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コロナ 対策

“野戦病院”型施設を「常設」の意向 田村厚労相

https://news.yahoo.co.jp/articles/1bfa240a163be7c04b11feb74ae63769ec94f38e

2021/8/22(日) 18:57 FNNプライムオンライン

新型コロナウイルスの「デルタ株」が猛威を振るい、病床が逼迫(ひっぱく)し、自宅療養者が急増。 入院できない自宅療養者の死亡が相次いでいる。 田村憲久厚労相は8月22日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に出演し、患者を1カ所に集めてケアする臨時の医療施設、いわゆる“野戦病院”型施設を各地に整備する考えを表明した。 田村厚労相は、「新型コロナウイルスとは長い戦いになる」として、医療施設について「臨時とは言いながら、基本的には恒常的にいつでも使えるような状況で対応してもらう」と述べ、長期間運用する考えも示した。 また、田村厚労相は、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場を臨時医療施設に転用することも選択肢の一つだとの認識を示した。 これに関し、番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(元大阪市長、弁護士)は、田村厚労相に対し、重症・中等症患者向けのベッドを増やすよう、医療界に「命令」する必要を訴えた。 橋下氏は、医療制度には多額の税金が使われているとして、命令に従わない医師や医療機関には「保険医指定」を取り消すペナルティーを課すくらいの強権を発動するべきだとの考えを強調した。 以下、番組内での主なやりとり。 松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員): 重症化一歩手前と言われる中等症2の状況でも、酸素飽和度が90%を下回らないと、なかなか救急車に来てもらえない現状がある。 田村憲久厚労相: 中等症2はつらい。重症化して人工呼吸器をつけると麻酔が効くが、中等症は酸素吸入できなければかなり息苦しく、本来は入院が必要だ。中国の研究で査読はされていないということだが、デルタ株は従来のウイルスに比べてウイルス量1,000倍以上という話だ。それが本当だとすれば、かなり感染力を増している。CDC(米疾病対策センター)の報告等で、1人が8人か9人にうつすのではないか、という話がある。そうなるとインフルエンザの数倍感染力がある。従来のコロナとは違う。ワクチンを打ったとしても、感染は一定程度続くということだ。もちろんワクチンを打てば重症者は減るし、ある程度入院する人、症状の出る人は減る。今、イギリスはワクチン2回打った人が60%近くいるが、1日3万人新規感染者がいる。人口は日本の半分くらいだ。今、入院率はたぶん2、3%だと思う。日本の入院率は今10%くらい。フランス、アメリカの入院率は5、6%くらいだ。日本はそれなりに入院できているが、それでも(病床が)足りない。だから、臨時の医療施設をいよいよ各自治体で整備をしてもらう。臨時とは言いながら、多分基本的には恒常的にいつでも使えるような状況で対応してもらう。酸素濃縮器はホテルや自宅で使うが、大きい医療施設では配管をつなげて、そこに酸素を流して対応できる。そういう対応をいよいよ考えなければならず、全国(の自治体)にお願いし始めている。 橋下徹氏(元大阪市長・弁護士): 臨時医療施設の話が出てきて、福井県方式というものが取り上げられている。こちらは軽症者用の施設だが、もし感染拡大地域で軽症者向けの臨時医療施設などつくろうと思ったら、10万人くらいの(規模の)施設をつくらなければいけない。臨時医療施設をつくるなら、順番があるはずだ。まずは中等症と重症者向けの施設を集中的に作ることだと思う。厚生労働省として、この臨時医療施設の考え方はどうなのか。 田村厚労相: 一番必要なのは、命と直結する重症者の病床だ。しかし、重症者向けは臨時とするのは難しくて、かなり人手が要る。そういう意味では中等症の病床をつぶして、人の配置を変えていく。中等症の人の病床を減らし、特に中等症2の人々は、かなり息苦しい状況なので、臨時の医療施設で配管で酸素を流す形で対応する。中等症以下の人、軽症の人は、今18万人とか、20万人くらい全国でいる。それ全部は対応できない。本当に必要なところの臨時医療施設を早急に拡大していく必要がある。ただ、問題はそこに人が要る。臨時医療施設は効率はいい。例えば、13対1などで診られる。患者が並んでいるから。だが、なかなか人(医療関係者)が来ない。場合によっては各医療機関に輪番制をお願いする。問題は、病院ならそこの院長が管理するが、臨時の医療施設はどこかの病院が受けてくれるわけではないので、誰が管理するか。ここまできちんと考えなければいけない。そこは各自治体とっては大変な負担だが、日本はその段に来ている。 松山キャスター: 東京オリンピック・パラリンピックの競技会場を臨時の医療施設として検討しているのか。 田村厚労相: (酸素供給用の)配管や、ベッドを並べるのに時間が一定程度かかる。きょう言って、あしたというわけにはいかない。やはり2週間、3週間はかかる。そういう意味では、今言われたようなものもひとつだろうが、もう早く、すぐにでもいろんなところで作っていかなければならず、準備を始めていただかなければならない。なるべく早く臨時の医療施設を多くつくってもらう必要がある。コロナとは、これからかなり長い間の戦いになってくる。ワクチンを打つことは重要だ。それにより死亡者は減っていく。長い戦いだから臨時といいながら、感染が広がった場合にいつでも開けられるように、どう人を配置するか、そこまで計画をつくって対応することが必要だ。 橋下氏(元大阪市長・弁護士): 臨時の医療施設は医療従事者をどう集めるか。田村大臣は各自治体の首長に頑張ってもらうと言ったが、武器を与えないと集められない。田村大臣の言うように輪番制(とすること)もひとつあると思う。最後は、医療従事者にある意味命令をし、それに違反した場合の制裁ということも(必要だ)。医療制度には多額の税金が入っているのだから。法律の拡大解釈だが、健康保険法の80条、81条に基づく命令。それに従わない場合には、保険医の登録を取り消すよ、保健医療機関の指定を取り消すよというぐらいのペナルティーを見せながら人集めをしなければ、人は集まらないと思う。そこは政治の力でやってもらいたい。 田村厚労相: 日本の医療従事者は、今までも責任感持って、しっかりやってきてもらっている。まずはお願いをする。これからそういうものを考えていかなければならない段なので、早急に、まずはお願いをさせてもらう。私は多くの医療関係者に、理解、協力いただけると思う。 橋下氏: でも、お願いでダメだった場合に、命令は必要だ。 田村厚労相: 次の段階は次の段階で考える。とにかくいま何か刀を抜いて脅すということをやるときではない。 橋下氏: 短くても持っておく必要はあるのではないか。 田村厚労相: 今あるから、制度として法律が。 橋下氏: それで人が集まればいいが。 田村厚労相: だから、それをしっかりと理解をいただきながら協力をいただいていく。これから始めていく話で、医療関係者の理解をいただけると思っている。

