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マスクや手袋などの“コロナごみ” 世界各地の海や川で増加

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200723/k10012529071000.html

2020年7月23日 4時04分 NHK NEWSWEB

23日は「海の日」ですが、新型コロナウイルスの感染拡大で需要が増えたマスクや手袋などのいわゆる“コロナごみ”が、世界各地の海や川で見つかっていることが分かりました。
環境団体は、こうしたごみが生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチックになるなど環境への脅威になるとして、警鐘を鳴らしています。

アジアを中心に活動している香港の自然保護団体によりますと、香港周辺の海岸では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ことし2月末ごろからマスクなどのいわゆる“コロナごみ”が目立つようになりました。

また、ヨーロッパでも、南フランスを中心に海のごみを回収しているNPOは、5月ごろからマスクや消毒用アルコールの空き容器などが目立ち始め、先月だけで100枚以上のマスクが回収されたとしています。

さらに、探査船を使って世界中の海洋汚染などを調査しているフランスのタラ・オセアン財団によりますと、先月調査したテムズ川やセーヌ川など10の川すべてで、マスクや手袋などが見つかったということです。

タラ・オセアン財団のロマン・トゥルブレ事務局長は、「不織布のマスクはプラスチックでできている。動物たちが誤って飲み込むだけでなく、生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチックや、さらに細かいマイクロファイバーなどになり大きな脅威となるだろう」と警鐘を鳴らしています。

日本でも ”コロナごみ”

マスクなどのいわゆる“コロナごみ”は、日本の河川や海岸でも相次いで見つかっています。

2005年から神奈川県藤沢市の片瀬海岸で清掃活動を行っているNPO法人「海さくら」によりますと、新型コロナウイルスの影響で中断していた清掃を再開した先月中旬以降、多くのマスクや除菌ペーパーなどが見つかるようになりました。

以前は、1日の清掃でマスク1枚が見つかる程度でしたが、今は1日に15枚ほどに増え、雨が降った翌日などは、さらに多くのマスクが海岸に流れ着くということです。

「海さくら」の古澤純一郎理事長は「日本だけの問題でも、世界だけの問題でもない。みんなの問題として、どんなマスクを使うのか、どう捨てるのか、きちんと考えることが大切だ」と話し、マスクなどを利用する際は、環境への影響を十分考慮してほしいと呼びかけています。

植物由来のマスクなど開発進む

こうした中、世界各地で植物由来の素材を使ったマスクなどの開発が相次いでいます。

カナダのブリティッシュコロンビア大学では、木の繊維から、微生物によって水や二酸化炭素などに分解される「生分解性」のマスクを開発しています。

またイギリスの企業は、プラスチックを使わないフェイスシールドの開発に成功しました。顔を覆う部分は木材パルプを使いながらも透明度を確保したほか、値段も1つ1.5ポンド、日本円で200円余りと、プラスチック製品とほとんど変わらないということです。

創業者の1人イアン・ベイツさんは「木材パルプや紙など、すべて土に返る物で作った。需要の増加に備えて、週に200万個生産できるようにした」と話しています。

こうした取り組みは日本でも始まっていて、植物から取り出したでんぷんなどを使ってマスクを製造する企業も出てきています。

専門家「社会全体の仕組み作りが必要」

世界各地でいわゆる “コロナごみ” が見つかっている状況について、環境政策が専門の大阪商業大学の原田禎夫准教授は「海外に限った話ではなく、国内の河川や海岸でもマスクなどは、たくさん回収されている。不織布のマスクは土に返る布ではなく、プラスチック製のものだが、知らない人も多い」として、「まずは、マスクがどんな素材でできているのかを消費者にきちんと伝えることが大切だ」と話しています。

また、プラスチックに代わる素材を使った製品の開発については、「環境への負荷が少ない、新しい素材で作ることも大事だが、もともとあって使える物は積極的に活用するべきだ。感染防止対策として使い捨てプラスチック製品が必要な医療現場には優先的に回していくなど、環境への負荷と感染対策のバランスを考えながら利用していくのが賢明な選択ではないか」と述べました。

そのうえで、一人一人が環境問題への意識を持つことは大切だとしながらも、個人のモラルに頼るだけでは解決しないとして、「科学的根拠に基づき、何が感染対策に有効で、コスト面でも実現可能なのか。順序立てて考え、補助金を活用するなど、社会全体としての仕組み作りが重要だ」と指摘しました。