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ワクチン接種翌日に71才男性が心筋梗塞で死亡「関連性なし」に遺族疑問

https://news.yahoo.co.jp/articles/9c54c735bfed8ae1844bafe5a7ad5cb15708b698

2021/7/3(土) 16:05配 NEWSポストセブン

「とにかくワクチン接種を」と国は大号令をかけている。だが、その裏では「350人超」という少なくない数の人が、副反応の疑いで亡くなっている現実を、新聞もテレビもほとんど報じない。 【写真】病名:心肺停止状態、症状:意識障害 などが、点や跳ねが繋がった大きさバラバラの文字で書かれた寛二さんの入院診療計画書。他、絵画の前に立つ寛二さん(生前)も

「夜ご飯のときに『おいしい』と言ってくれたのが、私に向けた最後の言葉になってしまいました……」  神奈川県川崎市在住の小倉寛二さん(仮名)が、モデルナ社製のワクチンを接種した翌日の夜に急死した。71才だった。  6月10日に亡くなり、まだ悲しみの淵から抜け出せない中、寛二さんの妻(66才)が亡くなった日のことを語る。 「20時半頃のことでした。いつもは寝る前に焼酎のウーロン茶割を1杯飲むんですけど、あの日は3口ほど飲んだだけで、あとは残していました。それから布団を敷いて、『トイレに行ってくるわ』と言ったきり、ちっとも戻ってこない。どうしたのかなと思って様子を見に行ったんです」  妻がトイレに向かうと、そこには仰向けで倒れている寛二さんがいた。 「苦しそうな様子などはなく、最初は寝てるのかと思って“こんなところで寝たら風邪ひくよ”って声をかけたけど反応がなくて。よく見てみたら口から泡を吹いていたんです。  慌てて救急車を呼び、“寛二さん! 寛二さん!”って必死に叫び続けました。起きると信じて“こんなところで寝たらだめだよ!”と呼びかけたけど、反応はなく、このまま寛二さんがいなくなるんじゃないかと思うと怖くて……」  ほどなくして救急車が到着したが、寛二さんはすでに心肺停止の状態。心臓マッサージやAEDによる救命処置が施され、搬送先の病院でも手を尽くされたが、息を吹き返すことはなかった。  突然の夫の死に対し、悲しみ以外にも、別の感情が湧いているという。 「それまで生活習慣病の薬はのんでいたけど、死ぬような状況じゃ全然なかった。それが、ワクチンを打った翌日に突然こうなった。ワクチンしかないと思うんですよ」  妻の証言をもとに、接種した日から死の直前までを振り返る。寛二さんと妻が夫婦揃って川崎市内の大規模接種会場「NEC玉川ルネッサンスシティホール」を訪れたのは、亡くなった日の前日、6月9日午後2時頃のことだった。 「広い会場にいくつも接種ブースができていて、密になることもなくスムーズにワクチンを打ってもらえました。ただ、夫はすぐに腕が痛くなったようで、15分間の待機時間の間、ずっと『腕が痛いわ』と言っていました。私もちょっと痛みを感じたので、ふたりして『痛いなぁ』と言いながら家に帰ってきたんです」  モデルナ社製ワクチンを接種した後に腕に痛みが出ることは「モデルナ・アーム」と呼ばれ、よく起こる副反応として世界中で報告されている。

 翌朝、妻の腕の痛みは治まっていたが、寛二さんは腕が上がらないほど痛みが増していた。とはいうものの、腕の痛み以外は体調に大きな変化はなく、ふたりは夕食の時間を迎える。 「夫は、食欲もありました。『里芋の煮っころがしが食べたい』と言うので、アジの開きと一緒に食卓に並べました。仕事を引退してから食事量は少なくなっていましたが、あの夕飯では『おいしい、おいしい』と言ってアジを2匹も食べていました」  寛二さんは、3年前に仕事を引退するまで、大工として朝早くから夜遅くまで働きづめの毎日だった。川崎市内の2DKのアパートで過ごす、夫婦ふたりのゆっくりとしたリタイア生活は、3年間で突然幕を閉じる。 「夫は本当に優しい人で、周りから羨ましがられるほどでした。スーパーに買い物に行くのも、どこに行くのも一緒。本当に幸せな毎日でした。藤井聡太くんのブームに乗っかって、将棋を久しぶりに指し始め、『ゲームで200連勝した』と言って大喜びしていました。やっと趣味に時間を使うことができ、楽しんでいるなと思っていたんです」  ワクチン接種に関しての抵抗はなかったと妻は振り返る。 「家族や周りに迷惑をかけないように、昨年から外出を控えていましたし、『早くワクチンを接種したいね』と、接種券が届くのを心待ちにしていました。だから接種券が届くと、すぐにふたりで同じ日に予約したんです。まさかこんなことになるなら打たなければよかった……」

厚労省の報告書に載っていない

 病院で死亡が確認された後、寛二さんの遺体は近くの警察署へとすぐに送られた。 「事件性はないけれども、コロナワクチンとの関連を調べたいということで、寛二さんの遺体は警察の検案に回されました」  検案の結果、死因は心筋梗塞による突然死で、コロナワクチンの副反応とは無関係だと断定された。だが、それは遺族にとって受け入れがたいものだった。寛二さんの息子が話を継ぐ。 「父は高血圧や尿酸値を下げる薬はのんでいましたが、突然死するような状態ではありませんでした。むしろ、2か月ごとに律儀に通院して、薬を処方してもらい続け、健康を保っていたという認識です。毎年きちんと健康診断を受け、大病やけがもありませんでした。だから、どうしても父の死がワクチンと無関係だとは思えないんです」

