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新型コロナワクチンはむしろ感染を拡大させる危険が…日本人研究者が警鐘

https://news.yahoo.co.jp/articles/ec7ec5ac7ec6fbb1c87baeb4eff985d8a7563e76

2021/1/16(土) 9:26 日刊ゲンダイデジタル

 新型コロナウイルスのワクチン接種が2月下旬から日本でもスタートする。現時点で承認申請が行われているのはファイザー社のワクチンで、当面は16歳以上が対象になる予定だ。ワクチンによって集団免疫が獲得できれば、感染拡大に歯止めがかかると期待されている。多くの人がワクチンを接種すると感染しない人が増えて、結果的に周囲の人たちも感染する機会が減って感染拡大が収束する――という考え方だ。  しかし、今回のワクチンが感染拡大を抑制できるかは未知数で、むしろ感染を広げてしまう危険がある。  ファイザーの臨床第3相試験では約95%の有効率が確認された。これは、参加した約4万人を「ワクチンを接種する2万人」と「偽薬(プラセボ)を接種する2万人」に振り分け、新型コロナウイルス感染症を「発症した人」の人数を数えて比較した数字である。  接種した2万人のうち発症したのが8人、偽薬を接種した(ワクチンを接種しなかった)2万人のうち発症したのが162人だから、ワクチンを接種すれば接種せずに発症した162人を8人に減らせる効果は期待できる。しかし、カウントされたのはあくまでも「発症した人数」で、ワクチンを接種して発症しなかった人の中には、感染しても発症しない無症状感染者が含まれていた可能性があるのだ。  米国の研究機関で遺伝子研究に携わってきた岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏は言う。 「新型コロナウイルスは無症状でも感染させてしまうのが大きな特徴です。ワクチンを接種した人が、『これで自分は感染しないし、人にうつす心配もない』と過信して、手洗い、マスク着用、3密回避といった感染対策をやらなくなり、大人数での飲み会に参加するなどして他人と濃厚接触する人が増えると、感染を拡大させてしまう恐れがあります」 ■ワクチン効果で作られる抗体が不十分だと…  また、ワクチン接種で作られる抗体の量や効果も未知数なため、どこまで感染を抑制できるかどうかがはっきりしていないという。 「今回のワクチンは『mRNAワクチン』と呼ばれるまったく新しいタイプのワクチンです。新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入する時に使うスパイクタンパク質(Sタンパク質)を作り出す遺伝情報を粒子に封入して投与し、血液内にSタンパク質を作って抗体を作り出す仕組みです。ただ、接種によってどれくらいの量の抗体が作られるか、有効な期間がどれくらい持続するかはっきりわかっていません。体内で迅速に十分な量の抗体が作られれば、発症だけでなく感染も予防できます。しかし、抗体の量が不十分だと、発症は防げても、鼻や喉などの粘膜に感染を広げてしまう程度のウイルスを保有している人が出てくる可能性もあります」(神崎氏)  現段階では、ワクチンはあくまで「発症」を防ぐ効果が期待できるだけで、感染しなくなったり、他人にうつしたりするケースがなくなるわけではない。ワクチンを接種すれば何の制限もなく行動できるようになるという考えは大きな勘違いで、手洗い、マスク着用、3密回避といった感染対策は欠かせないのだ。

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感染者は米国の30分の1以下…それでも“病床数世界一”の日本で医療崩壊が起きるワケ

https://news.yahoo.co.jp/articles/bd5fc43cbf48ae728a636311b6da7cb8d82f0c15

2021/1/15(金) 11:12 文春オンライン

 2020年の末から日本を襲った新型コロナ第三波。その勢いは止まらず、ついに1月8日から首都圏の1都3県へ、14日からは2府5県を対象に2度目となる緊急事態宣言が発出された。 【写真】この記事の写真を見る(6枚)  そして日々、増加する感染者の数とともに、「医療崩壊の寸前だ」という報道が絶えない。こうした声に疑問を呈しているのが、医療ジャーナリストでもある森田洋之医師だ。

医療現場最前線に必要な支援

©iStock.com

 いま鹿児島で介護と連携しながら地域医療に携わる森田医師はこう語る。 「確かに、新型コロナ肺炎の医療現場最前線で奮闘しておられる医療従事者の方々は、本当に大変な思いをされている。それは紛れもない事実だ。彼らには大いなる感謝と激励の言葉を送りたい」  その一方でこう指摘する。 「本当に送るべきなのは感謝や激励の言葉でなく、『適切な人員補充』や『十分な休暇』という実質的な支援だ」  森田医師がデータで明らかにしたように、日本には人口あたりでいえば世界一の病床数があり、医療機器もそろっている。看護師の数も少なくない。しかも欧米先進国と比べても、感染者数・死者数は圧倒的に少ない。そうした豊富な医療資源のある日本において、 「どうして、必死の思いで踏ん張られている最前線の医療従事者に、支援の手が回らないのだろうか」  森田医師はこう問題提起する。

日本の医療資源をデータでみてみる

 その分析や見解については、「文藝春秋」2月号へ森田医師が寄稿した記事「 日本だけなぜ医療崩壊が起きる 」を読んでいただきたいが、ここでは主に雑誌記事では掲載できなかったデータのリンクを紹介していこう。  まずは記事で紹介された日本の医療資源に関するデータを確認していこう。  森田医師が分析に際してデータを丁寧に確認するのは、医学部へ入って医師になる前、経済学部を卒業していることが関係している。そこでデータを見る目が養われたことにより、目の前の現象に振り回されることなく分析ができるのだ。

他国を圧倒する“人口あたりの病床数”

 まずは日本の病床の数だが、OECDのデータによると人口1000人あたりの病床数は13.0と他の先進国を圧倒している。   https://data.oecd.org/healtheqt/hospital-beds.htm  もっとも上記の数には療養病床など、慢性期医療に利用され、新型コロナへ対応するのが困難な病床も含まれている。  では、急性期医療向けの病床はどうか。これも以下のデータが示すように、人口1000人あたり7.8と1位なのだ。   http://www.oecd.org/coronavirus/en/data-insights/hospital-beds-acute-care  また、ICU(集中治療室)など、より重症の患者を診る病床の数も厚生労働省の資料によると、決して少なくない。   https://www.mhlw.go.jp/content/000664798.pdf  MRIも人口あたりの数は世界一。   https://data.oecd.org/healtheqt/magnetic-resonance-imaging-mri-units.htm  CTもやはり人口あたりの数は世界一。   https://data.oecd.org/healtheqt/computed-tomography-ct-scanners.htm#indicator-chart

医師数は確かに少ないが……

 とはいえベッドや機材があればいいというものではない。医師や看護師がいないと医療はできないからだ。その点もOECDのデータで確認してみよう。  まずは医師数だが、人口1000人あたり2.5人。これはOECDの下位に位置する。   https://data.oecd.org/healthres/doctors.htm#indicator-chart  一方で看護師の数は人口1000人あたり11.8人と上位である。   https://data.oecd.org/healthres/nurses.htm#indicator-chart  たしかに日本の人口当たりの医師数は多くない。だから日本は「医療崩壊」の瀬戸際にあるのだろうか。  森田医師はそうした見方を否定する。なぜなら被害の規模が欧米各国よりもはるかに小さいからだ。  記事執筆時点での数字をみると、アメリカの感染者数は日本の30倍以上、死者数は40倍以上だ。ヨーロッパは国によって差が大きいが、優等生とされるドイツであっても感染者数、死者数は、それぞれ日本の12~14倍だ。  こうした状況は以下に示すアメリカのCDC(疾病対策予防センター)のデータで確認できる。   https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#global-counts-rates

コロナ下の日本医療

 ここまで紹介したような基本的なデータを踏まえた上で、新型コロナ第三波に襲われている日本の現状を見てみよう。  以下に厚生労働省が毎週、発表しているデータを示す。1月5日に公表された昨年12月30日時点での病床の状況だ。   https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000714776.pdf  これを見ると、PCR検査の陽性者数が最も多い東京都では重症患者の病床使用率が76%。軽症患者も含めた入院者の病床使用率をみると61%に達している。なるほど、この数字だけをみると「医療崩壊は目前だ」という声にも説得力がある。  しかし、ここで目を病床数に向けてもらいたい。  東京では新型コロナ感染者のために確保された病床数が4000。そのうち重症者向けは500床である。一方、日本医師会が提供する地域医療情報システムによると、東京都には一般病床が8万以上ある。   http://jmap.jp/cities/detail/pref/13  当然のことではあるが、病床があればいいというわけではない。繰り返すが医師や看護師がいなければ治療はできないからだ。また、すべての一般病床を新型コロナの感染者に向けて転用できるわけではないだろう。  だが、豊富な医療資源を抱える東京都において、新型コロナの感染者へ対応する病床を、これ以上、増やすことはできないのだろうか。

機動性のあるスウェーデン

 では日本より医療資源がとぼしく、しかも感染者数の多い国はどのように対応しているのか。森田医師が記事で挙げているのはスウェーデンの事例である。  前掲のCDC(疾病対策予防センター)のデータベースによると、1月6日の時点で、直近の30日間では感染者の規模は以下のような差がある。  スウェーデン 人口10万人あたりの感染者 1736.1  日本     人口10万人あたりの感染者 71.9 「文藝春秋」2月号において森田医師は、スウェーデン在住の医師がTwitterで紹介している資料を示している。   https://twitter.com/AyakoMiyakawa/status/1326898179539865601  これは昨年11月までの段階のデータだが、入院者の数に合わせて、ICUの病床数を機動的に増減させていることが分かる。  あわせてスウェーデン国営放送が紹介している手術件数に関するデータもみてみよう。(※Riketが全国/elektivが待機手術/akutが緊急手術 )   https://www.svt.se/datajournalistik/corona-uteblivna-operationer  このグラフが示すように、緊急を要する手術の数は大きく増減していないが、緊急ではない待機手術の数は最大で80%以上減っているのが分かる。  森田医師はそうしたファクトを踏まえて、日本の問題点を指摘する。

日本の医療制度に欠けているものとは?

