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気象変化と新型コロナ感染/予測の可能性と新事実

藤原 かずえ

気象変化と新型コロナ感染/予測の可能性と新事実

2021/02/05 アゴラ

緊急事態宣言の延長を国民の9割以上が望む中[日本経済新聞世論調査]、菅政権は緊急事態の延長を決めました。感染が急激にピークアウトしていく中での緊急事態宣言の延長は、元を正せば、すべては客観的な新型コロナ感染の予測手法がないためと考えられます。

思えば、コロナ禍を通して、疫学の専門家でもない医師会・医クラ・マスメディア・文化人・自称ジャーナリスト・ヤフコメ等は、反証不可能な個人の勘だけを根拠にして、あたかも全知全能の神のように、悲観的な予言をふりかざしては国民や政府に説教を続けました。

一方、疫学の専門家も、最も重要な緊急事態宣言の効果を検証することなく、相変わらず実態を反映することができない古典的な感染モデルを使って数字の遊びに近い予測を行ったり、木を見て森を見ない些細な各論に突き進んでいったり、大衆がスケープゴートにしているGoToトラベルを無理に分析したりするなど、社会的な責任を十分に果たしていないものと考えられます。

世界的に見て、日本は、コロナの感染爆発を完全に封じ込めるとともに、マイナスの超過死亡まで推測されている唯一の大国ですが、悪質なインフォデミックによって社会が慢性的に集団ヒステリーを起こしていて、感染が拡大すれば政府を罵り、縮小すれば陰謀論が飛び交うという理性を完全に失った状態にあります。

このような背景の中、コロナの感染動向を平易かつ客観的に事前判定するための指標として「日最低気温(7日移動平均)の前週差」に着目して、コロナの感染状況との関係性について検討を行ってきました。この記事では、これまでの研究の概要を紹介した上で、この指標による予測のパフォーマンスを検証します。また、統計分析を基に得られたいくつかの知見を紹介したいと思います(アイキャッチの写真はNASAのimageライブラリより)。

ここまでの研究の概要

マクロに見て、いわゆる第0波、第1波、第2波、第3波は、日最低気温の前週差が低くなったタイミングで感染を急拡大させています(図-1)。

図-1 日最低気温の前週差と実効再生産数の挙動(全期間)

また、ミクロに見ると、この指標の変動のボトム(最低点)は実効再生産数の変動のピーク(最高点)とよく一致しています(図-2)。つまり、日最低気温の前週差が低くなるタイミングで実効再生産数が高くなっているのです。

図-2 日最低気温の前週差と実効再生産数の挙動(東京都・第0波&第1波)

さらに、この関係は、[東京]をはじめとして[日本各地][欧米各地]で認められます。

指標による予測のパフォーマンス

気温差の指標を最初に考えついたのは、1月8日の緊急事態宣言の日です。この日は、報告ベースの陽性者数(7日移動平均)および実効再生産数が各地域で増加を続けており、立憲民主党の枝野代表やヤフコメ尾張の守が「緊急事態宣言は遅い」と科学的根拠もなく大騒ぎしていました。この時点で収集可能な東京の感染情報は図-3の通りです。

図-3 日最低気温の前週差と実効再生産数の挙動(東京都・1月8日時点:第2波&第3波)

東京の場合、実効再生産数と指標の相互相関は20日のタイムラグがあるので、私たちは20日後まで、実効再生産数の増減の判定を行うことができます。1月8日、目前に迫っていたのは、冬将軍の到来によって発生した2020年最大の気温低下のボトム(J)です。現実には、ボトム(J)で実効再生産数はピークを打ち、その後ピークアウトしました(図-4)。

図-4 日最低気温の前週差と実効再生産数の挙動(東京都・2月4日時点:第2波&第3波)

その後、実効再生産数はさらにボトム(k)でピークを打ち、次のボトム(★)でもピークを打ちました。まさにこの指標は感染の一進一退を20日前からトレースしていたことになります。

また、図-5は札幌市の感染状況です。日本全国で感染者が単調減少する中、札幌市は実効再生産数が大きく上昇しています。

図-5 日最低気温の前週差と実効再生産数の挙動(札幌市:第2波&第3波)

少しタイミングがずれていますが、これはボトム(j)の影響と考えられます。札幌市では、日本全国で認められた最大のボトム(札幌市ではボトム(i)にあたります)に引き続き、それよりも気温低下が著しいボトム(j)が存在しているのです。このように、多少タイミングがずれても、顕著な気温の低下(概ね気温低下量が2度以上)があれば、それに対応する顕著な実効再生産数の上昇があるのです。

あえて言わせてただけば、これほど簡単に求めることができて、コロナ感染状況を支配する実効再生産数の増減のタイミングを20日も前から概ね予測できるような指標は他にはないと思います。

いつでもどこでも同じ感染メカニズム

ここで、多変量を対象とする時系列解析のモデルである【多変量自己回帰モデル=VARモデル vector auto-regression model】を使って、感染のメカニズムを検討したいと思います。

VARモデルとは、対象とする現象の時系列変動に対して、①対象とする現象の過去の変化、および②様々な要因の過去の変化を基に、対象とする現象の現在の値を回帰する統計モデルです。過去に実施した[東京都の解析]においては、この統計モデルを使って、実効再生産数(簡易法から算出)を次の4つの気象要因のデータ(気象庁発表)から回帰することを試みました。

・日最低気温の前週差
・日最低気圧の前週差
・日最低湿度
・日最大風速

分析に利用したコードは、統計数理研究所のTIMSACというライブラリに存在する制御系VARモデルのFPECという関数です。このコードを使うと、どの要因の何期過去までのデータが統計的に有意であるかを知ることができます。

東京都の解析においては予備解析を実施し、4つの気象要因のうち、日最低気圧の前週差と日最低湿度の2つの要因の組み合わせ(情報量基準FPE(m)を最大とする組み合わせ)の16日前までのデータを使って回帰するのが最も統計的に意味があることが判明しました。ちなみに圧力差と気温差は1週間ほどの位相差で相互相関関係が認められます。実際、圧力差のボトムも特定のラグで実効再生産数のピークと良く対応します。ただ、気温差ほど、低下量に大きな意味がないようにも感じます(←これは単なる感性なので定量的な検証が必要です)。

図-6 日最低気圧の前週差と実効再生産数の挙動(東京都・第2波&第3波)

なお、この解析においては、過去7日間の気象要因は実効再生産数に影響しないという仮定を設けています。これは陽性となって報告されるまでには最低7日間は必要であると考えたためです。

日最低気圧の前週差と日最低湿度を用いて得られた回帰式は次の通りです(まったく難しいものではなく、単なる掛け算と足し算です)。

但し、
R(t):t(日)における実効再生産数
T(t):t(日)における日最低気圧の前週差(度)
M(t):t(日)における日最低湿度(HPa)
CR(t),CT(t),CM(t):解析によって求められる定数(表-1参照)
C:R(t)の観測値平均と実測値平均が一致するように求められる定数表-1 VARモデルの回帰定数

この式によって得られた回帰値と観測値の関係を示したものが図-7です。本図には回帰誤差(回帰値と観測値との差)も同時にプロットしています。

図-7 東京都の実効再生産数のVAR回帰(第2波&第3波)

本図を見ると、回帰値は観測値と概ね一致し、その誤差も全期間を通してほぼ一様に小さいことがわかります。

このことは、東京都のコロナの実効再生産数の変動メカニズムは、第2波以降の期間を通して【不変 invariant】であり、実効再生産数と日最低気圧の前週差と日最低湿度の過去の変動で説明できるということになります。いつでも同じメカニズムで感染が生じているのです。このように時間によって確率分布が変化しないことを【時間的定常 temporal stationarity】と言います。

さて、非常に興味深いことに、実はこの回帰式は場所が変わっても時系列分布を精度よく再現します。東京都で得られた回帰式を札幌市・愛知県・大阪府・福岡県・沖縄県という気象条件が異なる各地域に適用させたものが図-8~図-12です。

図-8 札幌市の実効再生産数のVAR回帰(第2波&第3波)

図-9 愛知県の実効再生産数のVAR回帰(第2波&第3波)

図-10 大阪府の実効再生産数のVAR回帰(第2波&第3波)

図-11 福岡県の実効再生産数のVAR回帰(第2波&第3波)