 ワクチン接種後に副反応の疑いで亡くなった人がいる場合、発生を知った医療機関は、厚労省に報告するルールになっている。  6月23日に開かれた厚労省の専門部会によれば、ワクチンの副反応の疑いがある死亡例は計355人(うち、ファイザー社製が354人、モデルナ社製が1人)。その報告書には、年齢、性別、接種日、接種回数、基礎疾患、そして接種から死亡までの詳細が記されている。モデルナ接種後に副反応の疑いで死亡した男性の報告もされているが、今回の寛二さんの死は、その報告書に書かれていない。つまり、本当はワクチン接種と関連性がないとは言い切れない翌日の急死にもかかわらず、報告書から漏れている死があるということである。  寛二さんが搬送されて死亡が確認された病院に問い合わせると、以下の回答があった。 「そうした事実があるかないかも含めて、個人情報の観点からお答えできません」  一方、接種可能の判断をした、かかりつけ医に遺族が経緯を問い合わせたところ、こう明かした。 「6月10日に亡くなられたと聞いて驚いております。約1年間担当しましたが、高血圧と尿酸値がやや高いけれども、5月に採血したときは、何も問題ありませんでした。心臓についても、過去に不調を訴えたり、私の方からカテーテルをすすめるようなこともなく、直近の心電図にも問題なかったですね」  高血圧などの基礎疾患が、心筋梗塞またはワクチン接種の副反応に、影響を及ぼした可能性はあるのだろうか。クリニック徳院長の高橋徳さんはこう分析する。 「高血圧や糖尿病の人は心筋梗塞が出やすいです。また、ワクチンが血栓症を引き起こすリスクがあるといわれていますが、その場合、高血圧だと、より血栓ができやすい。そしてその血栓が心筋梗塞を誘発するのです」

「わかるところのご案内もできかねます」

 納得できない寛二さんの遺族は、厚労省にも説明を求めたが、その対応は曖昧なものだったという。 「厚労省のコールセンターには何度も連絡しました。国はワクチン接種で副反応が出たり、亡くなったりしたときのために、『予防接種健康被害救済制度』を定めています。でも、父の件について何度問い合わせても、明確な返答はまったくいただけません」(息子)

 予防接種健康被害救済制度とは、予防接種によって後遺症が残ったり死亡したりした場合、既定の額の給付を行う制度で、新型コロナワクチンに関しても適用される。死亡の場合、4420万円が各自治体から支払われることになっている。  だが、寛二さんは検案で「副反応とは無関係」と断定されたため、このままでは救済を受けることができない可能性が高い。 「市の健康福祉局のかたとも話しました。『死亡診断書が出たら申請できます』と言われたのですが、『ワクチンとの因果関係の判断基準は市区町村ではわからない』とのことでした」(息子)  そこで、遺族は再び厚労省のコールセンターに連絡を取って判断基準について聞いたが、「こちらではわかりかねます」との答え。そこで、「では、わかる部署を教えてもらえますか」と聞くと、「わかるところのご案内もできかねます」との対応しかされず、その後も何を聞いても、機械のように同じ答えしか返ってこなかったという。  寛二さんの家族には不信感がいまも残る。 「2週間たって警察から戻ってきた夫の遺体は、もう一度しっかりと警察とは別の機関に調査してもらおうと思っています。そのため火葬はせず、いま葬儀業者に預かってもらっています。先日、夫の遺体に会いに行ったのですが、とても顔が白くなっていました。その顔を見て、“えらい男前やね”って声をかけてあげたんですが、それ以外は胸がいっぱいであまり覚えていません」  調査が終わって、火葬した後は、生前に寛二さんが話していた願いを叶えようと考えている。 「お墓は生まれ育った奈良にあって、夫は『そこに入りたい』と言っていたから、そうしてあげたいですね。早く連れて行ってあげたいとも思うのですが、遺族として死の真相を明らかにしたいという思いもあるので複雑です」  ワクチン接種後の突然の死。遺族は悲しみとともに、ひとつのことを決めた。 「2回目の接種が私には残っていますが、打ちません。打てないでしょう。寛二さんの兄弟も打つ予定だったのにやめたようです」  ワクチン接種が推奨され続ける一方で、接種後の突然死がないがしろにされている。 ※女性セブン2021年7月15日号

