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医師・看護師はもう限界!デルタ株で高まる「自衛隊野戦病院」の必要性

https://news.yahoo.co.jp/articles/55ce7581519fc73436c13ebe51e0325c3f749bfe

2021/8/24(火) 6:01 DIAMOND online

 私は、本連載で以前(連載275回)から、野戦病院を新型コロナ対策の「切り札」として提案してきた。デルタ株が猛威を振るっている今になって、野戦病院が現実的なコロナ対策案として浮上している。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人【この記事の画像を見る】 ● 各界も「野戦病院」の設置を訴え始めた  尾崎治夫・東京都医師会会長や松本正義・関西経済連合会会長などが、新型コロナウイルス感染症の急拡大への対策として「野戦病院」を設置すべきだと提言している。福井県は、実際に100床の病床を持つ「野戦病院」を体育館に設置した。  ただし、これらは、現状のコロナ病床確保の方法の延長線上のものを想定しており、私が提案してきた自衛隊による「野戦病院」と、大きな違いがある。  現在、コロナ病床の確保は、自治体ごとに、都道府県知事の権限で行われている。「感染症法」が改正されて、都道府県知事らは、病院に対しコロナ患者の入院を受け入れるよう「勧告」できる。  しかし、この方式は限界を露呈している。個別の病院がコロナ患者用に転換できるのは、せいぜい数床ずつだからだ。  例えば、大学病院や大病院のがん、心臓病などの高度な治療・手術を維持する必要性を主張されたら、専門家でない知事らは言い返せない。「精神論」で粘って、病院側が病床を1床、2床と切り売りするように最小限、新型コロナ用に明け渡しているのが現状だ(第273回)。  また、医師会の中心メンバーである開業医は、コロナ患者の受け入れが病院経営を直撃するため引き受けたがらない。コロナ患者に対応するための機材、人材が十分ではないという問題もある(高久玲音『やさしい経済学:コロナが問う医療提供の課題(2)患者受け入れが病院収益に影響』)。  今の体制では、野戦病院を現在の病床確保の方法の延長線上でつくっても、同じ問題に直面することになるのではないだろうか。

● 医師や看護師の派遣、現実は厳しい? 日本のメリット・デメリット  尾崎会長はテレビ番組で、野戦病院には今までコロナ治療に関わっていないクリニックや大学病院などの医師や看護師が従事する形を想定するという旨を発言した(参照)。  しかし、その医師・看護師らが、自分の病院・クリニックの患者の治療が大事だと主張したら、説得できないだろう。結局、自治体と病院の交渉が難航し、野戦病院に派遣されるのは、最小限の人数とリソースにとどまってしまうのではないだろうか。  また、以前指摘したのだが、野戦病院への医師・看護師の派遣は、おそらく労災などの補償の問題が生じる懸念がある(第264回・p3)。例えば、スポット勤務した医師が、新型コロナに感染した場合、2週間隔離となる。本来の勤務先に出勤できなくなるので、その間の金銭的な補償の問題が発生するのだ。  このように、自治体が野戦病院を設置しようとしても、実現にはさまざまな問題があると思われる。  実際、野戦病院の設置に否定的な東京都は、その理由として現在確保しているコロナ病床が「各医療機関の努力で出してもらったギリギリの数字」だからという。そして、「都内の病院の役割分担や地域性などを考慮して、医療関係者らと現在の体制を組んできた」と説明し、「今ある医療資源を最大限使うことがまず先決」と主張する(毎日新聞『コロナ病床増やしても…東京都が「野戦病院」をつくらない理由』)。  では、無理やり今の医療体制から絞り出して、「野戦病院」を設置すべきかというと、そうとも言い切れないのではないか。現状の医療体制を無理に崩さないほうがいいという考え方もあり得ると思う。  国民皆保険制度により日常的な医療体制が整備され、基礎疾患を持つ人の症状が管理されていることが、日本の新型コロナの重症者、死亡者が欧米に比べて非常に少ない「ファクターX」の一つかもしれないと私は考えている(第262回・p5)。  例えば、英国と比較してみよう。

● 英国はコロナ医療にすぐシフトできたが 日常的な医療体制は日本よりも過酷?  英国では、昨年3月にロックダウンを実行したと同時に10日間程度で、国内の医療体制を新型コロナ用にシフトした。しかし、それはがんを除く不要な手術を延期し、退院可能な患者はすべて自宅療養に切り替えて実施したものだった(ピネガー由紀『日本人が知らない英国「コロナ病棟」のリアル 現地在住看護師が語る医療崩壊を防ぐ仕組み』)。  つまり、英国では、日本の何十倍も新型コロナ感染症の患者を出しながら、医療崩壊を起こさなかったことは事実なのだが、重症化する患者や死亡者が多かったことについて、日常的な基礎疾患の管理ができていないからだと思われると、筆者の知人である臨床医は指摘していた。  実際、私が英国に在住していた時に、ナショナルヘルスサービス(NHS:無料の国営医療サービスシステム)へ友人を連れていったことがある。その時は、3カ所病院をたらいまわしにされ、診察を受けられるまで、9時間かかった。  また、NHSでは、普段は風邪や季節性インフルエンザでは病院での入院はおろか、診察すらしてもらえない。NHSの受付窓口で簡単に診断されて処方箋をもらい、薬局で薬を買って自宅で休むだけだ(第277回・p2)。  つまり、英国の日常的な医療のレベルは日本と比べて高いとはいえない。それが、日本と欧米の新型コロナの重症化率、死亡率の差につながっているのではないか。ゆえに、日本の現状の医療体制を崩してコロナ対応に向けることには、慎重であるべきだと思う。  それでは、野戦病院の設置は非現実的な案と切り捨てるべきか。私はそうは思わない。