図-12 沖縄県の実効再生産数のVAR回帰(第2波&第3波)

これらの図を見ると、陽性者数が少なく僅かな感染者数の増加で実効再生産数が乱高下した第2波の上昇局面(7月中旬~7月末)を除けば、誤差は非常に小さく、ほぼ一様です。つまり、少なくとも第2波の下降局面からは各地方でも時間的定常が認められるということです。しかもその変動を再現しているのは、各地方で求めた回帰式ではなく、東京で求めた回帰式です。このことは時間的定常に加えて、位置によっても確率分布が変化しないことを示しています。どこでも同じメカニズムで感染が生じているのです。この状態を【空間的定常 spatial stationarity】と言います。結果、コロナ感染の変動メカニズムは、少なくとも第2波の下降局面以降は時間的にも空間的にも不変であると言えます。

つまるところ、いつでもどこでも同じメカニズムで感染が生じていると考えられます。この状態を【時空間的定常 spatio-temporal stationary】と言います。

さて、この時空間的定常はGoToトラベル前後でも不変です。もし、GoToトラベルが感染に有意な影響を与えていたとしたら、現象メカニズムが変わってしまうので、回帰値は開始前後で大きく乱れて誤差が増加するはずです。ところが、GoToトラベル開始(7月22日)の2週間後にも、GoToトラベル東京追加(11月1日)の2週間後にも、GoToトラベル札幌&大阪停止(11月24日)の2週間後にも、GoToトラベル東京&愛知停止(12月14日)の2週間後にも、GoToトラベル全国停止(12月28日)の2週間後にも、緊急事態宣言(1月8日)の2週間後にも顕著な回帰誤差の変化は認められません。つまり、日本全国どこでもコロナの感染において、気象の有意な影響は認められますが、GoToトラベルや緊急事態宣言の有意な影響は認められません。感染の増減の主たる要因は、国民の気の緩みのせいでも政府の失政のせいでもなく、気象のせいである可能性が高いのです。

勿論、西浦博氏がデータを丁寧に観察してGoToトラベルの影響を議論したことは否定すべきことではありません。しかしながら、実効再生産数が日々変化する中で5日間くらいのデータを精緻に分析したところで、マクロな実効再生産数への影響を立証しない限り、実用的な結論を導くのは困難であると考えます。

なお、第2波の上昇局面については、慎重に検討すべきです。陽性者数が少なかったことを差し引いても、この時、新型コロナの感染メカニズムに何らかの変化があった可能性があります。普通に考えれば、ゲノム系統のドラスティックな変化によるものと考えられます(図-13)。

図-13 ゲノムの系統の分析結果(感染研)

第2波の下降局面と第3波で大きな感染メカニズムに大きな変化が認められないことも、この時期にゲノム系統にドラスティックな変化がないことにより説明することが可能です。このことから、気象変化とゲノム系統の変化が新型コロナの感染メカニズムの支配要因である可能性が考えられます。

時空間解析の重要性

感染は時空間にわたる物理現象であり、その現象メカニズムの因果の法則性を把握するにあたっては、時間挙動と空間挙動をそれぞれ定量的に分析することが重要です。基本的に分析の方法には、①空間挙動の解析結果を時系列順に分析する方法(図-15)、②時間挙動の解析結果を空間的に分析する方法(図-16)の2種類があります。

図-15 空間挙動の時系列分析

図-16 時系列挙動の空間分析

このうち私は、①の方法による分析を昨年5月から行ってきました[過去記事]、https://www.youtube.com/embed/-jh4vHM2w_w?enablejsapi=1&origin=https%3A%2F%2Fameblo.jp図-17 東京23区の感染状況の時空間推定結果

そして、現在行っているのは、まさに②の方法です。この2つの方法を融合することこそ、現象の解明に役立つものと考えます。感染拡大防止に使えそうなアイデアを一つ持っています。また別の機会に紹介したいと思います。

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感染症 社会問題

疫学者700人がコロナ禍で「絶対にしない行動」

ワクチン接種が始まってもマスクは必須に

The New York Times

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2020/12/14 東洋経済ONLINE

新型コロナウイルスのワクチン配布が近づいているが、専門家の多くは国民の大半の接種が済むまでは、以前の日常が戻るとは考えていない。

疫学者700人を対象としたニューヨーク・タイムズの非公式調査では、最低でも人口の7割が接種を済ませるまでは自らがとっている予防的行動を変えるつもりはない、との回答が約半数を占めた。その一方で3割の専門家は、自らの接種が済んだ後は行動を多少変えると回答した。

元の生活に戻るには「あと何年もかかる」

極めて効果的なワクチンが広く行き渡れば、来年の夏に今より自由な生活様式を安全にスタートさせられるようになる、と回答した疫学者は少数にとどまった。中には「ワクチンの臨床結果は期待できるものだった。2021年の夏までに、あるいは夏の間に以前の生活に戻れると楽観している」(ミシガン州立大学のケリー・ストラッツ助教授)とする回答もあった。

しかし疫学者の大多数は、ワクチン接種が始まったとしても多くの行動を安全に再開できるようになるまでには1年かそれ以上かかり、一部の行動については以前の状態には2度と戻らないかもしれない、と答えている。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のカリン・ミシェルズ教授は「以前の生活様式をだいたい取り戻す」には、おそらくあと何年もかかると回答した。「私たちはウイルスとともにある生活を受け入れなくてはならない」。

疫学者が懸念しているのは、さまざまな不確定要素だ。ここには免疫の持続期間、ウイルスの変異、ワクチン配布の障壁、ワクチン接種を拒否する人々の動向などが含まれる。

感染悪化が予想される本格的な冬が目前に迫った今、疫学者たちは予防策を徹底し、新たな生活様式を取り入れている。その対策は、一般的なアメリカ人が行っているものよりもはるかに厳しい。

日常生活における23の行動について疫学者に尋ねたところ、過去1カ月間に行ったことがある、との回答が多数を占めた行動は3つしかなかった。屋外で友人と会う、予防策を講じることなく郵便物を受け取る、食品や医薬品の買い出しなどの雑用に出かける、の3つだ。

それ以外の行動については、調査に応じた疫学者はほぼ全面的に避けている。そうした行動の中には多くのアメリカ人が現在行っているものもある。この1カ月間でスポーツ、演劇、コンサートの会場に足を運んだり、よく知らない人と会ったり、結婚式に出席したり葬式に参列したことがある、と回答した専門家はほとんど1人もいなかった。

「知らない人が近くにいると以前よりも不安を覚える。そうした感覚はこれからも続くだろう」(カリフォルニア大学サンフランシスコ校でポスドク研究員を務めるエリコット・マセイ博士)

冬の休暇に「祝い事」はしない

クリスマス、ハヌカーといった冬の休暇の予定については、サンクスギビング(感謝祭)と同様、家族だけで過ごすか、祝い事はしないとする回答が4分の3に達した。

調査票の中で示した一連の行動のうち、どれが最も安全で、どれが最も危険かとの問いに対しても、大方の意見が一致した。屋外での行動や物体の表面に触れることについては、あまり危険視されていない。危険視されているのは、屋内での行動や大規模な集まりだ。ただし危険度のレベルについては、疫学者の間でも見解にばらつきが見られた。

マサチューセッツ大学のリーランド・アッカーソン准教授は「屋内に多くの人が集まるのが、状況としては最も危ない」と回答。「屋外で少人数、かつソーシャルディスタンスを確保して予防策も行えばリスクは最も低くなる」とした。同氏はこの1カ月間で、友人とハイキングに出かけたほか、郵便物を予防策なしに開封し、雑用にも出かけたと答えた。

半年前に行った同様の調査でニューヨーク・タイムズは疫学者に次のような質問を投げかけた。通常の生活を取り戻せるのはいつになるのか——。これに対して疫学者の多くは、日常生活の多くが通常に戻るのには1年かそれ以上かかると答えていた。あれから感染状況はさらに悪化。その一方で治療法は改善してきているため、今回の調査ではパンデミックの中で疫学者の生活様式がどのようなものとなったかに質問の的を絞った。

今回の調査に対し、ミネソタ大学のレイチェル・ウィドーム准教授はこんなコメントを寄せてくれた。「笑うに笑えない。前回調査を受けたときは、アメリカなら世界の先頭に立って問題に素早く対処するだろうと先行きをものすごく楽観していた。前回は、今頃には状況は良くなっていると思うと回答したが、大間違いだった。状況は劇的に悪くなっている」。

