2021/06/17 読売新聞
新型コロナウイルスのワクチン接種で、岡山県の65歳以上の高齢者に対する1回目の接種率が50%を超えた。全国では他に佐賀、鳥取の2県が50%超だが、岡山県は5月以降に急伸しているのが特徴だ。市町村の枠組みを超えて接種できる全国的にも珍しい仕組みが奏功しているという。
高齢者接種は全国一律で4月12日にスタート。岡山県では、まず施設入所者らに限定して接種を進めたため、5月16日時点の接種率は1・38%と、同時期の全国平均(3・66%)の半分程度で、佐賀県(6・38%)や鳥取県(7・68%)より大幅に低かった。しかし5月17日から一般の高齢者への接種が始まると、同月19日には全国平均を超え、今月15日時点では全国2位だ。
急伸を支えるのが、県内であれば居住地にかかわらず、どの市町村でも接種が受けられる枠組み。医療機関数が異なる都市部と山間部の格差を埋める目的だったが、例えば倉敷市から岡山市に通勤している人は、地元で受けるか、勤務先近くで受けるかを選べるなど利便性も向上した。
県はこの方式を実施するため、全27市町村に協定を締結してもらい、県内全住民の接種券番号のデータベースを構築、これを基に予約サイトを作成した。
一般の高齢者への接種開始を5月17日としたのも「作戦」の一つ。4月当初のワクチン供給量が乏しい状況で、ある自治体の住民が別の自治体で接種を受けると、不公平感が生じる懸念があり、供給量が安定する5月まで開始を待ったという。
JR岡山駅の近くのクリニックでは5月に行った接種のうち、約5%が岡山市外からの来院で、諸国真太郎院長(66)は「会社員ら若い世代が接種対象になれば、この方式が更に有効になるのでは」と話している。