● 合理的に考えて、自衛隊が野戦病院をつくるべき  8月12日の東京都のモニタリング会議は「現状の感染状況が続くだけでも、医療提供体制は維持できなくなる」と警鐘を鳴らしている。新しい発想の対策が必要とされているのは間違いない。  そこで、私が提案してきたのが、自衛隊による大規模野戦病院の設置である(第275回)。  まず重要なことは、「自衛隊」が野戦病院をつくることだ。自衛隊には、医官、看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。現在、ワクチンの大規模接種センターに医官約90人、看護官約200人が派遣されている。しかし、その業務は8月25日に終了する。  彼らは、いわゆる一般の病院・クリニック、そして医師会の「外側」に存在している。  医療崩壊を防ぐためには、限られた既存の病院・クリニックのリソースをやりくりするよりも、その「外側」に存在する自衛隊に出動してもらい、その人材、機材を加えるほうが、合理的なのではないだろうか。  その上、自衛隊の医官・看護官が「戦場の医師・看護師」であることも重要だ。「救命救急医療」の専門家であり、新型コロナ治療の研修期間は、一般病院・クリニックの医師・看護師が研修するよりも短期間で済む。「即戦力」となり得る存在なのだ。  さらに、自衛隊による「野戦病院」設置の意義は、「集約のメリット」を出せることにある。それは、エクモ・人工呼吸器などの機材、医師、看護師が病院ごとに配置されるよりも、病床を何百床、何千床の単位で1カ所にまとめることで、比較的少ないリソースで、多くの患者を診ることができることだ。  これは、日本以外の諸外国では当たり前のやり方だ(上昌広『「医師多数・コロナ患者少数」の日本が医療崩壊する酷い理由』)。だが、残念ながら日本の現状の医療体制では実現はほぼ不可能である。  だから、日本で、大規模なコロナ専用病院をつくれるとすれば、それは自衛隊しかない。この連載で提案してきたように、まずは東日本と西日本に1カ所ずつ、大規模野戦病院を設置するのである(第275回)。

● 大規模野戦病院の具体案…英国のナイチンゲール病院を踏まえて  場所は、東日本は朝霞駐屯地、西日本は伊丹と宇治の駐屯地とする。病床は、前回の私の提案では重症・中等症用としていたが、現在のニーズに合わせて変更したい。患者の重症化を防ぎ、死亡者を出さないことが最重要であるため、中等症用にそれぞれ2000~4000床ずつ用意する。  これは、英国の野戦病院(ナイチンゲール病院)設置を参考にしている(第282回・p2)。この病院は英国軍の支援で、最大4000床の中等症用病床を持ったロンドン・エクセルセンター国際会議場の病院など、全国各地に短期間で建設された(“In case of emergency: The Army and civil assistance” )。  病院開院後は、英国軍の軍医約600人が派遣されてNHSの医師・看護師と協力した。また、機器のメンテナンス、病院内店舗管理など、幅広い臨床支援活動を行った(Financial Times “Military medics to work in UK hospitals as Covid admissions sore”)。  自衛隊の大規模野戦病院設置は、軽症者を自宅療養とする政府の新方針の実施にも適している。英国軍を事例にすると、「コロナ航空タスクフォース」を設置し、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドなどの地方や、離島から英国本土への患者の緊急搬送などを行ってきた(Covid Support Force: the MOD’s contribution to the coronavirus response)。  日本でも、自宅療養の軽症者の情報を自衛隊に集約しておき、中等症化した際には、ヘリコプター等も使用して地方から大規模野戦病院へ即座に移送できるようにするのだ。  英国は、昨年3月、新型コロナのパンデミックの初期段階で大規模野戦病院を設置し、英国軍の支援体制をとった。結局、野戦病院はほとんど使われることがなかったのだが、先回りして体制を整えていたことが重要だ。  日本では、現行の医療制度の範囲で何ができるかを必死に考えてきたが、医療崩壊の危機に直面し、ひたすら国民の行動制限を求めることしかできなかった。  デルタ株の急拡大に直面し、さらなる新しい変異株の拡大のリスクもある今、現行制度の範囲内の対応では限界がある。新しいシステムを先回りしてつくり、病院にも入れず死を迎えるような悲劇は起きないと、国民が落ち着くことができる体制を築く必要がある。

上久保誠人

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コロナ

都内のコロナ陽性率20%超えは「はっきり言って異常」 ウイルス研究者が警告

https://news.yahoo.co.jp/articles/971594bc3449de25774614129c28f6e754fb6e7e

2021/8/24(火) 8:00 AERAdot.