感染の速度を大幅に遅らせるか止めるためには、「集団免疫」を達成する必要があるが、この集団免疫については、人口の7割が免疫を獲得しなければ達成されないとする回答が大半を占めた。従来の生活の多くを安全に再開するには集団免疫が極めて重要で、それを安全かつ最速で達成する方法がワクチンの接種だ。ただし、ワクチンを接種した人がウイルスを拡散し続ける可能性については、科学的な解明がまだ終わっていない。

ワクチン接種しても、まだ安心できない

自らがワクチン接種を済ませた後はこれまでよりも多くの日常行動を安心して再開できるようになる、とする回答は全体の3分の1に迫った。それでも安心して行える行動は、同じくワクチンを接種した人との社交など一定のものに限られる、とする回答も見られた。自身がワクチン接種を済ませ、なおかつアメリカで集団免疫が達成されるまではコロナ前の生活様式を復活させない、と答えた専門家も少数ながら存在する。

「変えるのは一部の行動だけ。それ以外は今の状態を維持する」と回答したのは、非営利団体ヘルスパートナーズ・インスティテュートのガブリエラ・ヴァスケス・ベニテス上級研究調査員だ。「自身のワクチン接種が済めば、近場での小旅行に出かけたり、少数の身内と屋内で集まったりするようには多少なると思う。それでもマスク着用やソーシャルディスタンスの確保といった感染対策は続ける」

春の時点と比べて、各種のリスクに対する捉え方が変わり、それに応じて自らの行動を変えた、とする回答は79%に達した。科学は日進月歩する、というのがその理由だ。

リスクの捉え方に関する春からの変化としては、屋外での社交、物の表面に触れること、児童の通学に対する懸念が薄れたとする回答があった。その一方で強まったのが、屋内の空気感染やマスクを着用しないことへの懸念だ。

今回の調査では、アメリカ疫学研究学会の会員と個別の疫学者に電子メールで回答を依頼。調査期間は11月18日〜12月2日で、案内を送付した約8000人の疫学者のうち700人から回答を得た。4分の3が学術機関所属。新型コロナに部分的にでも関連する研究を行っている回答者の割合も、全体の4分の3を占めた。

一般国民に対する感染対策の呼びかけが十分に効果を上げていないこと、またアメリカ国民の間で科学不信が高まっている現状に失望や怒りを感じていると答えた疫学者は多かった。マスク着用や外出規制といった対策が政治のおもちゃにされてしまったことで、悪影響が長期に及ぶことを疫学者は恐れている。

「専門家としても、一個人としても、このウイルスには自らの至らなさを思い知らされた」と、スタンフォード大学のミシェル・オッデン准教授はコメントした。「アメリカという国の対応が、ここまでぶざまなものになるとは夢にも思わなかった。課題は山積している」。

コロナ後に残る「長期的な影響」とは

今後の見通しについては、ワクチンのおかげで来年夏にはどこかの段階で以前の生活を部分的に取り戻せるようになる可能性がある、とする回答も見られた。ただ、極めて効果的な治療薬が開発されない限り、現在の予防策は一定程度維持される必要がある、との回答もあった。大多数の疫学者が今後も必要な措置として言及しているのが、マスクの着用だ。

「公共の場で大人数が密になって集まったり、飛行機などの公共交通を利用したりしたときに(科学者の)私が個人的に安心できるような状態になるまでには、まだ数年かかると思う」(ノースイースタン大学のベス・モルナー准教授)

新型コロナが身体に与える危険性が後退したとしても、ほかの面で長期的な影響が残ると警告する疫学者もいた。

「メンタルヘルス(心の健康)のケアは今後も極めて重要な問題であり続ける」との回答を寄せたのは、ペンシルベニア大学でポスドク研究員を務めるダニエル・ヴェイダー博士だ。「世の中のストレスは高まっている。コロナによって引き起こされた不安や悲しみに、多くの人々が生涯悩まされ続けることになる」という。

(執筆:Margot Sanger-Katz記者、Claire Cain Miller記者、Quoctrung Bui記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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コロナで我を失う愚か者たちのバカすぎる行動

買い占め、デマ、差別、便乗…モラル崩壊の唖然

木村 隆志 : コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

https://toyokeizai.net/articles/-/334937?utm_source=yahoo&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=related

2020/03/07 東洋経済ONLINE

連日、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、地域別の感染者数や感染ルート、政府や専門機関の対応、予防や発見の方法、日常生活や経済的な影響など、さまざまなニュースが飛び交っています。注目すべきニュースが大半を占めているものの、なかには耳を疑うようなものも少なくありません。

「買い占め」「デマの流布」「便乗値上げ」「高額転売」「盗難」「差別」「誹謗中傷」「入場禁止」「強硬開催」など、その一部フレーズを見ただけで、あまりよくない言い方だと百も承知のうえで、「バカ」「愚か者」と言いたくなってしまうニュースが飛び交っているのです。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって個人の本質が問われ、誰しも「バカ」「愚か者」になりかねない危険性をはらんでいるのも、また事実。国難とも言える緊迫した状況の中、私たちは「バカ」「愚か者」にならないために、どんなことに気をつけなければいけないのでしょうか。

「スッキリ」加藤浩次が猛批判した理由

3月2日放送の情報番組「スッキリ」(日本テレビ系)で象徴的なシーンがありました。番組は「新型コロナウイルスの感染拡大でトイレットペーパーが入手困難になる」という情報を信じて買い占めに走る人々をフィーチャー。

すでにデマとわかったうえで行列に並ぶ人々を見たMCの加藤浩次さんは、「デマだとわかっていて買ってしまうのは『ずいぶん滑稽なことなんだよ』と思わなきゃいけない」「バカみたいな買い方をしなければあるわけですよ。それをバカみたいに買っている自分を恥じなければいけない」と猛批判しました。

まず悪意の有無にかかわらず、このような状況下でデマを流してしまう人が最大の「バカ」「愚か者」であることは言うまでもないでしょう。また、SNSにはトイレットペーパーだけでなく、「新型コロナウイルスは細菌兵器として作られたもの」というひどいデマもあり、それに「いいね!」やリツイートしている人もいました。

さらにデマの問題は、「デマとわかっていても買ってしまう」という新たな「バカ」「愚か者」を生み出してしまったこと。そもそもトイレットペーパーを買うために行列を作るという行為自体、地域社会を混乱させる行動であり、新型コロナウイルスの感染拡大リスクであることにすら気づいていないのです。

前述した「スッキリ」では加藤さんがハッキリ苦言を呈したものの、「店頭の棚からトイレットペーパーがなくなったこと」をトピックスとしてフィーチャーしていた番組は多々見られました。これは視聴者の目を引くための構成ですが、結果的に不安を増大させ、買い占めを促してしまったそれらの番組も「バカ」「愚か者」。これはテレビ番組だけでなく、空っぽの棚を撮影してSNSにアップしている人々も同様でしょう。

ただ、1つ救われたのは、3月3日に米子医療生活協同組合が、「職員が『トイレットペーパーが品薄になる』というデマ投稿者の1人だった」ことを明かし、謝罪コメントを出したこと。批判覚悟で正直に謝罪したことで、デマを流布した本人に反省を促し、「バカ」「愚か者」から救い出すきっかけを作ってあげたのです。

この例に限らず、デマを流布している人の目を覚ますことができるのは身近な人だけ。知らない人に独り善がりの正義感を燃やして言葉をかけても効果は薄く、知っている人だからこそ変化が期待できるものです。

「パニック買い」ではなく利己心の表れ

買い占めされたのはトイレットペーパーのみならず、ティッシュペーパー、コメ、パン、麺類、冷凍食品など多岐にわたりました。それらの購買行動を「パニック買い」と呼ぶ記事もありましたが、本質はそこではないでしょう。

デマとわかっているのについ買ってしまうのは、決してパニックになっているからではなく、「ふだんの生活を変えられたくない」「日常的に得ている自由や便利を失いたくない」という利己心からくるもの。日ごろ「欲しいものを選んで届けてもらえる」「好きなときに好きなものを好きな場所で見られる」「低価格でさまざまな料理を食べられる」など、収入の多少にかかわらず、それなりに自由で便利な生活を送っている現代人は、それが少しでも損なわれることを極端に嫌がるものです。