「日本の医療制度に欠けているのは、病床数でも、医師数でも、看護師数でもない。臨機応変に対応する『機動性』である」  この指摘が説得力を持つのは、森田医師の体験に裏打ちされているからだ。  2009年、研修を終えた森田医師は北海道夕張市の夕張市立診療所へ飛び込んだ。のちには所長も務めている。夕張市といえば、財政破綻のために171床の市立総合病院が閉鎖され、19床の診療所になったことで、いま話題の「医療崩壊」のさきがけとされた地域である。  ところが森田医師が夕張市へ住み、データを吟味したところ、市民の死亡率は悪化しておらず、健康被害もなかった。つまり「医療崩壊」していなかったのだ。なぜ夕張は医療崩壊を避けられたのか。そのキーワードとなるのが「機動性」だ。  夕張の診療所は在宅医療やプライマリケアに注力し、高度医療や急性期医療は都市部の大病院へ依頼。他の地域や医療機関との機動的な医療連携があったからだ。  そうした取り組みを実際に経験してきた森田医師だけに、「日本の医療に足りないのは機動性だ」と喝破することができるのだ。  その機動性も、病床やスタッフを機敏に増減させる「縦の機動性」と、医療資源を不足地域へ移動させる「横の機動性」の2種類あるとした上で、いずれも欠如していると森田医師は指摘する。  では、他の国にはある機動性が、なぜ日本にはないのか。  その原因は決して医療の世界だけにあるわけではなく、じつは日々、日本の高度な医療サービスを享受している私たちとも大きく関係している。  森田医師が指摘する詳しい内容は「文藝春秋」2月号および「文藝春秋digital」掲載の「 日本だけなぜ医療崩壊が起きる 」で読んでいただきたい。そして、その問題を解決するための議論をはじめることが、いま奮闘している医療従事者の長期的な支援にもつながるはずだ。

「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2021年2月号

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菅首相・安倍首相の“自爆”…日本のコロナ対策、昨夏から「決定的に準備不足だったこと」

https://news.yahoo.co.jp/articles/a75fe01e26c9211da7932b674cf0fa330f8e3022

2021/1/15(金) 6:31 現代ビジネス

緊急事態宣言が拡大

写真:現代ビジネス

 1都3県への緊急事態宣言発令が、2021年の菅政権の事実上の仕事初めになった。その後1月13日には、緊急事態宣言の対象が関西・中部などの府県に広がり、年が明けても新型コロナへの対応が、菅義偉政権が直面する重い課題のままである。 【写真】 新型コロナ、日本の満員電車で「クラスター」が起きない「意外なワケ」  新型コロナ感染者拡大による医療体制の逼迫で昨年末から感染抑制の優先度が高まったが、最近の菅政権の対応ついて「判断が遅く、後手に回った」などとメディアでは批判が目立ち、内閣支持率は低下傾向にある。  ただ、感染抑制と経済正常化の双方を実現させる中で、新型コロナ感染状況に応じて対応を柔軟に変えるのは当然だろう。判断が遅かったとの批判は根拠に乏しく、菅政権に批判的な野党や一部の自民党内の政治家からは、建設的な見解はほとんど聞かれない。  米欧諸国を中心に、世界各国で新型コロナの感染者数は年明け以降急増しており、そして日本と比べると、人口当たりの感染者数は米欧諸国で圧倒的に多い。変異種が広がっているイギリスでは、昨年秋から経済活動制限が続いていたが、2021年明けには全土で都市封鎖を余儀なくされ、学校が全面的に閉鎖、不要不急の外出が禁止されている。  米欧以外でも、中国やマレーシアなどの新興国の一部地域でも新型コロナ感染者が増えたため、経済活動が強く制限されている。これらと比べると、緊急事態宣言は出たが、日本における経済活動制限は緩やかでかつ私権への介入はかなり限定的と位置づけられる。  また、今回の緊急事態宣言では、2020年4月時のように広範囲な経済活動が対象ではなく、飲食店の夜間営業等に対象範囲が限定されている。もっとも、活動制限対象が限られても、主要都市部への緊急事態宣言発動によって、飲食や旅行関連消費の減少は避けられず2021年1-3月の日本経済は再びマイナス成長に転じるだろう。飲食、旅行関連で想定される消費の落ち込みによって、1ヶ月当たり約1兆円(GDP比0.2%)の経済活動が減少すると試算される。  この経済活動の減少は、広範囲な経済活動制限で起きた2020年4-6月期のGDPの10%相当の「経済活動の大収縮」よりかなり小さい。もちろん、経済活動への悪影響は、緊急事態宣言が2月中に解除されるかで変わり、春先以降まで緊急事態が長引けば年間の経済成長率が低下して、デフレリスクが高まる恐れがある。  ただ、後述するが、十分な金額の財政支出が迅速に発動されれば、仮に緊急事態宣言が長引いても日本経済への悪影響は軽微にとどまると筆者は考えている。

準備の時間はあったのに…

〔PHOTO〕iStock

 緊急事態宣言の発動は、感染抑制を最優先にした政治的メッセージという意味で妥当だろう。問題は、冬場の新型コロナ重症者増加への備えとして、2020年夏場から時間があったのにもかかわらず十分対応していなかったことである。  医療業界への財政支援と同時に、新型コロナ患者へ対応できるように医療資源を組み替えれば、コロナに備えた治療体制拡充が実現したのではないか。であれば、米欧対比で格段に少ない感染者の治療がカバーされて現在の局所的な医療逼迫が回避され、経済正常化を促す対応が続けられただろう。  この点、安倍・菅政権そして地方自治体のこれまでの対応は不十分だったと判断される。安倍前政権は、4、5月の補正予算において2兆円規模の医療機関等への臨時支援金の予算措置を行ったが、大規模な支援金が実際に支出されてコロナ患者のための医療体制拡充に果たして繋がったのか。筆者が知る限り、実際に医療機関に支給された支援金の総額そして政策効果を示すデータは存在しない。  結局、2021年1月7日の緊急事態宣言の発動に伴い、1都3県において、コロナ病床を増やした医療機関に対して、重症病床に2000万円、中等症以下に900万円と、補助金がようやく増額された。2020年に大規模な予算措置が行われても、医療機関への財政支出が政策効果を伴った形で十分には行きわたらず、コロナ対応に備えて医療資源の配分を見直すには至らなかったことを示唆している。  医療逼迫という危機が訪れてようやく必要な対応が実現したわけで、官邸と自治体首長のリーダシップが機能せず、官僚組織の不作為が招いた失政だろう。また、過去20年続いたデフレを克服できずに経済停滞が長期化する中で、緊縮的な財政政策が続き日本の医療インフラが脆弱になったツケが現れた側面も大きいと筆者は考えているが、これは過去の政権の失政の尻拭いを菅政権が迫られていることになる。  結局、感染症対策徹底と経済正常化の双方を実現するためには、医療体制拡充とワクチン接種推進を同時に整えることが前提になる。これらの最優先の政策が十分実現しない段階で、経済正常化を目指したのは、残念ながら政策の優先順位を見誤ったとの評価になる。

事業者への財政の手当ては十分か

緊急事態宣言発出後の新宿・歌舞伎町〔PHOTO〕Gettyimages

 医療体制拡充ができなかった一因は、政策効果を発揮する十分な財政政策が実現しなかったことである。同じ観点で、今回の緊急事態宣言発動によって引き起こされる経済活動抑制に対して、財政政策の対応が十分実現するかも重要になる。  営業時間制限に応じた飲食店に対する各店舗への1日当たり6万円の協力金が地方自治体を通じて支給されるが、これらの補償政策は、昨年末の第3次補正予算の中の地方政府への臨時交付金1.5兆円によって十分カバーできると筆者は試算している。  地方への臨時交付金以外に、2020年度内の執行分として5兆円の予備費が予算措置されている。これらの予算を着実に歳出すれば、個人消費の悪化を吸収することは可能だろう。ただ、2020年4、5月の補正予算で計上された、予備費や医療機関への支援金などが十分歳出されなかった経緯がある。  このため、今回緊急事態宣言が発令されても、補償金が十分支給されなかったり、あるいは広範囲な所得支援政策が見送られたりして、財政政策が不十分に止まるリスクがあると筆者は懸念している。