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ワクチン

ワクチン「完成版」の登場か…「新型コロナ系列を全部予防する『スーパーワクチン』開発中」

https://news.yahoo.co.jp/articles/bea7a4ea1adccd33dc35321bbfae0e2fb3308aa9

2021/6/30(水) 9:24 中央日報

全世界科学者が様々な種類の新型コロナウイルスを1回の接種で予防できる「スーパーワクチン」の開発に出ていると28日(現地時間)、フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。 これによると、スーパーワクチンは新型コロナの変異ウイルスをはじめ、過去20年間3回のパンデミックを起こした、いわゆる「ベータ新型コロナウイルス(betacoronavirus)」系列を全部予防することを目指す。 感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)のワクチン研究開発責任者メラニー・サヴィル氏は「われわれは『今回のパンデミックを終わらせるために何をすべきか、次のパンデミックを予防するために何をすべきか』という2つの核心質問に対応するために動いている」と話した。 科学者は今回の新型コロナが動物から発生して人に感染させる最後のウイルスになるとは思わないという見通しにより、今後も広範にわたって使用できる多価ワクチンの開発に着手した。 人に呼吸器疾患を感染させる「ベータ新型コロナウイルス」は、過去20年間3回のパンデミックを起こした。2003年香港、中国で発生したSARSコロナウイルス(SARS-CoV-1)、2012年中東で発生した中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がベータ新型コロナウイルス系列だ。 特に、新型コロナは400万人以上の命を奪うなど、SARS(700人)、MERS(850人)より被害規模がはるかに大きいうえに、18カ月が過ぎても終息せず、強力な変異株ウイルスに進化して問題が深刻だ。 現在、開発完了した新型コロナワクチンはウイルスが人の細胞に浸透する時に使うスパイク蛋白質を中和させる抗体を生成する方式で開発された。これに伴い、新型コロナウイルスも免疫反応を回避する方向に進化し、ワクチンと激しい戦いを繰り広げている。 反面、「多価ワクチン」はエピトープ(epitopes)と知らされた免疫体系を刺激するたん白質の切れを攻撃することを目指し、「進化圧力」にも変異しない部分の抗体を攻撃する。さらに、多価ワクチンは人体に抗体とT細胞の生産を刺激し、新型コロナウイルスに対する免疫反応を起こす効果もある。 ただし、多価ワクチンの開発の先行きが明るいとはいえない。科学者はヒト免疫不全ウイルス(HIV)が数十年間変異を起こしてきたため、ワクチンを開発することに失敗した。インフルエンザにも「スーパーワクチン」はまだない。毎年アップデートが必要な理由だ。 サヴィル氏は人工知能(AI)と機械学習技術を動員して多様な新型コロナウイルスから保護する抗原を探していると伝えた。 各国の製薬会社も乗り出している。多価ワクチンを開発している欧州の製薬会社ベロセラピューティクスは今年末まで臨床試験を始めることを希望していると明らかにした。カナダのエントス製薬のジョン・ルイス最高経営者(CEO)は機械学習技術を利用して多価ワクチンを開発していると伝えた。

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ワクチン

モデルナ副反応0.19% 大規模接種の20万人調査 自衛隊

https://news.yahoo.co.jp/articles/98e8f19af7e2895f0896126a8fb9126a077b10d9

2021/7/2(金) 16:28 JIJI.com

 自衛隊中央病院は2日までに、自衛隊が運営する東京の大規模接種センターで米モデルナ製新型コロナウイルスワクチンを接種した高齢者のうち、30分以内に副反応が見られたのは0.19%だったとする調査結果をまとめた。    調査は5月24日から6月15日までに1回目の接種を受けた65歳以上の男女20万8154人を対象に行った。平均年齢は69歳。  その結果、395人に副反応が確認された。症状ではめまいやふらつきが98人と最も多く、動悸(どうき)が71人、じんましんなどが58人だった。重いアレルギー反応のアナフィラキシーは確認されなかった。  発症したのは7割が女性で、甲状腺の病気やぜんそく、がん、食べ物や薬のアレルギーがある人に症状が出やすい傾向があった。 

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ワクチン 社会問題

米国でワクチン接種拒否選手へ猛非難「チームを危険にさらす」「東京に行くべきではない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/6fde7f2d9475ddf22049b3b37a3e29c0290d9d6e

2021/7/2(金) 16:47 東スポWeb

 東京五輪参加選手の新型コロナウイルス接種拒否が、思わぬ波紋を広げている。  米紙「カンザスシティ・スター」は、体操女子米国代表の補欠となった17歳のリアン・ウォンが、ワクチン接種を受けていないことを公表後、ひどい攻撃を受けたことを報道した。  未成年のウォンは科学者である両親の考えで、ワクチンを接種しないことを選択。すると「チーム全体を危険にさらしている」「チームと一緒に東京に行くべきではない」とネット上で批判を受けたという。ウォンの母親は「彼女は不当に扱われていると思う。IOCも米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)もワクチン接種を義務付けていない。ワクチンを打つかどうかは私的な問題だ」と話している。  米体操女子では、負傷者やコロナ陽性者が万が一出た場合を考え、通常の倍となる4人補欠選手を選んでいる。同紙は、「補欠選手もシモーネ・バイルスら代表選手も同じ行動を取るため、コロナから身を守るワクチン接種を補欠接種にも望むことは理にかなっている」と指摘。一方で「開催国にもかかわらず、ワクチン接種率が驚くほど低い日本で行われるのに、IOCはワクチン接種が義務ではない」とルールの壁に言及した。  ウォン以外にも米国で一部の選手はワクチン接種をしないと想定されている。〝穴だらけ〟と高名な科学者から指摘されまくりの東京五輪コロナ対策だけに、ワクチン接種、非接種選手を巡る複雑な問題は続きそうだ。