日曜報道THE PRIME

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コロナ 社会問題

コロナワクチンで健康被害を初認定 29人、大半が女性

https://news.yahoo.co.jp/articles/ee7dd877c5f3a4337bbdffcadacd98c709cbac86

2021/8/19(木) 20:54 朝日新聞DIGITAL

 厚生労働省の審査会は、新型コロナウイルスワクチンの接種後に強いアレルギー反応「アナフィラキシー」などを起こした22~66歳の29人について、コロナワクチンによる健康被害を初めて認定した。女性が28人、男性が1人だった。治療にかかった医療費が市町村から給付される。 【データで見るコロナワクチン】日本の接種状況は? 都道府県の状況も一目でわかる  自治体を通じて申請された41件について、専門家が19日に審査した。健康被害が認定された内訳は「アナフィラキシー」が15件で最も多く、「アナフィラキシー様症状」が8件、「急性アレルギー反応」が6件だった。残りの12件は判定保留となり、次回以降に審査される。(下司佳代子)

朝日新聞社

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コロナ 対策

「接種後に解熱剤を飲んでOK?」―新型コロナワクチンのQ&A

https://news.yahoo.co.jp/articles/ead025660461ced08b23a3fe83fdeb79717630e1

2021/8/10(火) 12:03 MedicalNote

現在、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)への対策として全国でワクチン接種が進んでいます。初めて接種するワクチンに対して疑問や不安を抱えている方もいるでしょう。本記事では、7月9日(金)に行われたオンライン講座「新型コロナウイルスの今~安全なワクチン接種と千葉市医療機関の取り組み~」から、参加者の質問に対する瀧口恭男先生(千葉市立青葉病院呼吸器内科統括部長 兼 感染対策室主査)と谷口俊文先生(千葉大学医学部附属病院感染制御部・感染症内科 講師)の回答をまとめました。

◇Q ワクチン接種後に解熱剤などの薬を飲むのはOK?

イメージ:PIXTA

参加者からの質問: これからワクチンを接種する予定です。接種後に熱が出た場合、解熱剤や痛み止めなどの薬を服用してもよいのでしょうか。服用する薬の種類に指定はありますか。 谷口俊文先生の回答: 新型コロナワクチンの接種後に熱や頭痛が出た場合には、解熱剤や痛み止めの薬を飲んでいただいて問題ありません。はじめの頃はアセトアミノフェン(一般名)が推奨されていましたが、ロキソプロフェンナトリウム水和物(一般名)やイブプロフェン(一般名)という成分が入っている薬でも大丈夫です。 ただし、1点だけ注意点があります。それは、ワクチン接種前に予防的に解熱剤や痛み止めの薬を飲むことはやめてほしいということです。というのも、予防的にそれらの薬を飲むとワクチンの効果が薄れてしまう可能性が指摘されているのです。そのため、解熱剤などを飲むなら必ず「ワクチン接種後」に、「症状が出てから」服用するようにお願いします。

◇Q ワクチン接種後の効果はどのくらい続く?

参加者からの質問: ワクチン接種後、効果はどのくらい続くのですか。 谷口俊文先生の回答: これまでの研究結果から総合的に見て、新型コロナワクチンは接種してから少なくとも1年ほどは重症化を予防する効果や死亡を防ぐ効果が続くと考えられています。ただし、感染予防効果や発症予防効果は接種してから時間が経過すると効果が低下してくることが知られています。 さらに最近の研究では、終生免疫(一度できた免疫が生涯にわたり続く)がつくのではないかという可能性が示唆されています。ただし、終生免疫の可能性についてはもう少していねいな研究がいくつか必要な段階です。

◇Q インフルエンザワクチンを接種しても大丈夫?

参加者からの質問: 今年の冬にはインフルエンザワクチンを接種する予定ですが、いつもどおり打っても問題ないでしょうか。ほかのワクチンを接種する場合はどのくらい期間を空けたらよいのかを教えてください。 谷口俊文先生の回答: インフルエンザワクチンはいつもどおりに接種いただいて問題ありません。 次に、ほかのワクチン接種をする際にどのくらい間隔を空けたらよいかという点についてです。厚生労働省では原則として、新型コロナワクチンとそのほかのワクチンは、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種することを推奨しています(ただし緊急性を要する場合は例外とする)。一方、アメリカの疾病対策センター(CDC)では特に間隔を空ける必要はないとしています。 これまでの研究結果や他国の対応を鑑みると、新型コロナワクチンを打ったからほかのワクチン接種を遅らせる、あるいはその逆のような対応は不要と考えています。

◇Q 副反応がないけれど抗体はちゃんとできている?