そんな利己心が強くなるほど視野が狭くなり、自分のことしか見えず、以前なら絶対にやらなかったであろう言動に陥ってしまうのが、「バカ」「愚か者」とみなされてしまうゆえん。例えば、「コンビニのトイレからトイレットペーパーが盗まれた」「来客用に置かれたオフィス受付の消毒液がなくなっていた」という盗難のニュースは、利己心の強い人による愚行そのものでした。

とくに新型コロナウイルスのような社会的重大事では、利己心で何かを得られたとしても、それは一時しのぎにすぎません。買い占めや盗難によって地域社会が乱れ、感染が拡大したら、個人の自由や便利は現在以上に損なわれていくでしょう。

その利己心は買う側だけではなく、売る側にも見られました。マスクを1箱数万円で販売したり、マスクは適正価格ながらも送料を50万円に設定したりなどの悪質極まりない行動が見られたのです。

こうした便乗値上げや高額転売は、あまりに「バカ」「愚か者」であるため、政府やオークションサイトなどが規制に動いていますが、「もっと早く対策を講じておくべきだった」のは間違いないでしょう。その意味では新型コロナウイルスの感染拡大によって、「もはや日本人特有の性善説は、自由で便利な生活を送る現代人には通用しない」ということが露呈されたのかもしれません。

少なくとも、医療や介護の現場でもマスクが不足している中、便乗値上げや高額転売を行った利己心の強い日本人が多かったことは、政府・企業ともに今後の対策に生かしていくべきでしょう。

医療従事者へのありえない差別

もう1つ、感染が拡大するにつれて増えている由々しき事態は、感染者や感染の疑いがある人、あるいは中国人への差別や誹謗中傷。ネット上で「感染したヤツの名前を出せ」「感染者を出した〇〇は責任を取って店を閉めろ」「日本から追い出せ。国へ帰れ」などという強烈な言葉が浴びせられているのです。

さらにひどいのは、「治療にあたっている医師、看護師、その家族も差別を受けた」というニュース。医師や看護師は、世間や人々のためにリスク覚悟で働いているのであって、これこそ絶対にしてはいけない愚行にほかなりません。また、映画館、パチンコ、温泉などの複合エンタメ施設を各地に展開する「コロナワールド」にも、「このご時世に不謹慎だから廃業しろ」という無茶苦茶な書き込みも見かけました。

こうした差別や誹謗中傷が起きるのは、大義名分があるからではなく、「自分の自由や便利を脅かされたくないから」「単なるストレス解消で誰かを攻撃したい」という程度の理由にすぎないでしょう。

「私はそんなことは言わない」と思っている人も、医療従事者や中国人が隣に座ったり、話しかけてきたりしたら嫌な顔をしないと言い切れるでしょうか。例えば、その戸惑った様子をSNSに書き込むだけでも、立派な差別と言えるものなのです。

X JAPANのYOSHIKIさんが、「戦っているのは、対人じゃ無くて、対ウイルス。今からでも、自分も含めて、冷静な判断のもとにそれぞれができることをしよう」というメッセージを発信しました。無用な差別や誹謗中傷を避けるためには、やはり冷静な判断をするためにできるだけ確度の高い情報を入手し、自分のできることに徹するべきでしょう。

人間の不安を軽減させるのは、誰かを差別したり、誹謗中傷を浴びせたりすることではなく、それらをすることやされることの心配がない社会。誰しも新型コロナウイルスに感染するリスクがある以上、もし自分が差別されたり、誹謗中傷を受けたりする立場になったら……と考えたら、そのことがわかるのではないでしょうか。

オフィスでは“コロナハラスメント”横行

新型コロナウイルスの余波は、いちコンサルタントである私のもとにも及んでいます。さまざまな相談事がある中で顕著なのは、オフィスにおけるハラスメント横行。

例えば、ある新聞社に勤める男性は、上司から「もし感染したらわかってるよな?」と言われてしまいました。彼が「どういうことですか?」と尋ねると、上司は「評価を下げざるをえないだろ」と言われてしまい、風邪気味であることを隠しながら働いているそうです。

また、ある路面店で接客スタッフとして働く女性は、上司から「見栄えが悪いからマスクは禁止」「休日は一切外出しないように」と言われ困惑していました。さらにこれは聞いた話ですが、「感染者と決めつけられて、わざと出勤させないように追いやられた(新型コロナウイルスを理由に部署異動させられそう)」という嫌がらせもあったそうです。

経営者や管理職からの相談もありました。彼らは「コロナウイルスに感染したかもしれないから会社を休みます」という部下に悩まされているというのです。部下の言い分は、「普通の風邪だと休まないけど、症状がコロナっぽいから休む」「検査を受けようとしたが、断られてしまった」。

しかし、上司にしてみれば、「まったく体調が悪いようには見えないが、休みを認めざるをえない」というのです。どちらの言い分が正しいかはわかりませんが、現在はウソが通用しやすい状態になっていることは間違いないでしょう。

ハラスメントをする上司も、職場放棄する部下も、新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、彼らの中にある「バカ」「愚か者」の部分が引き出されてしまいました。近い距離感で毎日コミュニケーションを取るオフィスだからこそ、ネガティブな出来事をきっかけに、役職を問わずモラルが低下してしまう人が少なくないのです。

「感染したくない」より「周囲に感染させない」

ここまで挙げてきたもの以外にも、埼玉県加須市が「小・中学生の市内各公共施設への入館をお断りさせていただいております」という貼り紙をした(のちに「お断り」を「ご遠慮」に変更)、東京事変が2月29日と3月1日にライブを強行開催(以降の公演は中止)など、批判を受けたものはまだまだあります。

他人を見る目が厳しくなっていく中、「山手線の車内で、せきをしたことをきっかけに男女3人がケンカになった」ことがニュースになりました。その様子を動画撮影した高校生が「世も末だなって感じ」と話していたように、せきやくしゃみで大人たちが我を失ってしまう過敏な世の中になっているのです。上の画像をクリックすると、「コロナショック」が波及する経済・社会・政治の動きを多面的にリポートした記事の一覧にジャンプします

花粉症で鼻水をすすっただけであろう人まで白い目で見られる異常な状態では、今後もいつどこで誰の「バカ」「愚か者」が露呈しても不思議ではありません。

あなたが賢明なビジネスパーソンなら、「自分はそんなことをしない」と言い切ってしまうのではなく、つねに冷静な目線で自分を見つめていたいところ。その第一歩は「自分は感染したくない」よりも先に「周囲の人々に感染させないようにしよう」と心がける寛容な姿勢ではないでしょうか。

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社会問題

コロナに「マスクは無意味じゃない」明確な根拠

直接防止効果はさておき社会のために必要だ

河野 博子 : ジャーナリスト

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2020/04/02 東洋経済ONLINE

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクの着用が当たり前になっている。安倍首相が4月1日に表明した全世帯への布製マスク配布方針には、驚きも広がった。だが、品不足はまだ続く。建築・都市環境工学、とりわけ人の周りの空気環境の研究を続ける村上周三・東大名誉教授にインタビュー、改めてマスクの功罪と正しい使い方について聞いた。

マスク、自分自身への感染防ぐ効果は限定的

――会議や会合でマスク着用が義務付けられることが増えています。街を行く人もマスク姿が多くなりました。

自分への感染を防ぐためにマスクを着けている人が多いと思います。水道水の安全性に不安があるときに、ペットボトル、プラスチックによる海洋汚染が問題になってからはマイボトルを持ち歩く人が増えました。しかし、空気の場合、自分用の空気を持ち歩けません。そこで空気に含まれる危ないものを吸わないようにいわばペット空気の代用としてマスクを着けているものと想像します。私の場合もそうですが、マスクを着けていると安心感があります。でも実は、本人への感染防止効果は限定的です。

――マスクでは感染を防げない、という声は、以前からありました。

私たちはマスク着用時の空気の流れを数値流体力学の手法を用いて分析しました。北九州市立大学の白石靖幸教授がコンピューターによるシミュレーション解析を行ったところ、マスクを着けた場合、吸っている空気のうち、マスクを通して吸引している空気は少量、マスクの顔への密着度がよくない場合は約1割で、横の隙間から吸っている空気が大半、約9割に達するという結果が出ました。空気には、なるべく抵抗の少ないところを通るという性質があるからです。

――マスクを着けても、吸っている空気の大半は、マスクを通っていないのですか?