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ワクチン 社会問題

「ワクチン接種者が周囲に病気を撒き散らす」「接種で麻痺が起きる」誤情報が拡散。専門家の見解は?

https://news.yahoo.co.jp/articles/73ffeabcc020941733e33cc85ea4645f900af416

2021/7/2(金) 11:02 BuzzFeeDJAPAN

新型コロナウイルス感染症について高い感染予防・発症予防・重症化予防効果が確認されている新型コロナワクチン。医療従事者への優先接種を経て、高齢者、さらには一般への接種もスタートしている。そのような中、ネット上ではワクチンに関する誤情報や不正確な情報が拡散されている。BuzzFeed Newsは、日米の専門家などによって運営されている新型コロナウイルス感染症やワクチンに関して正確な情報を発信するためのプロジェクト「こびナビ」協力のもとファクトチェックした。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】 【画像】新型コロナワクチンにマイクロチップや劇薬?接種で遺伝子組み換え?広がる誤情報を検証しました

(1)「ワクチン接種者が周囲に病気を撒き散らす」

noteで公開されている記事の一部

《ワクチン接種者が周囲に病気を撒き散らす。これは陰謀論でも推測でも何でもなくて、ファイザー社の治験文書にはっきり書いてある。》 《ワクチンが感染症を防ぐどころか、むしろ感染症の誘因ではないか、という事例はいくらでもある。》 《効果がない、のではない。原因なんだよ。》 《コロナワクチンは、普通に死にますから。》 兵庫県でクリニックを経営する内科医が自身のnoteにこのような情報を掲載している。しかし、この主張は誤りだ。 このnoteの記事はFacebookで1800回、Twitterで3300回以上シェアされている。また、note上では3000回の以上「いいね」が集まっており、誤情報が拡散されている状態だ。 「こびナビ」の専門家はこの情報について、次のように指摘する。 「ワクチンが感染症を防ぐどころか、むしろ感染症の誘因ではないか、という主張は明らかに誤った情報です。記事の中ではワクチン接種者が、周囲に病気を撒き散らすことが『ファイザー社の治験文書にはっきり書いてある』としていますが、このような記載は一切ありません」 記事中には、臨床試験(治験)文書であるとして画像も添付されている。しかし、この文書は臨床試験の「実施計画書」であり、21日間隔をあけて接種することや0.3ml接種するといった規定が守られなかった場合の報告基準などが記載されているものだ。 「このファイザー社のmRNAワクチンの臨床試験の実施計画書はSNSなどを中心に、誤った言説の拡散によく利用されています」と「こびナビ」の医師は語る。

ワクチンによって感染症が引き起こされる根拠としてnoteに引用されている「実施計画書」では、「妊娠中に曝露が起こった場合」の報告基準が記載されている。 ここにおける「曝露」とは、ワクチンの薬液を吸入することや触れることなどを指す。 基準自体は、臨床試験に参加したワクチン接種者もしくはパートナーが妊娠した場合、ワクチン接種をしていなくとも曝露があった後に妊娠が判明した場合には、妊娠の経過や胎児の経過を観察するためファイザー社に連絡をすることを求める内容となっている。 「この文章は、mRNAワクチンではない薬剤の臨床試験でも、妊婦を対象から除外する場合に使用される『定型文』です。実際には『環境からのワクチン薬液への曝露』があっても、ワクチンの仕組みからは妊娠経過や胎児に悪影響を及ぼす可能性はほぼ考えられません。しかし、妊婦を除外した臨床試験を実施するために、このような妊娠経過をみるための手順が整備されていました」 臨床試験において多用される「定型文」であるにも関わらず、この記述がワクチン接種によって感染が引き起こされるという主張に利用されている。 「この定型文では、例えばこのような場合には報告してよい、と例示しているに過ぎないのですが、noteの記事では、あたかも接種者から曝露されることで健康被害があった症例があるかのように書かれています。明らかに誤った引用で、ワクチンへの不安感や恐怖を与えるものです」 「接種した人への接触や吐いた息を介して、他者の健康に悪影響を及ぼすという主張は、このプロトコルの『定型文』を悪用した誤情報です。なお、この実施計画書の基準に従い、ファイザーの臨床試験中に妊娠した方の経過が確認されました。妊娠していた12名の方の妊娠経過や赤ちゃんの経過に異常は認められていません」

