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コロナ感染死した大阪市消防局救急隊員の同僚が激白「過酷な勤務と“命の選別”に直面する辛さ」〈dot.〉

https://news.yahoo.co.jp/articles/8f073856d602d5a37b6702db98e03a280b78b57c

2021/6/15(火) 9:00 AERAdot.

大阪市消防局の救急搬送を担当していた50歳代の男性救急隊員が6月2日、新型コロナウイルスに感染して亡くなったことがわかった。男性は5月3日の勤務後にノドの痛みを訴えた。5日に症状が悪化し、抗原検査を受け、新型コロナウイルスの感染がわかった。男性は1回目のワクチン接種を終えていたが、2回目を受ける前に感染し、帰らぬ人となった。 【写真】「憎っくきコロナだよね」という言葉を残した女優も帰らぬ人に…

「職場の先輩が亡くなったと知り、残念で驚くばかりです。明日は我が身ですね」  こう話すのは、男性と同じ大阪市消防局で救急搬送を担当している30歳代のAさん。コロナウイルスの感染拡大で「第4波」に突入して以降、勤務は過酷になったという。 「大阪府で新規感染者数が1日あたり1000人を超え始めた4月初旬からは、ひっきりなしに出動の要請がありましたね。1日の死者数が20人とか重症者が増え始めると、さらに増えました。コロナ禍でなければ、1人を搬送してまた次となります。しかし、病床が逼迫しているので、受け入れ先を探すのにとても時間がかかる。コロナ前なら長くても20分くらいで病院が見つかった。しかし、コロナ禍となって、2、3時間かかることもありました。そう簡単に次の搬送にとりかかることができません」  救急隊員はコロナ禍となり、防護服などこれまで以上の重装備になったとAさんはいう。1人を搬送すると、救急車を消毒し、防護服などを着替え、また出動の準備をする。 「防護服を着ると、大量の汗をかきます。サウナの中にいるようで、暑くなって汗をかくというより、噴き出すという表現の方がいいかな。これまでの2倍から3倍くらい、体力を消耗しているように感じます」  5月になると、大阪府では死者が50人を超えるような日が続いた。救急搬送を必要とする患者はますます増えた。Aさんはこう危惧する。 「自分が経験した例で言えば、搬送先を探すのに5、6時間かかったことがありましたね。患者さんのご家族から『熱が39度近くで、3日以上続いている。なんとか助けてほしい』『病院の廊下、受付でもいいので入院させてくれないか』と涙を浮かべて、懇願されたこともありました。実際に患者さんもハアハアと苦しそうにされている。こっちも必死で探すのですが、ほとんどがダメ。電話すらつながらないこともよくありました」  受け入れ先が見つからない時は見つかるまで車内で患者に酸素吸入を続けるという。 「時間がかかるので、救急車に搭載している酸素が無くなり、新しいものを取りに戻ることも何度かありました。また、入院先が見つからない時に備え、救急車で酸素吸入を長時間、できるよう準備して出動することもありました。細心の注意と対策をしているのですが、コロナの患者さんと接する時間が一気に長くなり、どうしても感染の確率が増えているような気がします」  中には病院が見つからないことで、患者やその家族が国や大阪府のコロナ対応のまずさに対する怒りを救急隊員にぶちまけることもあった。返答に困ることもしばしばあったそうだ。そんな中、Aさんは実質的な「命の選別」を強いられている高齢者にかけられた言葉が今でも忘れられないという。 「酸素吸入した女性高齢者の受け入れ先を必死で探していた時です。『コロナの人がたくさんいる。私のようなおばあちゃんに構わず、若い人を助けてあげて』とおっしゃられました。2時間ほどで病院が見つかった時も『私は最後でいいから…。ベッドが足りないのでしょう』『こんなおばあちゃんにありがとうね』と息も絶え絶えで感謝の言葉を伝えられました。なんで、こんなにひどい状況になってしまったのか。これは人災ではないかと思うと怒りが込み上げました。救急医療のぜい弱さを思い知らされました」  大阪市消防局によれば、これまで職員がコロナに感染したのは100人を超えるという。大半が感染経路は不明。亡くなった男性も、同様だという。職員のワクチン接種状況は、5月31日段階で医療従事者に該当する3500人のうちで1回目を終了したのは2404人、2回目の終了は1271人だった。Aさんもすでにワクチン接種2回を終えているという。 「今回、お亡くなりになられた先輩は、1回目を受けていたにもかかわらず、感染した。すごくいい先輩だったと聞いています。自分は2回目を終えて正直、ホッしています。6月になり、状況は落ち着いてきましたが、インド株などの変異種はこれまでと感染力が違うという報道があります。これまで以上に気を引き締めたい」 (AERAdot.編集部 今西憲之