 新型コロナのデルタ株が猛威を振るうなか、同等の感染力を持つとされるラムダ株が空港検疫で検出され、新たな変異株襲来の可能性に警戒感が高まっている。次々に出現する変異株の特徴や、感染の今後の見通しについて、ウイルス研究の専門家で、新型コロナ研究コンソーシアム「G2P-Japan」を主宰する、東京大学医科学研究所の佐藤佳准教授に聞いた。 【データ】発熱、頭痛だけじゃない!ワクチン接種後に確認された副反応と割合はこちら

――佐藤氏が主催する研究で、日本人の6割がデルタ株に対する免疫反応を十分に起こすことができない可能性があるという結果が出ました。つまり、日本人はデルタ株にかかりやすいということでしょうか。  日本人の6割は、HLA-A24という細胞性免疫を保有しています。HLA-A24は、免疫反応をつかさどるHLA(ヒト白血球抗原)の一種。このHLA-A24という免疫から、デルタ株は逃れることが研究でわかりました。  だからと言って、日本人だけが、デルタ株に対する免疫が弱いというわけではありません。たくさんある免疫のうちの1つをすり抜けていくというだけです。1つの免疫を逃れることにより、どれほどインパクトがあるのかは、まだわかっていません。デルタ株は、世界中で流行しているので、日本人だけがかかりやすいとは言えません。 ――第5波はピークアウトの兆しが見えません。どのような状況になったら減少傾向になると推測できますか。  人の行動が減らない現状からすると、難しいと思います。これまでの波は、緊急事態宣言が発出されたからピークアウトしたのではありません。緊急事態宣言が発出され、実際に人の行動が変化したから減っていました。第5波では、行動が変化しているのか疑問です。  ピークアウトどころか、現状のまま人々の行動が変わらなければ、感染者数は増え続けると思います。毎日、夕方に感染者数が発表されますが、おそらく東京都の場合は、現在の検査体制のままだと5000人台で頭打ちでしょう。見た目上はこの数字が続くでしょうが、実際の感染者はもっと多いはずです。8月以降、都内の陽性率はずっと20%を超えています。この数値は、はっきり言って異常です。

――感染者が増加の一途をたどるなか、ワクチン接種は特効薬となるのでしょうか。  国民の7割がワクチンを接種しないと増加を抑えられないと言われています。日本はまだ4割。いま接種を急いだとしても、7割達成までにあと何カ月かかるのか。第5波のピークに歯止めをかける特効薬にはならないと思います。  また、デルタ株は、ワクチンを接種しても感染する「ブレイクスルー感染」が世界中で報告されています。現状、ワクチン接種が進んだ後に流行しているのは主にデルタ株ですが、デルタ株だからブレイクスルー感染するのか、たまたまその地域で流行しているのがデルタ株なのか、まだわかっていません。 ――南米由来の変異種ラムダ株が日本でも空港検疫で検出されました。もし市中に広がった場合、他の変異株と比べてどういった点を注視したほうがよいでしょうか。  当研究チームで行ったラムダ株の実験では、ラムダ株もデルタ株と同じようにウイルスの感染力を増強させ、ワクチンで誘導された中和抗体に抵抗性があるという結果が出ました。  ただ、デルタ株とラムダ株では、どちらのほうが危険かは不明です。ラムダ株は、主に南米で流行し、致死率が高いという情報もありますが、まだ研究が進んでいません。 ――ワクチンを接種した人と未接種の人が混在しているなかで、ウイルスはどうのように生き残っていくのでしょうか。変異を繰り返し、ワクチンが効かない変異株も将来的に現れるのでしょうか。  一般的に、細胞実験において、よく効く薬を適量入れると、ウイルスの増殖は止まります。しかし、中途半端な薬の量で増殖を半分くらい抑えると、ウイルスの増殖を一時的に抑えられたとしても、薬が効かなくなる変異を獲得して増殖していきます。これは、新型コロナだけでなく、どんなウイルスでも同じです。  今のようにワクチンを接種した人と未接種の人がいるなかで、感染拡大している状況は、まさに、細胞実験と同じ状況が人の集団で起きているとも考えられます。免疫を持っている人と、持っていない人が混在してウイルスが広がっているということは、ワクチンで免疫を獲得した人の中ではあまり増えないけれど、そうではない人の中では増殖していきます。

