかもしれません。 (まいどなニュース特約・斉藤絵美)

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ワクチン 社会問題

米国でワクチン接種拒否選手へ猛非難「チームを危険にさらす」「東京に行くべきではない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/6fde7f2d9475ddf22049b3b37a3e29c0290d9d6e

2021/7/2(金) 16:47 東スポWeb

 東京五輪参加選手の新型コロナウイルス接種拒否が、思わぬ波紋を広げている。  米紙「カンザスシティ・スター」は、体操女子米国代表の補欠となった17歳のリアン・ウォンが、ワクチン接種を受けていないことを公表後、ひどい攻撃を受けたことを報道した。  未成年のウォンは科学者である両親の考えで、ワクチンを接種しないことを選択。すると「チーム全体を危険にさらしている」「チームと一緒に東京に行くべきではない」とネット上で批判を受けたという。ウォンの母親は「彼女は不当に扱われていると思う。IOCも米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)もワクチン接種を義務付けていない。ワクチンを打つかどうかは私的な問題だ」と話している。  米体操女子では、負傷者やコロナ陽性者が万が一出た場合を考え、通常の倍となる4人補欠選手を選んでいる。同紙は、「補欠選手もシモーネ・バイルスら代表選手も同じ行動を取るため、コロナから身を守るワクチン接種を補欠接種にも望むことは理にかなっている」と指摘。一方で「開催国にもかかわらず、ワクチン接種率が驚くほど低い日本で行われるのに、IOCはワクチン接種が義務ではない」とルールの壁に言及した。  ウォン以外にも米国で一部の選手はワクチン接種をしないと想定されている。〝穴だらけ〟と高名な科学者から指摘されまくりの東京五輪コロナ対策だけに、ワクチン接種、非接種選手を巡る複雑な問題は続きそうだ。