アメリカと比べてみると…

 この疑念は、コロナの感染被害が日本よりも格段に大きかった米国と、日本を比較すると浮き彫りになる。米国では、家計部門への小切手送付などの所得支援政策によって、財政政策が迅速・着実に実現して、2020年7-9月期には日本よりも早く経済活動がリバウンドした。  日本でも2020年4、5月に57兆円(GDPの約11%)規模の補正予算が策定されたが、民間部門へ迅速に支援された金額が約20兆円台にとどまっていると推測され、このため日本経済の復調は米国よりも緩慢な回復にとどまったと筆者は見ている。  この米国と日本の財政政策の格差は、2020年に続いて、2021年も日米の経済成長率の格差をもたらすと予想される。2021年早々の米国に目を転じると、バイデン氏の大統領選出プロセスを進める議会に、トランプ大統領の支持者を中心に暴徒が押し寄せる混乱で死亡者が出る前代未聞の惨事が起こるなど、バイデン政権誕生を前に政治情勢は引き続き大きく混乱したままである。  ただ、政治の大混乱が続いても金融市場は冷静で、ジョージア州の上院決戦投票のイベントを通過して、S&P500指数などは1月8日まで最高値を更新、割高とされる領域にありながらも依然高値圏を保っている。米国の株高が続いている要因の一つは、バイデン政権において、新型コロナ対応と経済正常化の双方の実現を後押しする、追加の財政政策が発動される可能性が高まっていることだ。  具体的には、昨年末に決まった9000億ドル規模の財政政策に更に上乗せして、トランプ大統領も要求した幅広い国民に対する2000ドルの現金給付を含めた、追加の財政政策をバイデン次期政権と主要な民主党議員が最優先政策と認識している。  日本と桁が異なるコロナの被害が発生しても、ワクチン開発・接種を含めた大規模な財政政策が迅速・着実に発動されれば、経済活動は正常化する。トランプ政権とバイデン時期政権の政治姿勢は大きく異なるが、大規模な財政政策の発動によって、経済正常化を目指す対応は共通する部分が多い。  2020年はトランプ政権の財政政策が効果を発揮したが、2021年にバイデン政権下で同様に財政政策が実現するかは、財政政策に慎重な上院議員が数名存在するため流動的な部分がある。また、異なるリスクとして、民主党の中でいわゆるプログレッシブ勢力の意向が反映されて、増税や規制強化などの政策が優先されるリスクもある。  ただ、バイデン政権は、コロナ克服と経済正常化を目指すとみられ、経済成長を重視する穏健で現実的な財政金融政策が実現すると筆者は予想している。この政策対応によって、2021年の米国経済はワクチンの普及が進み、その回復の足取りは盤石になるだろう。  米国では、政権交代を経てもなお財政政策を徹底して経済正常化が実現しつつあり、同国の経済と株式市場が2021年の金融市場の主役だろう。一方日本では、財政支出が十分そして効果的に発動されないリスクがあるため、日本株市場は2021年も脇役に止まると見込む。

村上 尚己(アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト)

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20代30代が「カギを握っている」 小池知事、都内の感染状況に危機感

https://news.yahoo.co.jp/articles/c326e53a1014b16c6781d30b636817a996572cad

2021/1/14(木) 15:08 the PAGE

 東京都の小池百合子知事は14日、都内の新型コロナウイルスの「感染状況」や「医療提供体制」を専門家らが分析・評価する「モニタリング会議」後に記者団の取材に応じ、「重症者数は1月12日には144人に達した。これまでの最高だ。それから新規陽性者の移動平均(過去1週間の感染者数の1日当たり平均)、1699人となっており、こちらも過去最多。事態は極めて深刻な状況だ」と訴えた。 【動画】東京都の状況「爆発的な感染拡大の兆候」 モニタリング会議  今週報告された死者数も55人と、前々週の46人、前週の21人から増加して再び高水準に。死者のうち7割以上は70代以上だった。[画像]モニタリング会議後に取材に応じる小池都知事

 この日、小池知事が強調した点の1つは20代、30代の感染状況だ。小池知事は「特に若い方々。20代30代の感染者数が大幅に増加していることは変わらない。(感染者数)全体のボリュームが増える中で、割合は変わらないということなので、20代30代が大きなカギを握っているということが言える」と強調。  「若くても入院する方、そして重症化することもあるし、また長引くということも聞いている。味覚障害をそのまま持っているとか、いろんな後遺症が残っているわけで。若いから大丈夫といっても、後遺症も考えると何よりも感染しない感染させないということに戻ってくる」とも続け、20代30代であっても警戒を怠らないよう呼び掛けた。

「ウイルスには時計も地図もない」

 小池知事は「ウイルスはカレンダーもなければ、時計もなければ、地図も持っていない。お昼か夜か関係ない、県境も関係ない、年末年始も関係ない。寒い季節はウイルスにとっては好都合な状況が整っている」と展開。「『新年会はなし』、『帰省はなし』と申し上げてきたが、改めて緊急事態宣言が発出されている中での不要不急の外出は是非とも控えていただくようにお願いしたい」と改めて協力を呼び掛けた。

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冬のコロナ大感染、わかりきっていた危機になぜ日本は対応できなかったか

https://news.yahoo.co.jp/articles/afc8c566c6add82e90af55526df17d3aeb3bef7b

2021/1/14(木) 6:01 DIAMOND ONLINE

● なぜ、今ごろ? 民間病院の協力を政府が呼びかけ  連日のように「医療崩壊」が叫ばれる中、政府が「民間病院の協力」を呼びかけている。  今月10日のフジテレビの番組に出演した田村憲久厚生労働相は、補助金を拡充するなどして、民間の医療機関にコロナ患者の受け入れを促していく考えを示した。公立病院など一部の医療機関に患者を集中させてきた体制が、いよいよここにきて破綻しつつあるのだ。  という話を聞くと、「そんなことになるのは、前からわかり切っていただろ」と呆れる方も多いのではないか。  ご存じのように、「コロナが冬に大流行する可能性が高い」ということは、半年以上前から世界各国の研究者が警鐘を鳴らしていた。日本でも昨年7月、山形県衛生研究所が、従来のコロナウイルス4種類が冬に突出して流行をすることがわかっているので、新型コロナも同様の傾向を示す可能性がある、という論文をまとめている。  というより、感染症が冬に大流行するのは、一般庶民でも知っている「常識」だ。厚生労働省によれば、2019年1月21から27日の1週間で、全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者数は推計で約222万6000人に及び、1999年以降、最多となっている。ワクチンのあるインフルが年末年始後にこれだけ広がっていることに鑑みれば、新型コロナもこの時期にどんなに気をつけたところで数十万人レベルで感染爆発する、というのは素人でも予想できる。  だから、半年以上前からメディアや専門家は「医療体制の見直し」を訴えてきた。たとえば、昨年の5月25日の「日本経済新聞」では、人口当たりの感染者数が少なかったにもかかわらず医療現場が逼迫したことを受け、脆弱な医療体制を見直すべきだと提言し、「感染のペースが落ち着いた今の『猶予』をいかに活用して態勢を再構築するかが問われる」と結んでいる。

 しかし、年末に感染者が急増してから血相を変えて、「民間病院の協力」を呼びかけていることからもわかるように、日本はこの7カ月あまりの「猶予」を活かすことができなかった。今回の緊急事態宣言を受けて、元厚労省医系技官で医師の木村盛世氏も、政府と医師会にこんな苦言を呈している。  「昨年の春以降、国や医師会は国民の頑張りに応えて、医療を総力戦の体制にしておくべきだった。私は厚生労働省にいたし、医師でもあるので、非常に憤りを感じている」(ABEMA TIMES 1月6日)  もちろん、政府も医師会もサボっていたわけではなく、昨年8月には前回の緊急事態宣言の教訓を生かし、医療資源を重症者に集約することを目的とした「新型コロナウイルス感染症対策の新パッケージ」を決定した。が、メディアから「内容は既定路線の寄せ集めにすぎない」(日本経済新聞9月10日)と酷評されたように、現状の医療体制の抜本的な見直しがなされたわけではなかった。 ● 根本的な問題解決に着手しなかった 「現状維持バイアス」の可能性  では、なぜ政府や医師会は、「現状維持」に流れてしまったのだろうか。  多くの専門家が「感染症2類相当見直し」や特措法改正の必要性を唱え、一部の医療機関への負担集中を解消すべきだと訴えたのに、なぜ「医療体制の見直し」という根本的な問題解決に着手しなかったのか。  まず考えられるのは、政府も医師会も、「みんなこれだけ頑張っているんだから、今の調子でいけばなんとなるんじゃないか」という「ふわっ」とした現状維持バイアスに支配されてしまっていた可能性だ。  医療専門サイト「m3.com」が昨年11月13日から18日までの間、医師会員2921人に対して、都道府県の体制整備についてこの冬を乗り切れるかについて質問をしたところ、「はい」と回答した医師は31.8%で、「いいえ」の20.1%を上回った。つまり医師会の中には、医療体制の見直しをせずに「現状維持」を続けても、なんとかコロナの流行を乗り切れるという淡い期待を抱いていた医師の方もかなりいたのである。

