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社会問題

新型コロナで大異変…日本人の「東京23区離れ」が止まらなくなってきた

https://news.yahoo.co.jp/articles/e74310b31e32a7380a1a40c0f007efbc20ea4595

2021/06/20 現代ビジネス

東京都への人口流入に強い「歯止め」

東京一極集中に異変が…/photo by iStock

 新型コロナウイルスの感染拡大から2度目の春が通り過ぎた。春は就職や進学に伴って、多くの人が移動する。特に、東京には大勢の人が転入してくる。これが“東京一極集中”の一つの要因となっている。 【写真】コロナ危機で、じつは日本が「世界で一人勝ち」する時代がきそうなワケ  だが、新型コロナは人の流れを変えた。新型コロナの影響で、東京一極集中に変化は見られたのか。  「新型コロナウイルスの感染拡大が“東京一極集中”の幕を引くかもしれない――」。こんな書き出しで、筆者がいち早く、新型コロナの影響で人の流れが変わり、東京一極集中に変化が見られるかも知れないと指摘したのが、20年7月20日に「新型コロナで『日本人の東京離れ』がいよいよ現実味を帯びてきた…!」だった。  さらに、21年2月7日の「新型コロナの影響で、本当に『東京から人が減っている』のか…?」では、2020年の東京の人の動きを取り上げ、東京一極集中がどのように変わりつつあるのかを検証した。  東京都の人口は、これまで一貫して人口増加を続けてきた。しかし、2020年から2021年にかけての増加率は、前年比0.52%から0.30%へと0.22ポイントも増加が鈍った。  つまり、東京都への人口流入に強い“歯止め”がかかったということだ。年間で0.22ポイントも増加率が減少するのは、過去にはなかったことだ。(表1)

そのほとんどが23区

※住民基本台帳移動人口報告より筆者作成

 これには、東京都の転入数と転出数が強く関係している。東京都では1997年から一貫して転入超過が続いている。  しかし、転入者数は19年の42万7307人(19年)から40万1168人(20年)と、2万6139人↓(6.1%)も減少した。  一方で転出者数は34万732人(19年)から36万2794人(20年)と、2万2062人↑(6.5%)も増加した。  この結果、20年の転入超過数(転入者数-転出者数)は3万8374人と、8万6575人(19年)から55.7%↓も減少している。  その多くは、東京23区の動きによるものだ。23区では転入者数は37万1694人(19年)から34万9052人(20年)と、2万2642人↓(6.1%)減少した。  一方で、転出者数は30万1233人(19年)から32万6631人(20年)と、2万5398人↑(6.9%)増加した。  この結果、20年の転入超過数(転入者数-転出者数)は2万2421人と、7万461人(19年)から68.2%↓も減少した。(表2)

上京する人が増える3月になっても

 20年1月からの東京都における人の流れを月別にみると、1~3月までは19年並みの転入超過だったが、4月以降になると転入超過数が顕著に減少傾向を示し、5月には転出超過に転じた。  その後、6月には転入超過に戻るものの、7月から21年2月までは転出超過の状態が続いた。つまり、東京都の人口は減少が続いたのだ。  東京都の転出超過は、総務省統計局によると、「外国人を含む移動者数の集計を開始した2013年7月以降初、日本人移動者だけでも2011年7月以来」だ。  例年3月は就職や進学(特に大学進学)を控え、東京都には多くの人が転入してくる。東京都に本社を置く企業数の多さは言わずもがなだが、大学もそうだ。全国には約780の大学がある。このうち約140の大学が東京都にあり、日本全国の大学生の約2割が東京都に集中している。  20年3月は9万7317人と19年3月の9万1131人に比べ、転入者数は6186人↑(6.7%)増加したが、21年3月は9万2057人と20年3月に比べ、5260人↓(5.4%)も減少している。  これはリモートワークやオンライン授業の定着によって、東京都に住居を移さず、就職や進学した人が増加していることの表れでもある。

23区では前年の6倍の人が東京を離脱

※住民基本台帳移動人口報告より筆者作成

 少子化が進む中で、多くの大学は学生集めに“四苦八苦”している。リモート授業の標準化は、東京圏に進学できない事情を持つ地方の優秀な学生を獲得する武器にもなる。  当たり前のことだが、東京都に転入する者がいれば、転出する者もいる。3月の転出者数は、19年が5万563人だったのに対して、20年は5万5415人と4852人↑(2.4%)増加し、21年には6万2694人と20年に比べ7279人↑(13.1%)も増加した。  特に、23区では3月の転入者数は20年が8万918人と、19年の7万6093人から4825人↑(6.3%)増加したが、21年には7万5868人と前年同月比で5050人↓(6.2%)も減少した。  これに輪をかけたのが転出者数で、20年3月は前年同月比4072人↑(9.6%)増加だったが、21年3月は同7506人↑(16.2%)も増加した。(表3)  人の動きが最も大きく現れるのは3月だが、実は東京都と23区の人の動きの中で、大きな変化が現れているのは、転出超過となった20年5月以降だ。  前年同月比の転入超過数は、12月には東京都で383.3%の減少、23区では603.9%の減少となっている。つまり、東京都では前年の3倍、23区では6倍の人が“東京を離れた”ということだ。(表4)  人々にとって新型コロナは脅威ではなくなったのか、それともワクチン接種が進んでいることで安心感を得るようになったのだろうか、政府の3回目の緊急事態宣言下でも人出は増加しており、東京から人が減っている実感は薄い。  それでも新型コロナの感染拡大が続いていることで、東京都の人の増加には確実に“歯止め”がかかっている。今後、新型コロナが収束に向かい、テレワークやオンライン授業が定着しはじめた時、東京の人口はどちらに向かうのだろうか。

鷲尾 香一(ジャーナリスト)