(2)「ワクチン接種が麻痺を引き起こす」

Getty Images

noteでの内科医の記事には「ワクチン接種者が周囲に病気を撒き散らす」という主張とあわせて、新型コロナワクチンが麻痺を引き起こすという情報も、「被害」を訴える人のツイート画像とともに掲載されている。 しかし、この情報は事実ではない。 「こびナビ」の医師は、「現時点では新型コロナワクチンが神経の『麻痺』を引き起こすという報告はありません」と語る。 「記事では、『以下、コロナワクチンの被害』として、ペンシルバニア州の女性とナッシュビルの女性の麻痺が取り上げられています。引用している画像の中にも、『No Medical Confirmation the Vaccine is Related』(ワクチンと関連しているかは確定的ではない)と書いているものの、明らかに誤解を与える書き方をしています」 「臨床試験において、ファイザー社のワクチンを接種した人に『ベル麻痺』という顔面神経の麻痺が起きたという事例が4例報告されていますが、これも自然発生率と比べ特に高いとは言えません。また、その後の検証ではmRNAワクチンによって『ベル麻痺』が起きやすくなるとは言えないとする研究結果も発表されています」 また、ワクチン接種によって「心臓発作」が起きるという情報もnoteに出ている。 これは正確と言えるのか。 「若い人には『心筋炎』という心臓の筋肉の炎症が稀に起こることがあるとアメリカやイスラエルなどで指摘されており、これとワクチンの因果関係が現在精査されている段階です」 日本国内で5月30日までにファイザー社製のワクチンを接種した人の数は約976万人。そのうち20代から60代の男女7人が接種後に心筋炎などを起こしたことを厚労省も報告している。 しかし、「ワクチンを接種した人には、接種していない人と比べて心筋梗塞や心臓の突然の停止などのいわゆる『心臓発作』(なお、この言葉は実際の医療現場ではあまり使わない)が高い頻度で起きるということは報告されていない」「現時点でワクチンの副反応として心臓の突然停止があるとは考えられていません」と、こびナビの医師は強調する。 「多くの人への接種が進んではじめて明らかになってくる稀な副反応があることは当然ありますが、その情報は非常に透明性が高いのが現実です。また、ワクチン接種後にみられている心筋炎については軽症例が多いことも重要です。新型コロナウイルス感染症自体で心筋炎を起こす可能性もあり、感染した際のリスクと比較すれば、ワクチン接種による心筋炎のリスクは低いと言えます」 BuzzFeed Newsはこうした情報をnoteで発信する内科医に5月22日に取材を申し込み、その後複数回にわたって接触を試みた。しかし、取材に応じることはなかった。

こびナビ監修者:ハーバード大学医学部助教授・マサチューセッツ総合病院小児精神科医 内田舞氏、ベイラー医科大学・テキサス小児病院 池田早希氏、ワシントンホスピタルセンターホスピタリスト・ジョージタウン大学医学部内科助教 安川康介氏、こびナビ 岡田玲緒奈氏、こびナビ 峰宗太郎氏 — BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。 ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。なお、今回の対象言説の一部は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にしました。 また、新型コロナウイルス感染症やワクチンに関する正確な情報を提供する日米の専門家によるプロジェクト「こびナビ」とも連携し、新型コロナ感染症とワクチンに関する誤った情報、不正確な情報についてファクトチェックしています。 正確:事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。 ほぼ正確:一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。 ミスリード:一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。 不正確:正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。 根拠不明:誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。 誤り:全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。 虚偽:全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。 判定留保:真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。 検証対象外:意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。