参加者からの質問: 先日2回目の新型コロナワクチン接種を行いましたが、副反応が何もありませんでした。副反応がなくても抗体は十分にできているのでしょうか。 谷口俊文先生の回答: 千葉大学で行った研究(ファイザー社mRNAワクチン、対象は1774人)では、副反応の有無に関係なく抗体価がしっかりと上昇していることが確認されました。そのため、副反応が出ているかどうかを心配する必要はないと思われます。 また、新型コロナワクチンの作用の中で、私たちの体を守ってくれているのは抗体だけではありません。たとえば、キラーT細胞などがウイルスを覚えて再び侵入してきたときにすぐに反応する「細胞性免疫」というはたらきがあります。これは抗体価としては現れませんが、新型コロナワクチンを接種することで獲得できる大切な免疫機構の1つです。

◇Q 病院によって新型コロナの治療に違いはある?

参加者からの質問: 病院によりCOVID-19の治療に違いはありますか。たとえば、感染症専門の病棟を持っている病院とそうでない病院で治療は変わるでしょうか。 瀧口恭男先生の回答: 多くの病気と同様に、COVID-19に対しても「診療ガイドライン」という共通の手引きがあります。そのため、感染症専門の病棟を持っているか否かにかかわらず、どの病院であっても治療内容は大きく変わりません。 千葉県では2週間に1回の頻度で「新型コロナ重点医療機関」の会議を開き、COVID-19の標準治療に関して最新の情報をシェアしています。また、病状が急激に悪化した患者さんの受け入れに関しては地域内のネットワークが構築されており、連携して迅速な対応ができるような体制を整えています。

◇Q 変異ウイルス(デルタ株)に対する注意点は?

参加者からの質問: デルタ株によるクラスターが保育施設で発生したというニュースを見ました。うちには3歳の子どもがいて心配です。家庭で何か気を付けるべきことはありますか。 瀧口恭男先生の回答: 変異ウイルスであることを過度に心配する必要はありません。変異ウイルスであるか否に関係なく、これまでと同じように感染対策などを行うのがよいと思います。 谷口俊文先生の回答: 瀧口先生の回答のとおりで、基本的な感染対策は同じです。一方で「ワクチンを接種したので感染対策をしなくてもよいか」と聞かれることがありますが、現状ではワクチンを接種した後もマスク着用・手洗い・手指消毒などの感染対策を継続していただきたいです。

◇Q 免疫を抑制する治療を受けていると感染しやすい?

参加者からの質問: 先日家族がCOVID-19のPCR検査で陽性となりました。私自身は免疫を抑制する治療を受けていますが、COVID-19にかかりやすいのでしょうか。また、新型コロナウイルスに感染した人からほかの人へ感染する可能性はいつまでありますか。 瀧口恭男先生の回答: 現在免疫を抑制する治療を受けているならば、感染症にかかりやすい状態であるとはいえると思います。新型コロナウイルスに感染した人からほかの人に感染する可能性があるのは、発症の2日前から発症後7~10日間ほどといわれています。また、解熱剤を使わない状態で平熱が3日続けば周囲に感染させるおそれはほとんどないといわれていますので、その期間を過ぎたらいつもどおりの対応で問題ないでしょう。 入院治療後に退院された場合に関しては、退院が可能ということはほぼ感染力がない状態であると判断していただいて結構です。ただし、退院可能になってもせきが続く方も中にはいらっしゃるので、そのような場合は念のためせきエチケットとマスクの着用をしていただくことをおすすめします。

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コロナ 社会問題

コロナの流行はいつまで続くのか?―終息ではなく共存への戦略変更

https://news.yahoo.co.jp/articles/41c4a9fe2d6c97a26c5cd7635d1b35cffe56bbbb

2021/8/19(木) 11:51 MedicalNote

新型コロナウイルスのデルタ型変異株が世界的に猛威をふるっています。今まで感染者数が少なかった東南アジアでも拡大しているとともに、ワクチン接種で流行が制圧されつつあった欧米諸国でも流行の再燃がみられています。日本でも7月から首都圏などで発生したデルタ株の流行は、8月には日本全国に波及し、8月中旬の時点で日に2万人以上の感染者が報告されています。 新型コロナの流行が始まって1年半以上が経過していますが、この流行はいつまで続くのでしょうか。国民の皆さんも先が見えない中、精神的にかなり疲れてきていると思います。そこで今回は、今後のコロナ流行の見通しについて解説します。【東京医科大学病院渡航者医療センター部長・濱田篤郎/メディカルノートNEWS & JOURNAL】

◇想定外のデルタ株流行

今年の3月頃まで、新型コロナの流行は年内に終息すると考えられていました。ワクチン接種が昨年末から多くの国で始まり、その最先端を行くイスラエルでは接種率の増加とともに、新しい感染者がほとんど発生しなくなったのです。これはイギリスや米国でも同様でした。この時点でアルファ型の変異株が世界的に流行していましたが、ワクチンの効果は十分にありました。日本でも今年10月までには接種完了者が6割に達し、流行終息という見通しがされていたのです。 ところが、この予想を崩したのが、4月にインドで大流行を起こしたデルタ株の出現でした。この後、デルタ株は世界各地に拡大し、8月中旬には140カ国以上で流行しています。これ程まで短期間に拡大したのは感染力の強さによるもので、従来のウイルスの2倍以上の感染力があると考えられています。また、ワクチンの効果もデルタ株に対しては減弱しているとするデータが多くみられます。 このように、デルタ株の拡大により、コロナの流行予測が大きく変わり、それとともに、流行終息のための戦略にも変更が必要になってきました。