 ワクチン接種によって免疫を獲得しても、ウイルスはその免疫を逃れるような変異を獲得してしまう可能性があります。イギリスの緊急時科学助言グループ(SAGE)は、ワクチンが効かない新型コロナ変異株が出現する可能性を、高い確信をもって推測していました。これは十分に想定されることだと思います。 ――新型コロナが、季節性インフルエンザの水準になるなど、収束する日は来るのでしょうか。    ウイルスが勝手に弱毒化していく可能性は低いでしょう。そのため、少なくとも数年単位で弱毒化し、自然に収束していく可能性はきわめて低いでしょう。ワクチンから逃れる変異が出てこなくなり、世界中の7~8割の人にワクチンが行き届いたら、ウイルスは増殖する方法がなくなり、また重症化するリスクも減っていきます。そうなると、季節性の風邪と同じ扱いになると思います。ウイルスは残っていても、みんなが免疫を持っている状況になれば、収束となるでしょう。  ただ、新型コロナは、ワクチンによって重症化が抑えられたとしても、インフルエンザに比べ、味覚障害や嗅覚障害、記憶障害など様々な後遺症が残る可能性が高いとされます。ワクチンを接種して重症化は抑えられたとしても、後遺症に対してはまだ把握されていません。 ――日本でも3回目のワクチン接種が検討されていますが、有効性を教えてください。  ワクチンのブースター接種は有効です。むしろ、高い効果を求めるよりは、持続性だと思います。イスラエルでは、今年の頭くらいにワクチンを打った人たちが、再び感染しだしました。ワクチンの効果が長持ちしない可能性があるため、もう3回目の接種に進んでいます。ただし、3回目を打ったところで、半年しかもたなかったら、また4回目を打たないといけないわけです。先進国だけ3、4回を打つよりも、途上国で1回、2回を打ったほうがいいのではないかという議論もあります。

(聞き手=AERA dot.編集部・岩下明日香)

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コロナ 対策

【解説】ワクチン接種進むも感染拡大なぜ? 専門家「2回接種すれば絶対感染しないということではない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/aa15cbd5d24a2a711063169e5052ede03d98091f

2021/8/23(月) 20:53 8カンテレ

厳しい感染状況が続く中、ワクチンはどこまで効果を発揮しているのか? ワクチンに関する疑問をウイルス感染免疫学が専門の近畿大学・宮澤正顯教授に聞きました。 【動画で見る】ワクチン接種進むも感染拡大なぜ? 専門家「2回接種すれば絶対感染しないということではない」

止まらぬ感染拡大…ワクチンの効果は?

カンテレ「報道ランナー」

――Q:2回接種が国民の4割、一方で陽性確認は過去にない規模になっている。どう解釈すればいい? 【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】 「ワクチン打ってても感染してしまう人は出ます。2回目接種すれば絶対感染しないということではない。ワクチンはあくまでも感染したときに発症したり、重症化したりするのを抑えると」 厚生労働省の調査では、8月10日からの3日間、感染が確認された約5万7000人のうちワクチンを1度も接種していない人は82%。 一方で、2回接種した人は、わずか3%にとどまっています。カンテレ「報道ランナー」

【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】 「ワクチンを打っている人たちの間では、明らかに新規感染者として報告される人の割合下がってる。もちろん2回打てば重症化したり入院したりするリスクは、うんと下がると。デルタ株であっても、2回打っていれば9割近くにまで下がるということは分かっている。ワクチンの効果は明らかである」

アストラゼネカ製ワクチンは打つべき?

カンテレ「報道ランナー」

では、大阪市で23日から接種が始まったアストラゼネカ製のワクチンはどうなのでしょうか? 従来株への発症を予防する効果は、約70%と、ファイザーやモデルナに比べて低く、ごくまれにおこる副反応として血栓症ができるリスクも指摘されていますが…カンテレ「報道ランナー」

【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】 「確かに血栓症を起こす危険性はまれだけれどある、それは事実。しかし、それよりもワクチンを打って新型コロナウイルスの発症を防ぐことのメリットの方がはるかに大きい。メリットの方がずっと大きいのだからこれを打つべきだと、ヨーロッパでも保健担当者が認めている。治療法もかなり分かっている。それに対応する方法も、臨床の先生は開発しているし、知識も共有しているということなので、まれに起こったとしても対処してもらえる」 宮澤教授によると、血栓が生じるメカニズムが分かっているため、アナフィラキシーショックと同様に対処できるといいます。

一方、因果関係は不明とした上で厚生労働省が公表している「ワクチン接種後の死亡事例」(8月4日時点で834例)については… 【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】 「偶然ワクチンを打った日に、もともとの持病で亡くなったとか、そういう方もいっぱいいる。科学的に言ってもファイザー、モデルナについてワクチンと死亡を科学的に結びつけることは今のところない」

マスクなしで生活できる日はくるのか

カンテレ「報道ランナー」

――Q:デルタを念頭に全国民の何割打てばマスクなしで生活できる? 【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】 「難しい。とにかくまず、若い人たちにたくさん打たないとダメだろうと思います。動き回る世代の人たちにたくさん打つということを進めていかないと、6~7割でも感染してる人たちたくさん出ますからね。8~9割いかないと難しいかなという気がします。マスクは、しばらく取れないと思いますよ。ウイルス側だけの問題じゃなくて、人間の行動の問題が非常に大きいので、そこをしっかり考えてもらうと収まっていくかなという気がします」