● コロナ患者をみる病院とそれ以外 「役割分担」のシステムエラー  では、なぜ医療崩壊の恐ろしさを誰よりも知っているはずの医師の皆さんが、こんなご都合主義的な楽観論に囚われてしまったのか。  1つには、多くの医師会員の方たちが「今の医療体制は間違っていない」という現状維持の観点から、すべての物事を考えている傾向があることが大きい。  それを象徴するのが、今年1月6日の記者会見で、日本医師会の中川俊男会長が「民間病院では新型コロナウイルス感染者の受け入れが少ない」との記者からの指摘に対して行った、以下の回答だ。  「コロナ患者をみる医療機関と通常の医療機関が役割分担をした結果だ。民間病院は面として地域医療を支えている」(読売新聞オンライン1月6日)  客観的に見れば、他国と比べて圧倒的に少ない患者数で医療崩壊寸前になっているのだから、この「役割分担」に重大なシステムエラーがあるように感じてしまうのだが、医師会からすれば、そのような可能性はないというわけだ。  このように「今の医療体制は間違っていない」という考えがビタッと固定されてしまっていれば、そこでどんなに議論を交わしても、どんなに知恵を絞っても、「今の医療体制」を微調整したようなコロナ対策しか出てこないのは言うまでもないだろう。今のやり方に大きな問題もないと考える人たちに、どんなに「改革せよ」「変われ」と説いたところで、まったくピンとこないのは当然なのだ。  つまりこの半年間、「冬の感染爆発」の危機が叫ばれていた中でも、政府や医師会が「総力戦の体制」を構築することができなかったのは、日本医師会が現状の「コロナ患者をみる医療機関と通常の医療機関の役割分担」を見直す必要がないと信じていたであろうことが大きいのだ。

 それに加えて、日本のコロナ医療が「現状維持」に流れがちなのは、もう1つ大きな構造的な要因があるのではないかと、個人的に考えている。それは、「小さな医院・クリニックの経営者」が多いということだ。  医療危機が叫ばれるようになってから、約8000といわれる日本の病院数は世界一だという話がよく出るが、実は「小さな医院・クリニックの経営者」の多さも、先進国の中でトップレベルだ。厚生統計要覧令和元年度によれば、小さな医院やクリニックを示す「診療所」(病床が0~19床以下の医療施設)は10万2105施設もある。 ● 小さな医院・クリニックの経営者数が 世界トップレベルであることの影響  それは言い換えれば、実はあまり語られることがないが、日本というのは「小さな医院・クリニックの経営者」が世界トップレベルに多い国であるということなのだ。  「それが医療体制の見直しという話にどう関係あるのだ」と首を傾げる方も多いだろうが、大いに関係している。実は「国民の生活インフラを担う小さな会社の経営者」は「現状維持」を好む傾向があることがわかっているからだ。  『2020年版 中小企業白書・小規模白書』では、企業を4つに分類している。グローバル展開をするグローバル型、サプライチェーンでの中核ポジションを確保するサプライチェーン型、地域資源を活用する地域資源型、そして、地域の生活コミニティを下支えする「生活インフラ型」である。  小規模事業者に自社がどのような分類を目指しているのかと質問をしたところ、「生活インフラ型」と回答した割合が高かった業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」(85.9%)、「金融業・保険業」(81%)、生活関連サービス(90%)などだが、その中でも最も多かったのは「医療・福祉」(92.3%)だった。  このような町の小さな医院やクリニックを含めた「生活インフラ型小規模事業者」には、他の分類には見られないある特徴的な傾向が浮かび上がっている。それは「現状維持」だ。

 4分類の小規模事業者に、今後5年間の事業方針を質問したところ、グローバル型やサプライチェーン型の小規模事業者は7割超から6割で「成長・拡大」と回答し、「現状維持」との回答は2~3割の水準にとどまっているのに対して、生活インフラ型はまったく逆の傾向となった。「成長・拡大」は29.5%にとどまり、「現状維持」が58.5%に上ったのだ。  断っておくが、筆者は「現状維持」を望むことが悪いなどと言っているわけではない。地域の生活者のインフラを守るには、何をおいても事業の存続を目指すのは当然だ。「成長・拡大」などのリスクをとって、廃業などに追い込まれてしまうことは絶対に避けなくてはいけない。医療や福祉という公的サービスならばなおさらだ。  ただ、現状維持というのは良いことばかりではなく、急激な「環境の変化」に対して迅速に対応できないという「負の側面」もある、と申し上げたいだけだ。  リスクを取らない経営方針をずっと貫いてきた小さな医院やクリニックの経営者が、「コロナを受け入れている病院が医療崩壊寸前だから、皆さんも協力してほしい」と言われても、「了解!やりましょう」とフットワーク軽く動けるだろうか。 ● 「存続」を第一に考える医療機関の 要望を代弁しがちな日本医師会  前述のように、彼らが何よりも守るのは「存続」だ。施設も小さく、人員も少ない小さな医院やクリニックで院内感染が起きたり、「あそこの看護師がコロナになった」などという風評が流れたりしたら、すぐに経営危機に陥って通常医療が続けられなくなってしまう。「そんな危ない橋は渡れない」と考える小さな医院・クリニックの経営者は多いはずだ。  そして、このような経営者側の要望をきっちりと政治に届けてくれるのが、他でもない日本医師会である。  日本医師会会員数調査(令和元年12月1日現在)によれば、会員総数17万2763人のうち8万3368人は「病院・診療所の開設者」。今コロナで苦しむ公立病院などの勤務医の会員は少なく、発言力もないため、日本医師会は「病院経営者の団体」と呼ばれている。

 さらに、その内訳を見ればもっと興味深い。病院開設者が3985人なのに対して、診療所開設者が7万473人。つまり、「現状維持」を望む傾向の強い「小さな医院・クリニックの経営者」が大多数を占めているのだ。  そんな「現状維持バイアス」が強く支配している日本医師会と、彼らに選挙で頭の上がらない菅政権が、いくら医療崩壊の危機が叫ばれているからといって、現状を大きく変えてしまう「医療体制の見直し」に着手できるだろうか。  ぶっちゃけ、無理ではないか。 ● コロナ禍のブラック労働で疲弊する 最前線の医療従事者に目を向けよ  医療に限らず、日本ではこういうことがよくある。迫り来る「危機」を前にして、「変わらなくては」「改革が必要だ」という声だけは上がるが、政治に影響力のある団体がそれを骨抜きにする。弱い立場の人間が苦しみボロボロになっても、「がんばれ、がんばれ」と精神論を唱えるだけで「現状維持」に流れるのだ。  多くの人の犠牲でどうにか「危機」を乗り越えた後も、喉元過ぎればなんとやらで、構造的な問題にはなかなかメスが入らない。だから、またしばらくすると同じような「危機」が再発する。こんな「危機の先送り」を、戦後ずっと繰り返してきている。  低い賃金、低い生産性などはその最たるのものだが、1億2000万人という先進国で2番目に多い人口を生かした「規模の経済」と過去の栄光によって、どうにかうまく誤魔化してきた。しかし、最前線の医療従事者が壮絶なブラック労働を強いられるコロナ禍で、それが通用するとは思えない。  取り返しのつかない事態になる前に、いつまで経っても「改革」を先延ばしにしてしまう、という日本の目を背けたくなる現実に、きちんと向き合うべきではないのか。  (ノンフィクションライター 窪田順生

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「ベッド数は世界一」の日本でコロナ前から”たらい回し”が起きていた本当の理由

https://news.yahoo.co.jp/articles/48e19432fa3d801611a9372a3052520bd0404e20

2021/1/14(木) 15:16 PRESIDENT ONLINE

日本は人口当たりの病床数が世界で最も多い「病床大国」で、入院日数も世界で突出して長い。これは何を意味するのか。病院経営コンサルタントの渡辺さちこ氏と国際医療経済学者のアキよしかわ氏は「日本では病床を患者で埋めないと病院経営が成り立たない」という――。 【この記事の画像を見る】  ※本稿は、渡辺さちこ、アキよしかわ『医療崩壊の真実』(MdN)の一部を再編集したものです。 ■日本の病床はどれくらいあり、どれくらい稼働しているのか  新型コロナ感染拡大の中で入院の受け入れの第一線と考えられたのは感染症病床(1758床)、第二種感染症指定医療機関の351施設です。第二種感染症指定医療機関は、国、公立(自治体)、公的(日赤病院、済生会病院など)で9割が担い、民間は1割です。コロナ前の感染症病床の稼働率は2017年が3.3%、2016年が3.2%、つまり感染流行の局面にならない限り、平時では極めて低水準の稼働率です。  しかし一旦コロナが拡大すると、感染症病床は152万超の病床全体に占める割合は0.1%あまりであること、そして新型コロナは全国一律に流行するのではなく入院が必要な患者は都道府県や第二種感染症指定医療機関の地域によって大きな差があるため、「感染症病床」だけでは足らず「一般病床」での受け入れが必須となりました。  実際、第1波のピークである5月4日は1万1935人、第2波のピークである8月10日には1万3724人のコロナ患者(これらは宿泊・自宅療養が可能であった軽症者も含む)が入院しており、感染症病床だけでは全く不足した事になります。  次に日本の病床について国際的なデータと比較して検証しましょう。 ■先進国の中でずば抜けて病床数が多い日本  まず、日本の医療法でいう一般病床、療養病床、感染症病床、結核病床、精神病床全ての病床をOECD加盟国と比較すると(2018年or latest available)、人口千人当たりの病床数は日本が13.1と突出して多く、OECD加盟国平均である4.7の2.8倍です。  図表1をご覧ください。これは人口千人当たり全ての病床数の1990年から2017年までの推移を国際比較したものです。日本を含めどの先進国も人口当たりの病床数を削減してきた一方で、日本だけ完全に我が道を突き進んでいるというか、まったく「次元」が違うことがわかります。国民皆保険制度もあり、医療提供体制も充実しているといわれることの多いドイツでも日本の6割程度です。  また、90年代初頭に唯一、日本に近い割合で病床数が存在していたのはスウェーデンだけですが、一入院包括払い(DRG/PPS:Diagnosis Related Group/Prospective Payment System)を導入するなどの取り組みで病床数を大きく減らし、諸外国と同じくらいの水準になっています。その意味では、日本は世界の中でも独自の道を歩む「病床大国」といってよいでしょう。  先進諸外国が90年代から病床数を減らしつつ「平均寿命」や「健康寿命」を伸ばしてきたことを考えると、「病床数」の多さは「人の健康」と比例するものではないことがわかります。