そうです。一般に使われるマスクのフィルター効果は限定的ということです。もともとマスクに期待されている機能は、吸い込み空気に含まれる汚染物質の除去です。花粉症の防御の場合には、花粉のサイズが大きいのでフィルターの捕集効果を十分に期待することができます。

しかし、ウイルスはずっと小さいですからフィルターの捕集効果が通常のマスクにあるかというと、疑問です。ましてや、今回のシミュレーション解析でわかったように、マスクを着けていても人はマスクの脇から空気を吸っているとすると、フィルター効果に期待するのは現実的ではありません。

マスク着用は他の人々のため、マスクの功罪

――そうなると、マスクを着けても意味がないことになりそうです。

いいえ、大きな意味があります。それは、自分が吐き出す空気に含まれる飛沫が拡散するのを防ぐということです。自分が吐き出す空気、これを吐き出し気流といいます。吐き出し気流は流体力学の言葉ではジェットと呼ばれます。ジェットは拡散しにくくまっすぐに進みます。そして、マスクと顔の脇の隙間を通らずにマスクを通過します。咳やくしゃみをしたときに出る飛沫は比較的大きく、マスクでも十分捕集できます。

マスクには、もし自分が感染している場合、自分から出る飛沫に伴う周囲の人たちへの感染防止効果があります。新型コロナウイルスは、感染しても無症状な人が多く、自分で感染していると知らないままウイルスを拡散させているケースが多いとされています。マスクの着用は、本人のためというよりは社会のためで、公共財としての空気の清浄維持に通じるものなのです。

――では、マスクを着けている本人にとって、いい点はない?

マスクを着けると、吐き出した空気は拡散されにくくなりますので、それを再び吸う割合、再吸収率が高くなります。冬場の寒いときに再吸収率が高くなることは、温められ、湿度も適度にある空気を吸うことになり、のどを保護できるという利点があります。冬場に冷たく乾燥している空気を吸うとのどをやられることがありますが、のどがイガイガしなくて済みます。火事のときには濡れタオルを顔にあてて逃げるといい、と言われますが、それは濡れタオルには煙の中の粉じんを捕集し、熱気流を冷却する効果があるからです。

しかし、気を付けなければならないのが、マスクを着けることにより、自分の健康にとって負担になる点があるかもしれないということです。

――どういうことですか。

密閉性が高く高性能のフィルター効果を備えたマスクを隙間のないようにきちんと装着した場合、呼吸に大きな負担がかかります。私は16年前、SARS(重症急性呼吸器症候群)がアジア地域で広がった後の2004年にマスク着用時の人の呼吸について実験を行い、解析しました。その結果、密閉性の高い高機能のマスクではなく普通のマスクでも、着けた人は普段よりも肺に負担がかかることがわかりました。

マスクを隙間のないように着けると息苦しさを感じます。肺への負荷が大きくなっているからです。医療現場で本格的なマスクを着けることが多い医療関係者からも、息苦しいという話を聞いています。さらに問題は、息苦しくなると鼻だけではなく口からも息を吸うことになります。すると人間が本来持っている鼻のフィルター効果が活用されないことになります。また、マスクを着用すると再吸引率が高くなります。すなわち、自分が吐き出した空気を再び吸引する割合が高くなり、清浄で新鮮な空気を吸引する割合が減るというマイナス面も指摘されます。

適切なマスクの利用方法、空気感染への警戒

――そうすると、適切にマスクを使うには、どうしたら?

飛沫汚染防止という他者のためのマスク着用は、公衆道徳の面からも大変必要性が高いと思います。一方で、1人でいるときや、ほかの人と離れた場所にいる場合は、マスクを着けたままにしておく必要はあまりないと思います。私の場合、寒い日に外にいるときはのどの保護のつもりでマスクを着けることが多いです。

――新型コロナウイルスは、空気感染するのでしょうか。

くしゃみなどで飛ぶ飛沫による飛沫感染や、飛沫が付着したものを触ったことから自分の手から口へ、などの経路で体内にウイルスが入ってしまう接触感染が主な感染ルートだとされてきました。しかし、最近の報告では空気感染の危険性が指摘されています。中国政府は2月に新型コロナウイルスによる肺炎の診療指針改定版を発表しました。その中で、空気中を浮遊する微小な粒子、エアロゾルによる感染はありうるとしています。

――エアロゾルは、飛沫とは違う?

咳やくしゃみによる飛沫よりはるかに小さいもので、そうした飛沫や唾液などが微粒子になって空中を漂うケースが問題です。3月にアメリカの国立衛生研究所の下にある国立アレルギー感染症研究所が、新型コロナウイルスがエアロゾル化し、空中で最低3時間は生き残る、という研究結果を発表しました。空気感染は起きていない、という見解もありますが、エアロゾルによる感染をはじめ、わかっていないことは多いのです。政府は換気の悪い密閉空間を問題視していますよね。滞留した空気を外の新鮮な空気と入れ替えて室内に漂うエアロゾルを追い出すことは、環境衛生の基本中の基本です。「ペット空気」のお話を最初にしましたが、清浄空気の確保は基本的人権に通じるくらい大切なことです。

ビルの換気計画を再検討する必要あり

――とはいっても、窓を開けることができないオフィスビルは増えています。

まったくご指摘の通りです。大きな問題だと思います。今までになかった汚染問題が発生している事態を踏まえてビルの換気計画の在り方を再検討していく必要があると思います。

――前から気になっていることで、一つお聞きします。3月26日午後、首相官邸で開かれた改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対策本部の初会合では、マスクを着けていたのは河野太郎防衛相など数人だけでした。当時はすでに各種会議でマスク着用を義務付けられていたので、違和感を覚えました。3月31日の経済財政諮問会議では、一転、安倍首相をはじめ参加者全員がマスクをつけていました。これをどう見ますか。

感染者がどこにいるかわからない状況では、他者のためにマスクを着用することは、屋内、屋外を問わず、同じ場所に同席する場合のマナーとして励行すべきであると思います。政府関係者がそういう場所でマスクを着用することは、マナー喚起の点から必要だと思います。

読売新聞3月27日付朝刊、4月1日付朝刊はいずれも新型コロナへの政府の対応をトップで報じた。3月26日の政府対策本部初会合では、出席者のほとんどがマスクを着けていなかったが、5日後の31日の経済財政諮問会議では、安倍首相以下全員がマスクを着けていた(東洋経済オンライン編集部撮影)

村上周三(むらかみ・しゅうぞう)/ 東京大学名誉教授。工学博士。一般財団法人建築環境・省エネルギー機構理事長。1965年、東京大学工学部建築学科卒、東京大学教授、慶応義塾大学教授、空気調和・衛生工学会会長、日本建築学会会長、独立行政法人建築研究所理事長、新国立競技場整備事業・技術提案等審査委員会委員長などを歴任。専門研究分野は建築環境工学、数値流体力学。77歳(撮影:河野 博子)

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感染症ニュース 社会問題

世界のコロナ新規感染者数、この1か月でほぼ半減 AFP統計

https://news.yahoo.co.jp/articles/47d975ccbdb9cd379d397d9c727dd8ffa99422c4

2021/2/13(土) 14:28 JIJI.COM AFPBB

AFP=時事】新型コロナウイルスの世界中の新規感染者数は、この1か月で半分近くに減少した。統計はAFPの専用データベースに基づく。 【図解】新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数(12日午後8時時点)  AFPの統計によれば、世界中の新規感染者数は過去1か月で44.5%減少した。これは新型ウイルスの感染拡大が始まって以来最大の下落で、減少期間も最も長い。  今年1月5日から11日にかけては、1日当たりに確認された新規感染者数が74万3000人だったのに対し、先週も減少傾向がみられ、1日当たりの新規感染者数は平均で41万2700人だった。これは昨年10月以来、最も低い水準にある。  今週、新規感染者数が最も大きく減少したのは、54%減のポルトガルと39%減のイスラエルで、どちらもロックダウン(都市封鎖)下にあった。  一方、感染が拡大している国もあり、感染拡大のスピードが最も速いイラクでは新規感染者数が81%増加し、続いて近隣のヨルダンで34%、ギリシャで29%、エクアドルで21%、そしてハンガリーで16%の増加が確認されている。  スイス・ジュネーブ大学(University of Geneva)のグローバルヘルス研究所(Global Health Institute)所長で、疫学者のアントワーヌ・フラオー(Antoine Flahault)氏はAFPに対し、「世界各国の感染拡大は、おおむね減退傾向にある」との見方を示した。  一方で同氏は、昨夏の欧州諸国のロックダウン解除が早過ぎた結果について触れ、各国政府が「過去の過ち」を繰り返した場合、再び感染が拡大する危険性があると指摘した。【翻訳編集】 AFPBB News