千葉雄登

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ワクチン 社会問題

【パックンコラム】コロナワクチン効果の「ただ乗り問題」にご用心

https://news.yahoo.co.jp/articles/ad8940de4c4fa0534989d9c36d6bf2d456ef39d0

2021/6/29(火) 18:19 NEWSWEEK

<欧米の議論では頻出する「フリーライダー問題」は日本ではなぜかあまり聞かれない。でもコロナワクチンの接種を考える上では検討すべき重要課題だ>

フリーライダー問題によって日本で必要なワクチン接種率が達成されないおそれもある Rodrigo Reyes Marin/Pool/REUTERS

先日、友人とある話題について議論しているときのことだ。「これはさまざまな課題の解決を妨げるいわゆる『ただのり問題』だから」と、僕はいつもの偉そうな感じで主張した。すると、友人は「横尾忠則ですか」と、真顔で聞いてくる。  【動画】引き取り手のない遺体を埋葬しているNY市ハート島とは? 笑い涙が止まってから、ちょっと考えて気付いた。当然通じると思って使っていたが、日本では「ただ乗り問題」をあまり聞かない。つい癖で日本語訳した僕が悪いかもしれないが、「フリーライダー問題」も横尾先生の知名度には負けるのだろう。すみませんでした。 ただ乗り(フリーライダー)問題というのは経済学が注目する市場の失敗の一つ。一部の人が対価を払いながら、ほかの人が何の貢献もせずに同じ恩恵を受けることだ。小規模な例でいうと、教室のゴミを拾い、机を拭き黒板を消す学生が一人いれば、ほかの学生達は掃除をしなくてもきれいな環境で学べる。彼らはただ乗りしているわけだ。 大規模な話だと、エネルギーシフトを果たし、二酸化炭素(CO2)排出量の制限を実施し、国民の生活を犠牲にするほどに気候変動対策を一生懸命やる国をよそに、違う国が化石燃料をバンバン燃やし続けるならば、それもただ乗りとなる。この状態は運賃を払わずに電車に乗るのと一緒だからフリーライダーという。念のために記しておきますが、いろいろ貢献している忠則さんはただ乗りではない。 <ただ乗りが世界を蝕む> この用語は、フワちゃんのテレビ出演回数に劣らぬ高頻度で欧米の議論に登場する表現だ。税金を納めないのは公的サービスのただ乗りだ!保険にも加入せず救急救命室で無料の診察を受けるのは医療制度のただ乗りだ!血も流さず金も出さず、国際秩序の安定に協力しない国は安全保障のただ乗りだ!別居する親のアカウントの利用はネットフリックスのただ乗りだ!と、大小さまざまな案件で使われる。 残念ながら、ただ乗りは、本当はただではない。結局ほかの人がその分も負担することになる。全員が運賃を払わずに電車に乗ることになったら、運営は成り立たない。鉄道会社は破産し、電車は運行できなくなる。 同様に、全員が税金を納めないようになったら、道路も整備されなくなり、事件があっても警察は来なくなる。しばらく資金繰りはなんとかするかもしれないけどね。ピーポ君人形を質屋に流したり。でも、ただ乗りが増えるとシステム全体が長持ちしない。 また落とし穴になるのは、ただ乗りしている人がいると「不公平だ!」と怒る人もいれば、「だったら僕も!」と、運賃を払わなくなる人も増える傾向があることだ。隣のお店が営業の時短要請に応じないなら、こっちも応じない、と。知り合いが海外旅行しているなら、「自分だけ」が環境問題を意識して日光の東武ワールドスクウェアで休暇を済ますことをやめよう、という具合に。TWSも大好きだけどね。 つい最近だと、世界6位の大富豪ウォーレン・バフェットが増加した資産額のわずか0.1%しか連邦所得税を納めていないのに、と普通に納税することをばかばかしく感じているアメリカ人は多い。というのも先日、バフェットは2014年から2018年まで240億ドルもの資産増加を記録しながら、わずか2400万ドルほどしか所得税を納めていないと、非営利メディアのプロパブリカが報じたのだ。僕は酒税だけでもそれぐらい払っている気がする。 さらに、残酷な事実だが、ただ乗りで大きな恩恵を受けている人の分の負担を、恩恵をあまり受けていない人が負うこともある。一番わかりやすいのは地球温暖化だ。化石燃料を燃やして発展してきた上、今も消費社会で莫大な量の温暖化効果ガスを排出しているのは先進国。しかし、CO2排出量を低く抑えられながらも最も気候変動の脅威にさらされているのは途上国なのだ。お金持ちが乗っているフェラーリのカーローンを隣町の貧困者が支払っているような状態だ。 現にキリバスやツバルなど南太平洋の島国は、CO2排出量が先進国の10分の1以下だが、温暖化による海面上昇で水没する危険性が指摘されている。僕の夢の一つは世界の全ての国を訪問することだが、急がないとこれらの国は地図から消えてしまうかもしれない。長々とコラムを書いている場合じゃない!

<ワクチンリスクは「運賃」>

では、本題!(はい、いまさらです)。 なぜ先日友人とこの話になったかというと、ワクチン接種でこそただ乗り問題が顕著になっているからだ。新型コロナウイルス感染症は全国民のうち60~70%がワクチン接種をすれば、集団免疫ができるか、できなくても大規模な感染拡大を防ぐ予防効果があるとみられている。 そのレベルに至れば、接種した人のおかげで、していない人も含めてほぼ全員の健康も命も守られ、従来の経済活動ができるようになる。ただ乗り問題が最も生じやすいような状況だ。 ワクチン接種をせずに同じ恩恵を受けられるなら、接種しない人が現れる。そんな人を見るとまた違う人が「じゃ、私も」と、接種しない人数が徐々に増える。それが一定数を超えると、せっかくの集団免疫が失われる。そんな悪循環のシナリオも十分考えられるのだ。ひび一つでダムが崩れる。駐輪禁止区域に一台でも止まると、自転車が異常繁殖しているのかと思うほど一気に増える。それと一緒だ。 もちろん、慎重な人のお気持ちは理解できる。今回のワクチンは、緊急事態なので省略した過程で国に承認されたものである。まだ発覚していない副反応などのリスクはある。この指摘は間違いない。できるならその未知のリスクを負いたくないと思うのは当然だ。しかし、今回は、そのリスクが「運賃」だ。人口の6~7割の人だけが負担すれば、あとの皆さんは気にしなくていいと、僕は思わない。 ワクチンの成分に対するアレルギーを持つ人など、健康上の特別な事情で接種できない人は免除されるべきだが、基本はワクチン接種をしないという選択をとる人は、今後もマスクの着用、ソーシャルディスタンスの厳守、イベントの不参加、会食の自粛などなど、ワクチンと同レベルの感染予防策を実施する責任はあると思う。 <ただ乗りの国じゃないよね?> もちろん、毎日予防策を徹底し、スポーツ観戦や外食のたびにPCR検査の陰性証明を提示するならば、ワクチンを接種する必要はないでしょう。これは未接種だからと、差別するわけではない。逆に、誰にも差別されないように、責任のある行動をとってもらうのだ。コロナと戦う「ワンチーム」のメンバーとしてこれが公平な扱いではないか。 イタリアのように、医療従事者のワクチン接種を義務付ける国もあれば、全国民の接種義務を検討する国ある。オーストラリアや韓国など、少なくとも9つの国で国民の過半数が義務付けに賛成とする世論調査の結果もある。(日本の賛成率はおよそ50%)。もちろん、義務化する政策も考えられる。 しかし、僕は日本でその必要はないと、確信している。そもそも「ただ乗り問題」は日本で知られていないのも、皆さんが国民として、ワンチームのメンバーとしての意識を持って行動しているからではないでしょうか。 考えてみれば、日本では小学校の掃除はクラス全員でやるし、貧富の差はあるとはいえ、相続税で資産の再分配を目指している。そういえば、電車にただ乗りする人も少ない。不正乗車をするとしても「キセル」して少し運賃を払うのが主流らしい。時々「給料泥棒」という生産性の低い社員の話は聞くし、芸能界でも時々「ギャラ泥棒」は出てくる。でも、基本的にはほぼ100%の国民がほぼ100%頑張ってくれていると、僕は見る。(少し夢見がちな50歳だが。) そのおかげでロックダウンなしでも大きな国のなかで異例なほど感染を抑え込めているし、そのおかげでワクチン接種も行き渡ると、期待したい。日本はただ乗りの国じゃないから!もちろん横尾忠則さんの国なのは間違いないけど。