■コロナ患者を受け入れ可能な「急性期病床数」に限っても世界一  それでは、急性期病床(一般病床)数はどうでしょうか。急性期病床とは、急患や重症で命に関わる治療や応急措置、手術を行うための病床です。図表2をご覧ください。人口千人当たりの「急性期病床」もやはり日本では7.79と突出して多いのです。お隣の韓国は第二位です。  OECD各国の平均は3.6なので、日本は2.2倍以上の急性期病床を保有していることになります。  このように日本は他国と比べものにならないほど急性期病床が多い、「世界一急性期病床が多い国」であることがわかります。  では、人工呼吸器やECMOを必要とするコロナ重症患者の治療体制に必要なICU病床数はどうでしょうか。図表3で示すように、日本は人口10万人当たりのICU病床数は4.3床です。諸外国の病床数のデータにはIntermediate care bedsといって、ICUと一般病棟に至るまでの間の治療を行うための病床を含めて計算が行われているため、日本でもICUに準じた機能を持つ病床としてハイケアユニット(HCU)、そして救命救急病床(ER)を含めると全体で1万7000床となり、人口10万人当たり13.5床となります(図表3ではICU、HCU、ERを総称してユニットと表記)。  HCUは「高度治療室(High Care Unit)」の略称で、ICUと一般病棟の間という位置づけです。そして救命救急病床(ER)は集中治療室への入院が必要な重症の救急患者を受け入れて高度治療を提供するところです。結果、日本のユニットはアメリカの3分の1、ドイツの半分ですが、イタリア、フランス、スペイン、イギリスを上回る病床数という事がわかります。 ■「突出して治療日数が長いこと」は何を意味するか  コロナ患者の受け入れを担う事が可能な急性期病床が日本では世界の中でも突出した数になっている実態は、患者のため、病院のためにとってどうなのでしょうか。  まず、病院について考えてみましょう。先ほどの急性期病床のグラフに近い印象を受けるグラフ(図表4)は、諸外国で急性期患者の治療にどれだけの日数を費やしているのかという平均在院日数です。  この平均在院日数の国際比較も急性期病床数と同じで、日本が突出して「治療日数が長い」ということがわかります。諸外国のほとんどでは、90年代初旬から30年ほどの間に、5日間から8日間前後の範囲に在院日数を減らしてきているのと対照的に、日本は90年代中頃まで、治療に1カ月間かかっていました。当時は、療養患者や社会的入院といわれる患者が入院していたことも在院日数の長さの要因です。日本はそこから減少しながら20日間を切り、現在では16日間ですがそれでもかなり長い在院日数をキープしているのです。  このように平均在院日数の国際比較をみてもわかるように、日本ほど急性期病床の在院日数が長い国は他になく、諸外国に比べ日本は2.3倍です(DPC対象病院の平均在院日数は12日前後。それでも諸外国の約1.7倍)。急性期病床数はドイツや韓国などまだ日本に近い傾向にある国がかろうじてありましたが、平均在院日数に関しては、「日本だけ」が異彩を放っています。  「それだけ日本の医療は患者に対して手厚く接してくれているからではないか」とか「他国と比べものにならないほど医療サービスが充実している証(あかし)ではないか」と、日本人の「美徳」のようにポジティブに受け取る方もいらっしゃるかもしれません。  ただ、残念ながらデータを分析していく限り必ずしもそうともいえません。別次元とも言うべき在院日数の長さは、「患者のため」というよりも、「病院のため」という要素が多分にあるのです。

■ベッドを埋めなければ病院経営が成り立たない  ではなぜ日本ではこんなに在院日数が長いのでしょうか。それは、空床があれば埋める、そうでなければ病院経営が成り立たない、という病院にとって“切実な事情”が背景にあるからです。多すぎる急性期病床を抱えた病院経営者は、「病院の存続」をかけて、経営のために“在院日数を適正化”する必要があるのです。待ち患者の行列が望める病院は問題ありません。しかし地域の医療ニーズを超え、過剰な急性期病床をかかえる病院が病床を埋める手段は、在院日数のコントロールなのです。  “Built beds is filled beds is billed beds”という表現があります。“作られた病床は、患者で埋め、そうすれば報酬を請求できる”と少々皮肉った意味です。しかし日本ではそれが現実的に起きていないとはいえないのです。  図表5は、都道府県別の入院医療費と病床数との関係を示したものです。  財務省が公表したもので、横軸に「10万人当たりの病床数(全病床)」、縦軸に「1人当たり入院医療費(年齢調整後)」の関係を表しています。1人当たり入院医療費は、都道府県間で比較ができるように年齢構成が調整されています。 ■「病床数が多いほど入院医療費が高い」という事実が示すこと  結果は衝撃的です。都道府県別「病床数」と「入院医療費」の関係における決定係数R2=0.6961と高い相関がみられたのです。10万人当たりの病床数は最多が高知県(2522床)、最小が神奈川県(810床)と3.1倍もあります。高知県民が神奈川県民より3倍病気にかかりやすい県民性であるとは考えにくいでしょう。1人当たり入院医療費は最大が高知県(34万円)、最小が静岡県(19万円)の1.8倍でした。こちらも高知県民が静岡県民より1.8倍重篤な病気にかかるとも考えにくいです。  この「病床数」と「入院医療費」の相関をみると、まさに“Built beds is filled beds is billed beds”。ちなみに日本で人口当たり最も病床が少ない神奈川県でも、OECD先進国の1.7倍強の病床があります。  ここまでくると、「世界一病床が充実している国ニッポン」の実態がなんとなく見えてくるのではないでしょうか。日本は、急性期病床が異様なほどに“充実”しているという裏に、実は「世界一入院日数の長い国」であり、「病院で必要以上に長期滞在することは医療費を押し上げている」可能性があるという日本医療のもうひとつの顔が見えてくるのです。

■入院日数のむやみな延長は患者にもデメリットがある  では、患者にとってはどうなのでしょうか。入院日数の不要な延長化は患者にとってQOL(生活の質)の点でデメリットです。働く世代ですと就労や子育て機会の損失になります。高齢者にとっては行動範囲が病室の中に制限されると、動かないことによる身体能力のADL(日常生活動作)の大幅な低下や、精神状態に悪影響をもたらして「廃用症候群」の発症リスクが高まります。1週間、あまり動かずベッドで過ごす状態を続けると、10~15%程度の筋力低下、さらに、気分的な落ち込みが顕著に現れてうつ状態になったり、やる気が減退したりと精神的な機能低下が見られます。  また、天井や壁が白塗りの無機質な病室での大きな「環境変化」により、せん妄(もう)といって認知症に似た混乱や意識障害発症のリスクも懸念されるのです。  さらに、コロナウイルスに限らず、病院での長期滞在は院内感染リスクをより高める結果となります。このように入院日数の不要な延長化は患者、特に高齢者にとって何一つ良い事はなく、医療の質を下げる結果となるのです。  「医療の価値=医療の質÷コスト(医療費)」という概念があります。「医療の質」を維持・向上しながら、限られた医療資源や財源を最大限に活用するという考え方で、この「医療の価値」を上げることが国民そして医療経済にとって重要なのです。「医療の価値」を上げるには分子の「医療の質」を維持・向上し、分母の「コスト(医療費)」を下げる努力が必要となります。  不要な病院の滞在について「医療の価値」の軸を用いると、「医療の質」を下げ「コスト」を増大させるため、「医療の価値」を下げる結果といえます。  「医療の価値」は私たちが病院の経営コンサルティングをする際にも用いている価値軸です。 ■入院日数の延長が医療費を逼迫させている  ここまで、日本の病床数の潤沢さが「病院」と「患者」にとってどうなのかを考えてきました。では医療費に与える影響はどうでしょうか。  日本の医療費は年々上昇し、それこそ逼迫しています。2018年における日本の保健医療支出が対GDP(国内総生産)に占める割合は10.9%でOECD加盟国36カ国中6位でした。しかし、各国共通の統計として、保健医療支出の治療費に加え予防、介護、市販薬などを含み、健康に関するOECD各国共通の費用統計体系支出として捉えた包括的な「健康支出」で推計すると、2012年で日本は対GDP比11.2%となり、米国(2013年16.4%)に次ぐ世界第2位であると試算されています(西沢和彦著『医療保険制度の再構築』(慶應義塾大学出版会)参照)。  医療費全体の4割は「入院料」つまり入院に対する報酬で入院滞在日数に比例します。病床を埋めるために在院日数を長期化し、その報酬が医療費として支払われていたとすると、それは医療資源配分として是正する必要があるでしょう。これには、病床数の適正化に加え、必要以上に在院日数を延長しなくても病院経営が成り立つような診療報酬制度の仕組みが必要と考えられます。 ———- 渡辺 さちこ(わたなべ・さちこ) グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表 看護師として臨床に携わったのち、慶應義塾大学経済学部入学。同大卒業後、米国ミシガン大学へ留学し、医療経営学、応用経済学の2つの修士号を取得。帰国後、ジョンソン・エンド・ジョンソンコンサルティング事業部などを経て、2003年より米国グローバルヘルスコンサルティングのパートナーに就任。800以上の急性期病院のビックデータ実証分析で経営改善支援を行う。主な著書に『患者思いの病院が、なぜつぶれるのか?』、アキよしかわとの共著に『日本医療クライシス』(いずれも幻冬舎メディアコンサルティング)がある。 ———- ———- アキ よしかわ 国際医療経済学者 データサイエンティスト。カリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学で教鞭を執り、スタンフォード大学で医療政策部を設立する。米国議会技術評価局(U.S.Office of Technology Assessment)などのアドバイザーを務め、欧米、アジア地域で数多くの病院の経営分析をした後、日本の医療界に「ベンチマーク分析」を広めたことで知られる。米国グローバルヘルス財団理事長、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン会長。米カリフォルニア在住。主な著書に『日本人が知らない日本医療の真実』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『日米がん格差』(講談社)などがある。 ———-

