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コロナ 社会問題

社説[病院大規模クラスター]感染拡大の経緯検証を

https://news.yahoo.co.jp/articles/4de9fedea020752193046aadb28d31c2477839dc

2021/8/20(金) 13:11 沖縄タイムス

 うるま市内の老年精神科病院「うるま記念病院」で新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)が発生している。  県や病院ホームページなどによると、7月19日に入院患者と職員各1人の陽性が判明し、その後も感染者が相次いだ。8月17日までに入院患者173人と職員26人、計199人の感染が確認されている。  死亡した入院患者は69人に上る。クラスターによる死亡者数では国内最多とみられ、あまりの多さに愕然(がくぜん)とさせられる。  病院には外部の医療関係者や介護従事者が支援に入っている。まずは病院と関係機関が連携して目の前の患者の命を守り、一日も早い収束へ全力を注いでほしい。  病院によると、患者は高齢で認知症やうつ病などの精神疾患があり、マスクの常時着用が困難だったという。病院の構造上、十分な換気が難しい点も挙げている。  しかも「第5波」による県内の医療提供体制の逼迫(ひっぱく)で、重点医療機関に転院できた感染者は少数にとどまり、大半は院内で酸素吸入や内服治療を受け療養せざるを得ない状況が続いている。  感染力の強いデルタ株の影響はあるにせよ、なぜ、これほど感染が急拡大したのか、死亡者がこれほど増えたのか分からないことがまだ多い。  どのような感染経路をたどったのか、感染者をほかの患者と分ける「ゾーニング」ができていたのかなども検証する必要がある。 ■ ■  病院の危機管理に疑問を抱くのは、クラスター発生時点で患者のワクチン一斉接種が進んでいなかったことだ。少なくとも1回接種した患者は約1割だったという。  重症化リスクの高い高齢者は優先接種の対象とされ、最初に陽性者が確認された時点では県内高齢者の78%が1回目の接種を終えている。  にもかかわらず接種が遅れたのはなぜか。病院の接種態勢が整わなかったとしても、県や市などと連携して家族が同意した患者に接種する方法はあったのではないか。  県によると、うるま記念病院でクラスターが発生するのは今回が2回目だという。1回目は今年1月で、入院患者と職員の計76人が感染した。  密になりやすい医療現場で院内感染を完全に防ぐのが難しいのは分かる。ただ、発生した時には何としても拡大を食い止めてもらいたい。  1回目の発生時の反省点を踏まえ、どのような再発防止策が講じられていたのか明らかにしてほしい。 ■ ■  亡くなった入院患者の家族は、詳細が知らされない状況にやるせない思いを抱いている。  これだけの死亡者が出ている以上、事実関係を調べ明らかにする必要がある。  県が主導して専門家を含めた第三者委員会を立ち上げ、病院側から聞き取り、感染拡大の原因や再発防止策をまとめてもらいたい。  教訓として県内の各医療機関で情報共有し、感染防止や発生時の封じ込めに役立てるべきだ。