パックン(パトリック・ハーラン)

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ワクチン 社会問題

ワクチンが怖い人にこそ読んでほしい──1年でワクチン開発ができた理由

https://news.yahoo.co.jp/articles/fa0b8c10b08be9d084f0fd6f0e3f232758e44869

2021/6/29(火) 17:51 NEWSWEEK

<「知らないから怖い」ことによって、ワクチン忌避が起こる。正確でフェアな情報を共有するには何ができるのか? 論壇誌「アステイオン」94号「新型コロナウイルスワクチン事情」より>

写真はイメージです janiecbros-iStock.

<通常、ワクチン開発には10年かかる> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生から1年以上が経過した。筆者が住むアメリカでの死者数は世界最大で、すでに50万人以上の命が失われている(編集部注:2021年6月現在では60万人を超えている)。【新妻耕太(スタンフォード大学博士研究員)】 【動画】7歳男児の口内から526本の歯! この凄惨な状況の中、アメリカでは人々の予想を上回る早さで安全性と効果の高い新しいワクチンの開発に成功し、3月中旬時点で国民の2割(7000万人以上)が少なくとも1回のワクチン接種を済ませた(編集部注:2021年6月現在では1億7734万人、人口の53.9%が1回目完了)。日本でも医療従事者に対するファイザー・ビオンテック社のmRNAワクチン接種が開始され、1カ月ですでに約50万人が少なくとも1回の接種を終えた(編集部注:2021年6月現在では2401万人、人口の19.1%が1回目完了)。 ワクチンは集団免疫を成立させて感染症にかからないようにする、もしくはかかっても重症化を防ぐ効果のある予防薬である。通常1つのワクチンが開発されるには約10年の期間がかかるといわれてきたが、最初の新型コロナウイルスワクチンは新技術を使用したことでわずか1年で開発された。なぜ、それが可能だったのか。 新型コロナウイルスは複数のタンパク質・タンパク質の設計情報を記録する遺伝情報物質(RNA)・脂質の膜の3点セットでできている。ウイルスは我々の体の中で大量に増えるのだが、実のところウイルスは自分の力だけで増えることができず、我々の体を構成する細胞の中に侵入して、そのシステムをハッキングして増えている。 細胞内への侵入には表面にあるトゲの構造体(スパイクタンパク質)をドアのロックを外す鍵のように利用するのである。増えた大量のウイルスが細胞外へと脱出する時に細胞は破裂するようにして死ぬ。これが繰り返されることで組織に障害が起きて様々な症状を呈する。 一方、ウイルスの感染に対して私たちの体は免疫システムで対抗する。免疫とは病気から体を守るシステムのことを指す(疫〔感染症〕を免れるが語源)。「二度がかりなし」が免疫システムの代表的な特徴で、おたふくや水ぼうそうに一度かかれば二度とかからなくなるのは免疫システムに記憶機能がついているためである。免疫細胞は私たちの体を守るいわば軍隊のような存在で、二隊構成になっている。

<第二隊の獲得免疫は、スペシャリスト集団>

第一隊の自然免疫は迅速な対処を得意とする。ウイルスによる組織障害を察知した自然免疫細胞達は現場へとただちに急行し炎症を誘導する。例えば怪我をした時、患部が赤く腫れ熱をもって痛むのは免疫細胞による炎症によって引き起こされる反応だ。炎症は自然免疫細胞を鼓舞する(活性化する)効果があり、活性化した自然免疫細胞は感染細胞の死骸を食べて掃除する。この第一隊でもウイルスの撃退ができなかった場合に第二隊が動きだす。 第二隊の獲得免疫は、相手に合わせた攻撃を行う戦闘のスペシャリスト集団であり、先述した免疫記憶もつかさどる。私たちの体の中にはあらゆる侵入者にそれぞれ対応できる獲得免疫細胞達があらかじめ備わっており、その時侵入してきた敵に対応できるスペシャリストのみが大量に分身して(増殖して)出陣する。 この選ばれたスペシャリストの細胞が増える現象は基本的にリンパ節で起きる。感染によってリンパ節が腫れるのは獲得免疫細胞の増殖によるものなのだ。今では一般におなじみとなった存在である「抗体」を分泌するB細胞も獲得免疫細胞の一種である。 この抗体はY字型をしたタンパク質で、上部先端の二カ所を使ってターゲットに強力に結合する。抗体がウイルスのトゲ(スパイクタンパク質)に上手くまとわりつけば、ウイルスが細胞に入る能力を失わせることができる(中和)。ウイルスの撃退に成功すると、先ほど増えた獲得免疫細胞達は次第に数を減らしていき、生き残った少数の細胞が記憶細胞として保存される。 二度目に全く同じ病原体が体に侵入した際、記憶細胞は前回の経験に基づいて迅速に対応するので、効率よく病原体の排除ができて重症化が防げるのだ。この免疫記憶の形成を、人為的にリスクを減らして感染を模倣する形で誘導するというコンセプトで生まれた予防薬こそがワクチンなのである。 <超低温でしか保存できない理由> これまで一般的だったワクチンは主に生ワクチンと不活化ワクチンであった。どちらも病原体そのものを材料にしていることが特徴で、生ワクチンは症状を起こしにくい弱毒化株を、不活化ワクチンは病原体を薬品で殺したものを使用する。しかし、これらのワクチンの生産には病原体そのものの大量生産が必要なため、新しい病原体の工業生産技術自体を開発から行う必要があるので多大な時間とコストがかかる。 そこで、パンデミック収束のために1日でも早くワクチンを開発する上で注目されたのが、病原体そのものではなくトゲ(スパイクタンパク質)のみにターゲットを絞って免疫記憶を誘導するストラテジーである。