まだまだ警戒を緩めるわけにはいかない新型コロナウイルス。 ワクチンには期待しつつも、当面はこれまでの感染対策が求められることになりそうです。

(カンテレ「報道ランナー」8月23日放送)

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コロナ 社会問題

沖縄の病院でコロナ感染69人死亡! 国内最大規模クラスター発生に「3つの悪材料」の連鎖

https://news.yahoo.co.jp/articles/4832859a6a9803bcdf3068685c38631f3527e6aa

2021/8/21(土) 9:06 日刊ゲンダイDIGITAL

 医療崩壊に瀕している沖縄で新型コロナウイルスに感染した入院患者69人が死亡するクラスターが起きた。クラスターによる死者数としては国内最大規模となる。 今度は三重県薬剤師がワクチン4回ズル打ち 「忘れてました」平身低頭もシレッと“ブースター接種”  うるま市の老年精神科の「うるま記念病院」では7月19日、職員と入院患者がデルタ株(インド株)に感染していることが判明した。県コロナ対策本部、保健所、各重点医療機関などの応援、指導のもと、感染対策を講じたが、院内感染は拡大。入院患者270人のうち173人、職員100人のうち26人の計199人の感染が確認された。  病院の担当者は「多数の感染者に対し、当病院だけで治療するのは難しく、転院調整を行いました。県内の病院が逼迫する中、7月までは何とか調整できたのですが、8月に入って難しくなりました」と医療が追いつかなかった事情を明かした。 ■「亡くなった69人はワクチン未接種か、1回のみ接種」  ワクチン接種の有無も“生死”を分けた。6月中に職員の9割は2回のワクチン接種を完了していた。7月から、入院患者への接種を進めていた矢先に感染が判明。入院患者で2回接種を完了したのは約2割にとどまっていた。 「亡くなった69人は未接種か、1回のみ接種した患者でした。2回接種者で亡くなった方はいません」(前出の担当者)  西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。 「デルタ株の感染力の強さを改めて思い知らされます。病院の職員と患者の半分以上が感染している。それに、適時・適切に治療が行えないと、多数の死者が出るのも明らかになりました。さらに、2回接種者の死者がいないことは、ワクチンの有効性を示していると言えます。ただ、2回接種者の死亡が都内で確認されているので、注意は必要です」  大阪府は18日のコロナ対策本部会議で、3月以降にワクチンを接種した2118人の分析結果を公表した。2回目のワクチンを接種してから、免疫を獲得するとされる14日以上経過して発症した人は317人だったが、重症者や死者はいなかった。  うるま市のクラスターから学ぶことは少なくない。

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コロナ 社会問題

社説[病院大規模クラスター]感染拡大の経緯検証を

https://news.yahoo.co.jp/articles/4de9fedea020752193046aadb28d31c2477839dc

2021/8/20(金) 13:11 沖縄タイムス

 うるま市内の老年精神科病院「うるま記念病院」で新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)が発生している。  県や病院ホームページなどによると、7月19日に入院患者と職員各1人の陽性が判明し、その後も感染者が相次いだ。8月17日までに入院患者173人と職員26人、計199人の感染が確認されている。  死亡した入院患者は69人に上る。クラスターによる死亡者数では国内最多とみられ、あまりの多さに愕然(がくぜん)とさせられる。  病院には外部の医療関係者や介護従事者が支援に入っている。まずは病院と関係機関が連携して目の前の患者の命を守り、一日も早い収束へ全力を注いでほしい。  病院によると、患者は高齢で認知症やうつ病などの精神疾患があり、マスクの常時着用が困難だったという。病院の構造上、十分な換気が難しい点も挙げている。  しかも「第5波」による県内の医療提供体制の逼迫(ひっぱく)で、重点医療機関に転院できた感染者は少数にとどまり、大半は院内で酸素吸入や内服治療を受け療養せざるを得ない状況が続いている。  感染力の強いデルタ株の影響はあるにせよ、なぜ、これほど感染が急拡大したのか、死亡者がこれほど増えたのか分からないことがまだ多い。  どのような感染経路をたどったのか、感染者をほかの患者と分ける「ゾーニング」ができていたのかなども検証する必要がある。 ■ ■  病院の危機管理に疑問を抱くのは、クラスター発生時点で患者のワクチン一斉接種が進んでいなかったことだ。少なくとも1回接種した患者は約1割だったという。  重症化リスクの高い高齢者は優先接種の対象とされ、最初に陽性者が確認された時点では県内高齢者の78%が1回目の接種を終えている。  にもかかわらず接種が遅れたのはなぜか。病院の接種態勢が整わなかったとしても、県や市などと連携して家族が同意した患者に接種する方法はあったのではないか。  県によると、うるま記念病院でクラスターが発生するのは今回が2回目だという。1回目は今年1月で、入院患者と職員の計76人が感染した。  密になりやすい医療現場で院内感染を完全に防ぐのが難しいのは分かる。ただ、発生した時には何としても拡大を食い止めてもらいたい。  1回目の発生時の反省点を踏まえ、どのような再発防止策が講じられていたのか明らかにしてほしい。 ■ ■  亡くなった入院患者の家族は、詳細が知らされない状況にやるせない思いを抱いている。  これだけの死亡者が出ている以上、事実関係を調べ明らかにする必要がある。  県が主導して専門家を含めた第三者委員会を立ち上げ、病院側から聞き取り、感染拡大の原因や再発防止策をまとめてもらいたい。  教訓として県内の各医療機関で情報共有し、感染防止や発生時の封じ込めに役立てるべきだ。