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社会問題

パンデミックは偶然ではない、予防に世界的な自然保護政策を【感染症、歴史の教訓】

https://news.yahoo.co.jp/articles/20cba8136ec935fec1c0f5062a8350cf426a5825

2021/2/13(土) 18:08 NATIONAL GEOGRAPHIC

哺乳類や鳥類に未知のウイルスは170万種、うち85万が人間に感染する恐れ

森林火災の煙が漂うアマゾンの放牧場。アマゾンで見られるような森林消失は、新たな感染症の大流行を引き起こすと国際的な科学者グループは警告する。(PHOTOGRAPH BY VICTOR MORIYAMA, THE NEW YORK TIMES/REDUX)

 新型コロナウイルス感染症のようなパンデミック(世界的大流行)のリスクを大幅に減らすため、自然や野生生物の保護に数百億ドルを投資するよう、世界は政策を大きく転換するべきだ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の生物多様性版とも呼ばれるグループ「IPBES」が、そのような警鐘を鳴らす報告書を発表したのは2020年10月29日のこと。 ギャラリー:ペストからコロナまで【感染症、歴史の教訓】画像20点  報告書では、野生生物やその生息地が減るせいで、人間が新たな感染症にさらされるリスクについての研究を総括している。これによると、生物多様性の保全は感染症の予防にもつながり、「予防する戦略がなければ、パンデミックの発生頻度や拡散速度が高まり、犠牲者は増え、世界経済はかつてないほど壊滅的な影響を受けるだろう」と、その言葉は重い。  具体的には、動物に由来する新型コロナ感染症、エイズ、インフルエンザ、エボラ、ジカ熱、ニパウイルス感染症などの野生動物から人に感染する病気、いわゆる人獣共通感染症の拡散を防ぐ取り組みが提言されている。感染源となる動物はコウモリ、鳥類、霊長類、げっ歯類が多く、哺乳類や鳥類には未知のウイルスは推定170万種も潜んでおり、その半数が人間に感染する恐れがあるという。  新型コロナ感染症のパンデミックが続くいま、この提言は当たり前に聞こえるかもしれない。だが、科学者は以前から、森林破壊の増加が感染症の大流行につながると警鐘を鳴らし続けていた。報告書の著者らによれば、人間の活動で環境への負荷が増え、人と野生生物の距離が近づくにつれて、パンデミックの発生数が増えているのは決して偶然ではない。

積み重なっていた数々の証拠

牧畜のために伐採されたアマゾン横断道路沿いの熱帯雨林。こうした伐採は、マラリアなどの感染症の蔓延につながることが研究で示されていた。(PHOTOGRAPH BY RICHARD BARNES, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 森林の伐採が急速に進む地域では、実際のところ普通は野生生物の間でのみ発生する感染症が人間にまで広まる例がよく見られる。森林破壊の結果として、ニパウイルス、ラッサウイルス、マラリアやライム病を引き起こす寄生虫など、深刻な病を引き起こす病原体が人間にも広まっていることを示す科学的証拠はこの20年間でたくさん見つかっていた。  たとえば、ブラジルでは過去、マラリアの感染を1940年の年間600万例から20年後にはわずか5万例にまで減少させた。にもかかわらず、その後の急速な森林伐採と農業の拡大に伴い、感染者の数は着実に増加してきた。  マラリアは蚊に寄生するマラリア原虫による感染症で、現在は年間2億人以上が感染し、約50万人が亡くなっている。  2019年10月、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校地球研究所の疾病生態学者、アンディ・マクドナルド氏と米スタンフォード大学のエリン・モーディカイ氏は、アマゾン盆地の森林伐採がマラリアの伝染に及ぼす重大な影響を学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に報告している。論文によると、2003年から2015年までの期間において、森林の消失はマラリアの感染に確かに影響しており、焼失した森林が年間10パーセント増加するとマラリアの症例が3パーセント以上増えるという。  恐ろしい病気を運んでくるのは蚊だけではない。森から追い出された動物によって広がることもある。  西アフリカのリベリアでは、森林を伐採してパーム油のプランテーションを作ると、通常は森にすむようなネズミがヤシの実を求めて大量に集まってくる。厄介なことに、なかにはラッサウイルスを保有しているネズミがいて、その糞尿に接触すると人間が感染する。  ラッサウイルスはエボラウイルスと似たような症状を人間に引き起こし、リベリアでは感染者の36パーセントが死亡した。深刻な感染症を引き起こすウイルスをもつげっ歯類は、パナマ、ボリビア、ブラジルの森林伐採地域でも確認されている。  こうした経緯をたどるのは熱帯の病気とは限らない。マクドナルド氏の研究は、米国北東部における森林伐採とライム病との間に奇妙な関連があることを示唆している。 欧米では大きな社会問題となっているライム病の原因菌ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)は、森林に生息するシカの血を吸うマダニから感染する。ところがこの細菌は、人間が分断した森に生息するシロアシネズミからも見つかっている。  人への感染は気候が温暖になるほど増えて、かつては存在しなかった場所に現れる可能性が高まるかもしれないと、世界の感染症の追跡調査を行うニューヨークの非営利団体「エコヘルス・アライアンス」の疾患生態学者、カルロス・ザンブラナ=トッレリオ氏は指摘する。  そうした病気が森林周縁部にとどまるのか、それとも人の中に居着いて流行を引き起こすのかは、ウイルスの感染方法にかかっていると、米フロリダ大学新興病原体研究所の疫学者エイミー・ビットー氏は言う。たとえば、コロナやエボラのようなウイルスは、人から人へ直接感染する。理論上は人間がいる場所であれば、世界中いたるところに移動できる。 「また別の、もしかすると複数の病原体が、この先、同様の経緯をたどるとは考えたくありません。それでも、その可能性を考えて準備をしておくべきでしょう」とビットー氏は言う。

中途半端な規模では無意味、莫大な対策費用でも割に合う

コンゴ民主共和国のマタディで、黄熱ウイルスを運ぶネッタイシマカの駆除剤を散布する男性。(PHOTOGRAPH BY WILLIAM DANIELS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

「本当に重要なのは、今行うべき対策の規模を知ることだと思います」と、自然保護団体「コンサベーション・インターナショナル」の気候科学者で、森林の消失がもたらす影響が専門のリー・ハンナ氏は話す。氏は報告書の査読者でもある。「これまでより一段階引き上げるという程度ではいけません。かつてないほどの水準にまで拡大する必要があります」  報告書は、パンデミック対策を監督する国際委員会や、生物多様性の保全への経済的なインセンティブ、そして研究や教育への投資を提案している。こうした制度改革により、パーム油の生産や、森林伐採、放牧などの縮小が期待できるという。  また、感染症のホットスポット(一大流行地)になりつつある場所を特定し、接触のリスクが特に高い人々により手厚い医療を提供するのにも役立つだろう。  将来のパンデミックのリスクを減らす対策をすべて講じるには、毎年400億~580億ドル(約4兆1400億~6兆円)もの費用がかかると著者らは推定している。だが、パンデミックが発生した場合の経済損失が数兆ドル規模に上ることを考えれば割に合うはずだと付け加える。2020年10月12日付けで「米国医師会雑誌(JAMA)」に発表された論文によると、新型コロナ感染症によるこれまでの経済損失は米国だけで16兆ドル(約1660兆円)以上だ。  来たる2021年5月には国連の生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)が開催され、各国が世界的な目標と国家戦略を策定する機会が設けられている。だが、その計画案に含まれる国際的な取り組み「キャンペーン・フォー・ネイチャー」のディレクターを務めるブライアン・オドネル氏は、ブラジルなど大規模な森林破壊が発生している国々が資金や支援を十分に確保しないことなどが目標達成の障害になっていると述べる。 「各国政府は景気刺激策には巨額を投じていますが、自然保護に関する新しい大規模財政支援策は、まだ具体的なものが見られません」  今回の世界的なパンデミックが「大きな目覚まし」になることを望むとオドネル氏は語る。「一部の人たちにはアラームが聞こえています」。だが、「まだ眠ったままの人があまりに多すぎるのです」  自然界や危機的な状況にある野生生物そのものの保護には積極的になれなかったとしても、人間の健康のためには自然を保護せざるを得ない。今回の報告書によって、その点を意思決定者には理解してほしいとハンナ氏は願っている。 「自然を保護する利己的な理由があるのです。自然保護は私たち自身を守ることにつながります」 この記事はナショナル ジオグラフィック日本版とYahoo!ニュースによる連携企画記事です。世界のニュースを独自の視点でお伝えします。