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民間病院「コロナ受け入れ」動かない理由 コロナ「4月感染再爆発」予測も… 日本の医療体制が抱える根本的な問題

https://news.yahoo.co.jp/articles/0abd993f36d8b9cf1ed3f44c78fc41371971893e

2021/1/14(木) 16:56 夕刊フジ

 政府は新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言の対象を11都府県に拡大した。期間は2月7日までだが、同月中に解除した場合、4月に感染が再爆発するとの試算もある。日本医師会は「医療崩壊から医療壊滅になる」と危機感を示すが、コロナ患者を受け入れる民間病院は依然少ない。なぜ動かないのか。  菅義偉首相は13日の記者会見で、宣言の対象追加は「厳しい状況を好転させるためには欠かせない措置であることを理解してほしい」と述べた。  東京都の新規感染者数が1日500人以下というのが宣言解除の目安だ。「8割おじさん」こと西浦博・京都大教授(感染症疫学)は、1人から何人に感染が広まるかを示す「実効再生産数」が宣言前の1・1から0・88まで下がった場合、2月24日に500人を下回ると試算。だが、その直後に解除すれば4月14日には1000人以上の新たな流行が発生するとした。  現状の感染者数は高止まりが続く。日本医師会の中川俊男会長は13日の記者会見で、「医療崩壊が進行している」と強調、「今後の状況によっては全国的な緊急事態宣言も選択肢の一つだ」との見解を示す。  日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国で人口当たりのベッド数が最も多く、一般病床と感染症病床で計約90万床に上るが、コロナ患者用のベッドは6日時点で2万7650床(約3%)にとどまる。  日本には中小の民間病院が多いという事情もある。中川会長は、民間病院は規模が小さく、医師数や病棟も少ないため、コロナ専用病棟などの対応が難しいと指摘。「民間病院は『コロナ以外』の救急や入院が必要な患者の医療を精力的に担っている」と強調した。  一方、元厚生労働省医系技官の木村盛世氏(感染症疫学)は、「日本は民間医療機関が多く、コロナ患者を受け入れると赤字を懸念する医療機関があるためだ」と指摘する。「本来は春から夏にかけて病床や医療機関、人材の確保を優先しておくべきだった。経済を止めるリスクの方が大きいが、医療体制が逼迫(ひっぱく)する中で自粛せざるをえない状況に追い込まれた」  今優先すべきなのは、重症患者を緊急事態宣言が発令されていない地域に搬送する仕組み作りや、宅食業者による高齢者家庭への配膳、外来患者の減った病院などの医療従事者による在宅医療などの施策だと木村氏は提言する。その上で、日本の医療体制が抱える根本的な問題にも着手すべきだと強調した。  「医師会は、約5兆円の政府の予備費から、民間病院の損失補填(ほてん)ができるような規制緩和を求めたり、基金の立ち上げなどに取り組むべきだ。何もしないと医療体制が逼迫するたびに緊急事態宣言を繰り返すことになる」

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「緊急事態宣言は適切ではない」…台湾が感染爆発を防げたワケ

https://news.yahoo.co.jp/articles/78243a0c753385b373a75715e63e91d203e260fd

2021/1/11(月) 9:01 幻冬舎 GOLD ONLINE

こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「高齢者に届かないマスク」政策は即座に中止

オードリー・タン 台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

官民の連携によって生まれたマスクマップ 対策会議の結果、台湾の国民皆保険制度を活用して、全民健康保険カードを使った実名販売を始めることにしました。ただし、あるコンビニで誰かがマスクを購入したら、その情報がリアルタイムで別の店舗にも共有される必要があります。「この人はもう購入しているので、これ以上は購入できません」という情報が伝わらなければ、また複数店舗で購入する人が出てきます。 そこで実名販売を実現するために、全民健康保険カードを使うだけでなく、クレジットカードや利用者登録式の「悠遊カード」(日本のSuicaのような非接触型ICカード)を使ったキャッシュレス決済を組み込むことにしました。この方法であれば、誰がマスクを購入したかを確実に把握することができます。 ところが、いざスタートしてみると、この方法でマスクを購入した人は全体の四割しかいないことがわかりました。つまり、現金や無記名式の「悠遊カード」を使い慣れていた高齢者には不便な方法だったのです。これは単にデジタルディバイド(情報格差)の問題ではありません。防疫政策の綻びです。マスクを購入できた人と購入できなかった人の割合が半々では、防疫の意味をなしません。 かといって、高齢者に使い慣れた現金や無記名式の悠遊カードを使うのをやめてもらい、「これからは記名制の『悠遊カード』を使いなさい」「キャッシュレス決済を学びなさい」と迫るのはナンセンスです。 そこで、この方法はとりあえず停止して、まずは全民健康保険カードを持って薬局に並んでマスクを購入してもらうことにしました。これなら高齢者には慣れたやり方ですし、彼らには並ぶ時間的な余裕もあります。また、家族の全民健康保険カードを預かって一緒に買ってあげることもできるので、自分が家族に貢献しているという感覚も持てたようです。 並んで購入することは高齢者にとって負担となりますし、コンビニでの購入と比べれば時間的コストもかかります。しかし、結果として70~80%の人がマスクを購入することができ、台湾での防疫に大きな役割を果たしたのです。 その次に、今度は並んでマスクを購入する時間的余裕がない人のために、スマホを使ってコンビニでマスクを購入するシステムを設計しました。また、台北では自動販売機でマスクをキャッシュレス決済で購入できるようにしました。ただし、「誰がマスクを購入した」という情報は、中央健康保険署にリンクされるようにしました。また、中央健康保険署は台北市政府とリンクされ、さらに台北市政府内の衛生局や情報技術局ともリンクされて、情報共有が図られました。

「マスクマップ」でマスク在庫状況が分かる

オードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)

一連のマスク対策で重要だったのは、〝問題を処理する順序〞でした。我々はまず対面式あるいは紙ベースでしか対応できない人について処理を行い、その方式を進める中で「もっと便利で早い方法を使いたい」という声に対応していきました。その結果、中央部会の各部局、外局、自治体のスマートシティ事務局、薬局、民間の科学技術関連企業など、あらゆる分野、機関を跨いで全体を統合することで、マスク政策は一歩進んだものになりました。 マスクの実名販売制を進めた際、最初はコンビニでマスクを販売し、後に薬局での販売に切り替えました。コンビニでの販売期間はわずか3~4日だったと思いますが、この間に大きな混乱が起こりました。どこのコンビニにどれだけの在庫があるのかがわからなかったことが、この混乱の原因でした。海外でも大きな話題となった台湾のマスクマップのアイデアは、こんな状況から生まれてきたのです。 マスクマップができるきっかけは、台湾南部に住む一人の市民が、近隣店舗のマスク在庫状況を調べて地図アプリで公開したことから始まりました。私はそれをチャットアプリ「Slackスラック)」で知りました。政府の情報公開やデジタル化を推進するスラック上のチャンネルには、8000人以上のシビックハッカー(政府が公開したデータを活用してアプリやサービスを開発する市井のプログラマー)が参加しており、コロナ対策に限っても、当時500人以上のシビックハッカーがいました。 私がマスクマップを作ることを提案し、行政がマスクの流通・在庫データを一般公開すると、シビックハッカーたちが協力して、どこの店舗にどれだけのマスクの在庫があるかがリアルタイムでわかる地図アプリを次々に開発しました。これによって、誰もが安心して効率的にマスクを購入できるようになったのです。 このような経緯で、台湾における新型コロナウイルス感染症防止の重要なポイントだったマスク対策は成功を収めることができたのです。 政府と民間の信頼関係の象徴となった全民保険制度 先に述べたように、台湾におけるマスク対策のベースとなったのが、国民皆保険制度にあたる「全民保険制度」でした。これは台湾の人々が、政府の中央健康保険署に大きな信頼を寄せている証でもあります。もし、多くの人々が政府よりも民間の保険会社を信頼し、保険会社がビジネスとして競争力を有し、責任を持って人々の健康を支える状態であれば、「全民保険制度」がこれほどうまく機能するという状況は到底出てこなかったはずです。 では、なぜ台湾では、多くの人々が政府の保険を信頼しているのでしょうか。それは、全民健康保険争議審議会で話し合われるあらゆるプロセスが、原稿の一言一句まで透明化されているからです。これは私がデジタル担当政務委員に就任する以前から、そのようなシステムになっています。政府は、健康保険の審議会で改正があるたびに、すべての資料を透明化し、どのような作業が進んでいるのかを国民に公開しています。