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副反応?コロナ?症状だけで区別困難…感染した医師

https://news.yahoo.co.jp/articles/a28dd0a94c9d2358ab73b29b2601cb80284b28dd

2021/8/24(火) 18:34 テレ朝NEWS

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むなか、「新たな問題」も起きているようです。ワクチンの副反応かそれともコロナの症状か判断が難しいと実際に感染した医師が警鐘を鳴らしています。  23日に公表された政府の集計。新型コロナのワクチン接種で、2回の接種終えた人が、全国民の4割を超えました。  23日からは大阪や埼玉で、アストラゼネカ製ワクチンの接種も始まり、今後も接種の加速が期待されますが、接種後の発熱に関して、厚生労働省は「ワクチンを受けた後、2日間以上、熱が続く場合や症状が重い場合、医療機関等への受診や相談をご検討下さい」と呼び掛けています。  コロナ感染の発熱を接種後の副反応と思い込み、受診を控えてしまう恐れがあるというのです。  国立病院機構本部DMAT事務局・小早川義貴医師:「僕の場合も熱と倦怠(けんたい)感だけだったので、そうなると(判別するのは)難しいですね」  災害派遣医療チームとして、「ダイヤモンド・プリンセス」などの対応にもあたった小早川医師は、5月、1回目のワクチンを接種。その日の夜から熱が出たといいます。  国立病院機構本部DMAT事務局・小早川義貴医師:「当然、1回目の後だったので、僕の周りの医師たちも『副作用でしょ』みたいな感じだったので、そう言われると副作用かなという気にもなって」  ところが翌日も、熱は38度を超えていました。  国立病院機構本部DMAT事務局・小早川義貴医師:「(接種翌日の)夕方にくしゃみとか鼻水が出てきたので、ワクチンだと気道症状は出にくいのは知っていたので、コロナっぽいかなと思った」  その後も熱は下がらず、医療機関で検査を受けると、新型コロナウイルスの感染が確認され、16日間の入院。  国立病院機構本部DMAT事務局・小早川義貴医師:「なかなか症状だけで区別は難しいので、それはPCRしないと分らないので、副作用以外も考えて対処した方がいい」  一方で、家族への感染はありませんでした。  国立病院機構本部DMAT事務局・小早川義貴医師:「(接種後)体調が悪ければ、仮に副反応だとすれば2日間くらいで収まるので(家族とスペースを)分けておけば間違いない」

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コロナ 社会問題

自宅療養死18人、50代以下が半数 首都圏4都県で

https://news.yahoo.co.jp/arti cles/4353710a29d85e8d3afe8e097b5cfbaf71f0f04b

2021/8/21(土) 18:50 朝日新聞DIGITAL

 新型コロナウイルスの感染爆発で自宅療養者が全国で約9万7千人に上り、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏4都県で7月以降、少なくとも18人が自宅療養中に亡くなっていたことがわかった。50代以下が9人で半数を占め、8月に入って15人と急増している。各地で病床が逼迫(ひっぱく)し、入院して治療を受けることが困難になっており、自宅療養者の急変へのケアが急務となっている。 【写真】7~8月の自宅療養者の推移  7月に緊急事態宣言が出ていた東京、沖縄に加え、8月2日から宣言が適用された大阪、埼玉、千葉、神奈川の6都府県に、7月1日以降に把握した自宅療養中の死者について尋ねた。「自宅療養中の死者」の定義は各都府県で異なるが、自宅で死亡が確認された場合に加え、自宅療養中に容体が急変し、救急搬送されたケースも含めて朝日新聞で集計した。  最多は東京都の9人。7月には1人だったが、8月に急増しすでに8人が死亡。9人のうち50代以下が6人を占め、基礎疾患のない30代男性もいた。今月12日には夫と子どもと3人家族全員がコロナに感染した40代の女性が死亡。女性は糖尿病を患い、自宅で倒れているのを夫が発見したという。  神奈川県では7月に60代と40代の男性2人が、8月には60代女性が死亡。埼玉県では8月に入って40代と50代、70代のいずれも男性3人が相次いで死亡した。50代男性は10日に感染が判明し、基礎疾患があったが、軽症のため自宅で療養していたところ、15日朝に心肺停止の状態で見つかった。  千葉県でも8月に60代男性2人と80代女性の計3人が死亡した。80代女性は7月末に感染し、無症状だったため自宅で経過観察中だったが今月10日夕に血中酸素飽和度が80%台まで低下。県が入院調整を始めたが、入院先が見つからないまま、その日の夜に死亡が確認された。  第4波の3月1日~6月20日に自宅療養中に19人の死者が出た大阪府と、沖縄県は7月以降の自宅療養中の死者はいないと回答。ただ、沖縄県では今月8日に入院調整中だった40代男性が自宅で死亡しているのを保健所職員が発見した例があったという。

