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社会問題

コロナで我を失う愚か者たちのバカすぎる行動

買い占め、デマ、差別、便乗…モラル崩壊の唖然

木村 隆志 : コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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2020/03/07 東洋経済ONLINE

連日、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、地域別の感染者数や感染ルート、政府や専門機関の対応、予防や発見の方法、日常生活や経済的な影響など、さまざまなニュースが飛び交っています。注目すべきニュースが大半を占めているものの、なかには耳を疑うようなものも少なくありません。

「買い占め」「デマの流布」「便乗値上げ」「高額転売」「盗難」「差別」「誹謗中傷」「入場禁止」「強硬開催」など、その一部フレーズを見ただけで、あまりよくない言い方だと百も承知のうえで、「バカ」「愚か者」と言いたくなってしまうニュースが飛び交っているのです。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって個人の本質が問われ、誰しも「バカ」「愚か者」になりかねない危険性をはらんでいるのも、また事実。国難とも言える緊迫した状況の中、私たちは「バカ」「愚か者」にならないために、どんなことに気をつけなければいけないのでしょうか。

「スッキリ」加藤浩次が猛批判した理由

3月2日放送の情報番組「スッキリ」(日本テレビ系)で象徴的なシーンがありました。番組は「新型コロナウイルスの感染拡大でトイレットペーパーが入手困難になる」という情報を信じて買い占めに走る人々をフィーチャー。

すでにデマとわかったうえで行列に並ぶ人々を見たMCの加藤浩次さんは、「デマだとわかっていて買ってしまうのは『ずいぶん滑稽なことなんだよ』と思わなきゃいけない」「バカみたいな買い方をしなければあるわけですよ。それをバカみたいに買っている自分を恥じなければいけない」と猛批判しました。

まず悪意の有無にかかわらず、このような状況下でデマを流してしまう人が最大の「バカ」「愚か者」であることは言うまでもないでしょう。また、SNSにはトイレットペーパーだけでなく、「新型コロナウイルスは細菌兵器として作られたもの」というひどいデマもあり、それに「いいね!」やリツイートしている人もいました。

さらにデマの問題は、「デマとわかっていても買ってしまう」という新たな「バカ」「愚か者」を生み出してしまったこと。そもそもトイレットペーパーを買うために行列を作るという行為自体、地域社会を混乱させる行動であり、新型コロナウイルスの感染拡大リスクであることにすら気づいていないのです。

前述した「スッキリ」では加藤さんがハッキリ苦言を呈したものの、「店頭の棚からトイレットペーパーがなくなったこと」をトピックスとしてフィーチャーしていた番組は多々見られました。これは視聴者の目を引くための構成ですが、結果的に不安を増大させ、買い占めを促してしまったそれらの番組も「バカ」「愚か者」。これはテレビ番組だけでなく、空っぽの棚を撮影してSNSにアップしている人々も同様でしょう。

ただ、1つ救われたのは、3月3日に米子医療生活協同組合が、「職員が『トイレットペーパーが品薄になる』というデマ投稿者の1人だった」ことを明かし、謝罪コメントを出したこと。批判覚悟で正直に謝罪したことで、デマを流布した本人に反省を促し、「バカ」「愚か者」から救い出すきっかけを作ってあげたのです。

この例に限らず、デマを流布している人の目を覚ますことができるのは身近な人だけ。知らない人に独り善がりの正義感を燃やして言葉をかけても効果は薄く、知っている人だからこそ変化が期待できるものです。

「パニック買い」ではなく利己心の表れ

買い占めされたのはトイレットペーパーのみならず、ティッシュペーパー、コメ、パン、麺類、冷凍食品など多岐にわたりました。それらの購買行動を「パニック買い」と呼ぶ記事もありましたが、本質はそこではないでしょう。

デマとわかっているのについ買ってしまうのは、決してパニックになっているからではなく、「ふだんの生活を変えられたくない」「日常的に得ている自由や便利を失いたくない」という利己心からくるもの。日ごろ「欲しいものを選んで届けてもらえる」「好きなときに好きなものを好きな場所で見られる」「低価格でさまざまな料理を食べられる」など、収入の多少にかかわらず、それなりに自由で便利な生活を送っている現代人は、それが少しでも損なわれることを極端に嫌がるものです。

そんな利己心が強くなるほど視野が狭くなり、自分のことしか見えず、以前なら絶対にやらなかったであろう言動に陥ってしまうのが、「バカ」「愚か者」とみなされてしまうゆえん。例えば、「コンビニのトイレからトイレットペーパーが盗まれた」「来客用に置かれたオフィス受付の消毒液がなくなっていた」という盗難のニュースは、利己心の強い人による愚行そのものでした。

とくに新型コロナウイルスのような社会的重大事では、利己心で何かを得られたとしても、それは一時しのぎにすぎません。買い占めや盗難によって地域社会が乱れ、感染が拡大したら、個人の自由や便利は現在以上に損なわれていくでしょう。

その利己心は買う側だけではなく、売る側にも見られました。マスクを1箱数万円で販売したり、マスクは適正価格ながらも送料を50万円に設定したりなどの悪質極まりない行動が見られたのです。

こうした便乗値上げや高額転売は、あまりに「バカ」「愚か者」であるため、政府やオークションサイトなどが規制に動いていますが、「もっと早く対策を講じておくべきだった」のは間違いないでしょう。その意味では新型コロナウイルスの感染拡大によって、「もはや日本人特有の性善説は、自由で便利な生活を送る現代人には通用しない」ということが露呈されたのかもしれません。