文=SARAH GIBBENS、KATARINA ZIMMER/訳=牧野建志、北村京子

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感染症ニュース 社会問題

普通の会話の数分後に急変 新型コロナの恐るべき特性 神奈川で相次ぐ療養中の“突然死”

https://news.yahoo.co.jp/articles/034b38b09d63fdb53e4181a27952116f1294f111

2021/2/15(月) 6:55 産経新聞

 新型コロナウイルスの感染が拡大する神奈川県で、軽症・無症状の感染者が自宅や宿泊療養施設での療養中に死亡する事例が相次ぎ、医療関係者が危機感を募らせている。保健所の担当者らは患者の“突然死”を防ぐため、監視体制の強化に努めているが、感染者が増え続けるなかで、業務に手が回らなくなっている現状もあり、ジレンマにさいなまれている。(外崎晃彦) 【グラフ】コロナで亡くなった著名人と国内累計死者数推移  神奈川県内の保健所などによると、「第3波」とよばれる感染拡大のなか、昨年12月以降、軽症や無症状と診断され自宅や宿泊療養施設での療養中などに容体が急に悪化し亡くなった事例が、少なくとも計7件起きている。それ以外にも、自宅で死亡が確認されてから陽性が確認されるといった事例もあり、患者本人や周囲が気づかないまま病状が進行し容体が急変することがあるというこの病気の恐ろしい特性を浮き彫りにしている。  ■既往症なくても  関係者に衝撃を与えたのが1月9日に県が発表した、大磯町の70代女性が亡くなった事例だ。女性は昨年12月31日にせきなどの自覚症状が現れ、その後PCR検査を受け、年明け後の1月6日に陽性が判明。7日、自宅で容体が急変し、救急搬送先の医療機関で死亡した。  県担当者が驚くのはその急変ぶりだ。「同居家族と普通に会話をしていて、家族が別の部屋に行って戻ってくるそのわずか数分の間に意識を失っていたようだ。ついさっきまで元気にしゃべり、受け答えができた人が突然、倒れてしまった」という。この女性に既往症はなかった。  既往症がないにもかかわらず、自宅療養中に亡くなった事例は他にもある。1月28日に県が死亡を発表した伊勢原市在住の50代男性だ。17日にせきや喉の痛みなどの自覚症状が現れ、18日に検査して陽性が判明。「療養期間」の終了を翌日に控えた26日、自宅で死亡した。死因は「新型コロナウイルス肺炎に伴う脳出血」。自宅を訪れた親族が死亡している男性を発見した。  ■無症状があだに  横須賀市の担当者は同月23日に市が発表した市内の飲食店に勤める60代女性の死亡事例に胸を痛める。この事例では、19日に女性の同居する70代男性の陽性が判明。女性は翌20日午後に検査を受ける予定だったが、当日の午前中に自宅で死亡した。  女性には既往症があったが、発熱などの症状はなく、倦怠(けんたい)感があった程度。市の担当者は「逆に高熱や息苦しさなど、強い訴えが必要な状態だったならば、結果は違っていたかもしれない」と悔やむ。結果的に無症状だったことが、あだとなってしまったことに複雑な思いを抱いていた。  県では、患者のこうした突然の死を防ぐため、療養者らに対してスマートフォンアプリのLINEを使い、1日2回、体温や体調の変化などの状況報告をしてもらっている。ただ、それでも防ぎきれないのが現状だという。  県の担当者は「常に患者を見ることはできず、監視のはざまで、脳卒中のような一分一秒を争う何かが起きてしまうこともあり、予防は困難を極める」とする。その上で「できる範囲で最善を尽くすしかない」と話している。  ■救急体制利用を  県内の新型コロナの感染状況をめぐっては、昨年11月ごろからの「第3波」によって感染者が急増。1週間当たりの新規感染者数は、昨年12月の第1~4週が1千~2千人台で右肩上がりで推移。1月第2週(5910人)と第3週(5635人)には6千人に迫った。  こうしたなか、感染者一人一人のケアや監視体制も逼迫(ひっぱく)し「手が回らず、すでに限界に近い」(関係者)。県では黒岩祐治知事を筆頭に「市中感染の拡大をなんとしても防ぎ、少しでも新規の感染者を減らしていくこと」に力を入れてきた。  一方“突然死”の防止策として救急体制の利用を推奨している。療養中の患者や家族には「少しでも息苦しさなどを感じたら、遠慮せずすぐに救急窓口(県設置の『コロナ119番』)に連絡してください。場合によっては(一般の)119番でもかまいません」と呼びかけている。

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社会問題

人為的に感染させる世界初の治験 イギリス 数週間以内に開始へ

https://news.yahoo.co.jp/articles/87abe72b898d38b9b7b4589e0c85160d5f0f09ed

2021/2/17(水) 23:54 FNNプライムオンライン

イギリスでは、人為的に感染させて調べる世界初の治験が始まる。 イギリス政府は17日、18歳から30歳までの健康な被験者を人為的に新型コロナウイルスに感染させ、どのくらいの量で感染が起きるかなどを調べる治験を数週間以内に開始すると発表した。 さらに、次の段階では、別のグループにワクチンを投与したうえで、どのワクチンが最も有効かを調べるとしている。 被験者の安全のため、医師などが24時間態勢で観察するほか、初期の段階では変異ウイルスではなく、従来型のウイルスを使うという。 イギリス政府によると、今回の治験は世界初で、倫理面の問題もクリアし、研究は今後、ウイルスの仕組みの解明のほか、ワクチンや治療薬の開発に役立つとしている。

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“新型コロナの死亡率”が国によってこんなにも違う「たった一つの理由」

https://news.yahoo.co.jp/articles/3dc34c6875a262bab3a4e4abaf36752eb2c795cd

2021/2/20(土) 10:00 COURRIER JAPAN

新型コロナウイルスによる被害を最小限に食い止めている社会と、感染に歯止めがかからない社会の差は、どのようにして生まれるのだろうか? 文化心理学者である筆者が、その文化的要因と、「致死率を最小化」するための3つの指針について解説する。 【画像】“新型コロナの死亡率”が国によってこんなにも違う「たった一つの理由」 新型コロナウイルスによる死者数は全世界で200万人、感染者数は1億人を超えた。ワクチン接種が進行している現在においても、この感染症の猛威はとどまっていない。 しかし、その死亡率は、すべての地域で一定なわけではない。パンデミックを効果的に鎮静した国がある一方で、大ダメージを被った国もある。日本の人口は1億2600万人だが、死者数は7000人を超える程度だ。それに対して、人口がほぼ同じくらいのメキシコでは、死者数は15万人を超えている。 この純然たる差をどう説明したらいいのだろう? 経済状態? 医療機関の収容能力? 国民の平均年齢? 気候? この度、コロナの死亡率が、よりシンプルだが核心的な要素に左右されることがわかった。それは、国民がどのくらい進んでルールに従うのかについての、文化的な差だ。

何が人々にルールを守らせるのか?