◇流行終息のための戦略

新型コロナの流行が始まってから、日本をはじめ多くの国では、マスク着用といった予防対策や人流抑制などで流行を抑えつつ、ワクチン接種という切り札で流行を終息させる戦略をとってきました。 飛沫感染や空気感染する病気は、集団内で一定割合の人が免疫を持てば、流行がそれ以上は広がらなくなります。これを集団免疫と呼び、原因となる病原体の感染力でその割合が決まります。たとえば、麻疹は感染力が大変強いので、集団の9割以上が免疫を持たないと終息しません。インフルエンザはこの割合が6割とされています。新型コロナの場合は、インフルエンザと同様に約6割と考えられていました。 この免疫を持つ人の数は、「感染した人」と「ワクチン接種を受けた人」の合計になります。ただし、ワクチンに感染予防効果がないと、ワクチン接種を受けていても免疫のある人にはカウントできないのです。 実はインフルエンザワクチンには発症予防効果や重症化予防効果がありますが、感染予防効果は証明されていません。コロナワクチンはどうかというと、イスラエルや米国などでの使用経験から、感染予防効果があるとする調査結果が報告されてきました。 このような科学的背景から、流行終息の戦略としては、コロナワクチンの接種率を向上させ、それによって集団免疫の割合を6割以上にする方法がとられてきたのです。

◇デルタ株登場による戦略変更

しかし、デルタ株の出現によってこの戦略に大きな変更が必要になっています。デルタ株の感染力からすると、集団免疫による流行終息には8割以上の人が免疫を持っている必要があるからです。また、コロナワクチンについても、デルタ株に対しては感染予防効果が低下している可能性もあるのです。つまり、ワクチンだけで集団免疫を達成するのは、かなり難しい状況になっています。 このため接種完了者が6割以上になっているイスラエルや、6割に近いイギリスや米国でも、デルタ株による流行が6月末ごろから起きています。ワクチン接種を受けている人の感染は少ないですが、従来の割合では集団免疫が達成できないことを示す結果になっています。 このように、デルタ株の流行発生により、新たなコロナ戦略を策定しなければならない状況にあります。

◇流行終息ではなく共存へ

イメージ:PIXTA

この戦略変更で考えなければならないのは、デルタ株の発生によりコロナ流行の終息はかなり先になる可能性が高いことです。終息に必要な集団免疫率に達するためには、年単位の時間が必要になるでしょう。 そうであるなら、今は終息を期待するよりも新型コロナの流行と共存していくことが大切だと思います。ただし、それは緊急事態宣言を何回も発出したり、マスクなどの予防対策を常時行ったりするような共存ではありません。 そうした煩わしい対策を常時することなく共存するには、新型コロナをインフルエンザと同様な感染症にすることが必要だと思います。インフルエンザは長年流行している感染症のため、私たちは一定の基礎免疫を持っています。だから感染力はそれほど強くありませんし、重症化する人もほんの一部です。 その一方、新型コロナは新しい感染症なので、私たちはほとんど免疫を持っていません。そこで、まずはコロナワクチン接種を拡大させ、多くの国民を一定の免疫レベルにまで到達させるのです。コロナワクチンの発症予防効果はデルタ株に対してやや低下していますが、まだ有効な域にあります。そして今後、新型コロナの流行が再燃してきたら、ワクチンの追加接種やマスクなどの予防対策を加えて対処するのです。 こうした流行との共存はイスラエルやイギリスで現在、行われており、デルタ株による感染者は増加傾向にありますが、重症者や死亡者は少なく抑えられています。

◇日本での今後の見通し

では、こうした戦略のもと、日本での流行は今後どうなっていくでしょうか。今回の第5波の流行は、8月中は続くと予想されています。この流行を抑えるには人流抑制や各自の予防対策に頼るしかありません。これと並行してワクチン接種を拡大させ、10月頃までには国民の6割以上が接種を完了する必要があります。これは集団免疫のためではなく、新型コロナをインフルエンザと同様の感染症にするためです。 11月以降、冬の季節を迎えると、新型コロナの流行は高い確率で再燃すると考えられます。その時までにワクチン接種を受けておけば、発症はかなり抑えられますし、少なくとも重症にはならないでしょう。ワクチン接種を受けなかった人は、各自の予防対策を強化するようにしてください。 今後、新たな変異株が流行するなど再び想定外の事態が起こることも考えられますが、これからは新型コロナの流行と共存する戦略が必要なのです。

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ウイルス

ウイルスは健康な人の体内にも常在―新たな発見と研究の可能性

https://news.yahoo.co.jp/articles/cdf5be1a24829e770c6abd36fc3fa211ce891e55

2021/8/18(水) 11:51 NedicalNote

ラテン語の毒(virus)に由来する言葉、「ウイルス」。1892年に初めて発見されたウイルスはタバコモザイクウイルス(TMV)といい、植物に感染するものでした。語源からも分かるように長い間ウイルスは病原体として捉えられ、その克服が研究における最大のテーマとされてきました。ところが、近年の研究で人や動物のゲノム(遺伝情報)にウイルス由来のものが発見され、常在するウイルスの存在が明らかになってきたのです。佐藤佳先生(東京大学医科学研究所感染制御系システムウイルス学分野准教授)に、近年の研究で見えてきた新たなウイルスの側面について伺いました。【全2記事の1】

◇健康な人の体にも多くのウイルスが常在している

主なウイルス13種類での分析結果(素材:PIXTA)