少なくとも、医療や介護の現場でもマスクが不足している中、便乗値上げや高額転売を行った利己心の強い日本人が多かったことは、政府・企業ともに今後の対策に生かしていくべきでしょう。

医療従事者へのありえない差別

もう1つ、感染が拡大するにつれて増えている由々しき事態は、感染者や感染の疑いがある人、あるいは中国人への差別や誹謗中傷。ネット上で「感染したヤツの名前を出せ」「感染者を出した〇〇は責任を取って店を閉めろ」「日本から追い出せ。国へ帰れ」などという強烈な言葉が浴びせられているのです。

さらにひどいのは、「治療にあたっている医師、看護師、その家族も差別を受けた」というニュース。医師や看護師は、世間や人々のためにリスク覚悟で働いているのであって、これこそ絶対にしてはいけない愚行にほかなりません。また、映画館、パチンコ、温泉などの複合エンタメ施設を各地に展開する「コロナワールド」にも、「このご時世に不謹慎だから廃業しろ」という無茶苦茶な書き込みも見かけました。

こうした差別や誹謗中傷が起きるのは、大義名分があるからではなく、「自分の自由や便利を脅かされたくないから」「単なるストレス解消で誰かを攻撃したい」という程度の理由にすぎないでしょう。

「私はそんなことは言わない」と思っている人も、医療従事者や中国人が隣に座ったり、話しかけてきたりしたら嫌な顔をしないと言い切れるでしょうか。例えば、その戸惑った様子をSNSに書き込むだけでも、立派な差別と言えるものなのです。

X JAPANのYOSHIKIさんが、「戦っているのは、対人じゃ無くて、対ウイルス。今からでも、自分も含めて、冷静な判断のもとにそれぞれができることをしよう」というメッセージを発信しました。無用な差別や誹謗中傷を避けるためには、やはり冷静な判断をするためにできるだけ確度の高い情報を入手し、自分のできることに徹するべきでしょう。

人間の不安を軽減させるのは、誰かを差別したり、誹謗中傷を浴びせたりすることではなく、それらをすることやされることの心配がない社会。誰しも新型コロナウイルスに感染するリスクがある以上、もし自分が差別されたり、誹謗中傷を受けたりする立場になったら……と考えたら、そのことがわかるのではないでしょうか。

オフィスでは“コロナハラスメント”横行

新型コロナウイルスの余波は、いちコンサルタントである私のもとにも及んでいます。さまざまな相談事がある中で顕著なのは、オフィスにおけるハラスメント横行。

例えば、ある新聞社に勤める男性は、上司から「もし感染したらわかってるよな?」と言われてしまいました。彼が「どういうことですか?」と尋ねると、上司は「評価を下げざるをえないだろ」と言われてしまい、風邪気味であることを隠しながら働いているそうです。

また、ある路面店で接客スタッフとして働く女性は、上司から「見栄えが悪いからマスクは禁止」「休日は一切外出しないように」と言われ困惑していました。さらにこれは聞いた話ですが、「感染者と決めつけられて、わざと出勤させないように追いやられた(新型コロナウイルスを理由に部署異動させられそう)」という嫌がらせもあったそうです。

経営者や管理職からの相談もありました。彼らは「コロナウイルスに感染したかもしれないから会社を休みます」という部下に悩まされているというのです。部下の言い分は、「普通の風邪だと休まないけど、症状がコロナっぽいから休む」「検査を受けようとしたが、断られてしまった」。

しかし、上司にしてみれば、「まったく体調が悪いようには見えないが、休みを認めざるをえない」というのです。どちらの言い分が正しいかはわかりませんが、現在はウソが通用しやすい状態になっていることは間違いないでしょう。

ハラスメントをする上司も、職場放棄する部下も、新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、彼らの中にある「バカ」「愚か者」の部分が引き出されてしまいました。近い距離感で毎日コミュニケーションを取るオフィスだからこそ、ネガティブな出来事をきっかけに、役職を問わずモラルが低下してしまう人が少なくないのです。

「感染したくない」より「周囲に感染させない」

ここまで挙げてきたもの以外にも、埼玉県加須市が「小・中学生の市内各公共施設への入館をお断りさせていただいております」という貼り紙をした(のちに「お断り」を「ご遠慮」に変更)、東京事変が2月29日と3月1日にライブを強行開催(以降の公演は中止)など、批判を受けたものはまだまだあります。

他人を見る目が厳しくなっていく中、「山手線の車内で、せきをしたことをきっかけに男女3人がケンカになった」ことがニュースになりました。その様子を動画撮影した高校生が「世も末だなって感じ」と話していたように、せきやくしゃみで大人たちが我を失ってしまう過敏な世の中になっているのです。上の画像をクリックすると、「コロナショック」が波及する経済・社会・政治の動きを多面的にリポートした記事の一覧にジャンプします

花粉症で鼻水をすすっただけであろう人まで白い目で見られる異常な状態では、今後もいつどこで誰の「バカ」「愚か者」が露呈しても不思議ではありません。

あなたが賢明なビジネスパーソンなら、「自分はそんなことをしない」と言い切ってしまうのではなく、つねに冷静な目線で自分を見つめていたいところ。その第一歩は「自分は感染したくない」よりも先に「周囲の人々に感染させないようにしよう」と心がける寛容な姿勢ではないでしょうか。

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