すべての文化には社会規範があり、社会のなかでの行動に関する不文律がある。私たちは服装や、子供の教育に関する規範を順守するし、満員の地下鉄の中を無理やり通ったりはしない。これはそうしたルールが法律によって定められているからではなく、ルールが社会の機能を円滑にするからだ。 だが、心理学者たちが示してきたように、社会規範を順守する「厳しい」文化がある一方で、「緩い」文化もある。そこでは規則の違反者に対して、より寛容な態度が見られる。 この文化的な差異に最初に気づいたのは、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスだったが、近代においては心理学者や人類学者たちがその定量化に成功した。シンガポール、日本、中国、オーストラリアといった国々は、アメリカ、イギリス、イスラエル、スペイン、イタリアなどに比べて、かなり厳格とされている。 これらの差異は決して偶然ではない。国民国家、および小規模コミュニティの両方を対象に調査したところ、長期にわたって危機──自然災害、伝染病、飢饉や侵略など──にさらされた共同体は、秩序や団結を強化する、より厳密なルールを発達させることが明らかになったのだ。 これは社会の進化を説明するうえで、とても理にかなっている。ルールに従うことは、混沌や危機を生き延びる助けになる、というわけだ。逆に言えば、危機に瀕したことが比較的少ない「緩い」グループには、より寛容になる余裕が生まれるのだ。

コロナ禍でも緊張感が生まれない理由

どちらのタイプが良い悪いということはない──世界的パンデミックが発生するまでは、そうだった。 昨年3月、私は、ルールを破りがちなメンタリティを持つ「緩い」文化は、パンデミック下の公衆衛生対策になかなか従わず、悲劇的な結果を招くことになるのではないかという懸念を抱いた。ただ、そうした文化も、いずれはルールを守るようになるだろうと思った。 しかし、そうはならなかった。私のチームが「ランサー・プラネタリー・ヘルス」に発表した、50以上の国を対象にした調査の結果、その他諸々の要素を加味しても、「緩い」文化は「厳しい」文化に比べ、感染者数では5倍、死亡者数では8倍の値を示していることが明らかになったのだ。 なかでも顕著だったのは、イギリスの調査会社ユーガブのデータを用いた分析結果だ。それによれば、「緩い」文化においては、2020年を通じて、新型コロナウイルスを恐れる人の割合が他と比べて非常に少なかったのだ。 「厳しい」国々では、70%の人々がウイルス感染を非常に怖れている。だが「緩い」文化においては、たったの49%だった。

危機に対応できず絶滅した動物も

こうした人々の間にさっぱり緊張感が生まれなかった理由のひとつは、危機感の希薄な文化に暮らす人々が、パンデミック当初の「危険信号」に素早く反応できなかったことによる。 こうした現象は自然界においても発生する。有名な例として、モーリシャス島に生息していたドードー鳥は、天敵のいない環境で進化してきたため恐れを知らず、人間と初めて接触してから100年で絶滅してしまった、というものがある。 ドードーの顛末が教えてくれるのは、特定の環境で培われた特徴は、環境が変化すると同時に「障害」となる可能性がある、ということだ。科学者はこれを「進化的トラップ」と呼ぶ。これこそが、「緩い」傾向を持つ社会において、新型コロナによる多くの不必要な犠牲者を出してしまった原因なのだ。 もちろん、「緩い」グループが地球上から消え去る運命にあるわけではない。しかし、すでに1年にもなるパンデミックとの戦いは、これらのグループが環境への適応において抱える困難を示している。

「目に見えない危機」をどう伝えるべきか

これからのコロナの致死率を最小化するため、そして将来、別の集団的危機が起こった時に備えるために、「緩い」国々は正しく危険信号を発し、人々はそれに注意を払わねばならない。 まず、危機に対処するための文化的な知性を身に付けるところから始めよう。それには3つの行動が鍵となる。 第一に、私たちが今瀕しているタイプの危機(感染拡大など)の伝え方を変えていく必要がある。私たちは、たとえば戦争のような、目に見えて具体的な危機に対しては、すぐに緊張感を持って対応する。 対して、ウイルスは目に見えず抽象的で、その危険信号は無視されがちだ。公衆衛生機関はコロナの危険をはっきり可視化しなければならない。しかし、ただ単に人々を脅かすのでは逆効果だ。というのも、心理学者が言うように、人間は途方にくれると保守的、受動的な姿勢をとりがちだからである。 普段の振る舞いを変えるよう人々を説得するためには、コロナの症状を包み隠すことなく説明する一方で、「為せば成る」の精神を人々に鼓舞していかなければならないのだ。

お手本とすべき国はニュージーランド

第二に、「厳格」になるべきなのはあくまで一時のことである、と明確にする必要がある。ルール破りの傾向があるコミュニティも、緊縮的な状況に終わりが見えていれば、「厳しい」対策にも協力できるだろう。迅速に緊縮体制に入れれば、迅速に脅威を減らすことができ、結果として自由も早く戻ってくるわけだ。 すべての国に必要なのは、「文化的器用さ」──すなわち、その時々の状況に合わせて、「厳しく」なったり「緩く」なったりを調整する力だ。 ニュージーランドのやり方はこの方法を体現している。ニュージーランド国民は「緩い」ことで有名だが、一方で彼らは世界的に見ても最高水準の「厳しい」対策を早い段階から実行し、規則を破りがちなメンタリティを飼いならして、新型コロナの死者数をたった26人に抑えることに成功した。

一丸となるための努力も必要

そして最後に、我々は「皆で頑張ろう!」という団結感を高めなければいけない。米紙「ワシントン・ポスト」はこのアプローチに成功した例として、ある小さな町の話を伝えている。 米バージニア州のチェサピーク湾に浮かぶタンジール島では、何ヵ月もの間、感染者が1人もいなかった。しかし感染爆発が始まると、島民は連帯して公衆衛生における緊密な協力体制を示したのだ。島民のリタ・プルーイットは、町の気風をこう表現した。 「今となっては、みんなコロナを真面目に考えてるわ。でもそれが問題だったのよね。最初、私たちは真面目に取り合わず、他人事だと思っていたわけだから」 他者への共感と協力体制、そして何よりも、正しく危険信号を受け取ることによって、この島では進化的トラップが早々に克服されたのだ。

Michele Gelfand

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社会問題

コロナワクチン接種は“垂直刺し”…なぜ日本は半世紀以上も避けてきたのか

https://news.yahoo.co.jp/articles/6819f400c0eacf47b55f5bf30d7c66108c50243f

2021/2/20(土) 9:06 日刊ゲンダイデジタル

 ようやく始まった新型コロナワクチン接種のニュースを見て「痛そう」と感じた人も多いはず。国内承認されたファイザー製は、人の腕に垂直に針を刺す「筋肉注射」で投与する。従来、インフルエンザなどの予防接種は、30~45度の角度で針を刺す「皮下注射」。筋肉注射は、日本人にとって馴染みが薄い。 ■ファイザー製は異例の“垂直刺し” 「筋肉注射は深さ1・5センチ、皮下注射は0・5センチと針の深さが違います。ファイザー製ワクチンは筋肉注射を前提に開発され、厚労省はそれを承認しました」(厚労省医薬品審査管理課)  日本で筋肉注射が“マイナー”になった理由は約60年前にさかのぼる。1962年、解熱剤や抗菌薬の筋肉注射を受けた乳幼児が「大腿四頭筋拘縮症」や「三角筋拘縮症」などの副反応を発症。責任を追及する訴訟にまで発展した。ハーバード大学院卒で医学博士・作家の左門新氏(元WHO専門委員)が言う。 「被害者の多くは大腿四頭筋拘縮症で、太ももの筋肉の組織が破壊され、生涯、歩行困難になった人もいました。日本小児科学会などが注意を呼びかけた結果、その後、インフルなどのワクチン接種は皮下注射にするよう、国内の製薬会社が方針を変更しました。日本の医学界が背負ったトラウマのようなものです。その結果、同じ原理で作ったワクチンが海外では筋肉注射、日本では皮下注射と異なる扱いになったのです」  日本の医療従事者は筋肉注射に不慣れと思いきや、さにあらず。入院患者の治療には採用しており、医師らが接種に抵抗を覚える心配はない。また、筋肉注射は皮下注射より、抗体の効果が10%高いことも分かっているという。 「以前、米国の駐日大使館でインフルの予防接種をした際、白人職員の皮下脂肪が厚いことにビックリしました。日本人の2倍はあったでしょう。とはいえ、日本でも肉が厚い肩の三角筋に注射するので、針が1・5センチ入っても骨に刺さる心配はありません。ただ、深く入るので、皮下注射より多少痛みを感じると思います」(左門新氏)  感染防止のため、痛みに耐えるしかない。