ウイルスがヒトの体に存在するかを調べるとき、従来その対象は主として何らかの病気を持つ人であり、方法は採血など非侵襲的な(体に負担がない)ものに限定されていました。そのようななか、私たちは健常な人547人の体をくまなく探索し、どのようなウイルスがどの組織に存在するのかを調査しました。結果、健常なヒトの体内に少なくとも39種類のウイルスが常在的に感染していることが分かったのです。 図のように、脳や肺、心臓、消化器官、血液や神経などにさまざまなウイルスが常在している(厳密にいうとウイルス由来の遺伝子が存在する)ことが明らかになりました。 また、さまざまな臓器に感染するウイルス(ヒトヘルペスウイルス4型など)がある一方で、特定の組織に発現するウイルス(肝臓に限局するC型肝炎ウイルス、胃に局在するヒトヘルペスウイルス7型など)の存在が確認されました。中でも、胃に存在するヘルペスウイルスは消化酵素の合成などの機能に関わっている可能性が見出されています。 さらに、不顕性感染しているウイルスに対するインターフェロンの発現や、免疫細胞の一種であるB細胞の活性化などの免疫応答が生じていることも分かりました。これはつまり、体内に潜伏感染しているウイルスが密かに免疫機構を活性化させている可能性があるということです。

◇ウイルスの新たな側面を解明する「ネオウイルス学」

研究の結果、これまで認識されていなかった健常な人の体内に存在するヴァイローム(ある領域に存在するウイルスの総体)を捉えることに成功。インターフェロンの発現やB細胞の活性化などは、体内のヴァイロームがヒトの免疫状態や生理的機能に関連していることを示唆するものです。ウイルスと宿主の関わりにおける新たな一面を明らかにしたという点で、この研究の意義は大きいでしょう。 これまでは病原体としての側面だけに焦点を当ててきたウイルス学に対し、本研究のようにウイルス全体を対象に病原体ではない新たな側面を解明する学問を「ネオウイルス学」といいます。

◇対照的な研究手法を融合する「システムウイルス学」

今回の研究は、大規模な遺伝子発現データの解析によって健常な人の体内に存在するヴァイロームの様子を解明したものです。健常な人547人の51種類の組織から取得された計8991サンプルのRNAの配列情報を対象に、大規模なメタゲノム解析(サンプル中のゲノムDNAを網羅的に解析する手法)を行いました。 このように、細胞や自然界の検体を使って行う生物学的なウェットな研究と、コンピューターで解析を行うドライな研究を融合し、未知のテーマを明らかにしていく分野を「システムウイルス学」といいます。私たちの教室では、たとえばウイルスが種を超えて伝わる仕組みや新型コロナウイルスの進化過程の解明など、複数の研究を進めています。 ウイルスと宿主の関係を追究していくと、C型肝炎の原因となるC型肝炎ウイルスと同じように、特定の病気と関連する新たなウイルスの存在を突き止められるかもしれません。可能性の1つとして、一見ウイルスとは関係ないような病気、たとえば生活習慣病などとウイルスの関連性が発見されることも考えられます。

メディカルノート

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コロナ 社会問題

感染激減インドから日本へ「絶対参考にしないで…」

https://news.yahoo.co.jp/articles/f281d579e97ea9620512ecdfaffe2d0926828278

2021/8/22(日) 22:30 テレ朝NEWS

感染が広がるデルタ株、日本だけでなく世界中で猛威を振るっています。そのウイルスが最初に確認されたインドでは、ピーク時に比べ感染が激減しています。一体、何が起こったのでしょうか。 ▽インド 1日40万人感染が一転…酒も解禁 (ニューデリー近郊に住む中村ゆりさん)「ここはグルガオン市内にあるローカルマーケットです。ロックダウン中はこのローカルマーケットもすべてのお店がクローズ、ほとんど人がいないという閑散とした状況でしたが、現在は感染者数が落ち着き、週末には多くの方々が集まりにぎわいを見せています」 “デルタ株の震源地”インドで広がる意外な光景… 「今日は週末ということもあり、モールの前には多くの家族ずれの方でにぎわっています。」 ロックダウンは徐々に緩和されショッピングモールや映画館もオープンしています。 世界で猛威を振るう「デルタ株」が最初に確認されたインド。4月下旬に感染爆発が起き、あっという間に1日40万人が感染する事態となりました。 街は酸素ボンベを求める人で溢れかえり、火葬も追い付かない状態に陥ったのです。しかし今では… 「こうしたレストランやバーではアルコールの提供も禁止、営業自体も禁止されていましたが、今はレストランもオープン、アルコールの提供も可能となっています」 Q.ビールは好きですか? (客)「もちろん!気分がいいわ」 アルコール類の提供も解禁され、どこでも自由に飲むことができます。 (街の人)「インドの状況が非常に早く回復してくれてよかったです。ビジネス、健康などすべてが正しい方向に向かっています。」 「一番うれしいのはレストランの再開です。きょうはラーメンを食べようと思います」 ▽ワクチン接種1割でも人口7割に抗体 これはインドの感染者数の推移。5月上旬をピークに、その後、激減し、今では感染者数が一日、3万人台まで減っているのがわかります。 ワクチンを2回打った人は、いまだ人口の1割ほど。にもかかわらず、なぜここまで感染者数が激減したのでしょうか? (ニューデリー近郊に住む 中村ゆりさん)「一番大きな影響はロックダウンかなと思いますね。各州全体的に実施されたんですけど、かなり厳格にロックダウンを行うので、そこで一気に感染を封じ込めて徐々に緩和していくと」 一方で、インド政府の専門家会議のメンバー、アミット医師は別の可能性も指摘します。 (インド政府 専門家会議メンバー アミット・ダット医師)「インド全体の抗体保有率が70%という結果がでました。インドが“集団免疫”を獲得したことを意味します。(感染者の激減は)これが一つの理由になっているでしょう。」 実は、インド政府が6月と7月に行った調査によると、主要な8州で70%以上の人に抗体が確認されたことが分かったのです。人口13億人を元に単純計算すると9億人がすでに抗体を持っていることになり、「集団免疫」によって感染者数が激減した可能性があるのだといいます。さらに… (インド政府 専門家会議のメンバー アミット・ダット医師)「インドではこれまでに40万人が亡くなったと報告されています。しかし実際の死者数は不明です。もっと死者は出ていたでしょう。報告よりもずっと多かった可能性が高い。」 実際、アメリカの研究機関は、インドのコロナウイルスによる死者は公式発表のおよそ10倍にあたる340万人から490万人に及ぶ可能性が高いと発表しています。 ▽インド感染激減の背景に“大きな犠牲” 感染拡大が止められず、大きな犠牲を払うこととなったインド… (元大統領府報道官 アチャッタ・ダッタさん)「夫と母はまったく何も治療を受けられませんでした。とても惨めでとてもつらかった。」 元インド大統領府報道官のアチャッタ・ダッタさんは4月末に母親と夫をコロナで亡くしました。 その後、家族全員の陽性も判明し呼吸困難に陥った姪のため酸素ボンベの確保に奔走したといいます。 (アチャッタ・ダッタさん)「今でも毎日家で話します。(家族を救うために)何をすべきだったのか。これは生き残った者が感じる罪悪感です。できる限り早くワクチンを打ってください。これが唯一のコロナと闘う方法です。」 インドでは感染爆発で孤児が増加。首都圏だけで5640人の子どもがコロナで両親のどちらかを失い、273人の子どもが両方を失ったといいます。 アミット医師は、感染拡大が止まらない日本にこう警鐘を鳴らします。 (インド政府 専門家会議メンバー アミット・ダット医師)「インドから学んでください。自然感染で集団免疫を獲得すると大きな犠牲を払うことになります。絶対に参考にすべき方法ではありません。パンデミック下ではリーダーシップが非常に大切です。政府が信頼を取り戻したうえで(国民と)感染対策を実行すること、それがこのパンデミックと闘うための唯一の道なのです。」