朝日新聞社

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コロナ 対策 社会問題

「コロナを普通の風邪に」大阪府がその第1歩を国に要望

https://news.yahoo.co.jp/articles/720073267cc56174a76fb614bdb4bbe18d7307cb

2021/8/19(木) 6:45 maga.jp

大阪府の定例会見が8月18日に実施され、「抗体カクテル療法」について言及。吉村洋文知事は、「外来でも投与できるよう国に要望する。軽症の方が外来で治療を受けて自宅に戻る仕組みができれば、目指すべき姿の第1歩になる」と話した。 【資料】抗体カクテル療法の推進体制 この治療法は7月19日に特例承認され、「ロナプリーブ点滴静注」とも呼ばれている療法。陽性患者に対し、「カシリビマブ」と「イムデビマブ」の2つの点滴薬を同時に投与することで、新型コロナウイルス感染症の働きを抑えるもの。 現時点では自宅療養や高齢者施設での処方はできないが、吉村知事は「この療法は本来、宿泊療養や自宅療養の患者に使い、入院を防ぐ薬剤。外来であれば医者も看護師もいて、厚労省の理解も得られる。国には外来に絞って(処方できるよう)要望をしようと思っている」と話す。 外来での処方が可能になれば、将来的にはコロナに感染した場合でも、近所の医療機関で薬剤の投与などの治療を受け、治るということも可能になり、1年半前には脅威だったコロナが「普通の風邪」になる転機になることにも期待ができる。 これに関して吉村知事は、「普通の診療所やクリニックで、コロナの検査だけでなく治療ができるようになれば、状況はかなり違ってくる。しかし、この療法は点滴なため、数や適用範囲、薬価の問題もある。(普通の風邪になるのが)目指すべき姿だし、(外来で処方できるようになれば)第1歩になると思う。実際、経口治療薬ができればそういった社会になると思う」と期待を込めた。

取材・文・写真/岡田由佳子

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大阪2256人感染 吉村知事 全重症病床使用率50%超えれば、大阪・都心の動きを止めます…

https://news.yahoo.co.jp/articles/519857501bbe3922fc209e92d07d4c83bb742161

2021/8/21(土) 19:30 テレビ大阪

大阪府は21日、新たに2556人が新型コロナウイルスに感染したと発表しました。1日の感染者数は4日連続2000人を超えました。年代別で最も多いのが20代の793人、次いで30代の430人、10代の398人です。また亡くなった人は2人、重症者の患者は新たに基礎疾患のない30代男性2人を含む計175人で、重症病床使用率は29.8%。軽症・中等症の患者は計1844人で病床使用率は72.4%となっています。自宅療養者は13107人、また未就学児97人、就学児62人の感染も確認されています。 4日連続2000人超 感染爆発の大阪… 吉村知事は20日、自身のツイッターに「重症化予防を目指し、様々な取組みをしてます。命を守る最後の砦である重症病床が足りなくなれば、救える命が救えなくなります」と投稿。また「全重症病床の使用率が50%を越えれば、大規模商業施設やイベント等、大阪における都心の動きを止めます。やりたくありません」と記し、重症者の増加傾向に危機感を示すとともに、感染対策の徹底を訴えています。

TVOテレビ大阪

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自宅療養の「コロナ患者」急増で医師会の尻に火 全国ベースの見守り体制を実現するには

https://news.yahoo.co.jp/articles/0d9d89447c9bee7a724da0dd0aaced12acfb793a

2021/8/22(日) 6:00 デイリー新潮

限りある医療を効率的・効果的に

「イベルメクチンの使用許可を認めていただく段階に来ている」と発言した東京都医師会の尾崎治夫会長

 政府は8月17日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の対象地域を13都府県に拡大し、期間を9月12日まで延長する方針を決定した。ワクチン接種が進んでいるものの、デルタ株による感染急拡大に歯止めがかからない状況が続いている。