<SARSの経験と基礎研究の蓄積が可能にした>

しかしスパイクタンパク質の合成には大量の細胞を用意して、設計情報(遺伝情報物質)を細胞内部に届けて合成するというステップが必要で、これもなお多大な時間とコストがかかる。この背景を踏まえて白羽の矢が立ったのが遺伝情報を私たちの体に届けて、私たちの体内でスパイクタンパク質を生産し、それに対する免疫応答を誘導するmRNAタイプのワクチンなのである。 ファイザー・ビオンテック社やモデルナ社が使用しており、すでに工業的な大量生産技術が確立されていたこと、それを用いたワクチン技術の開発は10年来行われてきていたこと、新型コロナウイルスによく似たSARSの原因ウイルスの基礎研究知見が蓄積されていたことの不幸中の幸いが重なった結果、驚くほど素早く開発が行われた。 さらにアメリカではトランプ前大統領がワープスピード作戦で製薬会社に対する莫大な投資を行ったこと、アメリカの感染大流行により臨床試験の進行が早かったこと、いくつかの段階の動物実験や臨床試験を同時並行で行ったこと、ワクチンに関する審議を優先的に行ったことにより開発からたった1年で緊急使用許可が下りるに至った。 これは歴史的な快挙であり、私たちはパンデミックに対抗する際の新しい切り札を得たと言える。このスキームは今後現在のワクチンが効かなくなってしまうような変異ウイルスが現れた場合や、また新しい感染症が発生した時にも第一手になるだろう。 そのmRNAは非常に構造が不安定な物質なので、接種後数日間もたてば分解されて消失する特徴を持つ。さらにはmRNAが私たちの遺伝子を組み替えることは原理上万に一つも起こり得ないので、子や孫といった次世代の影響を心配する必要もない。一方で構造の不安定さから超低温での保管が必要となる短所もある。さらにmRNAワクチンは十分な免疫の誘導に2回の接種が必要なため、冷凍設備を整えにくい新興国の人々へ届ける上での大きな障壁となりうる。 一方でアメリカでは2月27日にジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した1回の接種で済み冷蔵庫での保管が可能なアデノウイルスベクターワクチンの緊急使用許可が出された。これは私たちの体に病気を引き起こさないアデノウイルスにスパイクタンパク質の設計情報を搭載し、私たちの細胞に輸送するタイプのワクチンである。このように複数の種類のモダリティー(様式)を持つことが、1日も早く地球全体での集団免疫を成立させるために必要となる。

<「知らないから怖い」を解消するために>

<「反ワクチン」と科学・医療リテラシー> ワクチン忌避の問題は日本だけではなく、アメリカでも深刻で共和党支持者に偏りがあると言われる。トランプ前大統領は新型コロナウイルス対応において多くの誤りをおかしたとの批判を浴びてきたが、最近彼がワクチンを接種したことが報道され、ワクチン接種を奨励するような発言をしているのも事実だ。まだ問題は山積しているが、新政権とCDC(米疾病予防管理センター)を中心に国を挙げてワクチン接種を奨励している様子が見られる。 日本においては、河野太郎議員がワクチン接種担当大臣に指名されるなど接種奨励に積極的な姿勢がみられ、首相官邸や厚生労働省からの情報発信も充実してきた。不安を煽る報道により接種率が激減してしまったHPV(子宮頸がん)ワクチンの二の舞を起こしてはならないという思いから専門家たちが結集して情報発信する「こびナビ」「コロワくんLine bot」などの活動が生まれてきたことは大変心強い。 筆者はワクチン忌避の問題の解決には幼少期からの科学教育を充実させて「知らないから怖い」を自ら解消できる科学・医療リテラシーを育む必要があると考えている。ワクチンは病気になる前に使用する予防薬であることから、打つことによるメリットがデメリットを必ず上回るものしか承認されない。不安を煽ったり否定するのではなく、フェアで正しい情報を各々が手に入れることで正しい判断ができる環境が整うことを心から祈っている。

当記事は「アステイオン94」からの転載記事です。

新妻耕太(スタンフォード大学博士研究員)