8月22日『サンデーステーション』より

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コロナ 社会問題

「ニセのワクチン接種証明書」がオンラインで盛んに販売…「紙一枚にすぎない」=米国

https://www.wowkorea.jp/news/korea/2021/0810/10310696.html

2021/08/10 17:04 herald wowkorea.jp 96

新学期を迎えるにあたり 新型コロナウイルス感染症ワクチン接種を義務化した米国の大学は、ニセの接種証明書を提出する学生たちのため 頭を痛めている。

9日(現地時間)米現地メディア報道によると、米国内675の大学は 全職員と在学生を対象に新型コロナワクチン接種の義務化政策を施行している。

今月末に新学期が始まる大学は、在学生たちにワクチン接種証明書の写真を 大学のポータルサイトにあげるよう要求している。

しかし 大学の関係者たちは「学生たちが提出したワクチン接種証明書の真偽の確認が不可能だ」と懸念している。

実際にインターネットでは、新学期を迎える学生たちを対象に ニセの接種証明書の販売が流行していると、米AP通信は報じた。

あるインスタグラムには 新型コロナワクチン接種証明書が1枚25ドルで販売されていて、あるテレグラムのユーザーは ワクチン接種証明書10枚を200ドルで販売していた。

7万人のフォロワーがいる あるツイッターのユーザーは「大学在学中の娘がインターネットで50ドルを支払い、中国からワクチン接種証明書2枚が届いた」と伝えた。

このことについて ノースカロライナ大学チャペルヒル校のベンジャミン・メイソンマイヤー教授は「大学当局が、ワクチン接種について確認するのは容易ではない」とし「他の国とは異なり、米国はワクチン接種証明書が紙一枚に過ぎないためだ」と指摘した。

また「大学全体の安全のためにも、ワクチン接種証明書の真偽を確認する制度を整えなければならない」と語った。

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ワクチン 社会問題

「ワクチン2回」の表現はハラスメントか? 岩田健太郎氏がSNS上の論争に持論

https://news.yahoo.co.jp/articles/e4a99b20ad5a614abeae1ddf3e852e2e622bb1fd

2021/8/23(月) 17:06 東スポWEB

 神戸大学教授で感染症の専門家である岩田健太郎氏が23日、ツイッターを更新。ネットで繰り広げられているフルチン論争に見解を示した。 【写真】UFOからコロナ予防策レクチャーか  ネット上では新型コロナウイルスワクチン接種を2回済ませて2週間経った状態のことを「フルチン」と表現することがはやっているが、それに対して「セクハラじゃないか」と不快に思う声も上がっている。2回のワクチン接種を済ませたことを英語で〝fully vaccinated〟ということから、略してフルチンになっている。  ツイッターで「フルチン」と検索すれば、「あと2週間でフルチンやで」「明日2回目うつからフルチンになれるわ」「私がフルチンになるのはおそらく10月」などがいっぱい出てくる。たくさんの人がためらいなくフルチンと使っていることが分かる。  この表現がセクハラか否かのフルチン論争に岩田氏が持論をツイート。「ダーティワードを不快に思うのは個人の自由。が、その言葉が誰かを対象に使われたり、使わせたりしないのであればハラスメントではない。誰の誰に対するハラスメントなのか」「フルチンが不快なら、『これからは私の前でそれ言わないで』といえばいいだけの話。SNSで使うのは個人の自由。不快に思うのも個人の自由」などと連投した。  もし自分がフルチン状態になったとしても、公の場では気を付けた方がいいのかもしれない。