緊急事態宣言がなくても国民が政府に協力した

実を言うと、この全民健康保険制度そのものも、2002年、2003年に社会の異なる階層や年齢、そして地方から代表者が集まって審議されたことがあります。その点で、この制度は、社会のあらゆる意見を集めて形成された融合的なものとも言えます。そのような経緯があるため、この全民保険制度の正当性は、民間の保険会社と比べても遜色なく、信頼されるに足るものとなっているのです。 同時に、それは政府と人々の信頼関係を意味しています。政府が人々を信用していなければ、今回も強制力によって管理することになったでしょう。つまり、「人々が自主管理できない」という理由で、刑罰による威嚇や監禁、ロックダウンの強制といった手段をとらざるを得なかったかもしれません。 しかし、CECCは当初から「緊急事態宣言を発布するような状態ではない」と言ってきました。「緊急事態宣言をすれば強権的なことができるけれど、それは適切ではない。緊急事態宣言を出さなくても、国民が自発的に政府に協力してくれることが大切だ」という考えだったのです。 たとえば、バーやナイトクラブのような匿名性の高い場所は、以前は防疫に協力してもらえるとは考えられていませんでした。しかし、CECCの陳時中指揮官は、彼らを信頼して、防疫の方式として実名登録や写真による記録などを提案しました。最終的に、バーやナイトクラブもそれに応じることによって、営業を続けることができました。 最初から「誰かが違反するだろう」などという先入観を持って強制的なやり方を選択するのは、いい方法ではありません。誰でも感染などしたくないのですから、「どのようにすればお互い協力できるのか」ということを考えるべきなのです。それが政府と人々の重要な信頼の源になるわけで、両者の間に相互信頼があったことが、台湾において感染拡大を防いだ最大の理由であったと言っていいと思います。 全民健康保険カードやクレジットカードによって本人確認を行い、さらに行政機関のデータとリンクさせるというやり方は、ITの活用によって実現したことですが、それは政府と人々との間に信頼関係があったからこそ実現したのです。このような相互信頼が、社会のデジタル化を推進していくときに不可欠な前提条件になると私は考えています。 オードリー・タン 台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

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緊急事態…「日本のコロナ対策が出鱈目である」これだけの理由

https://news.yahoo.co.jp/articles/f7cf701dc6e5f8f17ade4d25b741891a405d5a55

2021/1/7(木) 8:01 幻冬舎 GOLD ONLINE

コロナ第三波が猛威を振るうなか、ついに再びの緊急事態宣言の発令へ。政府は感染拡大の大きな原因は「飲食の場面」にあるとし、飲食店に営業時間のさらなる短縮を要請する。しかし飲食店の規制は真に有効な感染拡大防止策となり得るのか? 内科医の上昌広氏は疑問を呈する。最新の研究にもとづき、報道からは見えない実態を緊急レポートする。

感染拡大防止策、「飲食店の規制強化」に懐疑の念

(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大が止まらない。1月4日、菅義偉首相は首都圏の4都県に緊急事態宣言を出すことを決めた。20時以降の飲食店閉店、外出規制が求められる。 飲食店の規制を強化した理由について、政府は「飲食でのリスクを抑えることが重要」とコメントしている。専門家も、このような見解を支持している。 厚生労働省クラスター対策班のメンバーで、政府の対策作りに関わった和田耕治・国際医療福祉大学教授は、「感染拡大が収まらない大きな要因は、人と人の接触が密になる飲食の場面だ。2020年夏ごろの第2波では、飲食が感染拡大の場だとすでにわかっていたが、政府や自治体、事業者ともに十分に対策に取り組めなかった」(日本経済新聞2021年1月5日)とコメントしている。 果たして本当にそうなのだろうか。私は、このような意見に対しては懐疑的だ。本稿では、この点について論じたい。

「飲食店こそ感染拡大の巣窟」は過去の話

確かに、飲食店がコロナ感染のハブになったという報告は多い。たとえば、10月13日、米バーモント大学の研究チームは、『プロス・ワン』誌で「ソーシャル・ディスタンス対策の中でも、特に飲食店の営業を規制することが、コロナ患者の増加を抑制した」というモデル研究の結果を報告しているし、11月20日、香港理工大学の研究チームは『建築と環境』誌で「飲食店の数がコロナ感染者数に影響する」と報告している。政府や専門家は、このような研究結果をエビデンスと見なしているのだろうか。 注意すべきは、いずれの研究も第一波と第二波を対象としていることだ。たとえば、香港理工大学の研究チームの報告は1~8月、バーモント大学の研究は3~5月の感染データを用いている。第一波、第二波での状況が、そのまま第三波に通用するかわからない。それは、この間にコロナに関する研究が進み、対策が強化されたからだ。 飲食店対策もアップデイトされている。現在、飲食店における感染は、リスクに応じた個別対応が標準だ。米疾病管理センター(CDC)は「レストランおよびバーの運営者に関する注意事項」 (https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/organizations/business-employers/bars-restaurants.html?fbclid=IwAR0pXWzNCJc6_F18u5eVreSeqVFPa6Dxok2SkJBAT303TI0sk-HBX-nrBHg) を公表している。 そのなかで、飲食店の感染リスクを4つのグループに分け、ドライブスルーを「もっとも低いリスク」、屋外席を「より多くのリスク」、屋内で座席を減らし、6フィート(1.8メートル)離す場合を「より高いリスク」、屋内で座席数を減らさず、6フィート空けない場合を「もっとも高いリスク」としている。 彼らは「コロナは、ほとんどの場合、人々が感染者と物理的に近い(6フィート以内)か、その人と直接接触しているときに広がる」と述べる一方、「入手可能なデータによると、コロナに感染している人との密接な接触による拡散が、空気感染よりもはるかに一般的」とエアロゾルによる空気感染のリスクを重視していない。彼らは、飲食店の営業が「より高いリスク」以下なら、大きな問題とならない可能性が高いと考えている。

利用者の激減…意図せず「密」を回避できている実態

では、実態はどうなのだろうか。コロナ流行以降、飲食店の利用者が激減している。多くの飲食店は、意図せず、6フィート以上の距離が確保されている。このような飲食店での感染リスクは高くない。 ところが、飲食店のコロナ対策が変化した秋以降、この問題を検討した論文は少ない。私が調べた範囲で、このことに言及しているのは『ネイチャー』11月10日号に掲載された「レストランがCOVID感染を引き起こすのを防ぐ方法」という論考だけで、その中には、以下のような記載がある。 「レストランはどこでもホットスポットではないかもしれない。英国オックスフォード大学で感染症をモデル化しているMoritz Kraemerは、『ドイツのコンタクトトレーシングデータによると、飲食店はその国の主要な感染源ではなかった』と述べている」 コンタクトトレーシングを用いた手法に限界があるのかもしれないが、第三波で飲食店が感染のハブになるか否かは結論がでていない。

「飲食店の規制」が愚策と言える、これだけの理由

では、日本ではどうなのだろうか。日本は感染症法に基づき、感染者が全例報告される。クラスター対策にも膨大なカネと人が投入されている。秋以降の感染者のうち、どの程度が飲食店で感染したかわかるはずだ。 12月18日に国立感染症研究所が発表した「新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等(2020年12月10日現在)」によれば、首都圏の感染者の6割は感染経路不明だ。つまり、飲食店が特に怪しいという訳ではない。管総理は1月4日の記者会見で、「経路不明の感染原因の多くは、飲食によるものと専門家が指摘をしております」と説明している。政府の根拠は、この程度だ。 感染経路が判明しているケースの内訳を国立感染症研究所は公開していないが、東京都によると、11月10日から11月16日までの一週間で、感染経路が判明者のうち、飲食店での会食が占める割合は8%に過ぎなかった。これは、7月28日から8月3日までの一週間の14%より大幅に低下している。多かったのは家庭内42%、施設内16%だ。 この状況で飲食店に自粛を要請するのは合理的でない。いや危険だ。家庭内感染や施設内感染には効果がなく、感染が拡大してしまうからだ。家庭内や施設内感染を防ぐには、PCR検査を増やし、無症状感染者を隔離するしかない。このままでは、飲食店経営者には無用な被害を与えることになる。第一波では夜の街がスケープゴートになったが、第三波では飲食店がそうなるだけだ。 日本のコロナ対策は、このような出鱈目が多い。だからこそ、東アジアで唯一、国内全域のコロナの蔓延を許し、人口当たりの死者数、経済ダメージももっとも酷い。緊急事態宣言をするなら、もっとエビデンスにもとづき、合理的にすべきだ。コロナは感染しても無症状の人が多い。彼らが周囲にうつすのだから、感染者を減らすには、無症状者への検査数を増やし、正確な流行状態を把握し、流行地域に的確に介入しなければならない。緊急事態宣言の名の元、闇雲に飲食店に営業を自粛させても、おそらく効果は限定的だ。コロナ対策はゼロベースでの見直しが必要だ。 上 昌広 内科医/医療ガバナンス研究所理事長