 重症者数が直近1ヵ月で約4倍に増加し、連日のように過去最高を更新している。第5波ではワクチン接種が進んでいない40~50歳代の重症化が急増しており、医療現場はこれまでに経験したことがない緊張感に包まれているという。  政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は「東京都における人流を5割減少すべき」と提言したが、かけ声だけでは実効性はもはや上がらなくなっている。  東京都の医療関係者が「制御不能となり、もはや災害時の状況に近い局面を迎えている」として、「医療の逼迫で多くの命が救えなくなる」という強い危機感を示したのに対し、「責任を放棄するな」などの批判が寄せられているが、筆者は「現状を災害と捉え、災害医療の中で日本がこれまで積み重ねてきた知見をコロナ対策に取り入れれば、事態の打開が図られるのではないか」と考えている。  災害医療とは、地震や豪雨、大規模事故などの発生で、対応できる医療能力をはるかに超える医療対象者が生じた際に行われる急性期・初期医療のことである。災害の現場では、1人の患者にかける医療の質よりも、「いかに多数の患者に対して、限りある医療を効率的・効果的に提供できるか」が要求される。  日本のコロナ対策はこれまで平時の発想の下、新興感染症に対応できる少数の医療従事者に過重な負担がかかってきたが、災害医療となれば、あらかじめ指定された拠点病院だけではなく、感染症などの専門知識が乏しい開業医などで組織される医師会も応急措置に参加するのが当然の義務ということになる。「災害医療へのモードチェンジ」とは明言していないが、東京都では医師会が自宅療養者を支援することになり、これまで関与が乏しかった開業医らにも協力要請が出された。  これは、新型コロナウイルス感染が判明しても保健所からの健康観察などの連絡がなかなか届かないため、「病状がいつ急変するかわからない」との不安が広がっていることへの対応が狙いである。これまで「対岸の火事」だった医師会の尻にも、ついに火が付いた形だ。

全国ベースの見守り体制を実現するには

 保健所に代わって医療機関が健康観察を行うため、往診専門医や訪問看護師に加え、医師会のメンバーも電話やオンラインでの診療に応じることで、24時間の見守り体制を拡充するというわけだ。しかし、訪問医療に対応できる医師へのアクセス情報が不十分であることから、医師会は早急に、患者にとって不可欠な情報を提供できる体制を整備する必要がある。  現在、全国の自宅療養者は7万人を超えている。新型コロナウイルス感染者が中等症以上に悪化する比率は20~30歳代で約1%、40~50歳代で約2%と小さい(8月14日付「ダイヤモンドオンライン」)。兵庫県尼崎市で約200人のコロナ患者の自宅療養にかかわってきた長尾和宏医師は、こう語っている。 「24時間いつでも連絡できるよう、患者に自分の携帯電話の番号を教えて、必要なら往診するなどの体制をつくったことで、コロナ患者全員を回復させることができた」  このような取り組みに各地の医師会の有志たちが協力してくれれば、全国ベースの見守り体制は早期に実現できるのではないだろうか。  政府は13日、中等症の自宅療養者らが酸素吸入が必要となった場合に備える「酸素ステーション」の整備を速やかに行う方針を示した。だが、喫緊の課題は新型コロナウイルス感染者の重症化を防ぐ手立てを講じることである。  菅首相は16日、新型コロナ患者の重症化を防ぐ「抗体カクテル療法(点滴薬)」に関し、宿泊療養施設での投与を進める考えを示した。命に関わるアナフィラキシーという副反応のリスクなどから入院患者に限られていた適用範囲が拡大されたことは、一歩前進したといえる。さらに、医師会のバックアップがあれば自宅療養への早期適用も夢ではない。  厳密な安全性よりも医療資源の有効活用が優先される災害医療の観点から、抗体カクテル療法以上に重症化を防ぐ効果が期待できるのはイベルメクチンである。  イベルメクチンはノーベル医学・生理学賞受賞者の大村智・北里大学特別栄誉教授が開発に貢献した抗寄生虫薬(錠剤、安価)である。「新型コロナウイルスの人間の細胞内への侵入を妨害し、増殖を抑制する効果がある」との報告が発展途上国で相次いでいるものの、厚生労働省は、「日本と同じような薬事審査の水準を持つ国での承認がない限り、特例承認の対象にはならない」との見解を墨守している。大村氏から直接依頼を受けた医薬品メーカーの興和は、新型コロナウイルス感染症の軽症者1000人を対象にイベルメクチンに関する臨床試験を近く開始する予定だが、実用化の時期は明らかになっていない。  しかし、医師が「適応外使用」という形で患者に処方することは現状でも可能だ。適用外使用とは、すでに国が承認している薬を別の効能のために使用することだが、副作用が起きた場合、国の救済制度の対象にならないという難点がある。  前述の長尾医師も「イベルメクチンは非常に効果がある」としており、東京都医師会の尾﨑治夫会長は13日、「医療体制が逼迫した状況下ではイベルメクチンの使用許可を認めていただく段階に来ている」と訴えた。政府は副作用に対する補償を引き受け、災害の現場で活躍する医師が後顧の憂いなくイベルメクチンを処方できるようにすべきであろう。  コロナ対策の医療対策に充当される「緊急包括支援交付金」は約1兆5000億円が計上されているにもかかわらず、かなりの部分が未消化となっている。これらの資金を活用すれば、災害時でも十分機能するコロナ対策が早期に実現できるのではないだろうか。 藤和彦 経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。 デイリー新潮取材班編集 2021年8月22日 掲載