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自宅療養者急増 滞る支援 食料「1000人待ち」届かず

https://news.yahoo.co.jp/articles/a1949ff1a2f22b8682e6c70ddbaaa995b16b9bc6

2021/8/21(土) 18:06 毎日新聞

 首都圏では新型コロナウイルス感染者の急増に伴い、自宅療養者への支援が滞りがちになっている。自治体側から健康確認の連絡がほぼなく、自宅療養が解除されないまま放置されたり、食料を届けるのに「1週間はかかる」と言われたりした感染者も。自治体による自宅療養者への支援が機能不全に陥っている。  厚生労働省は、自宅療養者には少なくとも1日1回は健康観察のため感染者と連絡を取るよう自治体に求めている。埼玉県は「宿泊・自宅療養者支援センター」を設置。業務を民間に委託し、軽症者は人工知能(AI)を使った自動電話などで、体調が悪い人には看護師が直接電話で健康かどうか確かめているという。  埼玉県の20代女性は8月上旬、同居の夫が感染したのを機に検査を受け、陽性が判明したため自宅療養を始めた。健康観察の連絡や、食料など支援物資が届かないことに疑問を持ち、センターに何度も電話をしたがつながらず。発症から10日ほどたち、ようやく保健所から連絡があったという。その後も連絡はしばらくなく、結局、女性に「自宅療養解除」の連絡が入ったのは、本来解除されるはずの日から5日も遅れてからだった。  女性は軽症で済んだものの、「体調が悪い時はつらく、連絡がないだけで不安になった。自宅療養をいつ終えていいのか困っていたのに、まさか療養が終わっていたなんて。不信感しかない」と話す。県は「業務が逼迫(ひっぱく)しているとはいえ、あってはならないことだ。二度とないよう改善したい」と話す。  厚労省によると、全国の自宅療養者数は18日午前0時時点で9万6709人。感染急増の東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏1都3県だけで5万8378人で、前週から1万200人も増えている。  千葉県の40代女性もその一人。今月中旬に発症し、自宅療養に入った。自治体に食料など支援物資を希望したが、「1000人待ちで、届くのに1週間程度かかる」と言われたという。支援物資は結局届かないまま、自宅療養の期間が過ぎた。  同県によると、7月中旬の感染拡大以降、多い時には1日200~300件もの要請があり、支援物資の発送が滞っていた。繰り返さないよう支援体制を強化したという。女性は「食料などがなくて困っている人は少なくないはず。ほしい人にはきちんと届くようにしてほしい」と訴える。【村田拓也】

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コロナ 社会問題

医師免許持っていたら専門家、日本のコロナ対策がダメな理由

https://news.yahoo.co.jp/articles/70b9044dbf03239b6d438eb84a8e66d1c4741708

2021/8/20(金) 6:01 JBpress

 8月12日、ちょっと目を疑う見出しが視界に飛び込んできました。  東京都の感染拡大「制御不能」な状況に  (https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210812/k10013196681000.html)  こう「専門家」が言っているというのです。  反射的に思ったのは「感染拡大を制御してこその専門家」だということ。制御できないなら、ただの素人のおじさんおばさんの集団でしょう。  早速「モニタリング会議」(https://www.youtube.com/watch? v=aq2rJlsu4ik)実物を確認して、非常に残念な納得がいってしまいました。  会議に出てきた「専門家」は、まず間違いなく、自分自身で取りまとめたのではない、スタッフが上げてきたパワーポイントとシナリオを読み上げる役で、その場で実質的な議論などなされることはありませんでした。  さらに、居並ぶ人々がどのような「専門家」であるか、検索して、もう一つ納得がいきました。  全員「医師」であること。またほぼ全員が「臨床医」(かそのOB)であること。  つまり、現役の基礎医学研究者や、一線の公衆衛生医、医師ではなく、都市防疫の観点からパンデミック収束を図るウイルス学の専門家などは一人もいないように見受けました。  東京都で拡大の一途をたどる感染を収束させるシビル・エンジニアリング、都市衛生の「専門家」が見当たらない。  「院内感染」などの専門である可能性はあると思いますが、そういう人たちが、複雑多岐にわたる一千万大都市で市中感染する新型コロナの拡大に「制御不能」と言っている。  つまり「制御可能な専門」ではない、別の専門家たちを専ら並べて、そこで「制御不能」と言わせている。