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社会問題

また緊急事態…「ゼロ・コロナ戦略」を取らなかった日本政府の「根本的な大失敗」

https://news.yahoo.co.jp/articles/0e81761c2681cc507042d5f30c227ae9d5754df8

2021/1/6(水) 6:31 現代ビジネス

 再びの緊急事態宣言。が、場当たり的な対策である印象は拭えない。日本政府の対策には、根本的な方向転換が必要なのではないか。ハーバード大学公衆衛生大学院などで学び、現在は群星沖縄臨床研修センター長を務める徳田安春氏に、ジャーナリストの山岡淳一郎氏が聞いた。 【写真】 新型コロナ、日本の満員電車で「クラスター」が起きない「意外なワケ」

いつまで同じことをくりかえすのか

〔PHOTO〕Gettyimages

 一都三県に新型コロナ対策の切り札ともいえる「緊急事態宣言」が再発出されることとなった。昨年4月の宣言発出に比べれば、学校の一斉休校は回避され、飲食店の夜間営業の時短と外出自粛に的を絞った限定的なものになりそうだが、「いつまで同じことをくりかえすのだろう」と多くの国民は先行きに不安を募らせている。  こうした状況に直面して感じるのは、政府の基本的な方針が間違っているのではないだろうかということだ。根本的な軌道修正が求められているのではないか。  とにかく首都圏の感染拡大に歯止めがかからない。一日の新規感染者数が1000人を超えるようになった東京都では、確保したコロナ病床3500床のうち、85%の2995床が入院患者で埋まった(1月4日21時)。人工呼吸器やエクモ(体外複膜式人工肺)が必要な重症患者は108人でICU(集中治療室)の確保病床の49%を占める。  コロナ重症患者の治療には他の疾病の2倍以上の医師、看護師、臨床工学技士らの人手が必要なので、通常のICU治療にかかわるマンパワーのほぼ10割が投入されていると考えられる。  どの患者を優先的に治療するかという「生命の選別(トリアージ)」が医療現場にのしかかっており、精神的負担も多い。一刻も早く、感染者数を減らさなくてはいけない。だから緊急事態宣言の再発出が必要だということは理解できる。  しかしながら、コロナウイルスは低気温、低湿度の冬に活動性が高まることは知られていた。昨年6~8月に南米のペルー、ブラジル、チリ、オーストラリアなどで感染拡大し、医療関係者たちは日本の年末年始から厳冬期に大きな波がくると口々に予想していた。にもかかわらず、第一波、二波の「経験」は生かされず、感染は拡大する一方なのだ。  これは、判断が遅れた政府に大きな責任があるにしても、そもそも「3密」の回避、手洗い、うがいの励行、飲食店の営業自粛といった「感染経路の伝播抑制」に偏った対策が限界にきているからではないか。もちろん3密回避などは重要だが、個人の努力によりかかるだけでなく、打つ手は他にもあるはずだ。もう一度、感染対策の基本原則に立ち返ってみよう。  感染予防の基本原則は、(1)感染源対策(病原体の除去。感染者の早期発見・隔離・治療など)、(2)感染経路対策(3密回避、マスク、手洗いなど)、(3)感受性者対策(ワクチン接種など)である。日本の根本策は(2)に偏り、(3)のワクチン接種は海外メーカー頼みだ。では、(1)の感染源対策はどうか。これが不十分だから同じことをくりかえすのではないか。

「ゼロ・コロナ」戦略

ニュージーランドのアーダーン首相〔PHOTO〕Gettyimages

 そこで臨床疫学の専門家(医学博士)の群星沖縄臨床研修センター長・徳田安春氏に「もう一つの選択肢」について話を聞いた。徳田氏は、沖縄県立中部病院で総合診療に携わり、ハーバード大学公衆衛生大学院で臨床疫学を修め、聖路加・ライフサイエンス研究所臨床疫学センター副センター長、筑波大学大学院医療医学系教授、地域医療機能推進機構本部研修センター長などを歴任している。  第一波の到来時から「感染源対策」としての大規模PCR検査と感染者の早期保護隔離、接触者の追跡による「ゼロ・コロナ」戦略を提唱し、日本政府の基本方針である「ウィズ・コロナ」戦略からの脱却を説いてきた。  徳田氏は、こう指摘する。  「日本は、ウィズ・コロナ戦略で、コロナとの共生、ある程度、市中流行を容認する立場なのですが、これを選んだ欧米、日本を含む多くの国が感染の抑制に失敗しています。この戦略では使えるツールは感染が拡大したら流行カーブの山を自粛要請などで叩いて下げる、いわゆる『ハンマー&ダンス』くらいです。  これは感染の抑制を個人の努力に帰着させる方法で、経済社会的損失はずるずると続き、かえってダメージが大きくなる。  このリスクは、昨春頃からわかっていたのですが、政府も専門家と称する人たちも、きちんと説明をせず、あたかもこれが唯一の戦略であるかのように唱え、続けてきた責任は大きいと思います」  徳田氏は、「ゼロ・コロナ」に目標を設定し直せ、と言う。  「世界で封じ込めに成功している国々、中国や台湾、東南アジア諸国、西太平洋地域のニュージーランド、オーストラリア、欧州のアイスランドなどの感染対策の基本は、感染源を封じるゼロ・コロナ戦略です。積極的に防疫目的の大規模検査を行って、感染者を早期保護隔離し、追跡を徹底しています。  日本は、クラスター対策で集団感染が起きると後ろ向きに調べて感染者を隔離していますが、根本的な予防対策になっていない。新型コロナウイルスが厄介なのは、発症前の人、無症状の感染者から感染、伝播することです。その人たちを見つけて保護するには大規模検査しかない。成功している国から学ぶべきで、失敗している国の情報に頼っていたらミスリードしてしまいます」

日本は努力を怠った

昨年4月、緊急事態宣言で人通りがなくなった銀座の街〔PHOTO〕Gettyimages

 確かにクラスター対策はもはや限界にきているように見える。感染経路不明の患者が激増しているのを見れば明らかだろう。ただ、大規模検査=早期保護隔離を行うには、PCR検査のキャパシティを劇的に増やさなくてはならない。第一波の頃に比べればPCR検査は増えたとはいえ、封じ込めに成功している国々に比べると日本の検査数は極めて少ない。徳田氏が続ける。  「昨春以降、PCR検査の大幅拡充が国際的コンセンサスになりましたが、日本はその努力を怠った。厚生労働省は、文部科学省に対して、大学の医療機関、研究機関における積極的な検査拡充の協力要請をしていない。一つの試験管に複数の検体を入れるプール方式を導入すれば短時間に多くの検体を分析できてコストも下がるので、世界中の国々が導入しているが、厚生労働省はまだ認めていない。  このような消極的な態度は、ウィズ・コロナというゴールセッティングに起因しているんです。やる気がないんですね。だから目標をゼロ・コロナに変えて大幅拡充に導く必要がある」  しかしながら、PCR抑制主義は一種のドグマのように厚労省や専門家の間に根づいている。転換できるのか。  「検査拡大の突破口は、迅速抗原検査です。これをPCR検査と組み合わせるのです。迅速抗原検査の利点はコストが安く、15~30分で結果が判明することです。しかしPCRに比べると感度が落ちる。ですから検査頻度を多くし、陽性者はPCR検査で確認をする。たびたび抗原検査を行い、順次、保護隔離を行う。  必要時にのみ、ホットスポットとなっている感染密度の高い地域に限定して『サーキットブレーカー方式』のロックダウン――日本では緊急事態宣言の発出――で外出自粛を要請するのです」  サーキットブレーカー方式によるロックダウンとは、どのような手法なのか。  「建物には許容量以上の電力が流れたらスイッチがオフになるブレーカーが付いていますね。あのように実効再生産数などの指標となる数値を超えたエリアだけ徹底介入する戦術です。日本では法的に都市封鎖はできませんから、ある地域に緊急事態宣言を出して不要不急の外出自粛を要請することになる。一都三県の緊急事態宣言の再発出だけでなく、他の道府県でも感染密度の高い地域に、細かく外出自粛の網をかぶせる。  大切なのは、そのあとなのです。外出自粛で感染密度を下げたときに大規模検査を行って保護隔離を徹底する。封じ込めに成功した国々は、そうやってゼロ・コロナに目標を定め、実践しています」  間もなく、首都圏では緊急事態宣言が再発出される。外出自粛のハンマーで流行曲線のピークが叩かれ、感染数は下がると期待されている。  勝負は、そのあとだ。下がった時点でさらに大規模検査を行い、ゼロ・コロナをめざして保護隔離を徹底し、感染源を断つ。そのための感染者の受け皿に必要なマンパワー、宿泊療養施設やコロナ専用病床の確保に財政資金をどっと投入する。  その政治的決断が求められている。どこかでコロナと訣別する方向へ根本策を転じなければ、憂鬱なハンマー&ダンスが続きそうだ。

山岡 淳一郎(ノンフィクション作家)