 中には精神科医も混ざっていました。確かに、こういう状況のなか、都民の心の健康はとても大事です。  でも、差し当たっての大問題は、どうやって感染を拡大させず、縮小させるかであって、それに積極的に役立つ専門の環境ウイルス学者などがおらず、「打つ手なし」と白旗で両手を上げてしまうのであれば、それはちょっと違うのではないか?   しばらく前に、Yahoo! で、私の連載は「専門家」のものではないので取り上げないという回があったようです。  ところが、プロフィールに東大の職位を載せると態度が変わるような薄っぺらい「専門」判断で、いったい何を峻別しているつもりなのでしょう?   都の専門家によるウイルスへの「全面降伏」さらには「これからは自分の身は自分で守る、感染予防のための行動が必要な段階」という、ある意味当たり前でもあり、また行政がこれを言うというのは、下手すると責任の全面放棄とも取られかねない、どうしようもない「モニタリング会議」になり果てていました。  いったいこれは何事か。首をかしげざるを得ません。 ■ シビル・エンジニアリング不在の都市防疫  それにしても、東京都の感染拡大は、本当に制御不能なのでしょうか?   そんなことはありません。院内感染の手法では、打つ手はないと思われるかもしれませんが、例えば2011年、新型インフルエンザの流行に対して、国土交通政策研究所がとりまとめた「通勤時の新型インフルエンザ対策に関する調査研究(首都圏)」(https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk100.pdf)という研究調査報告書があります。  ここに示されたような方針を2021年の新型コロナウイルス対策に適用して、都営地下鉄や都バスなどに徹底的な「減便ダイヤ」が敷かれたりしているでしょうか?   あるいは、JRや私鉄各社に、徹底した間引き運転による人流削減の措置が講じられているか?   電車やバスだけではありません。自動車交通などについても、首都高の入り口閉鎖や料金設定など、人流を減らす「方法」は、山のように存在します。  これらを仮に、架空のシミュレーションで検討して、対策を講じるのであっても、まだ何もしないよりはマシでしょう。  ただ、飲食店の営業は8時までとか、酒類の提供は・・・といった、その効用に何の科学的根拠もない「時短」と同様、ザルの政策で伝染病を抑え込むことは困難でしょう。  病原体の方が、はるかに狡猾、かつ巧妙です。

 彼らのウラをかく、有効でサイエンスに裏付けられた、時々刻々変化する感染状況を反映する「実測値」に基づいた対策、例えば「人流制御」であり、「変異株対策」であり、さらには患者の絶対数増加によって引き起こされている「在宅加療」に即した諸政策であり・・・といったものが、十分に採られているだろうか。  およそ、採られていない。  打つ手はまだ、いくらでもあるのに、それに手が全くついていない。それが、日本社会がコロナに打ち勝つことができない大きな要因ではないかと指摘する専門家が何人もおられます。  日本のコロナは「専門家」のタコツボ縦割りで、身動きが取れないまま、状況が日々悪化していく。  イスラエルや英米のような、科学的に整合した全体像を持つコロナ対策など、この国には「夢のまた夢」に留まるのでしょうか?  ■ 新型コロナウイルス感染症の知識構造化  ここでよく挙げられる例えを引き合いに出しましょう。50年前なら、テレビが故障したというとき、街の電気屋さんが外装のカバーを外して、中の素子を取り換えて修理できました。  そう言って分かるのは中高年以上だけでしょう。いま「テレビ」が壊れたら一番早いのは「捨てて次を買う」という解決法でしょう。  次善の策として「いくつかの基板を取り換える」のがあるかもしれません。  いまやテレビを一人ですべて理解し、部品レベルから直せるという「電気屋さん」も「エンジニア」も存在しない。  それくらい、個別「モジュール」は深化・進化を遂げていて、すでに一人の「専門家」がカバーできる状態ではないわけです。  幾度も強調している基本ですが「新型コロナウイルス感染症」の専門家などというものが存在すると思っているまともな大学研究者はいません。

 医学だけで考えても、実験動物を相手に地味な仕事を積み上げる「基礎研究医」、病院で患者の命を預かる「臨床治療医」と、保健所や厚生労働省で公衆衛生行政に責任を持つ「保健衛生医」は全く別の仕事で、各々広大な領域があり、そもそも言葉からして違っています。  例えば、治療薬を服用して本来狙ったのと違う効果が出れば「副作用」ですが、ワクチンの場合は歴史的な経緯で「副反応」と呼ばれます。  この頃はトンデモ用語も飛び交っているようで「コロナの副作用」なる日本語を目にして仰天しました。 ■ 世間には「トンデモ医」発信の情報も  いつから「コロナ」は治療薬になったのか?   素人相手に何でも売れそうな意匠を並べて銭金を抜こうとする、卑しい了見は単にいじましいだけでなく、デマをまき散らすという観点からは純然と有害無益です。  そんなトンデモ医的なものは論外としても、基礎と臨床、保健行政との間にはおよそ埋めがたい溝があります。  また、すべての基礎医学者がコロナ生命科学の最も精緻な分子、原子レベルのメカニズムを理解しているかと問われれば、もちろんそんなことはありません。  日本のノーベル医学生理学賞を見ても、利根川進さんは理学部化学科卒でノンMD、つまりお医者さんではありません。  コロナ防疫の支柱というべきmRNAワクチンを実用化し、2021年度ノーベル医学生理学賞の本命と噂される、ビオンテック社の副社長、カタリン・カリコ博士もお医者さんではない。  分子生物学者は必ずしも医師ではないし、すべての医師が新型コロナの最前線研究を分子や原子、電子のレベルから理解しているわけでは全くない。  日本のメディアは、下手すると医者ではないという理由だけでカリコ博士を「専門家ではない」と区分する程度の水準にあります。

 また医師であるというだけで専門家認定された、おかしな芸風の人が、「コロナワクチン」で副作用が出る人と出ない人が分かるような売り方をしてみたりもする。  中心から周縁まで、相当ネジが緩んでいることを懸念しなければならなさそうです。  (言うまでもありませんが、特定のアレルギーなど例外を除いて、新型コロナ・ワクチンを接種した際、どの人にどのような副反応が出るかなど、科学的に予測などは一般にできません)  政策の中核に近い場所にいても、感染拡大に制御方法がなければ、その分野に関しては専門家ではなく単なる無策徒手の素人と変わりがない。  また医師免許を持ちながら、怪しげな商法で営利する者があれば、人道に悖る所業と言わねばならないでしょう。  日本はこうした「専門性」という建前で、相当国力を削がれている懸念が拭えません。  科学的に筋道の通った感染症対策のためには、「コロナ行革」でこうした空文化した状況を一新する必要があるように思われます。

伊東 乾